一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる

文字の大きさ
17 / 65
いいえ。妻命ですけど?

しおりを挟む


 転校生が来たというのに、周囲の意識は直ぐに別へと移りゆく。



 夏休み何してた?だとか、宿題が終わってないと焦りながらも笑い飛ばす騒がしさ。


 小さな体がゆっくりと音を立てずに、美郷の横に辿り着けば、荷物を掛けて席に着く。


「はじめまして、二条....花さん?」


 座高が二倍近くはあろうところから見下ろせば、花の小ささはより一層際立つ。


 担任の背を優に越した美郷少年。彼が声を掛けてみれば、ピクリとその小さな肩が震え上がった。


 
「....。」

「俺は一条 美郷。宜しくね?」


 こっちなど一切見る気配の無い花だが、話は聴こえているらしく、頭が下げられた。



「一条くん!夏休み海外に旅行行ってたんでしょ⁉︎」

「一条くん....」


 クラスいちのイケメン、一条 美郷少年の周りには、瞬く間に女の子達が群がり始めた。



 ピンクに水色、目がチカチカする配色の派手な子供服。

 それらに目が眩む。地味な黒がそれらに遮られ見えなくなってしまった。








 




「一条くんと二条さんって、正反対よね。」


 クラスに溶け込もうとしない花。彼女の声は、授業中に当てられた時に回答する際発せられる。

 人気者の一条の隣には、空気に程近い二条。


 もしも花が絶世の美少女とかだったならば、美郷を好きな女の子たちが嫉妬してたに違いないだろう。


「名字似てるのにね~。二番目?いやいや~、なんなら十条とかの方が合ってるんじゃない?」


 自分等もそこまで可愛くないのに、花に向けられる心無い見下しの台詞に、美郷は幻滅していた。


 初めから自分に向けられる好意に興味が湧かなかったが、今じゃ彼女等に対して"最低だな"と思ってしまう。


 花の耳に入っているだろうに、隣の彼女は何も言い返さず、他人から隔てる様に、自分の世界に居た。


 読書中は背筋が良い。小学生には難しそうなタイトルの小説を読んでいる。


 細くて綺麗な指先がページを捲る。



「二条さん何読んでるの?」


「....え、」


 彼女と目線を合わせる様に伏せた美郷は、頭を花へと向ける。


 前髪の下に隠れていた円な瞳が見えると、それが動揺し何度も瞬きを繰り返している事に気付く。



「読書の邪魔してごめんね。」



 怖がらせるとか、吃驚させたかった訳じゃ無い。


 ただ....この子がどんな子なのかと興味を抱いただけ。

 
 他のクラスメイトとは違う落ち着いた雰囲気、自分の容姿に一切靡かない存在。


 目の前で悪口を言われても動じず、気配を消そうとする佇まい。



「うぅん....大丈夫。」


 か細く可愛らしいひな鳥の様な囁きが、美郷の耳を擽った。



 嫌な気がしない、寧ろ落ち着いていて安らげるひと時。



「花ちゃんって呼んでもいい?」

「それは無理....。」

「え、なんで?」

「....恥ずかしいから。」



 他の誰も興味を示さなかった二条 花。

 常に隠された彼女の顔色が、少し赤く染め上がると、自分だけが彼女の可愛らしさを知ってしまったのだと、嬉しく思い、心臓がぎゅっと握り潰される様な感覚に陥る。



 

(....初恋はきっとこの瞬間だったんだ。)


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

会長にコーヒーを☕

シナモン
恋愛
やっと巡ってきた運。晴れて正社員となった私のお仕事は・・会長のお茶汲み? **タイトル変更 旧密室の恋**

なぜ私?スパダリCEOに捕獲され推しの秘書になりました

あいすらん
恋愛
落ち込んでいた私が見つけた最高の趣味。 それは完璧スパダリCEOの「声」を集めること。 動画サイトで最高のイケボを見つけた私、倉田ひかりは、声を録音するためだけに烏丸商事の会社説明会へ。 失業中の元ピアノ講師には、お金のかからない最高のレクリエーションだったのに。 「君、採用」 え、なんで!? そんなつもりじゃなかったと逃げ出したのに、運命は再び私と彼を引き合わせる。 気づけば私は、推しの秘書に。 時短の鬼CEO×寄り道大好き迷子女。 正反対な2人が繰り広げる、イケボに溺れるドタバタラブコメ!

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!

まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。 人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい! そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。 そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。 ☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。 ☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。 ☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。 ☆書き上げています。 その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。

32歳、恋愛未経験の私に彼氏ができました。お相手は次期社長で完璧王子なのに、なぜか可愛い。

さくしゃ
恋愛
32歳、恋愛未経験の私に彼氏ができました。お相手は次期社長で完璧王子なのに、なぜか可愛い。 「甘酒って甘くないんだ!」 ピュアで、 「さ、さお…ふしゅうう」 私の名前を呼ぼうとして呼べなくて。 だけど、 「し、しゅ…ふしゅうう」 それは私も同じで。 不器用な2人による優しい恋愛物語。 果たして私たちは 「さ…ふしゅぅぅ」 下の名前で呼び合えるのでしょうか?

田舎の元騎士団長はどタイプメイドに振り回される

れおぽん
恋愛
*思った以上に読んでいただけているようですので続編を考えております。 もしも読んでもいいよと思われる方がいらっしゃれば感想など投稿していただけますと励みになります。 妻を亡くし、隠居生活を送る元・剣聖アルベルト。 荒れ果てた屋敷の管理と、自身の理性(!)を守るために雇ったのは、感情を見せない少女ノアだった。 「動きやすければ私服で」と言ったのが運の尽き。彼女の無防備な姿がド直球に性癖に刺さり、アルベルトの理性は決壊寸前に。 解決策として支給したのは、肌を一切見せない鉄壁の【対魔導防護仕様・重装メイド服】。 これで安心……と思いきや、禁欲的なその姿は、逆に彼の心をかき乱すことになり――!? 過去に傷を持つ二人が、季節を巡りながら「雇用関係」を「家族」へと変えていく物語。 ボロボロのマフラーを直す冬、ブラックな元職場を撃退する春、そして命懸けで帰る場所を守る決戦。 「……待たされる人の心配を、考えたことがありますか」 これは、鉄壁のメイドが心を開き、枯れた剣聖が生きる意味を取り戻すまでの、愛と再生の記録。

完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます

星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。 家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。 ……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。 “天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、 そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。 これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、 いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。 (毎日21:50更新ー全8話)

処理中です...