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28 選択の前に登場した男
カリウスの言動を否定した二人にカリウスは裏切られたかのような驚愕めいた表情を浮かべた。
そして一方の王太子は満足気に口角を上げ頷く。
激しく動揺しているのかカルンの一人称が私から僕に変わっていたことも王太子が笑みを浮かべた要因の一つだろう。
「まさか自らの力だけで解くとはな。それを確認できただけでも十分だが……」
言葉途中で王太子は指を鳴らす。
パチンと高くも低くもない特徴的な音が食堂内に響くと、現れたのは一人の男性だった。
ユージン・デクロン。
太陽のもとではまるで絹のようにキラキラと輝く銀髪は、食堂内でも輝きが失われることなく主張していた。
勿論髪色だけではなく、顔面や肉体においても完璧なため、彼の周りには常にキラキラと輝くエフェクトが散らばっている。
そんなユージンの登場に驚いたのは男性陣と、かなり放置されていたアリスだった。
「ユージン様!」
再び放置されていたアリスは席に座っていたが、ユージンの登場に立ち上がると嬉しそうな笑みを向けながら名前を呼んだ。
そんなアリスに動揺するのは男性陣なわけだが、すでに自身の感情の違和感を感じているカルンとロジェは、関わりがほぼない相手に何故そんなに嬉しそうな表情をアリスが浮かべるのかがわからず不思議そうにみるだけで、残るカリウスはアリスの笑みが向けられているユージンを憎らしげに見ていた。
そしてカルンはそんなカリウスの表情を視界に入れると、ふと最近のことを思い出す。
アリスと共に行動していた時に、今のように突然現れたユージンに対して、自分も今のカリウスと同じように敵を殺す勢いで憎い気持ちが沸き起こったあの時の感情を思い出していたのだ。
今は全く感じていないのに、その時のことを思い出すだけで更に自分の感情が分からなくなった。
だが言えることと言えば、もうアリスのことを恋愛感情で好きとは思っていないことだけ。
アリスに近付く者がいれば殺したくなるほどの感情が、今感じていないのがその証拠だろう。カルンはそう考えていたのだ。
「カルン、ロジェ、お前たちは婚約者、いや、元婚約者からとある願い事をされ理由も聞かずに追い返したと聞いたが、それは今でも同様の対応をするか?」
カルンとロジェは王太子の言葉を聞いてすぐに否定した。
「いいえ、殿下。マリア……、ヴィノビアン嬢は理由もなくお願いをするような女性ではないと知っています。正気になった今、何故宝石を飲み込まなければいけないのか、しっかりと理由を尋ねたいと考えていると共に彼女に謝りたいと思っています」
「私も同じ考えです。あの時の彼女はとても真剣な表情を浮かべていました。それなのに私は理由も尋ねることなく拒絶してしまいました。もし機会を与えていただけるのでしたら、まずは彼女に謝罪をし、理由を聞いたうえで出来るだけ受け入れたいと考えています」
二人は立ち上がり、テーブルの前に並ぶと頭を下げる。
言葉は王太子へと向けられていたが、体は明らかにマリアとキャロリンへと向いていた。
マリアとキャロリンは頭を下げるカルンとロジェの姿を見ると、うっすら涙を浮かべながら苦笑する。
そんな二人の表情を確認したエリザベスは王太子を見上げにこりと微笑むと、王太子は優しい笑みを浮かべながら頷いた。
「では二人にはその場を設けようか」
王太子が告げるとマリアとキャロリンは頷いて二人に近づいた。
ごくりと息を飲み込む音が聞こえたが、それが近づくマリアとキャロリンのものなのか、それとも自らの行いを自覚し罪悪感と後悔を抱いているカルンとロジェのものなのかはわからない。
だが、もう傷つけようとする意志は感じとれない、寧ろ非常に気を遣う様子の彼らを見て、放っても大丈夫だと判断した。
「さて、あっちは放っておいても解決するだろう。
問題は…」
王太子は視線をマリアたちからアリスへと移動させた。
健康的な肌を赤く染め、まるで乙女の瞳のようにうるうると潤んだ眼差しをユージンに向けるアリスはあからさまに好意を示している。
それを感じ取ったカリウスは嫉妬に燃えてユージンを睨みつけていた。
「あ、あの、私、好きに相手を選んでもいいっていっていましたよね??」
アリスはアリエスに尋ね、尋ねられたアリエスは首を傾げた。
そして一方の王太子は満足気に口角を上げ頷く。
激しく動揺しているのかカルンの一人称が私から僕に変わっていたことも王太子が笑みを浮かべた要因の一つだろう。
「まさか自らの力だけで解くとはな。それを確認できただけでも十分だが……」
言葉途中で王太子は指を鳴らす。
パチンと高くも低くもない特徴的な音が食堂内に響くと、現れたのは一人の男性だった。
ユージン・デクロン。
太陽のもとではまるで絹のようにキラキラと輝く銀髪は、食堂内でも輝きが失われることなく主張していた。
勿論髪色だけではなく、顔面や肉体においても完璧なため、彼の周りには常にキラキラと輝くエフェクトが散らばっている。
そんなユージンの登場に驚いたのは男性陣と、かなり放置されていたアリスだった。
「ユージン様!」
再び放置されていたアリスは席に座っていたが、ユージンの登場に立ち上がると嬉しそうな笑みを向けながら名前を呼んだ。
そんなアリスに動揺するのは男性陣なわけだが、すでに自身の感情の違和感を感じているカルンとロジェは、関わりがほぼない相手に何故そんなに嬉しそうな表情をアリスが浮かべるのかがわからず不思議そうにみるだけで、残るカリウスはアリスの笑みが向けられているユージンを憎らしげに見ていた。
そしてカルンはそんなカリウスの表情を視界に入れると、ふと最近のことを思い出す。
アリスと共に行動していた時に、今のように突然現れたユージンに対して、自分も今のカリウスと同じように敵を殺す勢いで憎い気持ちが沸き起こったあの時の感情を思い出していたのだ。
今は全く感じていないのに、その時のことを思い出すだけで更に自分の感情が分からなくなった。
だが言えることと言えば、もうアリスのことを恋愛感情で好きとは思っていないことだけ。
アリスに近付く者がいれば殺したくなるほどの感情が、今感じていないのがその証拠だろう。カルンはそう考えていたのだ。
「カルン、ロジェ、お前たちは婚約者、いや、元婚約者からとある願い事をされ理由も聞かずに追い返したと聞いたが、それは今でも同様の対応をするか?」
カルンとロジェは王太子の言葉を聞いてすぐに否定した。
「いいえ、殿下。マリア……、ヴィノビアン嬢は理由もなくお願いをするような女性ではないと知っています。正気になった今、何故宝石を飲み込まなければいけないのか、しっかりと理由を尋ねたいと考えていると共に彼女に謝りたいと思っています」
「私も同じ考えです。あの時の彼女はとても真剣な表情を浮かべていました。それなのに私は理由も尋ねることなく拒絶してしまいました。もし機会を与えていただけるのでしたら、まずは彼女に謝罪をし、理由を聞いたうえで出来るだけ受け入れたいと考えています」
二人は立ち上がり、テーブルの前に並ぶと頭を下げる。
言葉は王太子へと向けられていたが、体は明らかにマリアとキャロリンへと向いていた。
マリアとキャロリンは頭を下げるカルンとロジェの姿を見ると、うっすら涙を浮かべながら苦笑する。
そんな二人の表情を確認したエリザベスは王太子を見上げにこりと微笑むと、王太子は優しい笑みを浮かべながら頷いた。
「では二人にはその場を設けようか」
王太子が告げるとマリアとキャロリンは頷いて二人に近づいた。
ごくりと息を飲み込む音が聞こえたが、それが近づくマリアとキャロリンのものなのか、それとも自らの行いを自覚し罪悪感と後悔を抱いているカルンとロジェのものなのかはわからない。
だが、もう傷つけようとする意志は感じとれない、寧ろ非常に気を遣う様子の彼らを見て、放っても大丈夫だと判断した。
「さて、あっちは放っておいても解決するだろう。
問題は…」
王太子は視線をマリアたちからアリスへと移動させた。
健康的な肌を赤く染め、まるで乙女の瞳のようにうるうると潤んだ眼差しをユージンに向けるアリスはあからさまに好意を示している。
それを感じ取ったカリウスは嫉妬に燃えてユージンを睨みつけていた。
「あ、あの、私、好きに相手を選んでもいいっていっていましたよね??」
アリスはアリエスに尋ね、尋ねられたアリエスは首を傾げた。
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