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一条さん、結婚しちゃいました。
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しおりを挟む転校先の小学校は、前の学校よりも生徒数が多く、そして六年生の夏休み明けというタイミングで、やって来た私にはアウェイな環境だった。
クラスには、一人だけ小学生離れした容姿の男の子が居て、その子の隣の席へと座れば、周囲からの視線が痛く感じ得る。
誰がどうみたって、モテる要素が詰まった王子様みたいな男。
それが彼、一条 美郷だった。
波風を立てぬ様、私は大人しく“この男に興味はない”のだと教室内の空気に化ける。それは前の学校と何ら変わり映えしない私の立ち位置。
流石に隣の席だから、仕方なしに挨拶をしてきた一条だったが、あろうことか矢鱈と私に接触してくる様になった。
ある日の授業で、二人一組でしなければならない課題が出された際、クラスの人数は偶数だから、余る事はないだろうと、クラス中が一条を争奪戦を繰り広げる最中、私はといえば、早く同じ溢れ者が出てこないかな?と待つばかりだった
だがしかし隣の一条が、何故か私と組みたいと申し出て、更には爆弾発言を投下したのだった。
『いや、俺は花ちゃんがいいな~。』
『だって俺、花ちゃん好きだし....』
それからと言うもの、しつこく迫ってくる様になった一条。
その一方で、容赦なく浴びせられる罵倒の数々。
全てが面倒だった。この男が私に気を掛ければ、友達の居ない二条さんを可哀想に思っているだけ。自惚れたらだめ。
皆の王子様一条 美郷は、可哀想な二条 花を放っておけない優しい人。その優しさに甘えてしまえば、自分がもっと惨めな気持ちになるのだと勘付いてしまう。
話しかけられても無視し、必要最低限の会話で済まそうと思っても、そこから脱線した会話を繰り広げようものならば、冷たく遇らう。
逃げても逃げても、振り返れば私の真後ろに居て、隠れて身を縮こませ息を潜めてやり過ごそうとも、油断した瞬間には、もう既に私の側に居る。
「花ちゃん。付き合って、」
「嫌だ。」
「聴こえな~い。」
「ウソ吐くな。」
どうして私なの?と何度思っただろうか。
ほら、あの可愛い子が居るじゃない。あっちの美人も....。
地味で根暗、不細工な私。キラキラのオーラを放つ王子様には不釣り合い。
それなのに....。
「花ちゃんってば、今日も可愛い。」
全部冗談だと言ってくれれば、それでいいのだ。
私は、暇つぶしの玩具だったのだと....そう思っていたかった。
直ぐに飽きて、私から離れてくれれば、こんなに苦しい想いをせずに済む。
家族以外で唯一、私の下の名前を呼ぶのは、後にも先にもあの男だけ。
「―――――花ちゃん....どうして、ここに....。」
それから何年も後、私は根負けし折れた。いつかは誰かと結婚したいなと想い描いていたが、まさかこの男の妻になるなんて、過去の私は思いもしないだろう。
旦那の勤め先へとやって来た私は、問題の社長さんとやらに話を付けるべく、勇気を振り絞りこの場所まで辿り着いた。
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