愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜

あさとよる

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5話

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もうあれから何年経ったのだろうか。気付けば激務に追われ、逃げきれなかった貴族の責務を被り、愛の無い結婚を終わらせた。そんな怒涛な日々が忙しなく過ぎていき、すっかり忘れていたのだ。


「なんだ、知人にそっくりな美女が居たから、つい声を掛けてしまったが、まさか本当に君だとは、」

そう軟派紛いな台詞を述べたのは、私と同様だが、ここにはかなり不釣り合いなお忍び感を漂わせた高貴な男。

まさかその男、『エレノア』とこんな場所で再会するだなんて・・・。


「あら、美女だなんて・・・貴方がそんな台詞を言えるようになるなんてね、成長かしら?ふふ・・・久しぶりね、ノア。」

「嗚呼、久しぶりだな。レミ。」

互いを愛称で呼び合う私たちは、かつて同じ学舎で勉学に励んだ友である。

彼と会うのは卒業依頼だが、風の噂で彼のことは色々耳には入って来てた。

「なぜ公爵様がこんな郊外をほっつき歩いているのかしら?」

「ダメだよレミ。今僕はお忍びでここに居るのだから、公爵だなんて呼ばないでくれ。」

「・・・ふふ。そうね。で、なんで?」


彼は私が結婚する少し前に、前公爵(両親)から爵位を継ぎ、その容姿と人当たりの良さ、それに未婚なことから、ご令嬢たちの標的にされていた筈だ。

エレノアがモテるのは、昔から変わらぬ事だが・・・「ちょっと息抜きにね」彼の表情は、ここ数年の内に大人の色気が増したにしても、随分と痩けたようにも見える。きっと激務な上に、貴族の婚活社交界やらで大変なのだろう。


「それよりレミこそ、なんでこんな所に?・・・結婚したと聞いたが?もしかして旦那も居るのか?」


辺りをきょろきょろしだしたノアに、私は笑ってしまった。既婚女性を軟派するのは御法度なのだ。

すると、ノアの表情が強張った。だが視界が霞んで・・・気付いた時には、彼が私に合わせて屈んで、指先で目元を拭われていた。


「なんで泣いてるの?」

「あら、私ったら、やだ・・・。」


久々に友人に会えたから嬉しくて泣いてしまったのだろうか?緊張の系が切れた?



「おいおい、こんなところでお熱いね~」

忘れていたが、ここは道のど真ん中である。丁度通り掛かった酔っ払いの通行人に冷やかされて、吃驚して色々引っ込んでしまった。


だがノアは、そんな私を無視して手を引いて歩きだしたのだ。

力強く引かれて、路地裏へと連れ込まれていく。

「ちょっと、どこ行くの!?」

「———旦那と喧嘩したんだろ?お前のことを泣かすなんてよっぽどの事だ。」


荒々しく怒り口調なノアに、今度は面白くなって笑い声をあげてしまっていた。


「待ってノア。違うのよ!私離婚したの!」


「・・・は!?離婚!?」


こんなに本気で吃驚している彼なんて初めて見た。


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