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29 選択②
アリエスは確かに“三人”の中から選べと言ったが、この食堂にいる人間の中から好きに選べとは言っていない。
そもそも三人というのは今もアリスのそばにいるカリウスと、自ら過ちを気付いたカルンとロジェのことを言っている。
しかも“本物の”感情でなければ体内に取り入れた宝石に、偽の感情が浄化されてしまうため、今となっては選べる相手はカリウスしか選択肢はない。
それをなにを勘違いしているのか、アリスはユージンをちらちらと視線を送り媚に媚びる様子を見せていた。
アリエスはそんなアリスの様子を面白くないと思い、だが貴族令嬢のプライドを捨てることなく必死に無表情の上に笑みを浮かべる。
ちなみに見られているユージンはアリスの視線を一切意識することなく、アリエスが無意識に嫉妬している様子を心躍らせながら見つめていた。
可愛いと、抱きしめたいと、愛をささやきたいという衝動を何とか抑え込みながら、ニマニマと微笑みを浮かべている。
よく知っている者が見ればニヤついているとわかるものなのだが、ここにはユージンを本当の意味で知るものはいない。
気持ちが通じ合っているアリエスも、ユージンがどれだけ“男として”アリエスを見ているのか知らないのだ。
その為ニヤニヤしているユージンは、美しい見た目から優しい笑みを浮かべているという、なんとも都合のいい捉え方をされているのであった。
そんなユージンの微笑みは明らかにアリエスに向けられているとわかるものなのだが、なにをもってかアリスは自分に向けられていると勘違いをし「いやぁん」と体をくねくねと動かしている。
そして遂に見かねた王太子から「早く言いなさい」と言われてしまった。
「あ、あの…私、私はユージン様と結婚したいです!」
くねくねと体をくねらせるアリスは遂に自身の望みを口にした。
後ろにいるカリウスは選ばれなかったことに顔を青ざめさせながら驚愕し、アリエスは笑みが消える前に普段はあまり使わない扇で顔の半分以上を隠す。
エリザベスと王太子は特段驚くことなくプロポーズされたユージンに視線を向けた。
「……何故、僕なんだ?」
ユージンはニヤニヤしていた笑みを消し、なんの表情も浮かべることなくアリスへと視線を向ける。
美形の無表情は怖いという言葉はこういうことをいうのかと、アリスは体を強張らせごくりと唾を飲み込んだ。
「だ、だって、ユージン様は私のこと好きでしょ?それに私とユージン様は運命だから…!」
「運命?僕と君が?」
「そ、そう!ヒロインの私と隠しキャラのユージン様!ゲームの世界に入り込んだんだから王道キャラとの攻略じゃなくて、隠しキャラとのゴールは憧れそのものでしょ!?なにより条件が揃ってなくても出会うことが出来たってことは、私とユージンが結ばれるのは運命ってことなのよ!」
アリスはユージンの冷たく差すような視線に怯えつつ、焦ったように言葉を告げたことから、誰にもわからない言葉を次々と吐き出してしまう。
そして「ゲーム?」「隠しキャラ?」と首を傾げたアリエスとエリザベスの姿を見て、初めて自分の失言に気づいたように口を押えた。
「君が何を言っているのかなんて僕にはわからないけど、僕が君に愛を告げることはないし、感じることもないよ。僕が愛を誓う相手はもう決まってるんだから」
ユージンはそう告げるとアリエスに向かって歩きだす。
“え”と目を見開くエリザベスは、顔を真っ赤に染めた友人を振り返った。
実はこの場を設ける前、カリウス、カルン、そしてロジェの三人にアリスの魅了を解くことができる宝石を飲み込ませるという手段が取れなかったことについて、王太子からの命令という形で無理やりにでも飲み込ませることは決まっていたのだが、アリスにはどうやって飲み込ませるべきか悩んでいた。
そんな時、明らかにアリスのユージンに対する反応と三人に対する反応が違うとユージンの話から推測したエリザベスが、ユージンと付き合いたいなら必須なことだと言って飲み込ませてしまえばいい、そして振ればいいのだと、そういう話になっていたのだが、今になってユージンはアリスを誘導することなく、アリエスに愛を囁こうとしていた。
(計画が丸つぶれですわ!!!!)
カルンとロジェは自ら正気に戻りつつあったため、無理やり飲ませるという最終手段を使わなくても済んだが、一番肝心のアリスの対応が出来なければ他の被害者が生まれてしまうことが考えられる。
相手は無差別に異性を虜にする力を持った女なのだ。
学園内の生徒には校章として宝石を身につけさせているが、校章を外してしまえば途端にアリスの餌食になる。
この国の王妃になる者として、混乱が目に見えて起こることは何としても食い止めなければならないと、アリスの口を力づくで開き、無理やりにでも飲み込ませなければいけない展開に覚悟しながら、広げていた扇を勢いをつけて閉じた。
だが、エリザベスの意気込みは気持ちだけで終わることになる。
そもそも三人というのは今もアリスのそばにいるカリウスと、自ら過ちを気付いたカルンとロジェのことを言っている。
しかも“本物の”感情でなければ体内に取り入れた宝石に、偽の感情が浄化されてしまうため、今となっては選べる相手はカリウスしか選択肢はない。
それをなにを勘違いしているのか、アリスはユージンをちらちらと視線を送り媚に媚びる様子を見せていた。
アリエスはそんなアリスの様子を面白くないと思い、だが貴族令嬢のプライドを捨てることなく必死に無表情の上に笑みを浮かべる。
ちなみに見られているユージンはアリスの視線を一切意識することなく、アリエスが無意識に嫉妬している様子を心躍らせながら見つめていた。
可愛いと、抱きしめたいと、愛をささやきたいという衝動を何とか抑え込みながら、ニマニマと微笑みを浮かべている。
よく知っている者が見ればニヤついているとわかるものなのだが、ここにはユージンを本当の意味で知るものはいない。
気持ちが通じ合っているアリエスも、ユージンがどれだけ“男として”アリエスを見ているのか知らないのだ。
その為ニヤニヤしているユージンは、美しい見た目から優しい笑みを浮かべているという、なんとも都合のいい捉え方をされているのであった。
そんなユージンの微笑みは明らかにアリエスに向けられているとわかるものなのだが、なにをもってかアリスは自分に向けられていると勘違いをし「いやぁん」と体をくねくねと動かしている。
そして遂に見かねた王太子から「早く言いなさい」と言われてしまった。
「あ、あの…私、私はユージン様と結婚したいです!」
くねくねと体をくねらせるアリスは遂に自身の望みを口にした。
後ろにいるカリウスは選ばれなかったことに顔を青ざめさせながら驚愕し、アリエスは笑みが消える前に普段はあまり使わない扇で顔の半分以上を隠す。
エリザベスと王太子は特段驚くことなくプロポーズされたユージンに視線を向けた。
「……何故、僕なんだ?」
ユージンはニヤニヤしていた笑みを消し、なんの表情も浮かべることなくアリスへと視線を向ける。
美形の無表情は怖いという言葉はこういうことをいうのかと、アリスは体を強張らせごくりと唾を飲み込んだ。
「だ、だって、ユージン様は私のこと好きでしょ?それに私とユージン様は運命だから…!」
「運命?僕と君が?」
「そ、そう!ヒロインの私と隠しキャラのユージン様!ゲームの世界に入り込んだんだから王道キャラとの攻略じゃなくて、隠しキャラとのゴールは憧れそのものでしょ!?なにより条件が揃ってなくても出会うことが出来たってことは、私とユージンが結ばれるのは運命ってことなのよ!」
アリスはユージンの冷たく差すような視線に怯えつつ、焦ったように言葉を告げたことから、誰にもわからない言葉を次々と吐き出してしまう。
そして「ゲーム?」「隠しキャラ?」と首を傾げたアリエスとエリザベスの姿を見て、初めて自分の失言に気づいたように口を押えた。
「君が何を言っているのかなんて僕にはわからないけど、僕が君に愛を告げることはないし、感じることもないよ。僕が愛を誓う相手はもう決まってるんだから」
ユージンはそう告げるとアリエスに向かって歩きだす。
“え”と目を見開くエリザベスは、顔を真っ赤に染めた友人を振り返った。
実はこの場を設ける前、カリウス、カルン、そしてロジェの三人にアリスの魅了を解くことができる宝石を飲み込ませるという手段が取れなかったことについて、王太子からの命令という形で無理やりにでも飲み込ませることは決まっていたのだが、アリスにはどうやって飲み込ませるべきか悩んでいた。
そんな時、明らかにアリスのユージンに対する反応と三人に対する反応が違うとユージンの話から推測したエリザベスが、ユージンと付き合いたいなら必須なことだと言って飲み込ませてしまえばいい、そして振ればいいのだと、そういう話になっていたのだが、今になってユージンはアリスを誘導することなく、アリエスに愛を囁こうとしていた。
(計画が丸つぶれですわ!!!!)
カルンとロジェは自ら正気に戻りつつあったため、無理やり飲ませるという最終手段を使わなくても済んだが、一番肝心のアリスの対応が出来なければ他の被害者が生まれてしまうことが考えられる。
相手は無差別に異性を虜にする力を持った女なのだ。
学園内の生徒には校章として宝石を身につけさせているが、校章を外してしまえば途端にアリスの餌食になる。
この国の王妃になる者として、混乱が目に見えて起こることは何としても食い止めなければならないと、アリスの口を力づくで開き、無理やりにでも飲み込ませなければいけない展開に覚悟しながら、広げていた扇を勢いをつけて閉じた。
だが、エリザベスの意気込みは気持ちだけで終わることになる。
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