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しおりを挟むもうあれから何年経ったのだろうか。気付けば激務に追われ、逃げきれなかった貴族の責務を被り、愛の無い結婚を終わらせた。そんな怒涛な日々が忙しなく過ぎていき、すっかり忘れていたのだ。
「なんだ、知人にそっくりな美女が居たから、つい声を掛けてしまったが、まさか本当に君だとは、」
そう軟派紛いな台詞を述べたのは、私と同様だが、ここにはかなり不釣り合いなお忍び感を漂わせた高貴な男。
まさかその男、『エレノア』とこんな場所で再会するだなんて・・・。
「あら、美女だなんて・・・貴方がそんな台詞を言えるようになるなんてね、成長かしら?ふふ・・・久しぶりね、ノア。」
「嗚呼、久しぶりだな。レミ。」
互いを愛称で呼び合う私たちは、かつて同じ学舎で勉学に励んだ友である。
彼と会うのは卒業依頼だが、風の噂で彼のことは色々耳には入って来てた。
「なぜ公爵様がこんな郊外をほっつき歩いているのかしら?」
「ダメだよレミ。今僕はお忍びでここに居るのだから、公爵だなんて呼ばないでくれ。」
「・・・ふふ。そうね。で、なんで?」
彼は私が結婚する少し前に、前公爵(両親)から爵位を継ぎ、その容姿と人当たりの良さ、それに未婚なことから、ご令嬢たちの標的にされていた筈だ。
エレノアがモテるのは、昔から変わらぬ事だが・・・「ちょっと息抜きにね」彼の表情は、ここ数年の内に大人の色気が増したにしても、随分と痩けたようにも見える。きっと激務な上に、貴族の婚活社交界やらで大変なのだろう。
「それよりレミこそ、なんでこんな所に?・・・結婚したと聞いたが?もしかして旦那も居るのか?」
辺りをきょろきょろしだしたノアに、私は笑ってしまった。既婚女性を軟派するのは御法度なのだ。
すると、ノアの表情が強張った。だが視界が霞んで・・・気付いた時には、彼が私に合わせて屈んで、指先で目元を拭われていた。
「なんで泣いてるの?」
「あら、私ったら、やだ・・・。」
久々に友人に会えたから嬉しくて泣いてしまったのだろうか?緊張の系が切れた?
「おいおい、こんなところでお熱いね~」
忘れていたが、ここは道のど真ん中である。丁度通り掛かった酔っ払いの通行人に冷やかされて、吃驚して色々引っ込んでしまった。
だがノアは、そんな私を無視して手を引いて歩きだしたのだ。
力強く引かれて、路地裏へと連れ込まれていく。
「ちょっと、どこ行くの!?」
「———旦那と喧嘩したんだろ?お前のことを泣かすなんてよっぽどの事だ。」
荒々しく怒り口調なノアに、今度は面白くなって笑い声をあげてしまっていた。
「待ってノア。違うのよ!私離婚したの!」
「・・・は!?離婚!?」
こんなに本気で吃驚している彼なんて初めて見た。
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