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第三章 ローザ・ファルベン召喚魔法祭編
第16話 おいら禁止令! ロジャー監督そりゃないよ!
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はるか遠くに存在する人間界、その名もヴィスタリア。召喚獣の住まう聖星界アスタリア。それぞれ共存する世界は美しく、人々と聖獣たちの賑やかな世界だ。
そんなヴィスタリアに住まう少女ステラ。12歳のステラは、病気で部屋から一歩も出たことが無かった。そんなステラの病を治したのは、自ら現れた召喚獣ブルーであった。
これはそんな二人が織りなす、勇気と友情、そして成長の物語。
◇◇◇
ローザ・ファルベンの町にある学園、月の光が由来のモントシャイン学園は、由緒正しき伝統校だ。学園の生徒であるロジャーは、今まで以上に意気込んでいた。
「だから、『おいら』じゃないっていっただろ! そこは、『僕』だ!」
監督に名乗り出たロジャーは、主役の竜役ブルーの演技指導をしていた。ブルーは何度も『僕』の部分を『おいら』と言ってしまったり、無駄に火を吹いたりしてロジャーを困らせていた。
「おい、ステラ! なんとかしろよ」
「おいらじゃダメなんですか? 脚本を書いてくれた、ミミィちゃん」
「私は別においらでもいいと思うけど……」
「いーや、ここは脚本通りでいこう!」
ロジャーはメガホンと呼ばれる、とんがり帽子のような見た目の道具を使って、更に大きな声で言った。ミミィが使役している召喚獣、レミィが呆れたように溜息をついた。
「おいら、癖でおいらになっちゃうよ」
「じゃあしばらくブルーは、僕っていう練習だな。おいら禁止!」
「ええ~」
「ええーじゃない! いいか、おいら禁止令だ!」
ロジャーはそういうと、ブルーにメガホンを向けた。
「それから、勢いあまって、ブレスで火を出さないこと! セットや衣装が燃えて困るのは、ステラたちなんだぞ!」
「ううー」
ブルーは隅っこで「僕、僕、僕……」とつぶやきながら、差し入れにもらったおやつのクッキーをほおばった。
「あ、ブルー! また全部食べないでくださいよ!」
慌ててロジャーの使役している召喚獣で、ヘビ型のワッツがクッキーをほおばった。この調子で、お芝居の練習は進んでいない。授業の5時間目だけが練習時間に割り当てられているため、ゆっくりしている余裕はなかった。
「そういや、聖女役はどこいった?」
「ランなら、セリフを覚えに別室にいってますけど」
聖女役は妖精型の召喚獣ランだ。ランを使役しているのは、お芝居がやりたいと言い出したセレーネだ。セレーネは妖精のように可愛らしく、金髪碧眼で文字通りのお嬢様である。
「ブルーは『僕の特訓』だから、ランの演技を先にやろう。呼んでくれるか?」
「わかったわ。ちょっと待っててね」
セレーネはそういうと、別室へ向かった。そしてすぐに戻ってくると、傍らにはふわふわと浮いている召喚獣ランがいた。ランは不安そうにセレーネを見上げた。
「セレーネ様、私なんかが主役なんてしていいんでしょうか」
「どうしてそんなことをいうの? ランが一番可愛いんだから、ランが主役をやるに決まってるじゃない」
「私、演技なんてできません」
それを聞いたセレーネは、顔を真っ赤にして怒ってしまった。
「なんでよ! ランに主役をやってほしいから、お芝居がしたいって言ったのに! どうして言うことを聞いてくれないの? 私は主人なのよ?」
セレーネは更にランを叱ってみせた。ランは目に涙を浮かべてしまった。
その様子をローカから見ていたステラは、一歩歩み出た。
勇気の魔法が必要な時だ。
「セレーネさん」
「なによ」
「みんな楽しくお芝居したいと思っています」
「ええ、私もそうよ」
「でも」
ステラはランを手の上に座らせると、頭をゆっくりと指でなでた。
「ランさんは楽しくなさそうです。なぜだと思いますか?もっとお互いで話し合って、距離を縮めながら、楽しくやりませんか?」
「何よ、生意気ね! ランは私の召喚獣なんだから、私の言うことを聞いていたらいいのよ!」
その言葉に、ロジャーが反論した。
「そいつは違う。召喚獣との絆が、召喚魔法につながるんだって授業で習っただろ。セレーネはランのこと、何も考えてないじゃないか」
「ロジャーだって、前までそうだったじゃない。なによ、あなたまでステラの影響?」
「俺は間違ってた。ワッツとはずっと仲良しでいたいんだ」
「ロジャー様……!」
ワッツはとぐろをまくと、ロジャーの足に絡みついた。ロジャーは嬉しそうにワッツを撫でた。
「ほらな。召喚獣だって、生きてるんだよ」
「うるさい! 皆してなんなの! ……放っておいて!」
「セレーネ様!」
セレーネは泣きながら教室を後にしてしまった。追いかけようとしたステラを、ロジャーが呼び止めた。
「待て、ステラ」
「で、でも……」
「自分で気付いた方が、自分のためってこともある。あいつも頭が冷えたらわかるよ」
「うん……」
次の日から、セレーネもランも5時間目を欠席するようになった。お芝居の練習はどうなってしまうのでしょうか。
―次回、くいしんぼうなイケメンがセレーネたちを救う⁉―
そんなヴィスタリアに住まう少女ステラ。12歳のステラは、病気で部屋から一歩も出たことが無かった。そんなステラの病を治したのは、自ら現れた召喚獣ブルーであった。
これはそんな二人が織りなす、勇気と友情、そして成長の物語。
◇◇◇
ローザ・ファルベンの町にある学園、月の光が由来のモントシャイン学園は、由緒正しき伝統校だ。学園の生徒であるロジャーは、今まで以上に意気込んでいた。
「だから、『おいら』じゃないっていっただろ! そこは、『僕』だ!」
監督に名乗り出たロジャーは、主役の竜役ブルーの演技指導をしていた。ブルーは何度も『僕』の部分を『おいら』と言ってしまったり、無駄に火を吹いたりしてロジャーを困らせていた。
「おい、ステラ! なんとかしろよ」
「おいらじゃダメなんですか? 脚本を書いてくれた、ミミィちゃん」
「私は別においらでもいいと思うけど……」
「いーや、ここは脚本通りでいこう!」
ロジャーはメガホンと呼ばれる、とんがり帽子のような見た目の道具を使って、更に大きな声で言った。ミミィが使役している召喚獣、レミィが呆れたように溜息をついた。
「おいら、癖でおいらになっちゃうよ」
「じゃあしばらくブルーは、僕っていう練習だな。おいら禁止!」
「ええ~」
「ええーじゃない! いいか、おいら禁止令だ!」
ロジャーはそういうと、ブルーにメガホンを向けた。
「それから、勢いあまって、ブレスで火を出さないこと! セットや衣装が燃えて困るのは、ステラたちなんだぞ!」
「ううー」
ブルーは隅っこで「僕、僕、僕……」とつぶやきながら、差し入れにもらったおやつのクッキーをほおばった。
「あ、ブルー! また全部食べないでくださいよ!」
慌ててロジャーの使役している召喚獣で、ヘビ型のワッツがクッキーをほおばった。この調子で、お芝居の練習は進んでいない。授業の5時間目だけが練習時間に割り当てられているため、ゆっくりしている余裕はなかった。
「そういや、聖女役はどこいった?」
「ランなら、セリフを覚えに別室にいってますけど」
聖女役は妖精型の召喚獣ランだ。ランを使役しているのは、お芝居がやりたいと言い出したセレーネだ。セレーネは妖精のように可愛らしく、金髪碧眼で文字通りのお嬢様である。
「ブルーは『僕の特訓』だから、ランの演技を先にやろう。呼んでくれるか?」
「わかったわ。ちょっと待っててね」
セレーネはそういうと、別室へ向かった。そしてすぐに戻ってくると、傍らにはふわふわと浮いている召喚獣ランがいた。ランは不安そうにセレーネを見上げた。
「セレーネ様、私なんかが主役なんてしていいんでしょうか」
「どうしてそんなことをいうの? ランが一番可愛いんだから、ランが主役をやるに決まってるじゃない」
「私、演技なんてできません」
それを聞いたセレーネは、顔を真っ赤にして怒ってしまった。
「なんでよ! ランに主役をやってほしいから、お芝居がしたいって言ったのに! どうして言うことを聞いてくれないの? 私は主人なのよ?」
セレーネは更にランを叱ってみせた。ランは目に涙を浮かべてしまった。
その様子をローカから見ていたステラは、一歩歩み出た。
勇気の魔法が必要な時だ。
「セレーネさん」
「なによ」
「みんな楽しくお芝居したいと思っています」
「ええ、私もそうよ」
「でも」
ステラはランを手の上に座らせると、頭をゆっくりと指でなでた。
「ランさんは楽しくなさそうです。なぜだと思いますか?もっとお互いで話し合って、距離を縮めながら、楽しくやりませんか?」
「何よ、生意気ね! ランは私の召喚獣なんだから、私の言うことを聞いていたらいいのよ!」
その言葉に、ロジャーが反論した。
「そいつは違う。召喚獣との絆が、召喚魔法につながるんだって授業で習っただろ。セレーネはランのこと、何も考えてないじゃないか」
「ロジャーだって、前までそうだったじゃない。なによ、あなたまでステラの影響?」
「俺は間違ってた。ワッツとはずっと仲良しでいたいんだ」
「ロジャー様……!」
ワッツはとぐろをまくと、ロジャーの足に絡みついた。ロジャーは嬉しそうにワッツを撫でた。
「ほらな。召喚獣だって、生きてるんだよ」
「うるさい! 皆してなんなの! ……放っておいて!」
「セレーネ様!」
セレーネは泣きながら教室を後にしてしまった。追いかけようとしたステラを、ロジャーが呼び止めた。
「待て、ステラ」
「で、でも……」
「自分で気付いた方が、自分のためってこともある。あいつも頭が冷えたらわかるよ」
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次の日から、セレーネもランも5時間目を欠席するようになった。お芝居の練習はどうなってしまうのでしょうか。
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