金眼の復讐

あおくん

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リサとドラゴンはすぐに飛び立った。

マラル国にいたはずのリサがいつの間にかソライル国に着ていたことには驚いたが、ドラゴンがリサを背に乗せ、大きな翼で空を自由に飛ぶことが出来たため、国と国を移動するのはとても簡単なことだった。
ドラゴン龍は空を飛びながらリサに問いかける。

『…あの町だろう?お前をひどい目に合わせたのは』

リサはドラゴンの言葉を聞いて地上をみると確かにリサを焼き殺した町が見える。
リサは苦々しい表情を浮かべると、「うん」と呟いた。

『あの町にも復讐するか?』

リサは考えた末に首を振った。

「………ううん、しない。あの人たちはセザールに騙されただけだから。私がもっとちゃんとあの人たちと交流していれば防げたと思うと、復讐までは考えてないよ。たとえ火炙りにされたとしてもね」

『ならば吾が手をくだしてもいいか?』

「え?う~ん……」

『“どうでもいい”か?』

「あ、うん、それ。その通りだ。“どうでもいい”私にとって彼らは“関係がなかった他人”だから、どうなろうともいいって感じだね」

実際リサの中では町の人たちへの復讐心は全く沸いてこなかった。
憎いと思えるのは自分を裏切ったセザールだけで、それ以外の人たちには何の感情もわいてこない。
それがリサには不思議に思ったが、それでもいいと思った。
自分の言葉で“関係がなかった他人”といった時点で、彼らがどうなろうとも、どうもならなくとも関心を持てなかったからだ。

『ならば好きにさせてもらうぞ』

「うん?」

リサはそう答えながら町を通り過ぎるドラゴンに首を傾げた。
好きにさせてもらう、と言ったからには何かしらするのかと思ったからだ。
そんなリサの考えも聞いているのか、ドラゴンは楽し気に笑いながら話した。

『人間というのは愚かな生き物なのだ。だから直接手をくださなくとも簡単に罰を与えられる方法を取ったんだよ』

「直接しなくてもできる方法って?」

『彼らに力を与えるのさ』

「力?それって手助けをしてるってことじゃないの?」

リサは少し不機嫌になりながら龍に尋ねた。
リサがドラゴンにフランクな態度を取るのはドラゴンが望んだからである。
番に畏まれては悲しいと嘆き、半場泣き落としのように態度を改めさせた。

ドラゴンはリサの質問に笑うと答える。

『人間が意思疎通を図るために使うのは声という空気の振動を利用した現象だ。つまり声を出さない限り、その醜い心のうちは相手には伝わらない。だが力を与え、声という手段以外にも意思を伝える方法を与えてやればどうなると思う?』

「………思いやりのある行動がとれる?」

『そんなことを出来るのはお前だけだ』

「じゃあどうなるの?」

リサの言葉にドラゴンはニヤリと口角をあげると答えた。

『相手を疑いだすのさ』

「疑う?どうして?相手の心の声が聞こえるようになるんでしょ?疑う必要性ないじゃない」

『人は見にくい感情は表には出さず、心の中に留める。それが例え愛する相手に対してもだ。だからこそ今までとの落差が生まれる。そして今までの言動を信じたいという気持ちが生まれ、聞こえてくる心の声すらも信じられなくなる。
加え障害物で遮断される声とは違い、心の声は距離によって伝わるか伝わらないかが変わってくるのだ。つまり、あのように密集した場所で暮らす人間には、休まる時間もなく様々な人間の声が聞こえてくる』

「…それは確かに罰になるかも…」

リサは想像すると嫌な気分になりながらも安心した。
自分の味方のはずのドラゴンが、リサを苦しめた人間に加護のような便利な力を与えたというのだから不安に思っても当然だった。

ドラゴンはリサがどうして漠然と不安な思いを抱いていたのかがわかると、『吾は番を裏切らない』と言葉にした。

「うん、……ってドラゴンさんには私の考えが伝わってるんだったね。疑ってごめんなさい」

『謝る必要はない。番を不安にさせた吾に原因がある』

「……会った時から思ってたんだけど、“番”ってなに?」

リサはドラゴンにふと質問した。
初めて会った時からドラゴンはリサのことを番、もしくはお前、そなたと呼んていた。
お前という言葉はあまり好きではなかったが、ドラゴンと人間では種族自体が異なるためかドラゴンがお前と呼んでも、特に何も思わなかったのだが、番と呼んだ時だけ何故かどういう意味なのか気になってしまったのだ。
リサはこてりと首を傾げた。
そんなリサにドラゴンは激しく動揺する。

『な、なんと番の意味を知らなかったのか…!どうりでなんの反応も伝わってこないと思っていたのだ!』

「それで、なんなの?」

『番というのは対となったオスとメスのことだ。要は夫婦だ。だがドラゴンにおいての番というのは夫婦だけではなく、“運命の相手”という意味で使われている』

「運命?」

『ああ、たった一つだけの魂を持つ者だ。現在の人間にドラゴンはどのように伝わっているのかわからないが、永遠ともいわれるほど長い生をもつドラゴンには繁殖力が低いというデメリットが存在する。その為子をなすために、別の種族の生物が伴侶として生まれた時から決まっているのだ。
そしてドラゴンと共に生きながらえることが出来る強い精神を持つ者が伴侶の条件であり、その条件を持ち、ドラゴンを魅了させた者こそが唯一の番である』

「………つまり、龍に一目ぼれされたら伴侶ってこと?」

『……簡単に言うとそうだな。だが一目惚れという言葉は好かん。ドラゴンは一度魅了されたものには永遠の愛を違うのだ』

リサは突然のドラゴンの言葉にほんのりと頬を赤らませた。
“永遠の愛”という言葉が、本気の言葉のように聞こえたからだ。

「……本当にそうだったらいいのに…」

リサは思わず呟いた。
自分でも意図しないことだったのか、言葉にした自分に驚いたように手で口を覆うとドラゴンに視線を向けた。

(聞こえなかったかな、大丈夫、かな?)

リサの心の声は確実にドラゴンに届いていることは考えればわかることなのだが、リサは思わずドラゴンの反応を確かめてしまう。
そして反応を示さないドラゴンに(よかった、聞こえてないみたい)と安堵すると方から力を抜いた時だった。

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