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3話
しおりを挟むとある物書きが綴ったメロドラマは、この世の中で爆発的に流行していた。
なんでも不思議な現象で時が戻り、人生をやり直すだとか・・・。
失敗から得る経験は沢山ある。
あの時ああしていれば、こうしていれば、そんなたらればだからこそ、過去に戻れば良い方向に向くかもしれない。そんな期待を持ってしまうのだと思う。
もしも過去に戻れるのなら、私はどうするのだろうか。
この男と初めて会った時に、良好な関係を築いておくべきだったのか?
そもそも、何故ウィリアムは私が嫌いなのか原因が分からない。気付いたら奴が取り巻きを囲み、私だけを侮辱し始めていた。
初めこそは事実無根と否定してくれた同僚も居たが、そんな彼等もウィリアムが騙る私の人物像によって、次第に敵と化していったのだ。
兎に角この男からは、私の存在が気に食わないとだけ犇々と伝わってくる。
彼を無視し続けたから、次第に膨張していったのだ。
お互いそれぞれの感情が・・・。
「本来この場はめでたい席でしょうが、お父様がそこまで私達の心配をするものですから暴露しましょう。」
ワイングラスに口を付けて一息つく。隣の男が私のドレスの袖を掴んだが、もう知らない。
「お前っ」
「——私たちにカラダの関係は御座いません。白い関係どころか、この男は私をずっと嫌っていたのです。死ねばいいと・・・ですが、私もやっと決心がつきました。」
心に溜まった黒い塊が、すっと煙を立てながら薄くなる。
ずっと無視してきたこの存在が、私の敵なのだと認めてしまおう。
私が要らぬモノはゴミ箱へ。
「・・・そんなに私の事が嫌いなら、喜んで離婚してさしあげましょう。」
今までに浮かべた笑みの中で最高潮に頬が吊り上がっていたに違いない。そもそも笑ったことが殆ど無い。
そんな私を最高に笑わせてくれたこの男には感謝しなくてはな。
掴まれた場所を払い除けて席を立つ。
目の前で顔を真っ赤に染めた両親が、何かを怒鳴っていた気がするが、私の耳には届かない。
もう疲れたのだ・・・何もかも。
この場から退場する際に、私を追いかけようとしてきた夫に向かって、今し方外した指輪を投げつけた。
それは見事に奴の眉間に当たると跳ね返り、甥っ子の居る乳母車へと入っていった。
直ぐに反応を示した兄夫婦が赤子をあやしに行き、私はその場を後にする。
夫が直ぐに追いかけてきたが、次はうんと冷めた口調で諭すのだ。
「待て!レミリア、貴様こんな事が許されると・・・」
「お前みたいなクソ野郎は、こっちもお断りだ。」
親指を立て握り拳を作り、その飛び出た指先で首を裂くする動作を繰り広げた。
この国で離婚するということは珍しく難しい。特に貴族間は・・・片方の意思だけでは認められない。
ほら、これを望んでいたのだろう?
最後に叶えてやるわよ。
嬉しいでしょ?笑いなさいよ。
去り際に見えたウィリアムの目が虚ろに見えた気がした。
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