とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第3話 旅路の前に:前日譚2

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セルジオ、エリオス、バルド、オスカーは部屋を出ると食堂棟へ向かった。

セルジオ騎士団城塞、西の屋敷は団長、ジグラン他10騎馬隊長の居住棟の隣棟が食堂棟になっており、各棟とは屋根付きの回廊で繋がっていた。

西の屋敷には、常時150名程が居住している。騎士・従士と料理人、共同風呂等の水屋を管理する水屋番、厩舎番に洗濯や掃除を行う家事使用人、団長や隊長の身の回りに仕える侍従と女官、そしてよろいを管理・修繕する甲冑師かっちゅうし・剣、弓矢、槍等の武具を管理・修繕する剣鍛冶師などでそれぞれの役割ごとに居住棟が設けられていた。

西の屋敷自体が西の砦と合わせたシュタイン王国の西方を守る城壁の一部でもあった。西の屋敷を囲む城壁の8か所は塔になっており、見張台と武器、食糧等の貯蔵庫としても使われていた。

食堂棟は厨房ちゅうぼうと食堂に分かれており、食事時となれば騎士・従士が食堂棟に一堂に会し、一斉に食事をる。その為、木製の長テーブルがズラリと並んでいた。

ギィィギギィィィ!

食堂棟の重たい扉を開けると奥にある厨房ちゅうぼうから香ばしい香りが漂ってくる。

「セルジオ様、
料理長が焼き菓子を焼いていますね!よい香りがします」

エリオスが鼻を少し上に向け香ばしい香りを胸一杯に吸い込んでいる。

「よい香りだな!エリオス。
兄上様にも料理長の焼き菓子をしょくして頂けるな。
料理長の焼き菓子は美味しく、手が止まらなくなる」

セルジオも目を閉じ香ばしい香りを味わう。

「厨房をのぞいてみますか?
どのようにパンや焼き菓子が焼かれているかをご覧になってはいかがですか?」

オスカーは実際に調理している場をセルジオとエリオスに見せたいと思っていた。食べ物を口にする時、目の前にあるものがどの様な道を辿たどり、手元に届けられるのかを学ばせたいと考えていたからだ。

「よいのか?厨房ちゅうぼうへ入ってもよいのか?
見てみたいと思っていた。エリオス、パンは焼く前と焼いた後では
大きさが異なると申していたであろう?どれほど異なるのかみてみたいな!」

セルジオは目を輝かせエリオスへ顔を向ける。

「左様にございますね!
オスカー、料理長へ厨房へ入る許しをもらってくれないか?」

エリオスも興味深々きょうみしんしんな目をオスカーへ向ける。

「承知致しました。では、料理長へ頼んできましょう」

オスカーは厨房へ入っていった。

バルドは3人のやり取りを見ながらなぜか胸騒ぎを覚えていた。

『フリードリヒ様の黒の影が気がかりなのだろうか?
いや・・・・何だ?この胸騒ぎは・・・・』

自問するも答えは見つからない。流れに任せるより他にないと思っているとオスカーが厨房から戻ってきた。

「セルジオ様、エリオス様、
料理長のオットー殿がどうぞご覧下さいと申しております。
ただ今、パンと焼き菓子を焼いているそうです。
さっ、厨房へまいりましょう」

オスカーはセルジオとエリオスを伴い、厨房へ入っていった。バルドは3人の後ろか強くなる胸騒ぎと共につき随う。

厨房は壁面に大きな石窯が6つ配置されていた。中央には8つの大きな木製テーブルが設置されていて、150名分の夕食の食材が置かれているようだ。料理長の他、15人の料理人が西の屋敷全員の食事を作り、胃袋を支えている。

シュタイン王国は1日2食が一般的だった。朝食はらない。昼食を多めに摂り、夕食は軽食程度だった。

丁度、昼食の後片付けが終わり、夕食までの時間にパンと焼き菓子を焼いていたのだ。

石窯3つに火がくべられており、2つでパンを焼き、1つで焼き菓子を焼いていた。

セルジオとエリオスの姿を見ると料理長のオットーが嬉しそうに2人の名を呼ぶ。

「セルジオ様、エリオス様、
ようお越しになりました。丁度、焼き菓子が焼きあがります。
少々お待ち下さい」

森の木々が赤茶色に色づき、外気がいきが肌寒く感じる季節だが、厨房ちゅうぼうの中は石窯の火で暖かい。焼き菓子を焼く料理長と料理人は額に汗をかいていた。

「オットー、石窯の近くで見てもよいか?」

厨房の扉の近くからセルジオが声をあげる。

「窯に近づくと危のうございますぞ!・・・・
されど、今は火も静かでございますから、どうぞ窯の中の様子もご覧下さい」

オットーは石窯の火の様子を確認すると2人を手招てまねきした。

セルジオとエリオスはオットーから許しを得ると焼き菓子が焼かれている石窯に歩み寄った。

セルジオは石窯の手前で焼き菓子の焼き上がる様子を見ているオットーの少し後ろで背伸びをする。
背伸びをしても石窯の中が見えないことを確認すると木製の調理テーブルの近くにいるバルドへ駆け寄った。

「バルド!石窯の中が見てみたい!
抱えてくれぬか?背伸びをしても見えないのだ」

セルジオはバルドへ両手を差し出す。

「承知致しました。あまり、近づきますと危のうございます。
この辺りでいかがですか?窯の中は見えますか?」

バルドはセルジオを抱きかかえ、自身は少し膝をかがめた。

「!!よく見えるぞ!バルド!
石窯の中はこの様になっているのだな!
もっと炎が燃えさかっていると思っていたぞ!
エリオス!エリオスもオスカーに抱えてもらえ!よく見えるぞ!」

セルジオは弾んだ声で背伸びをしているエリオスへ語りかける。

エリオスはオスカーをチラリと見ると同じ様に抱え上げて欲しいと頼んだ。
オスカーは軽々とエリオスを抱え、バルドの隣に立つとセルジオの目線にエリオスの目線を合わせる。

「セルジオ様!よく見えます!この様になっているのですね!」

エリオスも目を輝かせ、石窯の中をのぞき込んだ。

「お2人共、その様に身を乗り出しては危のうございますぞ!
時折、くべたまきぜることがございます。
今少し、石窯より離れて下さいませ」

料理長オットーの言葉にバルドとオスカーは石窯の口より二三歩後ろへさがった。

バチッ!バチッ!パァッンッ!

石窯の中でまきぜ、一瞬、石窯の中を火の粉が舞った。

ビクッ!

セルジオはまきぜた音に反応し身体を強張こわばらせ呟いた。

「・・・・炎が・・・・ぜ・・・・」

「セルジオ様?」

バルドがセルジオの顔を覗く。

セルジオは炎を凝視ぎょうししているが時が止まった様に動かずにいる。

「セルジオ様?いかがなさいましたか?」

バルドがセルジオを石窯から遠ざけようとすると突然、セルジオが叫び声を上げた。

「やめろぉぉぉーー!!
火を消せ!消すのだ!火を消してくれ!早く!」

バルドに抱えられながら身を乗り出す。
バルドは慌ててセルジオを石窯から遠ざけた。

「離せ!!火を!!早く!火を!早く消すのだ!!
あぁぁぁぁ!!!あぁぁぁぁ!!オーロラァァァーーーー!!」

バルドはハッとする。

『初代様の追憶か!』

初代セルジオの悔恨かいこんと無念の感情が残った原因の一つ。光と炎の魔導士オーロラがマデュラ騎士団ギャロットの企てで魔女狩りにあい、火破りにされた100有余年前の逸話いつわをバルドは思い出した。

「離せっ!!離せと申しておろう!!」

セルジオは離さまいときつく抱えるバルドの手を振りほどこうともがく。

「セルジオ様!!離しませぬ!
あの炎は石窯の炎でございます!オーロラ様は炎の中にはおりません!」

バルドはもがくセルジオを更にきつく抱きかかえ、大声で言い聞かせるが、セルジオの耳には届かない。

「おのれ!!離せっと申しているであろう!」

セルジオは両足でバルドの胸をり上げると腰の短剣を抜いた。

シャッ!

バルドの首元へ短剣を振るう。
バルドは抱えていたセルジオを自身の頭上高く放り投げると短剣が握られているセルジオの手をはたいた。

カランッ!

短剣が厨房の石材床に落ちる。

ドサリッ!

続けて落ちてくるセルジオを抱きかかえると
自身の胸にしっかりと抱き寄せた。

「セルジオ様!お目覚め下さい!!
あれは石窯にございます!石窯で焼き菓子を焼いているのです!
お目覚め下さい!」

セルジオを胸に抱き寄せ、その場にかがむと懇願こんがんする様に叫ぶ。

「はな・・・・離せっ!
オーロラを!オーロラを!殺させはせぬ!離せぇっ!」

尚もバルドから逃れようと足をバタつかせている。

ガバッ!!!

エリオスがバルドに抱きかかえられているセルジオの背中に後ろから抱きついた。大声をあげる。

「セルジオ様!大事ございません!
あれに見える炎は魔女狩りの!火やぶりの炎ではございません!!
西の屋敷にて焼き菓子を焼く石窯の火にございます!」

「大事ございません!
オーロラ様は!オーロラ様は!悔いなく旅立たれました。
そして、今世にまた生まれ変わられております!大事ございません!」

「おのれ!そなたは誰だ!いつわりを申すな!!
我がねらいであれば我を始末しまつすればよいであろう!!
離せぇぇぇぇ!」

セルジオは身体を大きくゆすりバルドとエリオスから逃れようともがきにもがいた。

「エリオスにございます!セルジオ様!私はエリオスです!
こうしてまたお仕えできております!
ここは、この場所は西の屋敷の厨房にございます。
よく、ご覧下さい!」

パチンッ!

エリオスはバルドの右側に移動するとセルジオの両頬りょうほほを勢いよく両手で挟んだ。

自身の顔へ目を向けさせる。瞳を合わせるとセルジオの頬を包んだ手を大きく移動させた。

「ご覧になれましたか?ここは西の屋敷の厨房でございましょう?
私はエリオス、こちらはバルド殿、そして、オスカーにございます。
石窯の前には料理長のオットーがおります」

「どうですか?セルジオ様、偽りではございません。
ここはセルジオ騎士団城塞、西の屋敷にございます!」

エリオスはセルジオの両頬に手を置いたまま、それぞれの人物の名前を言うと眼で追わせた。

ピタリッ・・・・

セルジオのバタついていた動きが止まった。

「・・・・」

セルジオの深く青い瞳に精気せいきが戻る。

「・・・・エリオス?何をしているのだ?・・・・バルド・・・・」

セルジオは正気しょうきを取り戻した。

「セルジオ様!お目覚めになりましたか!」

「はぁぁぁぁ」

大きくため息を漏らす3人にセルジオはきょとんとした顔を向ける。

「どうしたのだ?なんだ!みなでその様に私を取り囲んでいるのだ?
石窯の炎をみていたはずだが・・・・私はなにかしたのか?」

セルジオはバルドへうかがうような目を向ける。

「!!!バルド!喉元のどもとから血が!!」

バルドの喉元のどもとからはセルジオが抜いた短剣がかすったか所に血がにじみ出ていた。

床に落ちている自身の短剣に気付くとセルジオはハッとした表情を見せる。

哀し気な眼をしてバルドの喉元のどもとの傷に手をやった。

「・・・・バルド、この傷は私がつけたのか?
私がバルドへ剣先を向けたのか?・・・・
私は何をしたのだ?何も覚えておらぬ・・・・」

バルドはセルジオをそっと抱き寄せる。

「大事ございません。
セルジオ様はまきぜる音に驚かれて
遠い昔のできごとを思い返されただけにございます」

「エリオス様がセルジオ様の思い出された遠い昔のできごとを
一緒に思い返して下さいました。
お目覚めになるまで、エリオス様はずっとお傍にいてくださいます。
我らがおります。思い出されればよろしいのです。
思い出されるたびに初代様の悔恨かいこん
無念むねんやわらいでいかれると存じます。
大事ございません」

セルジオはバルドの首に両手を回す。

「バルド、すまぬ!そなたに傷を負わせすまぬ!」

セルジオが初めて見せる哀し気な表情だった。己が起こした事を覚えていないこと、バルドを傷つけてしまったこと、何をどうしてよいか解らないと感じる初めての体験だった。

セルジオの様子にバルドは確信していた。感情豊かなフリードリヒに会ったことでセルジオが確実に変化している。
同時に自身が感じた胸騒ぎの原因がわかりホッと胸をなでおろした。

『先程の胸騒ぎはこのことだったか・・・・
私で事が済むのであれば何のことはない!
ただ・・・・初代様の封印がとかれたのではないとすると
前世の記憶を思い出されたということか?
いずれにしてもポルデュラ様へお話しせねばなるまい』

バルドはセルジオを抱き寄せ頭を優しくなでながらこの先を考えていた。

「さぁて、焼き菓子が焼きあがりましたぞ!
厨房での訓練はお済になりましたかな?
これからは訓練は訓練場にてお願いしますぞ!
ここは厨房にて、皆様みなさまの命をつなぐ
食をつかさどる所でございますれば」

オットーが焼き上がったばかりの焼き菓子を大きな木べらでテーブルへ広げる。

「セルジオ様、エリオス様、焼き立てでございますぞ。
火傷やけどをしないようにお召し上がりください」

オットーは焼き菓子の出来栄えに満足そうにするとしょくすよう勧める。

「セルジオ様、エリオス様、せっかくの料理長の焼き菓子です。
頂きましょう。焼きたては初めてにございますね」

オスカーが嬉しそうにテーブルへ近づく。
エリオスはオスカーの後に続いた。
エリオスはテーブルに手を伸ばし焼き菓子を手に取る。

「あついっ!!」

慌てて焼き菓子を手放した。

「焼き立てはこの様に手に取るのです」

オスカーは焼き菓子を手に取ると左右の手に交互に行ったり来たりさせた。

「!!!まるで、焼き菓子が生きているようだな!私もやってみるぞ」

エリオスが今一度、焼き菓子を手に取るとオスカーにならうが動きがぎこちない。

「あついっ!」

熱さに耐えきれず手にした焼き菓子をテーブルへ戻す。

「オスカー、上手いのう。私は熱くてその様に上手くできぬぞ」

エリオスが楽しそうな顔をセルジオへ向けた。

「セルジオ様もいかがですか?オスカーの様にやってみませんか?」

エリオスはセルジオへ誘いの声を掛ける。
セルジオはバルドと顔を見合わせた。

「おやりになってみてはいかがですか?何ごとも体験にございます。
私の傷はご案じめさらずとも大事ございません。
少々、かすっただけにございます。
まだまだ、セルジオ様に一本取られは致しませぬぞ。
ご案じなさいますな」

バルドはセルジオを抱えたままテーブルへ近づくとテーブル脇でセルジオを下した。
料理人が食堂棟から椅子を2きゃく運んでくるとセルジオとエリオスへ椅子の上に立つ様に言う。

エリオスはオスカーに抱えられ、早速椅子の上に立つ。
バルドがオスカーにならい、セルジオを椅子の上に立たせた。

エリオスはセルジオに焼き立ての焼き菓子の触り方を教える。オットーがその様子を微笑みながら見ている。

「さっ、セルジオ様、
この様にまず手に取ってみて下さいませ。
そして、左右の手に交互に・・・・」

3人はテーブルの上に置かれた焼き立ての焼き菓子を囲みにぎやかにたわむれていた。

セルジオとエリオスのやり取りが始まるとバルドとオスカーはテーブルから少し離れた所で2人の様子をながめる。
バルドはオスカーへ顔を向けると礼を言う。

「オスカー殿、感謝申します。今までもこれよりも感謝申します。
エリオス様とオスカー殿がご同道して下さる事で
我らは何度も命を救われました。
旅路の前にまた一つきずなが深まったように感じております。
セルジオ様のこと、これよりもどうぞ良しなにお願いいたします」

バルドはオスカーへそっと頭を下げる。

「何を水臭い事を仰せになりますか!
バルド殿、我らの宿命にございます。
騎士団にいたころより、いやそのずっと以前から
この様になると決まっていたのです。
存分に我らがあるじにお仕えしましょうぞ!
我らの宿命に懸けて!」

オスカーは右手を左胸にあて誓いを立てる。バルドもオスカーにならった。

「我が命を懸け、我らが主にお仕えする事を誓う」

2人は小声で誓いの言葉を口にすると頷き合った。

ギィギギィィィー!

食堂棟の重たい扉が開く音が聞こえた。
ベアトレスが4人を迎えにきたのだ。
食堂に4人の姿がないのを見ると厨房へ顔を覗かせる。

「こちらでございましたか。フリードリヒ様の回復術は終わりました。
ポルデュラ様がお茶と焼き菓子をお待ちになっておりますよ・・・・
おやおや・・・・ご用意はまだでございますか?」

「その様に食べ物で遊ばれてはなりません!!
バルド殿!オスカー殿!オットー殿まで!!
セルジオ様とエリオス様に何をお教えしてみえるのですか!」

ベアトレスが珍しくあきれた表情を見せバルドらをたしなめる。

「これは、ベアトレス殿、面目めんもくございません」

オットーが申し訳なさそうに苦笑いをする。
バルドとオスカーは顔を見合わせクスリッと笑った。

「ベアトレス殿、申し訳ございません。
我らにはお茶の準備は大仕事にて、早々に準備して頂きます」

バルドが夕食の下ごしらえをしている料理人からお湯が入ったポットとカップを受け取る。
パンを焼いていた料理人が焼き上がったばかりのパンも大皿に用意してくれた。

「焼き立てのパンもお付け致しますので、
ポルデュラ様へ良しなにお執成とりなしくだされ」

オットーがペロリと舌を出し、ベアトレスへ渡す。

「承知致しました。オットー殿からのお心使いとお伝え致します」

ベアトレスはにこやかに返答すると木製のワゴンにお湯の入ったポットとカップ、大皿2つに盛られた焼き菓子とパンを乗せた。

「さぁ、みなさま、
ポルディラ様とフリードリヒ様、ウーリ殿がお待ちです。参りましょう」

ベアトレスは4人に部屋へ戻る様、うながす。

「オットー、今日はこの上ない学びとなった。
石窯を見せてくれたこと感謝申す」

セルジオとエリオスはオットーに礼を言うとベアトレスの後に続いた。

バルドは3人の姿が厨房から出るのを見送るとオットーへ頭を下げた。

「オットー殿、お騒がせを致しました。
我が主に代わりおび申します」

オットーは顔の前で手を横に大きく振るとバルドへ返答をする。

「なんの。
セルジオ様、エリオス様のことは我ら西の屋敷に仕える者は存じております。
団長やジグラン様からもくれぐれも良しなにと申し付かっておりますればご案じ召さるな」

「感謝申します」

バルドは今一度、オットーに頭を下げると他の料理人へも頭を下げた。

「みなさま、お騒がせいたしました。今日のこと、感謝申します」

バルドのその姿にオスカーも同道する。

料理長と料理人への詫びと挨拶を終えるとバルドとオスカーは食堂棟を後にした。

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