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第2章:生い立ち編1~訓練施設インシデント~
第41話 インシデント38:小手調べ
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カツッカッカッ・・・・
カツッカッカッ・・・・
ポルデュラの回復術を終え、支度を整えるとセルジオ、バルド、エリオス、オスカーの4人はセルジオ騎士団団長の居室へ向かっていた。
部屋を出る前、バルドはセルジオとエリオスへ心構えを伝える。
「セルジオ様、エリオス様、ここはセルジオ騎士団城塞、西の屋敷でございます。
これからセルジオ騎士団団長セルジオ様へご挨拶にまいります。
西の屋敷での習わしをお伝え致します」
「通常、団長居室へ足を踏み入れる事が叶いますのは、
第一隊から第十隊までの10騎馬隊長のみにございます。
それ故、その他の者が居室へ入る際、それ相応の覚悟が必要となります」
「10騎馬隊長以外の者が団長居室への入室は、
特別な役目を与えられるか、戦場での功績を称えられるか、
もしくは罰を与えられるかのいずれかでのみ許されるのです。
この度は、マデュラの刺客の始末に際し、
団長自らのお言葉を拝することと・・・・」
バルドはここでセルジオとエリオスを深い紫色の瞳で見つめた。
「・・・・セルジオ様がシュタイン王国に伝わる伝説の騎士、
青き血が流れるコマンドールの再来であるのが真のことかを
団長の御前で『試される』のが狙いでございます」
「我らは手出しはできません。助ける者もございません。
お2人で力を合わせられる他、命の保証はございません。
よろしいですか!真剣勝負にございます」
「加減は不要にございます。
但し、お2人はどなたも傷つけも殺めてもなりません」
「傷つけず、殺めず、相手の動きをかわし団長の御前までたどり着くことのみ。
恐らく相手は4人。部屋の扉を開けた瞬間が勝負にございます。
よいですか!お2人は分が悪るうございます。その様な時はいかがなさる!」
ここまでを一気に話すとバルドは深い紫色の瞳に力を込めた。黙ってバルドの話を聴いているセルジオとエリオスへ強い眼差しを向ける。
セルジオが先にバルドの問いに答えた。
「相手の出方を待つ。人数と位置を血香から感じ取る。
後は、短剣を抜く早さに集中する。これでよいか?バルド」
バルドはうんと頷き、セルジオの立てた戦術に考えが及んでいない所を指摘する。
「左様にございます。
されどセルジオ様、このたびはお独りではございません。
エリオス様と力を合わせた戦闘となります。されば、どうなさる!」
セルジオはバルドの深い紫色の瞳を深い青色の瞳で見返し、静かに答えた。
「2人であっても構えもやる事も変わりはない。
動かせる手足が2人分となるだけだ。
なれば扉を我ら2人の左右の腕に置き、背中合わせとなる。
2人分の手足を存分に活かす。
訓練施設最上階回廊の階段扉で行った訓練をそのままに活かせばよい。
エリオス、どうだ?」
セルジオはエリオスに同意を求めた。
「はい、されど相手が弓矢を使う場合もございます。
相手の出方と武具も見計らいました上での
対峙が必要かと思います」
セルジオが相手の武具が剣のみを想定しているのに対し、エリオスは使用される武具の幅を広げた返答をした。
セルジオはエリオスの考えを素直に受け入れる。
「そうか・・・・
剣だけではないかもしれんと言う事だな。
よくよく見た上でお互いに声を掛けねばならぬな」
ボワンッ・・・・
ユラッユラッ・・・・
エリオスに答えるセルジオの身体から既に『青白い炎』がうっすらと湧き立っていた。
バッ!
「バルド!今まで私を育ててくれ、感謝申す」
セルジオは突然、バルドに向き直り左拳を胸にあて騎士の挨拶をした。
「ポルデュラ様はちょっとした試験だと申されたが、
真剣勝負なのであろう?
相手はセルジオ騎士団の騎士だ。
我らは分が悪いどころか命の保証がないのであろう?
だから今の有り様を伝えるぞ。バルド!感謝申す」
「オスカー、エリオス、感謝申す。
今まで私の訓練に立会、手合わせをしてくれたこと感謝申す」
「そして、この先も私は皆と共に訓練を続けたい!
ここで命を落とすわけにはいかぬ。
騎士団へ入り、騎士となり、騎士団団長となるとバルドに誓いを立てたのだ!
だからエリオス!共に戦ってくれ!頼む」
セルジオの深く青い瞳が更に深みを増した。
「はっ!セルジオ様、
今できます最善の事を行うのみにて!お伴致します」
エリオスが呼応する。
バルドとオスカーは2人の姿を胸が熱くなる思いで見つめていた。
バルドはセルジオとエリオスの目線に合わせ、膝を折る。
2人の肩にそっと手を置いた。
「セルジオ様、エリオス様、お2人であれば大事ございません。
今までの訓練そのままを活かせばようございます。
よろしいですか?分が悪いことは明らかでございます」
「しかしながらお相手はセルジオ騎士団の騎士。
その心中は『子供を傷つけられぬ』と思っております。
まして、次の騎士団団長と第一隊長となられるお2人です。
全く躊躇なく対峙することはできますまい」
「されば立ち止まるのは扉が開いた一瞬のみといたしませ!
後はお2人の利点を活かすのみ。小ささと速さにございます。
小ささは的になりにくく、後は目にも止まらぬ速さで
団長の御前まで一気に進むのです。
よろしいですか?一気にです!」
バルドはここで一旦目を閉じる。再び2人に強い視線を向けた。
「ただ一つ私からのお願いにございます。
命尽きるまで諦めてはなりません。生き急いではなりません。
今は生き延びることをお考え下さい。それがセルジオ騎士団への忠誠にございます」
「承知した!バルド!感謝申す」
セルジオが力強く答える。
「承知致しました。
私の役目はセルジオ様が存分にお力を出せる様、お支えする事です。
バルド殿、感謝申します。覚悟が整いました」
エリオスもセルジオにならい呼応した。
サッ!
オスカーが2人にかしづく。
「セルジオ様、エリオス様、ご武運を!」
バルドもオスカーに倣いかしづいた。
「セルジオ様、エリオス様、ご武運を!」
カツッカッカッ!
一行はセルジオ騎士団団長居室前に到着した。
バルドとオスカーは扉の手前でとどまりセルジオとエリオスを見送る。
セルジオとエリオスはバルドとオスカーの顔を見上げるとうんっと一つ力強く頷き、扉を叩き到着を告げた。
トンットンットンッ!
「失礼を致します!
エステール伯爵家第二子。セルジオ・ド・エステールにございます。
セルジオ騎士団団長へ御礼のご挨拶にまいりました」
「ローライド准男爵家第二子。エリオス・ド・ローライドにございます。
我が主セルジオ様に同行致し、セルジオ騎士団団長へご挨拶にまかりこしました」
2人は扉の先へ意識を向ける。
「セルジオ殿、エリオス殿、入られよ」
ガコッ!
ギイィィィ!!
招き入れの声と共にセルジオ騎士団団長居室の両扉が内側から外側へ開かれた。
セルジオとエリオスはお互いの呼吸を合わせる。
「はっ!」
同時に返答をすると同時に右足から一歩部屋へ足を踏み入れた。
シュッ!!シュッ!!
2本の矢が目の前をかすった。
カッカッ!
交差し開いた扉脇に刺さる。
威嚇だ。
セルジオとエリオスは威嚇の矢を見切っていた。身じろぎ一つせずに矢が通り過ぎるのを待った。
「ほうぅ!」
居室奥の長椅子に座っているセルジオ騎士団団長がニヤリと口元を上げるのが見えた。目線が扉の両脇へ向けられる。
「エリオス!左だ!背を合わせるぞ!」
スチャッ!
セルジオは声を上げ自身は右を向き短剣を両手に構える。
「はっ!」
スチャッ!
エリオスはセルジオの指揮と同時に左へ向いた。
扉の両脇から短剣が放たれた。
シュッシュッ!!!
シュッシュッ!!!
カンッ!カンッ!
カンッ!カンッ!
セルジオとエリオス目掛けて放たれた短剣を手にした短剣ではじく。
ザッ!!
バッババッ!!
次の瞬間、2人は体制を低くし、団長が腰かける長椅子目掛けて床をけった。
ボッ!
ブワンッ!
セルジオの身体から『青白い炎』が湧き立つ。
「ほう、あれかっ!」
団長が傍らに立つ第一隊長ジグランへ視線を向ける。
シュッ!シュッ! シュッ!シュッ!
シュッ!シュッ! シュッ!シュッ!
再びセルジオとエリオスへ向け放たれた矢をかわす。
シャッ・・・・
ズシャッ!
が、セルジオの右腕を矢がかすった。白いシャツに血が滲む。
カシャン!
団長の両脇にいる騎士が短剣を鞘から抜いた。
カッカッカッ!!!
カッカッカッ!!!
セルジオとエリオス目掛けて歩みを進める。
「エリオス!下からいくぞ!」
「はっ!」
ザッ・・・・
ババッ!!!
2人は歩み寄った騎士の股下を足から通り抜ける。
タタタッタッ!!!
セルジオは団長のひざ元まで一気に駆け寄る。
スチャッ!
カチャンッ!
エリオスはセルジオと背中合わせに構えた。
シャキィン!
団長の傍らにいたジグランが剣を鞘から抜き、セルジオ目掛けて振り下ろす。
スッ・・・・
ドガッ!!
剣の先が石材床の上に敷き詰めた絨毯に突き刺さる。
「!!どこに・・・・!」
カタンッ!!
ジグランの後ろで乾いた音がした。振りむくと団長のひざ元の床に短剣を置き、息を切らし、かしづくセルジオの姿があった。
ブワンッ!ワンッ!
『青白い炎』が勢いよく湧き立っている。
「はぁはぁはぁ・・・・ぐっ!」
胸に手を置き呼吸を整える。
「お初にお目に掛かります。
エステール伯爵家第二子。セルジオ・ド・エステールにございます。
このたびは負傷した我らをお助け下さり感謝申します。
また、ご挨拶が遅れましたことお詫び申し上げます」
肩が大きく上下している。湧き上がっていた『青白い炎』は消えていた。
「・・・・ふむ。そなたがセルジオか・・・・面を上げよ」
「はっ!」
セルジオが顔を上げると目の前に団長の顔がある。
セルジオは静かに団長の薄く青い瞳を見つめた。
「ふむ・・・・
『その者、青白き炎を携え、剣を振るう。
剣は青き光を放ち一撃にて一団を切り裂く。
黄金に輝く髪、深く青い瞳、透き通る肌には青き血が流れる。
その名を持って国を守り、その名を持って国に安寧をもたらす』
どうだ?存じておろう?伝説の騎士『青き血が流れるコマンドール』の言い伝えだ。
そなたもまた黄金に輝く髪、深く青い瞳、透き通る白い肌、
そして『青白き炎』を携えていたな。そなたこのことどう思う?」
団長はセルジオに問答をはじめた。問答は『過信』を抱きやすい環境にいるセルジオが等身大の自身を冷静に客観視できているかの試験の一つだった。
エリオスはセルジオと背中合わせに短剣を構えた体制を崩さず騎士4人の動きを封じる様な気を発していた。
バルドとオスカーは居室の扉から少し外側にとどまり、その様子を見守っている。
ググッ・・・・
バルドとオスカーの拳に力が入る
セルジオが静かに口を開いた。
「「どう」とは?いかがなことでございますか?
己を伝説の騎士『青き血が流れるコマンドール』の再来と考えているか?
とのことでございますか?」
「そう思っているのか?」
団長がギロリとセルジオを睨む。居室の空気は凍り付いた様な緊張を帯びた。
「わかりません・・・・いえ、今はまだわかりません」
「わからないとはどういうことだ?己では認識がないということか?」
「・・・・団長にお答えする言葉がみつかりません」
「うん?」
「私が今、わかっているのは己の髪の色、瞳の色、肌の色、
そして訓練の時などに『青白い炎』が身体から湧き立つことです。
後は初代セルジオ様がこの身体に封印されていること、
時折、眠りの中で、初代様がお姿を現し私を諭して下さること、それだけです」
「『青白き炎』も己の中に封印された初代様が発せられているのか?
己自身からなのかもわかりません。
されば己が伝説の騎士であるかはわからないのです」
「ふむ・・・・では問いを変えよう。
皆がそなたを伝説の騎士の再来だと確信をしている。
そなたの戦いぶりも大したものだ。
騎士団入団は7歳、騎士として叙任を受けるのは14歳だ。
されど私がそなたは伝説の騎士であるから入団も叙任も早めようと申したらいかがするか?」
団長はセルジオの深く青い瞳をじっと見つめ、深淵を覗きこんでいる。
セルジオは団長の薄く青い瞳をひるむことなく見返していた。
「団長のお言葉ではございますが、お断りいたします!」
セルジオは両手で拳をにぎると力強く答えた。
団長は更にセルジオを追い詰めていく。
「なぜだ?そなたの力量であれば今すぐに入団も叶おう。
何より私が推挙している。それでも断るのか?」
「はい!お断りをいたします」
「ふむ。ではその訳を申してみよ」
「はい。私は訓練をはじめて日が浅く、己の意のままに扱える武具はございません。
今日もバルドに剣の手合わせを受けましたが左脇がいつも開きます。
武具と身体が一体となるには時が必要です。
されば私は今の己を弱いと思っています」
「そして、人を束ねることを学んでおりません。
人の心の動きが私にはわからないのです。心の動きを学んでいる最中です。
やっと今日、己の今の有り様をバルドへ伝えることができました。
なれば、今、入団せよと命が下りましても入団の力量には程遠いのです」
セルジオは真っ直ぐに団長の瞳を見る。
「バルドが・・・・我が師が常々申している言の葉がございます。
『団長独りが強いのではなく、皆を束ねることができる団長が強いのだ』と。
『己の弱さを認め、謙虚になれることが
皆を束ねることができる団長の資質』だと」
「私は騎士になり、騎士団団長になると我が師に誓いを立てました。
されば師が申す通り、『皆を束ねることができる団長』を目指し
訓練に励むことが今の己に必要なことと思っています」
セルジオはじっと団長を見つめた。
「・・・・ふっ・・・わぁっはっはっは!そなた!
いや、セルジオ殿!大したものだ!
その歳でここまではっきりと私にものが申せるだけでも驚くことであるのに!」
「いやいや、ジグラン!どうだ!
『我が師が説く教えに』こうも忠実なことも珍しかろう!
私など・・・・そなたの歳の頃は師の懐で毎夜泣いていたわ!
バルド!オスカー!こちらへ!
おっ、皆、構えをといてよいぞ。いやはや、度肝を抜かれたわっ!」
団長はセルジオの頭をくしゃくしゃとなでた。
エリオスは短剣を鞘に納め、セルジオの傍らにかしづく。
バルドとオスカーも居室へ入り、セルジオとエリオスの後ろでかしづいた。
「ジグラン!どうだ?
セルジオ殿は我が後継に申し分ないと思わぬか?」
騎士団団長は満足げな顔をジグランへ向けた。
「左様にございますな。セルジオ様、いや、団長。
セルジオ殿とエリオス殿の師は元々我が第一隊の従士にて、そのことお忘れなきように!
バルドとオスカーが師であったればこそのセルジオ殿とエリオス殿の今でございます」
「わかっておる、わかっておる!
ジグランは己のことより隊の者を大事と思っているからな!
そのこと、重々わかっておる」
団長はセルジオとエリオスの頭に手を置いた。
「この姿が我がセルジオ騎士団の有り様なのだ。
隊長は己のことより配下を想う。配下もまた己のことより騎士団を想う。
なれば団長は国と民を想い騎士団を活かすことができるのだ」
「セルジオ殿が先程申していた『皆を束ねることができる団長』とは
忠誠のその先にあると私は思っている。
お互いを心の底から信じることができて初めて騎士団は一つとなれるとな」
団長はそう言うと2人の頭をなでた。長椅子から立ち上がり声をあげる。
「エステール伯爵家セルジオ・ド・エルテール、
ローライド准男爵家エリオス・ド・ローライド、
並びにその師であるバルド、オスカーに告げる!
挨拶の義、確かに受け取った。
こののち一月の滞在のこと、
我がセルジオ騎士団はそなたらを歓迎する。
騎士、従士と同様に過ごされよ」
団長は膝を折り、セルジオとエリオスへ目線を合わせる。
「一度、私と手合わせを願いたい。
そなたらの師に執成しをしてくれぬか?」
セルジオとエリオスは顔を見合わせ頷き合う。
「はっ!承知致しました。身にあまる光栄に存じます」
セルジオとエリオスは大きな声で力強く答えた。
「うむ!楽しみにしているぞ」
団長はニコリとセルジオとエリオスへ微笑みを向けるのであった。
カツッカッカッ・・・・
ポルデュラの回復術を終え、支度を整えるとセルジオ、バルド、エリオス、オスカーの4人はセルジオ騎士団団長の居室へ向かっていた。
部屋を出る前、バルドはセルジオとエリオスへ心構えを伝える。
「セルジオ様、エリオス様、ここはセルジオ騎士団城塞、西の屋敷でございます。
これからセルジオ騎士団団長セルジオ様へご挨拶にまいります。
西の屋敷での習わしをお伝え致します」
「通常、団長居室へ足を踏み入れる事が叶いますのは、
第一隊から第十隊までの10騎馬隊長のみにございます。
それ故、その他の者が居室へ入る際、それ相応の覚悟が必要となります」
「10騎馬隊長以外の者が団長居室への入室は、
特別な役目を与えられるか、戦場での功績を称えられるか、
もしくは罰を与えられるかのいずれかでのみ許されるのです。
この度は、マデュラの刺客の始末に際し、
団長自らのお言葉を拝することと・・・・」
バルドはここでセルジオとエリオスを深い紫色の瞳で見つめた。
「・・・・セルジオ様がシュタイン王国に伝わる伝説の騎士、
青き血が流れるコマンドールの再来であるのが真のことかを
団長の御前で『試される』のが狙いでございます」
「我らは手出しはできません。助ける者もございません。
お2人で力を合わせられる他、命の保証はございません。
よろしいですか!真剣勝負にございます」
「加減は不要にございます。
但し、お2人はどなたも傷つけも殺めてもなりません」
「傷つけず、殺めず、相手の動きをかわし団長の御前までたどり着くことのみ。
恐らく相手は4人。部屋の扉を開けた瞬間が勝負にございます。
よいですか!お2人は分が悪るうございます。その様な時はいかがなさる!」
ここまでを一気に話すとバルドは深い紫色の瞳に力を込めた。黙ってバルドの話を聴いているセルジオとエリオスへ強い眼差しを向ける。
セルジオが先にバルドの問いに答えた。
「相手の出方を待つ。人数と位置を血香から感じ取る。
後は、短剣を抜く早さに集中する。これでよいか?バルド」
バルドはうんと頷き、セルジオの立てた戦術に考えが及んでいない所を指摘する。
「左様にございます。
されどセルジオ様、このたびはお独りではございません。
エリオス様と力を合わせた戦闘となります。されば、どうなさる!」
セルジオはバルドの深い紫色の瞳を深い青色の瞳で見返し、静かに答えた。
「2人であっても構えもやる事も変わりはない。
動かせる手足が2人分となるだけだ。
なれば扉を我ら2人の左右の腕に置き、背中合わせとなる。
2人分の手足を存分に活かす。
訓練施設最上階回廊の階段扉で行った訓練をそのままに活かせばよい。
エリオス、どうだ?」
セルジオはエリオスに同意を求めた。
「はい、されど相手が弓矢を使う場合もございます。
相手の出方と武具も見計らいました上での
対峙が必要かと思います」
セルジオが相手の武具が剣のみを想定しているのに対し、エリオスは使用される武具の幅を広げた返答をした。
セルジオはエリオスの考えを素直に受け入れる。
「そうか・・・・
剣だけではないかもしれんと言う事だな。
よくよく見た上でお互いに声を掛けねばならぬな」
ボワンッ・・・・
ユラッユラッ・・・・
エリオスに答えるセルジオの身体から既に『青白い炎』がうっすらと湧き立っていた。
バッ!
「バルド!今まで私を育ててくれ、感謝申す」
セルジオは突然、バルドに向き直り左拳を胸にあて騎士の挨拶をした。
「ポルデュラ様はちょっとした試験だと申されたが、
真剣勝負なのであろう?
相手はセルジオ騎士団の騎士だ。
我らは分が悪いどころか命の保証がないのであろう?
だから今の有り様を伝えるぞ。バルド!感謝申す」
「オスカー、エリオス、感謝申す。
今まで私の訓練に立会、手合わせをしてくれたこと感謝申す」
「そして、この先も私は皆と共に訓練を続けたい!
ここで命を落とすわけにはいかぬ。
騎士団へ入り、騎士となり、騎士団団長となるとバルドに誓いを立てたのだ!
だからエリオス!共に戦ってくれ!頼む」
セルジオの深く青い瞳が更に深みを増した。
「はっ!セルジオ様、
今できます最善の事を行うのみにて!お伴致します」
エリオスが呼応する。
バルドとオスカーは2人の姿を胸が熱くなる思いで見つめていた。
バルドはセルジオとエリオスの目線に合わせ、膝を折る。
2人の肩にそっと手を置いた。
「セルジオ様、エリオス様、お2人であれば大事ございません。
今までの訓練そのままを活かせばようございます。
よろしいですか?分が悪いことは明らかでございます」
「しかしながらお相手はセルジオ騎士団の騎士。
その心中は『子供を傷つけられぬ』と思っております。
まして、次の騎士団団長と第一隊長となられるお2人です。
全く躊躇なく対峙することはできますまい」
「されば立ち止まるのは扉が開いた一瞬のみといたしませ!
後はお2人の利点を活かすのみ。小ささと速さにございます。
小ささは的になりにくく、後は目にも止まらぬ速さで
団長の御前まで一気に進むのです。
よろしいですか?一気にです!」
バルドはここで一旦目を閉じる。再び2人に強い視線を向けた。
「ただ一つ私からのお願いにございます。
命尽きるまで諦めてはなりません。生き急いではなりません。
今は生き延びることをお考え下さい。それがセルジオ騎士団への忠誠にございます」
「承知した!バルド!感謝申す」
セルジオが力強く答える。
「承知致しました。
私の役目はセルジオ様が存分にお力を出せる様、お支えする事です。
バルド殿、感謝申します。覚悟が整いました」
エリオスもセルジオにならい呼応した。
サッ!
オスカーが2人にかしづく。
「セルジオ様、エリオス様、ご武運を!」
バルドもオスカーに倣いかしづいた。
「セルジオ様、エリオス様、ご武運を!」
カツッカッカッ!
一行はセルジオ騎士団団長居室前に到着した。
バルドとオスカーは扉の手前でとどまりセルジオとエリオスを見送る。
セルジオとエリオスはバルドとオスカーの顔を見上げるとうんっと一つ力強く頷き、扉を叩き到着を告げた。
トンットンットンッ!
「失礼を致します!
エステール伯爵家第二子。セルジオ・ド・エステールにございます。
セルジオ騎士団団長へ御礼のご挨拶にまいりました」
「ローライド准男爵家第二子。エリオス・ド・ローライドにございます。
我が主セルジオ様に同行致し、セルジオ騎士団団長へご挨拶にまかりこしました」
2人は扉の先へ意識を向ける。
「セルジオ殿、エリオス殿、入られよ」
ガコッ!
ギイィィィ!!
招き入れの声と共にセルジオ騎士団団長居室の両扉が内側から外側へ開かれた。
セルジオとエリオスはお互いの呼吸を合わせる。
「はっ!」
同時に返答をすると同時に右足から一歩部屋へ足を踏み入れた。
シュッ!!シュッ!!
2本の矢が目の前をかすった。
カッカッ!
交差し開いた扉脇に刺さる。
威嚇だ。
セルジオとエリオスは威嚇の矢を見切っていた。身じろぎ一つせずに矢が通り過ぎるのを待った。
「ほうぅ!」
居室奥の長椅子に座っているセルジオ騎士団団長がニヤリと口元を上げるのが見えた。目線が扉の両脇へ向けられる。
「エリオス!左だ!背を合わせるぞ!」
スチャッ!
セルジオは声を上げ自身は右を向き短剣を両手に構える。
「はっ!」
スチャッ!
エリオスはセルジオの指揮と同時に左へ向いた。
扉の両脇から短剣が放たれた。
シュッシュッ!!!
シュッシュッ!!!
カンッ!カンッ!
カンッ!カンッ!
セルジオとエリオス目掛けて放たれた短剣を手にした短剣ではじく。
ザッ!!
バッババッ!!
次の瞬間、2人は体制を低くし、団長が腰かける長椅子目掛けて床をけった。
ボッ!
ブワンッ!
セルジオの身体から『青白い炎』が湧き立つ。
「ほう、あれかっ!」
団長が傍らに立つ第一隊長ジグランへ視線を向ける。
シュッ!シュッ! シュッ!シュッ!
シュッ!シュッ! シュッ!シュッ!
再びセルジオとエリオスへ向け放たれた矢をかわす。
シャッ・・・・
ズシャッ!
が、セルジオの右腕を矢がかすった。白いシャツに血が滲む。
カシャン!
団長の両脇にいる騎士が短剣を鞘から抜いた。
カッカッカッ!!!
カッカッカッ!!!
セルジオとエリオス目掛けて歩みを進める。
「エリオス!下からいくぞ!」
「はっ!」
ザッ・・・・
ババッ!!!
2人は歩み寄った騎士の股下を足から通り抜ける。
タタタッタッ!!!
セルジオは団長のひざ元まで一気に駆け寄る。
スチャッ!
カチャンッ!
エリオスはセルジオと背中合わせに構えた。
シャキィン!
団長の傍らにいたジグランが剣を鞘から抜き、セルジオ目掛けて振り下ろす。
スッ・・・・
ドガッ!!
剣の先が石材床の上に敷き詰めた絨毯に突き刺さる。
「!!どこに・・・・!」
カタンッ!!
ジグランの後ろで乾いた音がした。振りむくと団長のひざ元の床に短剣を置き、息を切らし、かしづくセルジオの姿があった。
ブワンッ!ワンッ!
『青白い炎』が勢いよく湧き立っている。
「はぁはぁはぁ・・・・ぐっ!」
胸に手を置き呼吸を整える。
「お初にお目に掛かります。
エステール伯爵家第二子。セルジオ・ド・エステールにございます。
このたびは負傷した我らをお助け下さり感謝申します。
また、ご挨拶が遅れましたことお詫び申し上げます」
肩が大きく上下している。湧き上がっていた『青白い炎』は消えていた。
「・・・・ふむ。そなたがセルジオか・・・・面を上げよ」
「はっ!」
セルジオが顔を上げると目の前に団長の顔がある。
セルジオは静かに団長の薄く青い瞳を見つめた。
「ふむ・・・・
『その者、青白き炎を携え、剣を振るう。
剣は青き光を放ち一撃にて一団を切り裂く。
黄金に輝く髪、深く青い瞳、透き通る肌には青き血が流れる。
その名を持って国を守り、その名を持って国に安寧をもたらす』
どうだ?存じておろう?伝説の騎士『青き血が流れるコマンドール』の言い伝えだ。
そなたもまた黄金に輝く髪、深く青い瞳、透き通る白い肌、
そして『青白き炎』を携えていたな。そなたこのことどう思う?」
団長はセルジオに問答をはじめた。問答は『過信』を抱きやすい環境にいるセルジオが等身大の自身を冷静に客観視できているかの試験の一つだった。
エリオスはセルジオと背中合わせに短剣を構えた体制を崩さず騎士4人の動きを封じる様な気を発していた。
バルドとオスカーは居室の扉から少し外側にとどまり、その様子を見守っている。
ググッ・・・・
バルドとオスカーの拳に力が入る
セルジオが静かに口を開いた。
「「どう」とは?いかがなことでございますか?
己を伝説の騎士『青き血が流れるコマンドール』の再来と考えているか?
とのことでございますか?」
「そう思っているのか?」
団長がギロリとセルジオを睨む。居室の空気は凍り付いた様な緊張を帯びた。
「わかりません・・・・いえ、今はまだわかりません」
「わからないとはどういうことだ?己では認識がないということか?」
「・・・・団長にお答えする言葉がみつかりません」
「うん?」
「私が今、わかっているのは己の髪の色、瞳の色、肌の色、
そして訓練の時などに『青白い炎』が身体から湧き立つことです。
後は初代セルジオ様がこの身体に封印されていること、
時折、眠りの中で、初代様がお姿を現し私を諭して下さること、それだけです」
「『青白き炎』も己の中に封印された初代様が発せられているのか?
己自身からなのかもわかりません。
されば己が伝説の騎士であるかはわからないのです」
「ふむ・・・・では問いを変えよう。
皆がそなたを伝説の騎士の再来だと確信をしている。
そなたの戦いぶりも大したものだ。
騎士団入団は7歳、騎士として叙任を受けるのは14歳だ。
されど私がそなたは伝説の騎士であるから入団も叙任も早めようと申したらいかがするか?」
団長はセルジオの深く青い瞳をじっと見つめ、深淵を覗きこんでいる。
セルジオは団長の薄く青い瞳をひるむことなく見返していた。
「団長のお言葉ではございますが、お断りいたします!」
セルジオは両手で拳をにぎると力強く答えた。
団長は更にセルジオを追い詰めていく。
「なぜだ?そなたの力量であれば今すぐに入団も叶おう。
何より私が推挙している。それでも断るのか?」
「はい!お断りをいたします」
「ふむ。ではその訳を申してみよ」
「はい。私は訓練をはじめて日が浅く、己の意のままに扱える武具はございません。
今日もバルドに剣の手合わせを受けましたが左脇がいつも開きます。
武具と身体が一体となるには時が必要です。
されば私は今の己を弱いと思っています」
「そして、人を束ねることを学んでおりません。
人の心の動きが私にはわからないのです。心の動きを学んでいる最中です。
やっと今日、己の今の有り様をバルドへ伝えることができました。
なれば、今、入団せよと命が下りましても入団の力量には程遠いのです」
セルジオは真っ直ぐに団長の瞳を見る。
「バルドが・・・・我が師が常々申している言の葉がございます。
『団長独りが強いのではなく、皆を束ねることができる団長が強いのだ』と。
『己の弱さを認め、謙虚になれることが
皆を束ねることができる団長の資質』だと」
「私は騎士になり、騎士団団長になると我が師に誓いを立てました。
されば師が申す通り、『皆を束ねることができる団長』を目指し
訓練に励むことが今の己に必要なことと思っています」
セルジオはじっと団長を見つめた。
「・・・・ふっ・・・わぁっはっはっは!そなた!
いや、セルジオ殿!大したものだ!
その歳でここまではっきりと私にものが申せるだけでも驚くことであるのに!」
「いやいや、ジグラン!どうだ!
『我が師が説く教えに』こうも忠実なことも珍しかろう!
私など・・・・そなたの歳の頃は師の懐で毎夜泣いていたわ!
バルド!オスカー!こちらへ!
おっ、皆、構えをといてよいぞ。いやはや、度肝を抜かれたわっ!」
団長はセルジオの頭をくしゃくしゃとなでた。
エリオスは短剣を鞘に納め、セルジオの傍らにかしづく。
バルドとオスカーも居室へ入り、セルジオとエリオスの後ろでかしづいた。
「ジグラン!どうだ?
セルジオ殿は我が後継に申し分ないと思わぬか?」
騎士団団長は満足げな顔をジグランへ向けた。
「左様にございますな。セルジオ様、いや、団長。
セルジオ殿とエリオス殿の師は元々我が第一隊の従士にて、そのことお忘れなきように!
バルドとオスカーが師であったればこそのセルジオ殿とエリオス殿の今でございます」
「わかっておる、わかっておる!
ジグランは己のことより隊の者を大事と思っているからな!
そのこと、重々わかっておる」
団長はセルジオとエリオスの頭に手を置いた。
「この姿が我がセルジオ騎士団の有り様なのだ。
隊長は己のことより配下を想う。配下もまた己のことより騎士団を想う。
なれば団長は国と民を想い騎士団を活かすことができるのだ」
「セルジオ殿が先程申していた『皆を束ねることができる団長』とは
忠誠のその先にあると私は思っている。
お互いを心の底から信じることができて初めて騎士団は一つとなれるとな」
団長はそう言うと2人の頭をなでた。長椅子から立ち上がり声をあげる。
「エステール伯爵家セルジオ・ド・エルテール、
ローライド准男爵家エリオス・ド・ローライド、
並びにその師であるバルド、オスカーに告げる!
挨拶の義、確かに受け取った。
こののち一月の滞在のこと、
我がセルジオ騎士団はそなたらを歓迎する。
騎士、従士と同様に過ごされよ」
団長は膝を折り、セルジオとエリオスへ目線を合わせる。
「一度、私と手合わせを願いたい。
そなたらの師に執成しをしてくれぬか?」
セルジオとエリオスは顔を見合わせ頷き合う。
「はっ!承知致しました。身にあまる光栄に存じます」
セルジオとエリオスは大きな声で力強く答えた。
「うむ!楽しみにしているぞ」
団長はニコリとセルジオとエリオスへ微笑みを向けるのであった。
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