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第四章 後悔すべき時
第5話
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シルヴィ・クラヴェンス
俺はルシファー様としばらく話したあと、温室へ向かった。今の時期は夏だから、きっと緑で溢れかえっているだろう。
温室はドーム形で上の方が空いているため、野鳥が自由に出入りすることができる。
ドアを開けると、光をいっぱい取り込んだ緑が出迎えてくれた。蝶々も飛んでいる。
俺は両手を上にあげて、伸びながら奥へ進んでいった。
温室の真ん中に行くと、ベンチが大きな木を囲むように何個か置いてあった。鳥の鳴き声がとても心地よい。
「はぁ~。」
座ったと同時にため息が出てきた。あんまりゆっくりする時間が最近なかったから、俺にとってこの時間は楽園だ。チュンチュンだのガーガーだの、鳥たちは少しうるさい気がしたがこれくらいは許してやろう。
カツ、カツ、カツ
誰かが歩いてくる音が聞こえる。
俺と同じ生徒か、作業の人だろう。
しばらくすると、その人も温室の真ん中に来たらしい。人影が見える。
「!」
姿を表した金髪の人は、俺を見て驚いているようだ。
あの人は、確か…
「シルヴィ、君もいたんだ。珍しいね。
ここに人が来ることはめったにないんだよ。」
レインベール先輩だ。
ルビーのような綺麗な瞳が俺を真っ直ぐ見ている。
「こんにちは」
俺はベンチに沈んでいたことを思い出して、姿勢を正してあいさつをした。
そうするとレインベール先輩は、こちらへ歩いてきて俺の隣に座った。
「ここに来るときは、大体考え事をするときなんだ。」
「え?じゃあ、俺、外に出ましょうか?」
「いいや。逆に、君がいてくれて嬉しかったんだ。君は、俺に勇気をくれる存在だからな。」
すると、蝶々たちがレインベール先輩を迎えるように集まってきた。鳥も、少しずつだけどベンチに止まったり、足元に来たり、賑やかになってきた。
「人を…探しているんだ。」
急な話題に驚いた。そんな重そうな話をするほど俺たちは親しくないはずだ。もしかしたら、わかってほしくて色んな人に話をしているのかもしれない。
レインベール先輩は、蝶々や鳥たちを気にせずに話を続けた。どこか遠くを見ている横顔が美しい。
「その子は、出き損ないの私に光を与えてくれた。
そのお陰で私は…ここにいる。」
「…」
俺は黙ってレインベール先輩の話を聞くことにした。とても悲しそうで、こっちまで胸が痛くなってきた。
「だけど、全然見つからない。5年間ずっと想っていた。その子のことを」
「…大丈夫です。絶対に見つかりますから。
だって5年間も想っているのであれば、先輩は本当にその子のことが好きなんでしょう?」
「…ああ、愛している。」
「…」
辛そうなレインベール先輩の瞳を見ていると、どうすればいいのかわからなくなってくる。励まし方もいまいち分からない。会えるかどうか分からないんだし。
「きっと、その方も振り向いてくれますよ。だって、レインベール先輩のような素敵な人が自分のことを好きでいてくれてるんですから。」
「その言葉を信じていいのか?」
「もちろんです!」
「…」
「…」
しばらくの沈黙が続いた。先輩は何かを考えているように見えたから、俺からは何も話さなかった。
「ありがとう。君に話したら少し楽になった気がするよ。」
そう言ってレインベール先輩は立ち上がってどこかへ行こうとした。
「どういたしまして。少しでも力になれたのならばよかったです。」
「変なことを聞くが…。君は、本当にシルヴィ・クラヴェンスなんだよな?」
「?、はい、そうですけど…。」
「ならいい。」
そしてレインベール先輩は行ってしまった。なぜだか、その背中は怒りのような感情で満ちているのがわかった。
俺はルシファー様としばらく話したあと、温室へ向かった。今の時期は夏だから、きっと緑で溢れかえっているだろう。
温室はドーム形で上の方が空いているため、野鳥が自由に出入りすることができる。
ドアを開けると、光をいっぱい取り込んだ緑が出迎えてくれた。蝶々も飛んでいる。
俺は両手を上にあげて、伸びながら奥へ進んでいった。
温室の真ん中に行くと、ベンチが大きな木を囲むように何個か置いてあった。鳥の鳴き声がとても心地よい。
「はぁ~。」
座ったと同時にため息が出てきた。あんまりゆっくりする時間が最近なかったから、俺にとってこの時間は楽園だ。チュンチュンだのガーガーだの、鳥たちは少しうるさい気がしたがこれくらいは許してやろう。
カツ、カツ、カツ
誰かが歩いてくる音が聞こえる。
俺と同じ生徒か、作業の人だろう。
しばらくすると、その人も温室の真ん中に来たらしい。人影が見える。
「!」
姿を表した金髪の人は、俺を見て驚いているようだ。
あの人は、確か…
「シルヴィ、君もいたんだ。珍しいね。
ここに人が来ることはめったにないんだよ。」
レインベール先輩だ。
ルビーのような綺麗な瞳が俺を真っ直ぐ見ている。
「こんにちは」
俺はベンチに沈んでいたことを思い出して、姿勢を正してあいさつをした。
そうするとレインベール先輩は、こちらへ歩いてきて俺の隣に座った。
「ここに来るときは、大体考え事をするときなんだ。」
「え?じゃあ、俺、外に出ましょうか?」
「いいや。逆に、君がいてくれて嬉しかったんだ。君は、俺に勇気をくれる存在だからな。」
すると、蝶々たちがレインベール先輩を迎えるように集まってきた。鳥も、少しずつだけどベンチに止まったり、足元に来たり、賑やかになってきた。
「人を…探しているんだ。」
急な話題に驚いた。そんな重そうな話をするほど俺たちは親しくないはずだ。もしかしたら、わかってほしくて色んな人に話をしているのかもしれない。
レインベール先輩は、蝶々や鳥たちを気にせずに話を続けた。どこか遠くを見ている横顔が美しい。
「その子は、出き損ないの私に光を与えてくれた。
そのお陰で私は…ここにいる。」
「…」
俺は黙ってレインベール先輩の話を聞くことにした。とても悲しそうで、こっちまで胸が痛くなってきた。
「だけど、全然見つからない。5年間ずっと想っていた。その子のことを」
「…大丈夫です。絶対に見つかりますから。
だって5年間も想っているのであれば、先輩は本当にその子のことが好きなんでしょう?」
「…ああ、愛している。」
「…」
辛そうなレインベール先輩の瞳を見ていると、どうすればいいのかわからなくなってくる。励まし方もいまいち分からない。会えるかどうか分からないんだし。
「きっと、その方も振り向いてくれますよ。だって、レインベール先輩のような素敵な人が自分のことを好きでいてくれてるんですから。」
「その言葉を信じていいのか?」
「もちろんです!」
「…」
「…」
しばらくの沈黙が続いた。先輩は何かを考えているように見えたから、俺からは何も話さなかった。
「ありがとう。君に話したら少し楽になった気がするよ。」
そう言ってレインベール先輩は立ち上がってどこかへ行こうとした。
「どういたしまして。少しでも力になれたのならばよかったです。」
「変なことを聞くが…。君は、本当にシルヴィ・クラヴェンスなんだよな?」
「?、はい、そうですけど…。」
「ならいい。」
そしてレインベール先輩は行ってしまった。なぜだか、その背中は怒りのような感情で満ちているのがわかった。
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