朝焼けと薄暮の間

はるか

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球技大会

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球技大会の朝、グラウンドはすでに熱気でむんむんしていた。
 クラスごとにカラーのハチマキを巻いて円陣を組んでいる。俺はゴール前に立ち、深呼吸した。
 本当は人前で目立つのは好きじゃない。けどキーパーをやる以上、ある程度は仕方ない。
 ――ま、派手なことさえしなきゃ無難に終わるだろ。

 笛が鳴り、第一試合が始まった。
 相手は三組。けっこう強いと聞いていたけど、意外にも試合は膠着状態。前半はお互い攻めきれず、ただ時間が過ぎていく。

 俺は飛んでくるボールをキャッチしたり、軽く弾いたりする程度で、特に危ない場面もなかった。
 後半、武田がゴールを決めてくれて、結果は一点差の勝利。
 「よっしゃー!」

 「初戦突破!」
 クラス中が沸き立つ中、俺はホッと胸を撫で下ろした。
 ――無難に終わった。これで十分。

 ちらっと観客席を見ると、皓月さんが手を叩いて笑ってくれていた。
 その笑顔に、なぜか背筋がくすぐったくなる。

 二回戦、準決勝と試合はテンポよく進んでいった。
 どの試合も武田の突破力が光り、点を量産。俺はというと、多少シュートを止めたくらいで特に目立つこともなく、気づけば決勝まで駒を進めていた。

 「いよいよ決勝だな!」
 武田がビブスを直しながらにやけている。
 「お前が止めてくれてるから、俺も安心して攻められるんだぜ」
 「いやいや、俺は後ろでのんびりしてただけだって」
 「何言ってんだ。頼りにしてるぞ、守護神!」
 「やめろ、その呼び方……」

 からかわれつつも、心の奥では少しうれしい。

 決勝戦。

 相手はサッカー部が何人もいる四組。開始早々からガンガン攻めてきて、俺のゴール前はマジで慌ただしかった。

 そして後半、ついにその瞬間が来る。
 相手のエースが放った強烈なシュート。俺は飛びついた――が、手がわずかに届かず、ボールはゴールネットを揺らされてしまった。

 「うわああっ!」

 「入ったー!」

 歓声とため息が入り混じる。
 俺は地面に倒れ込んだまま、唇を噛んだ。

 本気を出せばもちろん余裕で止められた。だけどそんなことをしたら体力測定の時以上に目立ってしまうし……。

(やっぱり、俺なんかが守護神なんて無理だったんだ。)

 その時。

 観客席から、澄んだ声が飛んできた。

 「暁月くん! 大丈夫、次は止められるよ!」

 大勢の歓声の中、皓月さんの声だけがはっきり聞こえた。

 立ち上がる俺に向かって、必死に手を振っている。
 目が合った瞬間、胸の奥で何かがはじけた。

 ――そうだ、まだ終わってない。

 残り時間はわずか。

 俺は集中してゴール前に立ち続けた。仲間が必死に守り、武田がカウンターで一点を返す。

 同点のまま迎えたラストプレー。

 相手の決定的なシュートが飛んできた。全員が息をのむ中、俺は全力で飛びつく。

 手のひらに伝わる確かな感触。ボールはゴールポストをかすめ、外へ――。

 「ナイスキーパー!」

 「暁月よく止めた!」

 味方の歓声に包まれる中、コーナーキックのボールをすぐさま味方が奪う。

ボールが前線に渡り、武田がゴールを決めた。

 笛が鳴り響く――逆転勝利。

 仲間たちに肩を抱かれ、歓声の渦の中に飲み込まれていく。
 ふと観客席を見ると、皓月さんが拍手しながら笑ってくれていた。

 俺は胸の奥に燃えるような熱を感じながら、笑顔を返した。
 ――たとえ目立ちたくなくても、今日だけは、この瞬間だけは悪くない。
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