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67 物質の特定
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オロリマーは不思議に思った。
平民でも貴族でも、物を作る職人であるのなら、自分がどんな材料を使って作ったのか、その情報は機密情報ともいえるものだ。
その情報を教えてくれということは、ノウハウを教えてくれと言っているようなものだとオロリマーはまだ未熟だった頃に教えられた。
だから全ての情報は漏らすな。というのが鉄則である。
それなのにも関わらず、オロリマーの前にいる三人の貴族は教えてくれと口にしていた。
だが三人の表情から切羽詰まったような、そんな焦りのようなものが見えると感じる。
きっととても切実な願いなのだろうとオロリマーには思えたのだ。
だからこそ、平民の自分が貴族に対していうべき言葉ではないと理解しながら、オロリマーは口にする。
「あの………、普通は、製造過程について詳しく教えることは出来ないんです。自分の技術を売るようなものなので……。
でも、皆さんのお顔を見ると私の理解力では到底想像できないようなことが起きているのだと、思います……。本音を言えばどんなことが起きているのか知りたいですが……。
私が作ったワイングラスについて、詳細をお伝えさせていただきます!」
そう宣言したオロリマーはまず成分情報を伝えた。
主要材料を始め、デザインに使用した材料、接着するために使用した材料、そして錆びないようにと表面全体を保護するために塗った材料の情報だけでなく、材料の割合、製造過程を細かに、そして何故平民も敬遠しているのか、その理由を含めて全てを話してくれた。
そしてアリエスたちは、初めてセドリックを苦しめた毒となる材料が「トラエル」であることを突き止めたのだ。
「……そんな、中枢神経系の障害を引き起こすなんて……」
アリエスはオロリマーの言葉に絶句した。
そんな危険な成分を使用した物を“プレゼント”しただけでなく、“置物ではなく使用が禁止されている使用法”で使用させていたこと。
しかもワインというアルコール飲料に溶けやすいとわかっていながら、敢えてワインをグラスに注ぎ確実に、そして長期間に摂取させていたことを考えると、今のセドリックがどのような状態であるかも容易に想像でき、そして驚愕したのだ。
ユージンから話を聞いていたとはいえ、まさかそんな危険なものを長い間取り入れられていたとは思ってもいなかった。
アリエスは口元を抑える手を震わせながら俯いた。
「……そのトラエルという成分を体に取り入れた場合、治療は可能なのか?」
シリウスは驚いたが、衝撃的な話を聞いて言葉が出なくなったアリエスとユージンの代わりにオロリマーに尋ねる。
医者ではないオロリマーだが、危険な成分を含む材料を取り扱っている以上、少なからずとも知識は持っているだろうと考えたからだ。
「………、えっと……、私は医者ではないので確実なことは言えませんが……、トラエルは一定量を摂取した後障害を引き起こすといわれています。
ですので治療は体内からの除去、だと思いますが、……トラエルは簡単に体内から排出できるものではありません。
それに尿等の排泄物から自然に出てくれるのなら、ここまで厳しい規制はされていないでしょう」
「では治療は難しいということか?」
「……申し訳ございませんが、私は医師ではございません。治療法は実際に患者を診察したお医者様にお尋ねください」
シリウスの問いかけにオロリマーはそのように返す。
実際に知識を持っていれば答えていたのだろうが、オロリマーは言葉通り医者ではない。
それでもただの平民が貴族の方にこのような返しをしても許されるのかと内心ビクついていたのだが、納得したのかオロリマーは怒り狂わない貴族の方たちの様子を見てほっと安堵する。
だが何故このようなことを尋ねるのか、オロリマーは不思議に思った。
オロリマーは不思議に思った。
平民でも貴族でも、物を作る職人であるのなら、自分がどんな材料を使って作ったのか、その情報は機密情報ともいえるものだ。
その情報を教えてくれということは、ノウハウを教えてくれと言っているようなものだとオロリマーはまだ未熟だった頃に教えられた。
だから全ての情報は漏らすな。というのが鉄則である。
それなのにも関わらず、オロリマーの前にいる三人の貴族は教えてくれと口にしていた。
だが三人の表情から切羽詰まったような、そんな焦りのようなものが見えると感じる。
きっととても切実な願いなのだろうとオロリマーには思えたのだ。
だからこそ、平民の自分が貴族に対していうべき言葉ではないと理解しながら、オロリマーは口にする。
「あの………、普通は、製造過程について詳しく教えることは出来ないんです。自分の技術を売るようなものなので……。
でも、皆さんのお顔を見ると私の理解力では到底想像できないようなことが起きているのだと、思います……。本音を言えばどんなことが起きているのか知りたいですが……。
私が作ったワイングラスについて、詳細をお伝えさせていただきます!」
そう宣言したオロリマーはまず成分情報を伝えた。
主要材料を始め、デザインに使用した材料、接着するために使用した材料、そして錆びないようにと表面全体を保護するために塗った材料の情報だけでなく、材料の割合、製造過程を細かに、そして何故平民も敬遠しているのか、その理由を含めて全てを話してくれた。
そしてアリエスたちは、初めてセドリックを苦しめた毒となる材料が「トラエル」であることを突き止めたのだ。
「……そんな、中枢神経系の障害を引き起こすなんて……」
アリエスはオロリマーの言葉に絶句した。
そんな危険な成分を使用した物を“プレゼント”しただけでなく、“置物ではなく使用が禁止されている使用法”で使用させていたこと。
しかもワインというアルコール飲料に溶けやすいとわかっていながら、敢えてワインをグラスに注ぎ確実に、そして長期間に摂取させていたことを考えると、今のセドリックがどのような状態であるかも容易に想像でき、そして驚愕したのだ。
ユージンから話を聞いていたとはいえ、まさかそんな危険なものを長い間取り入れられていたとは思ってもいなかった。
アリエスは口元を抑える手を震わせながら俯いた。
「……そのトラエルという成分を体に取り入れた場合、治療は可能なのか?」
シリウスは驚いたが、衝撃的な話を聞いて言葉が出なくなったアリエスとユージンの代わりにオロリマーに尋ねる。
医者ではないオロリマーだが、危険な成分を含む材料を取り扱っている以上、少なからずとも知識は持っているだろうと考えたからだ。
「………、えっと……、私は医者ではないので確実なことは言えませんが……、トラエルは一定量を摂取した後障害を引き起こすといわれています。
ですので治療は体内からの除去、だと思いますが、……トラエルは簡単に体内から排出できるものではありません。
それに尿等の排泄物から自然に出てくれるのなら、ここまで厳しい規制はされていないでしょう」
「では治療は難しいということか?」
「……申し訳ございませんが、私は医師ではございません。治療法は実際に患者を診察したお医者様にお尋ねください」
シリウスの問いかけにオロリマーはそのように返す。
実際に知識を持っていれば答えていたのだろうが、オロリマーは言葉通り医者ではない。
それでもただの平民が貴族の方にこのような返しをしても許されるのかと内心ビクついていたのだが、納得したのかオロリマーは怒り狂わない貴族の方たちの様子を見てほっと安堵する。
だが何故このようなことを尋ねるのか、オロリマーは不思議に思った。
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