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第三章 ローザ・ファルベン召喚魔法祭編
第18話 特訓の成果をみせてやるぜー!
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※ルビ振りが多く読みにくいとのお声をいただき、ルビを必要最低限まで抑えました。問題があればお知らせください。
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使役されたい竜型の召喚獣ブルー。ルビーの瞳と青いもこもこのウロコを持つ。そんなブルーが仕えているのは、ふわふわの金髪が可愛らしいステラだ。ステラは二つのツインテールを作ると、寮を後にした。リボンは故郷の友達、アーミアからの贈り物だ。
食堂で朝食を終えると、ブルーは満足げに大きなお腹を撫でていた。
「ステラ! 今日のお芝居の練習、おいらの活躍を見てくれよな!」
「わかりました!」
「ステラのためにがんばったんだぜ!」
「ありがとうございます」
「……ステラはトモダチだからな! トモダチのためにがんばるのは当たり前なんだぜ!」
ブルーは得意げにしながら、羽をばたつかせた。ステラは嬉しそうにほほえむと、教室へ入っていった。教室には生徒が半数近くおり、各々授業の準備に取り掛かっている。
ステラの隣の席はミミィだ。猫型の召喚獣レミィを使役している。お芝居の台本をかき上げたのはミミィであり、最終チェックをしたのはレミィだという。
「おはようございます、ミミィさん、レミィさん」
「おはよう! ステラちゃんにブルー。お芝居の練習は出来た?」
「バッチリなんだぜ!」
元気よく返事をしたブルーだったが、周りの生徒の視線はひややかだ。それもそのはず、最近のお芝居の練習はほとんど練習にはならなかったのだ。原因の一つは、お芝居『聖女と竜』の聖女役で妖精型召喚獣のランだ。ランを使役しているセレーネは金髪碧眼の美少女だが、お金持ちゆえプライドが高く、わがままだった。セレーネは5時間目の練習の時間になると、教室を出て行ってしまったのだ。召喚獣のランも、セレーネに付き添うため、主役のいない練習ばかりになっていた。
この日も授業を終え、5時間目に差し掛かったとき。セレーネは教科書をカバンにしまうと、席を立った。慌てて駆け寄るステラだった。
「セレーネさん、ランさん」
「何ですか」
「お芝居の練習をしませんか?」
「…………」
セレーネは無言でステラをにらみつけたが、溜息をつくとカバンを机にドンと置き、椅子に座りなおした。ふてくされたような表情を浮かべているものの、お芝居の練習に参加してくれるだけで、ステラは嬉しかった。ランもホッと一息つくと、台本を片手にブルーの方へ寄ってきた。
「ブルーさん、よろしくお願いします」
「よろしくな! ラン!」
「……ラン」
セレーネの呼びかけに、慌てて振り返ったランは驚いた。セレーネは両手でガッツポーズを作っていたのだ。照れくさいような表情を浮かべながら、口元をゆるませている。
「ランなら出来るって信じてるから!」
「セレーネさま……! ありがとうございます。がんばります」
そんなセレーネの様子に、サボっていた生徒たちもお芝居の練習に加わった。全員がそろったのだ。監督であるロジャーは嬉しそうに、メガホンを叩いた。
「よしじゃあ、練習を始めよう!」
◇◇◇
それから2週間。ついにローザファルベン召喚魔法祭が始まった。ローザファルベンの町はバラをかたちどったオブジェであふれ、モントシャイン学園では自慢のバラ庭園が市民に開放された。
学園ではさまざまな出し物が行われており、町の人々や生徒でにぎわっていた。
「ステラちゃん、時間まで露店を見に行かない? アイスクリーム屋さんにいきたいの」
「もちろんです! ミミィさん」
ステラとミミィは一緒にアイスクリーム屋の露店に出向くと、それぞれアイスを注文した。ステラはストロベリーのアイスを選び、ミミィはチョコミントのアイスを頼んだ。ステラは思い出したかのように笑いながら、追加でブルー用のアイスを追加で注文した。
「しゅわしゅわソーダのアイスをください」
「ブルーは一個で足りるかな?」
「うーんでも、本番前ですから」
この後13時から、お芝居『聖女と竜』が始まる。お昼ご飯を早めに食べなくてはならないのだ。ステラたちはアイスを受け取ると、教室へ戻っていった。教室では緊張した面持ちのブル―が待っていた。
「あ、ステラ!」
「ブルー、はいこれ。差し入れです」
「さすがステラだぜ!」
ブルーは嬉しそうにソーダのアイスに食らいついたものの数秒でアイスを平らげると、舌で口の周りを舐めた。
「うまま! アイスってうまいんだな」
「そうですね、私もアイスは好きです」
「さっき、ランがレモンのアイスを差し入れにもらってた。羨ましいなあと思ってみてたんだ」
「あら、そうだったのですね」
ブルーの言葉に、ほほを赤らめたのはセレーネだ。セレーネは台本とにらめっこしているランを見つめると、一声かけた。ランは台本から目を離すと、セレーネの前へ飛んで向かった。
「ラン」
「セレーネさま、どうされました?」
「緊張している?」
「はい、とっても」
「……大丈夫よ。ランならできるわ。私がついているのですから」
「はい!」
ランは嬉しそうに微笑むと、衣装のかかっている小さなハンガーを手に取った。妖精サイズの小さなドレスは、ステラお手製だ。ステラは魔法で針と糸を使って、バラの刺繍を描いた。
「衣装、素敵ですよね」
「そうね。ランなら絶対似合うわ」
「はい!」
お昼を食べたら、すぐに着替えてお芝居がはじまる。召喚士である生徒も、召喚獣も、緊張した面持ちでお昼休みを迎えた。
―ついに始まった、ローザファルベン召喚魔法祭。お芝居はうまくいくかな? つづく!―
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使役されたい竜型の召喚獣ブルー。ルビーの瞳と青いもこもこのウロコを持つ。そんなブルーが仕えているのは、ふわふわの金髪が可愛らしいステラだ。ステラは二つのツインテールを作ると、寮を後にした。リボンは故郷の友達、アーミアからの贈り物だ。
食堂で朝食を終えると、ブルーは満足げに大きなお腹を撫でていた。
「ステラ! 今日のお芝居の練習、おいらの活躍を見てくれよな!」
「わかりました!」
「ステラのためにがんばったんだぜ!」
「ありがとうございます」
「……ステラはトモダチだからな! トモダチのためにがんばるのは当たり前なんだぜ!」
ブルーは得意げにしながら、羽をばたつかせた。ステラは嬉しそうにほほえむと、教室へ入っていった。教室には生徒が半数近くおり、各々授業の準備に取り掛かっている。
ステラの隣の席はミミィだ。猫型の召喚獣レミィを使役している。お芝居の台本をかき上げたのはミミィであり、最終チェックをしたのはレミィだという。
「おはようございます、ミミィさん、レミィさん」
「おはよう! ステラちゃんにブルー。お芝居の練習は出来た?」
「バッチリなんだぜ!」
元気よく返事をしたブルーだったが、周りの生徒の視線はひややかだ。それもそのはず、最近のお芝居の練習はほとんど練習にはならなかったのだ。原因の一つは、お芝居『聖女と竜』の聖女役で妖精型召喚獣のランだ。ランを使役しているセレーネは金髪碧眼の美少女だが、お金持ちゆえプライドが高く、わがままだった。セレーネは5時間目の練習の時間になると、教室を出て行ってしまったのだ。召喚獣のランも、セレーネに付き添うため、主役のいない練習ばかりになっていた。
この日も授業を終え、5時間目に差し掛かったとき。セレーネは教科書をカバンにしまうと、席を立った。慌てて駆け寄るステラだった。
「セレーネさん、ランさん」
「何ですか」
「お芝居の練習をしませんか?」
「…………」
セレーネは無言でステラをにらみつけたが、溜息をつくとカバンを机にドンと置き、椅子に座りなおした。ふてくされたような表情を浮かべているものの、お芝居の練習に参加してくれるだけで、ステラは嬉しかった。ランもホッと一息つくと、台本を片手にブルーの方へ寄ってきた。
「ブルーさん、よろしくお願いします」
「よろしくな! ラン!」
「……ラン」
セレーネの呼びかけに、慌てて振り返ったランは驚いた。セレーネは両手でガッツポーズを作っていたのだ。照れくさいような表情を浮かべながら、口元をゆるませている。
「ランなら出来るって信じてるから!」
「セレーネさま……! ありがとうございます。がんばります」
そんなセレーネの様子に、サボっていた生徒たちもお芝居の練習に加わった。全員がそろったのだ。監督であるロジャーは嬉しそうに、メガホンを叩いた。
「よしじゃあ、練習を始めよう!」
◇◇◇
それから2週間。ついにローザファルベン召喚魔法祭が始まった。ローザファルベンの町はバラをかたちどったオブジェであふれ、モントシャイン学園では自慢のバラ庭園が市民に開放された。
学園ではさまざまな出し物が行われており、町の人々や生徒でにぎわっていた。
「ステラちゃん、時間まで露店を見に行かない? アイスクリーム屋さんにいきたいの」
「もちろんです! ミミィさん」
ステラとミミィは一緒にアイスクリーム屋の露店に出向くと、それぞれアイスを注文した。ステラはストロベリーのアイスを選び、ミミィはチョコミントのアイスを頼んだ。ステラは思い出したかのように笑いながら、追加でブルー用のアイスを追加で注文した。
「しゅわしゅわソーダのアイスをください」
「ブルーは一個で足りるかな?」
「うーんでも、本番前ですから」
この後13時から、お芝居『聖女と竜』が始まる。お昼ご飯を早めに食べなくてはならないのだ。ステラたちはアイスを受け取ると、教室へ戻っていった。教室では緊張した面持ちのブル―が待っていた。
「あ、ステラ!」
「ブルー、はいこれ。差し入れです」
「さすがステラだぜ!」
ブルーは嬉しそうにソーダのアイスに食らいついたものの数秒でアイスを平らげると、舌で口の周りを舐めた。
「うまま! アイスってうまいんだな」
「そうですね、私もアイスは好きです」
「さっき、ランがレモンのアイスを差し入れにもらってた。羨ましいなあと思ってみてたんだ」
「あら、そうだったのですね」
ブルーの言葉に、ほほを赤らめたのはセレーネだ。セレーネは台本とにらめっこしているランを見つめると、一声かけた。ランは台本から目を離すと、セレーネの前へ飛んで向かった。
「ラン」
「セレーネさま、どうされました?」
「緊張している?」
「はい、とっても」
「……大丈夫よ。ランならできるわ。私がついているのですから」
「はい!」
ランは嬉しそうに微笑むと、衣装のかかっている小さなハンガーを手に取った。妖精サイズの小さなドレスは、ステラお手製だ。ステラは魔法で針と糸を使って、バラの刺繍を描いた。
「衣装、素敵ですよね」
「そうね。ランなら絶対似合うわ」
「はい!」
お昼を食べたら、すぐに着替えてお芝居がはじまる。召喚士である生徒も、召喚獣も、緊張した面持ちでお昼休みを迎えた。
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