とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第2章:生い立ち編1~訓練施設インシデント~

第36話 インシデント33:忍び寄る黒い影

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バルドはフリードリヒの居室を退しりぞき、エステール伯爵家居城東門へ向かっていた。

これよりの一月ひとつきをセルジオ騎士団城塞、西の屋敷で過ごす。訓練施設に備えているセルジオの背丈せたけに合わせた武具を取りに向かっていた。

ピィン・・・・
スチャッ!!

東門を出ようすると後ろから追手の気配を感じる。そっと腰の短剣を抜いた。

「バルド殿!お待ち下さい!」

追手はハインリヒの侍従ギュンターであった。

カチリッ!

バルドは短剣をさやへ納め、足を止め振り返る。

「ギュンター殿、いかがされましたか?
ハインリヒ様からの言伝ことづてでもございますか?」

未だかつてエステール伯爵家居城を出る際に引き留められたこと等なかったことだ。

「いえ・・・・」

ギュンターはバルドの目の前で思案気に足元を見る。

「いかがなさいましたか?ギュンター殿。何かご心配事でもございますか?」

ギュンターの実直じっちょくさを心得こころえているバルドは丁寧な口調で問いかけた。

「・・・・あの・・・・この様な事を私が申し上げて良いものか・・・・
いささか迷いましたが・・・・」

「はい、何なりとお話し下さい」

バルドのその言葉に意を決した様に顔を上げる。

「実は、近頃ちかごろ、ハインリヒ様のご様子が以前と異なりまして・・・・
何と申しましょうか・・・・
時折、まるでお人が変わられた様なお顔とお声になります・・・・」

「それに・・・・」

「他にもございますか?」

「はい・・・・これは目の錯覚かと思った事もございますが、
あまりに頻繁ひんぱんにございまして・・・・
その様にお人が変わられたと感じます時にハインリヒ様の背後に
『黒いもや』の様な霧と申しましょうか?影と申しましょうか?
得体の知れない何かがうごめいて見えるのです」

「それは、いつの頃よりでしょうか?」

「気付きましたのは・・・・半年程前にございます。
ハインリヒ様付の女官アーディが亡くなった頃からにございます」

「アーディ殿と言われると・・・・
訓練施設にて始末したマデュラ子爵家乳母のむくろとむらわれた方ですか?」

「左様にございます。アーディはあの時より時折、ふさぎ込む事がありました。
年々気落ちがひどくなり、体調を崩し半年前にそのまま・・・・」

「それからハインリヒ様のご様子が変わられました。
初めは長年仕えてきた女官の死がこたえていらっしゃるのだろうと
思っておりましたが・・・・だんだんに黒い靄が色濃くなっている様に感じまして、
先日等は・・・・ハインリヒ様の黒い靄は影となり私を飲み込みました。
身体の自由が効かなくなり・・・・言われるがままに・・・・その・・・・」

ギュンターはチラリとバルドを見る。

「マデュラ子爵家へおもむく事になったと?」

バルドの言葉にギュンターは後ろへたじろぐ。

「!!!えっ!バルド殿!
そのお話は・・・・どこで!!!あっ!!!」

ギュンターは口を両手で押える。ハインリヒからくれぐれも内密に自身の胸にだけしまっておくよう言われていた事を肯定してしまったのだ。

「ギュンター殿、ご案めしませぬよう。
これまでの経緯いきさつ、薄々解っております。
ハインリヒ様も私が察している事は重々ご承知されておいでです。
今ここで初めて明るみに出た事でもございません故、ご案じ召さるな」

トンッ!

バルドはギュンターの右肩へ左手を置くと深い紫色の瞳で優しく語りかける。

「されど、ギュンター殿、大変な思いをされましたね。
黒い影に取り込まれるなど、さぞ恐ろしい思いをされたことでしょう!」

ギュンターの実直さを解っているだけに不憫ふびんであるとバルドは感じていた。

ギュンターはうつむき、神妙な面持ちで答える。

「はい・・・・実はどなたにも申せず、されど・・・・
このままではハインリヒ様の御身にわざわいが起こるやもしれぬと思い、
バルド殿であればお解り下さるだろうと・・・・
失礼を承知の上で後を追ってまいりました。感謝申します」

「ギュンター殿、『黒い影』の事、今少し詳しくお聞かせ頂けますか?」

バルドはそっとギュンターの右肩に乗せた左手を下す。
ギュンターは顔を上げ、バルドの深い紫色の瞳をじっと見つめて返答をした。

「はい、私が存じ上げております事は全てお話し致します」

バルドはギュンターの返答にうなずくと質問をはじめた。

「感謝申します。
では、『黒い影』に取り込まれた際、ハインリヒ様はどのようなお話しをされていましたか?」

「それは・・・・」

ギュンターは一瞬、躊躇ちゅうちょする。
いくらバルドが薄々感づいているとはいえ、あるじであるハインリヒから口止めされていること全てを話してよいものかと迷ったのだ。

バルドはギュンターが躊躇ちゅうしょすることも考慮した上で再度、話の内容がハインリヒへ伝わらないことに念をおした。

「大事ございません。
『黒い影』の事を私からハインリヒ様のお耳に入れる事はございません」

その言葉にギュンターはほっとした表情を見せる。

「では、全てお話し致します。
7日前、バルド殿がセルジオ様とエリオス様のサフェス湖湖畔への狩りの件、
セルジオ騎士団団長への言伝をご依頼された時にて、
セルジオ騎士団団長への言伝は無用と」

「そして、マデュラ子爵家のイゴール様が訓練施設での処遇改善しょぐうかいぜん
訴えられている事でセルジオ様と狩りをご一緒する様ご進言しんげんされたと。
それ故、マデュラ子爵家ご当主マルギット様へセルジオ様の狩りの日取りと
狩場のお知らせをせよと申されました。その際に『黒い影』に取り込まれました」

ギュンターは口にした内容もその日のできごとを思い出すことも恐ろしく感じていた。
バルドに告げる声は震えていた。

『なるほど・・・・そう言う事であったか』

バルドは大よその予想はしていた。が、エステール伯爵家当主ハインリヒとマデュラ子爵家当主マルギットの当主同士の策略さくりゃくである事が分かればこれからの対応策が変わってくる。

『黒い影の正体を突き止められるか?』

バルドは更に詳しく状況の確認をする。

「左様でしたか。その時ギュンター殿はどのようになりましたか?」

「はい、身体の自由がうばわれまして、
身体も口元も私の意思は入らぬままハインリヒ様の申す通りに致しますと
お答えしました。その後、身体が冷たく、寒気が止まらず、
しばらくはガタガタと震えておりました」

「では、直ぐに身体の自由を取り戻されたのですね?」

「はい、ハインリヒ様の視線から外れました際に身体は自由となりました」

「黒い影はどうなりましたか?」

「そう言えば・・・・執務室を出ます時には見えなくなっておりました」

『マデュラの話の時だけか・・・・』

バルドはギュンターの話を聞きながら頭の中で整理をしていた。

「先程、私がハインリヒ様のお目通りを許される前はいかがでしたか?
黒い影はございましたか?」

「いいえ、
バルド殿が執務室へ入られる前はいつもと変わらず
穏やかなハインリヒ様でいらっしゃいました」

「ギュンター殿、よく解りました。お話し下さり感謝申します。
黒い影の正体を明かす事、私にお任せ頂けませんか?
少し思い当たる事がございますので調べてみます」

「承知致しました。こちらこそ、感謝申します!
この様な事、バルド殿の他にお伝えできる方がおりませぬ故、
ほとほと困っておりました。感謝申します」

ギュンターは深々とバルドに深々と頭を下げた。

「大事ございません。セルジオ様に関わります事、お話し下さり感謝申します。
今一つだけ・・・・マデキュラ子爵家へ赴かれた際、
ご当主マルギット様には直接お目通りかないましたか?」

「はい、直接お目通り叶いました。
帰り際にハインリヒ様への書簡をお預かりしました」

「!!書簡を預かりましたか!
その書簡は今、いずこにございますか?」

「さて?ハインリヒ様にそのままお渡ししまして・・・・
その後はいかがなさったのでしょう?
そう言えば・・・・普段は書簡をお届しました後は処分する様、
申し付かりますが、あの時お渡ししました書簡は受け取ってはおりません・・・・」

「左様ですか。ギュンター殿、ではその書簡の事、お忘れ下さい。
もし、ハインリヒ様から改めて書簡の処分を申しつけられましたら
ポルデュラ様へお渡し下さい。よろしいですか!
必ずポルデュラ様へお渡し下さい!」

バルドは念を押した。

「承知致しました」

「ギュンター殿、お話し下さり感謝申します。
私はこれより訓練施設に戻り、セルジオ様の武具を持参の上、
西の屋敷へまいります。
一月ひとつきほど西の屋敷に滞在しますので、
また思い出された事等ございましたら西の屋敷に使いの者をよこしてください。
急ぎこちらへ伺います」

バルドはギュンターが心細い思いをせずにいられる様に自身の居場所を伝える。

「バルド殿!感謝申します。思い出しましたら直ぐにお知らせいたします」

ギュンターは心底ほっとした表情を見せた。

バルドはエステール伯爵家東門を出て、王都西門から訓練施設に入る。セルジオの武具一式を持ち、訓練施設を後にした。
途中、王都西門門番頭へ言伝ことづてを頼む。

「エーミル殿、これより一月ひとつき程、
セルジオ様、エリオス様、オスカー殿と私の4人は訓練の為、
西の屋敷に滞在致します。
ハインリヒ様のお許しは得ております故、我ら留守の事、
ご案じ召しませぬ様お伝えに伺いました」

エーミルはマデュラ子爵家の乳母を始末した際、大ネズミの襲撃の際と何かとバルドの手助けをしてくれた人物だ。その為、今回の留守の事も話しておく方がよいと判断したのだった。

「バルド様!それはわざわざに感謝申します。承知致しました。
お留守の間は毎日、お部屋周りも一通り見ておきます故、我らにお任せ下さい!」

エーミルはバルドから直々じきじきに話された事が嬉しい様で、力のこもった返答をした。

「それは助かります。
できましたらセルジオ様とエリオス様の居室の扉を常時、開けておいて頂けますか?
風を通しておきたいと思いまして・・・・」

バルドは留守の間、セルジオらの居室内に『仕掛しかけ』がされる事を懸念けねんしていた。壁に毒草どくそう樹液じゅえき等を塗られる事もある。扉を常時開けておけば人目が気になり、居室内に進入する事は困難となる。

「承知致しました。
では、早速にセルジオ様、バルド様、エリオス様、オスカー様の
お部屋の扉が閉まらぬ様に扉の固定を致します」

エーミルはそう言うと門番の詰め所で待機しているベンノを呼び指示をした。

「早速に感謝申します。今一つ、お願いしたい事がございます。
ミハエル様従士ダイナ殿とアドルフ様従士ルッツ殿、
ユリウス様従士トルディ殿へも我らが西の屋敷へ滞在する旨を伝えて頂けますか?
今は、皆様合同訓練に入ってみえますので、
直接にお伝えできず失礼をする旨も合わせてお伝え下さい」

「それと・・・・
合同訓練を西の屋敷にて行う日を設けて頂けると助かると私が申していたとお伝え下さい」

「承知致しました。
皆様、本日は城壁東方ひがしがたまで訓練に向かわれましたので、
お戻りになりましたらお伝え致します」

エーミルはバルドからの依頼に意気揚々と答える。

「エーミル殿、感謝申します。
私はエステール伯爵家に馬を留めております。
領内を通り、西の屋敷へ向かいます。これにて失礼を致します」

バルドはエーミルに挨拶をする。

「道中、お気を付けて」

エーミルは門番らしい挨拶で見送った。


バルドはエステール伯爵家厩舎きゅうしゃに立ち寄る。馬止めから馬を外し、鞍にとめてある麻袋にセルジオの武具一式を納めた。
馬にまたがろうとした時、厩舎影から血香けっかを感じ取る。

『追手か?このように早く?』

チャッ!

「誰だっ!セルジオ様付従士バルドに何用なにようだっ!」

腰の短剣を抜き、威圧に近い大声と共に血香の漂う方向へ身体を向ける。

「バルド殿!私にござます!ダイナにございます!短剣をお納め下さい!」

ミハエルの従士ダイナであった。ダイナもまた厩舎から馬出しに来たところで、バルドの血香を感じ取ったのだった。

「ダイナ殿!これは失礼を致しました。
馬を使われますか!いやはや、これは失礼を致しました!」

バルドは珍しくバツが悪そうに苦笑いを浮かべた。

「いえ、しかし・・・・バルド殿、
本日はサフェス湖湖畔で狩りのはずでは?お独りでいらっしゃいますか?」

「はい、実は例の・・・が起こりまして、
ハインリヒ様へご報告に伺いました。これより西の屋敷へ戻ります。
先程、門番頭のエーミル殿へ言伝をお願いしておきました。
一月ひとつき程、西の屋敷に滞在致します」

「・・・・例の事?!例の事とはマデュラの刺客ですか!」

「左様にございます。いずれ詳しくお伝え致しますが、3人の刺客は始末致しました。
ただ・・・・諸々の今後を考えねばなりません。
ミハエル様へ危害が加わる事はないかと思いますが、
念の為ご用心をされたく存じます。ダイナ殿・・・・」

バルドは哀し気な眼をダイナに向けた。

「いかがなさいましたか?
その様なバルド殿のお顔は初めてにて、いささか心配にございます」

ダイナの言葉にバルドははっとする。

「いえ・・・・失礼を致しました。
いずれ、西の屋敷にてお話しできればと思っております・・・・
そう言えば、ダイナ殿・・・・
本日は東方へ合同訓練に向かわれたと伺いましたが、どちらへ向かわれますか?」

「いえ、それが・・・・
今しがた王家近衛の者より至急同行願いたいと使いがまいりまして、
こちらへ馬を出しにまいりました」

「王家の近衛からでございますか?・・・・
近衛がエステールのしかも訓練施設の従士に?何用なにようでございますか?」

「それが、詳しい事は使いの者は解らぬと申しておりまして、
王都西門にて馬を用意の上、待機しておけとの事でございました」

「・・・・せませんね・・・・」

「左様にて・・・」

「ダイナ殿をとの事でございますか?」

「左様にございます。ラドライト家従士にとの指名にございました」

「・・・・西門での待機でございますね。
もしや・・・・マデュラの刺客と関わりのある事やもしれませんねっ!
ダイナ殿、私も同行致しますっ!」

バルドは今日一日の事を思い返し、胸騒ぎを覚える。

「それは、心強いお計らい!感謝申します」

バルドとダイナは馬にまたがる。
ダイナはバルドの後に続いた。
バルドの背中を追い、先ほど眼にしたバルドの哀し気な瞳を思い出す。

『バルド殿は、変わられた。以前の冷ややかさが微塵みじんも感じられん。
『青き血が流れるコマンドール』か・・・・変わられた事が吉兆となる事を願うばかりだ』

従士としてあるじを想う気持ちは変わらないが、過ぎる事がないようにとバルドの背中に願うダイナであった。
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