とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第46話 紫の魔眼の解放

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ラドフォール騎士団火焔の城塞、円卓の間での会談が始まった。

ラドフォール騎士団三つの城塞のあるじと王都城壁訓練施設の魔導士ポルデュラが一堂に会している。

火・風・水・土の四大精霊に仕えるラドフォール公爵家魔導士の集結は円卓の間に威圧感を与えていた。

そんな中にあってもバルドとオスカーの微塵みじんも動じる素振りがない姿にウルリヒは改めて感心をしていた。

『この部屋に留まるだけでも胸に痛みが表れて当然であるのに・・・・
なんだ?この2人の平然とした姿は・・・・
これが青き血が流れるコマンドールの守護の騎士たる所以か・・・・
ポルデュラが惚れ込むのも解る』

ウルリヒはバルドとオスカーをまじまじと見つめ胸の中で独り言ちをしていた。

「兄上、バルドとオスカーを気に入った様じゃな」

ポルデュラがウルリヒの視線に気づき、ニヤリと笑う。

「そうだな。気に入ったと言うよりは感心をしているのだ。
四大精霊に仕える我らが一堂に会したこの場で
平然とした姿でいるのだからな。
青き血が流れるコマンドールの神より選ばれし
守護の騎士とはこの様なことなのだと改めて感じ入っていたのだ」

ウルリヒは感じたままを伝える。

「そうか。
バルド、オスカー、兄上のお眼鏡に適うとは大した者じゃ。
この先が楽しみじゃな」

ポルデュラはバルドとオスカーへ微笑みを向けると本題に入った。

「兄上、話しを進めてもよいか?」

「ああ、ポルデュラよ。頼む。進めてくれ」

ウルリヒは実妹ポルデュラへ会談の進行を任せた。

「うむ。
カルラ、そなたの城ではあるが、
今回は私の領分じゃ。進めさせてもらうぞ」

ポルデュラが火焔の城塞のあるじであるカルラに断りを入れた。

「はっ!ポルデュラ叔母上。
お気遣い感謝します。どうぞ、進めて下さい」

カルラは火焔の城塞のあるじらしく堂々と呼応した。

ポルデュラはうむと頷くと話に入った。

「では、これよりこの先のラドフォールとエステール、
そして、青き血が流れるコマンドールと
守護の騎士の進む道についての会談を始める」

普段はかしこまった事は言わないポルデュラが珍しく会談開始の号令からかけた。

一堂はポルデュラの様子に背筋を伸ばす。

「まずは今のセルジオ様の状態からじゃ。
4日前、火焔の城塞に到着と同時に蒼玉の共鳴が起きた。
新しき蒼玉の採掘場にカルラが八芒星の魔法陣で結界をはった」

「その同じころ、セルジオ様とエリオス様は書物で八芒星の魔法陣を目にした。
セルジオ様とエリオス様の胸には月のしずくの首飾りが下がっておる」

「そして、今は新月じゃ。
昼の太陽、夜の月、蒼玉、新月の金星と金星の化身である八芒星が
重なった事でセルジオ様の青き血が暴走をした。
暴走した青き血は私とセルジオ様の中におられる初代セルジオ様で抑えた。
今は風の回復術で湧き立った青き血の泉を鎮めている」

「しかし、その中でセルジオ様はご自身の深淵に落ちたのじゃ。
今、こちらにおられるセルジオ様は自我がない状態と言える。
己の泉の奥深く深淵へ落ちてしまわれたと言う事じゃ」

ポルデュラは、アロイスとバルドの間に腰かけているセルジオを見る。深く青い瞳が深みを増し、精気が感じられない。眼を開けてはいるが始終ぼんやりとして言葉を交わすことはできない状態にあった。

ポルデュラの視線に合わせる様に円卓に集う面々はセルジオを見つめる。

セルジオを一瞥するとポルデュラは話しを続けた。

「セルジオ様が深淵へ落ちてから既に3日が経った。
これ以上、先へ延ばせば深淵から戻ることはできなくなるじゃろう」

ウルリヒがポルデュラの話に口を挟む。

「ポルデュラ、セルジオ殿は今、己の中でどのようになっているのだ?
太陽と月、蒼玉と金星、金星の化身である八芒星が重なった事で
青き血の泉が暴走したこと、セルジオ殿の自我が深淵に落ちた事は解った」

「セルジオ殿はなぜ深淵に落ちたのだ?
落ちた自我を深淵から引き戻すことができるのか?
できなければセルジオ殿はこのまま自我を欠いたまま、
操り人形の様な状態で生涯を過ごすと言う事か?」

ピクリッ!

バルドはウルリヒの言葉に無意識に身体が反応した。

右隣に座っているセルジオの頭をそっとなでる。

バルドの向かい側に座っているベアトレスはバルドの何とも言えない表情に胸が締め付けられる思いだった。

セルジオの心が初代セルジオの悔恨と共に封印をされた時に居合わせた者同士、ベアトレスはバルドの心情が痛い程解る。

ポルデュラは、バルドとベアトレスの反応を視るとすぐさま言葉を繋いだ。

「兄上、大事ない。セルジオ様の自我は戻られる。
いや、連れ戻しにいくのじゃ。
セルジオ様が深淵に落ちたのは己の精神の成長と
身体の成長の調和がとれていないことに原因がある。
精神の成長に身体の成長がついていかず思う様にならないのじゃろう」

「青白き炎の制御も青き血の制御もままならず、
バルドやオスカー、エリオス様へ負担をかけていると考えている様じゃ。
バルドが寄越す手紙にはいつもその様に己を戒める言葉が書いてあった。
自我を取り戻す為には精神と身体の調和を図ることしかない。
今は、致し方ないことを解って頂かねばならぬのじゃ。
しかし、まずは連れ戻しに、セルジオ様の自我を深淵から連れ戻しにいかねばならぬ」

ポルデュラは、バルドへ少し厳しい顔を向けるとバルドの名を呼んだ。

「バルド!」

バルドはいつもより強く名を呼ばれ咄嗟に椅子から立ち上がると呼応した。

ガタッ!

「はっ!」

その場で左腕を胸におき、軽く頭を下げる。

「うむ。すまぬな。突然に名を呼んだ。まずは座ってくれ」

ポルデュラは珍しく大きく息を吸った。封を施す時の様な厳しく、張り詰めた声を上げる。

「これより、バルドの魔眼の封印を解くっ!」

円卓を囲む皆の視線が一斉にポルデュラへ向けられた。

「兄上、よいな。今ここでバルドの魔眼の封を解く。
一度解いた封は同じ術で封を施すことはできぬ。
バルドはこの先、封を解いた魔眼を抱え、生きていく事になる」

「そなたの魔眼は『深淵を覗く眼』じゃ。
まだ、幼子の時に封をされているからな。
封を解いた事で何が起こるのか?どんな状態になるかも解らぬ。
それでもそなたの魔眼だけがセルジオ様を
深淵から引き戻すことができる唯一の策となる」

ポルデュラはバルドの顔をじっと見つめた。23年前、ダグマルが予見した星読みの言葉を口にする。

「王国にわざわいの兆し現れし時、
王に神の加護をもたらす者、天使の河に流れくる。
天使の河より救いあげ、蒼き印の元にて育むべし。
ビオラ六芒星ヘキサグラムに守護され、
時来れば王国のわざわいを払い去る。
蒼玉に愛され、月の雫を愛しむ慈愛の心が芽生えし時、
深いビオラの光を宿し、先の世の救いとならん」

アロイスはポルデュラが口にした星読みの言葉を聞くと勢いよくバルドの顔を見た。アロイスやカルラは23年前のダグマルの星読みを知らない。

ポルデュラは皆に解る様に敢えてウルリヒに向けて言葉を繋いだ。

「兄上、ダグマルの星読みだ。今、この時だったのだ。
『蒼玉に愛され、月の雫を愛しむ慈愛の心が芽生えし時、
深いビオラの光を宿し、先の世の救いとならん』
蒼玉の共鳴を起こし、セルジオ様を心の底から愛しみ、
己の身など滅んでもよいと思っておる。
深いビオラの光を宿す時がきたのじゃ。
『先の世の救いとならん』は青き血が流れるコマンドールを
先の世まで生かせと言う事じゃ」

「バルド、そなたの魔眼の封を解けば、見えすぎることとなろう。
そなたが堪えられぬことがでてくるかもしれぬ。
それでも、セルジオ様をお救いできるのはそなたしかおらぬ。
そなたの魔眼が必要なのじゃ。バルド、堪えてくれるか?」

ポルデュラは再びバルドへ厳しい視線を送った。

ガタンッ!

バルドは再び椅子から立ち上がると円卓から一歩後退した。その場でかしづく。

「ポルデュラ様、ご心配には及びません。
元より、我が身はあるじに捧げております。
青き血が流れるコマンドールの守護の騎士として頂いたことは我が身のほまれ
赤子の頃エンジェラ河より拾い上げられたこと、
あの戦場でのこと、既に二度滅びた身にございます。
ポルデュラ様に活かして頂いた身にございます」

「私の身に何が起ころうともセルジオ様の自我が取り戻せるのであれば、
セルジオ様をお救いする事が叶うのであれば何を迷う事がございましょう。
存分に役目を果たしたく存じます」

「ポルデュラ様、どうかセルジオ様の本復を第一にお考え下さい。
封を解くことで我が身に及ぶことは全て私自身が至らぬ事への戒めにございます。
どうぞ、封を我が眼の封を解いて下さい」

バルドはかしづいたまま一気に、そして懇願する様にポルデュラを含む円卓を囲む面々に訴えた。

「バルド!よくぞ申したっ!
なに、大事ない。我ら四大精霊に仕えしラドフォールの魔導士が助けとなろうぞ。
そなたの魔眼を解放した後、セルジオ様の中におられる初代セルジオ様の元へまずは送る。
その先は、初代セルジオ様が道案内をしてくれることじゃろう。
初代セルジオ様はそなたがセルジオ様を迎えにくることを心待ちにしている。
初代セルジオ様と共に内と外とでセルジオ様をお支えする役目、存分に果たしてくれ。頼んだぞ」

「はっ!!」

バルドは力強く呼応した。

「では、始めるぞ。
バルド、そなたの首より下がる翆玉エメラルドのクルスを出してくれ」

「はっ!」

バルドは白いシャツの首元に人差し指を入れると白金プラチナの鎖を引き、翆玉エメラルドのクルスをシャツの上に出した。

「セルジオ様の隣に座ってくれ」

バルドは元いた場所に腰かける。

ポルデュラは円卓をぐるりと回りバルドの座る椅子の後ろに立った。

左手をバルドの頭の上で時計回りに回転させる。

「ふぅぅぅぅふっ!!」

フワリッ!
ガタンッ!

バルドが椅子ごと半回転し、円卓を背に身体がポルデュラの方へ向いた。

「皆、これよりビオラの魔眼の封を解く。
兄上、アロイス、カルラは眼を閉じてくれ。
精霊に仕える我らへ解放された深淵を覗く魔眼の光がどう作用されるか解らぬのじゃ。
万が一の事があるからな。眼を閉じ、この場から逃れる準備だけしておいれくれ。
エリオス様、オスカー、ベアトレスも念の為に眼は閉じていてくれ。
何かあれば風の珠でそなたらを保護する。安心していろ」

ポルデュラはいつになく念入りにそして、丁寧に身の安全を確保する方法を皆に伝えた。

それぞれがポルデュラの言う通りに眼を閉じる。ウルリヒ、アロイス、カルラは魔術がいつでも発動できる状態でいる。

ポルデュラは先程より少し緊張をはらんだ声音で円卓を囲む面々の準備ができているかを確認する。

「皆、よいなっ!では、まいるぞっ!」

ポルデュラはバルドの額の前で両手を交差させた。

ピィィィンーーーー

ポルデュラの交差した両手から銀色の光の珠がバルドの額に放たれた。

「月なき闇夜を照らす全天の輝き、
青白き二つ星シリウスの鍵を持ちて封されしビオラ
月の現れ、目覚めの時を迎える。
翆玉エメラルドの光に導かれ、
六芒星ヘキサグラムに守られしこの者の瞳に宿る真のビオラ
今ここに青白き二つ星シリウスの鍵を持ちて再びビオラの輝きを解き放つっ!」

交差した両手をバルドの眼の前で何度か左右に揺らす。

「ふぅぅぅぅぅふうぅぅぅ」

パチンッ!!

両手を交差したまま中指と親指を合わせて音を鳴らした。

ブゥゥゥゥンーーーー
ブゥゥゥゥンーーーー

何かが振動する様な音が円卓の間に響く。

パァン!!!

バルドの額に放たれた銀色の珠がバルドの顔の前で弾けた。

「くっ!!!」

眼を閉じているバルドは銀色の光の珠が弾けると眼に激痛を感じた。

思わず痛みに堪える声が出る。

「バルド、痛むか?堪えよっ!」

ボルデュラはバルドの痛みに堪える声とその表情に一瞬怯んだ自分自身に言い聞かせる様に言った。

「ポルデュラ様、大事ございません。お続け下さいっ!」

バルドは拳を固く握り、眼を閉じたままポルデュラへ呼応した。

「もう少しの辛抱じゃ。続けるぞ」

ポルデュラは静かに答える。

再びバルドの額に銀色の光の珠を放った。

パチッハチッ!!!
バチンッ!!!

バルドの額で銀色の光の珠がまるで稲妻の様に激しく弾けた。

額にうっすらと六芒星ヘキサグラムの形が浮かぶ。

ポルデュラはバルドの額に浮かんだ六芒星ヘキサグラムに両手をかざし銀色の光の珠を六芒星ヘキサグラムの中心に放った。

「シリウスの鍵を持ちてビオラの魔眼、解放すっ!」

シャリンッ・・・・

銀色の光の珠が粉々に砕け六芒星ヘキサグラムも消えた。

「バルド、ゆっくりと眼を開けよ」

バルドは痛みを堪えて強張った身体と強く握りしめていた拳を緩める。首元から汗が滴り落ちている。大きく息を吸い込むとゆっくりと眼を開けた。

霞がかかったように視界がぼんやりとしている。ポルデュラが状況を確認する。

「どうじゃ?視えるか?」

「・・・・はっ!
視点がハッキリとしません。ぼんやりとして・・・・」

ギクリッ!

バルドはポルデュラを見上げ、驚く様に眼を見開いた。

「どうした?バルド。何が視えている?」

バルドの眼にはポルデュラの背後に深緑色をした大きな人影が写った。

「こっ・・・・これは・・・・精霊?
風の精霊シルフ様・・・・?」

慌てて、ウルリヒ、アロイス、カルラを視る。

それぞれの背後に仕える精霊が人の形を成していた。

それだけではない、円卓の間の壁が取り払われたかの様な広い空間の中にいる。

「ぐふっ・・・・」

バルドは吐き気をもよおし、咄嗟に口を押える。

「バルド、一度、眼を閉じよ」

ポルデュラがバルドへ銀色の風を送る。

「封を解いた事で天と地が融合したのじゃ。
六芒星ヘキサグラムは精霊の様な人の眼に映らぬ霊的な存在と
人の眼に映る物質的な存在を融合し、調和を保つのじゃ。
封がされていたのは霊的な存在を視る天の逆三角じゃ。
物質の三角との調和がとれていないのじゃろう」

ポルデュラはそう言うと再びバルドの額へ銀色の光の珠をあてる。

「ふぅぅぅぅぅ・・・・」

「天と地、重なりしビオラの魔眼。
その間に映る歪みを取り除く。
天と地の融合、ここに成す姿にて深淵を覗く眼に再び生を与える」

ブワンッ!

バルドの額を中心に銀色の光の珠が円卓の間に広がった。

ブワァンッ!

バルドを中心に風が吹く。

バルドは左足の腿と右足首にある六芒星の刻印にじんじんと疼きを感じていた。

眼を閉じたまま自身の身体の状態をポルデュラへ伝える。

「ポルデュラ様、刻印が、左足と右足にある刻印がじんじんと疼きます」

疼くだけではない。熱を帯びているようにも感じる。

バルドの額へ両手をかざしていたポルデュラがすっと手をのけた。

「そうか。天と地の重なりに調和が取れたな。
バルド、眼を開けてみよ」

バルドはゆっくりと眼を開ける。

焦点が合い、霞がかかった様なぼやけはなくなっている。先程の様な吐き気も襲ってはこない。

「どうだ?先程と情景は同じか?」

ポルデュラはバルドを見下ろし、状態を確認する。

バルドはそっとポルデュラを見上げた。

同じ様に守護する精霊が深緑色の大きな人形でポルデュラの背後で揺らめいていた。

ウルリヒ、アロイス、カルラに目をやると同じ様に守護する精霊が視えた。

エリオスとオスカーへ目を向ける。

ドキリッ!!

エリオスの背後には金糸で縁取られた蒼いマントを纏い重装備の鎧を身に付けた金色の髪、深く青い瞳の人影が見えた。

オスカーの背後にも同じ様に金糸で縁取られた蒼いマントを纏った重装備の鎧を身に付けた銀色の髪、深い緑色の瞳をした人影が見える。

ゴクリッ!

バルドは固唾を飲んだ。

ベアトレスの背後にも白い衣服に身を包んだ人影が見える。

「どうした?バルド。何が視える」

バルドはポルデュラの顔を見上げる。

「・・・・背後に・・・・
皆様の背後に人影があります。はっきりと視えます」

「辺りはどうじゃ?
この部屋の様子はどうじゃ?円卓は見えているか?」

バルドはポルデュラの後ろに目をやる。

円卓はなんら変わらず置かれていた。先程の様に部屋が広さを増している様には映らなかった。

「はい。円卓も椅子も全て部屋に入った時と違いありません」

ポルデュラはふぅぅと大きく息を吐いた。

「魔眼の封は解かれたぞ。バルド。
天と地、霊的存在と物質的存在の調和も取れた。
後はそなたが自在に魔眼を操れる様になるだけじゃ。
これは時が解決してくれるじゃろう」

ポルデュラはバルドの頭に両手を添えると自身の胸に引き入れた。優しく両腕で包み込む。

「よう、堪えたな、バルド。よう、堪えた。
そなたの魔眼に封を施したウルリーケ殿のお陰じゃ。
シリウスの鍵で封がなされていなければ今この時に封を解く事はできなかった。
よう、堪えた、バルド」

ポルデュラはバルドをぎゅっと抱きしめた。

誰かを抱きしめる事等ないポルデュラがバルドを抱きしめる姿を目にしたウルリヒ、アロイス、カルラは驚き、お互いの顔を見る。

ウルリヒが声を上げた。

「ポルデュラにその様に抱きしめられる者もあるのだな。
バルドとオスカーはそなたにとってその様に特別な存在か・・・・」

微笑ましい光景を見ているかの様にウルリヒは眼を細める。

ポルデュラはバルドを優しく両手で包みこんだままウルリヒに呼応した。

「兄上、その通りじゃ。
バルドがおらねばオスカーもおらぬ。
セルジオ様もエリオス様もおらぬ。
バルドがおればこそのこれからなのじゃ」

バルドはポルデュラの胸に抱きしめられ、優しく打つ鼓動に身をゆだねるのだった。







【春華のひとり言】

今日もお読み頂きありがとうございます。

バルドの魔眼が解放されました。

バルドがセルジオを想う様にポルデュラもまたバルドを想う。

優しい気持ちの連鎖は心地よいなと感じています。

次回はセルジオを深淵から救い出しに行きます。
バルドの活躍にご期待下さい。

星の魔導士ダグマルの23年前の予見の回は

第3章 第39話 星の魔導士の予見2



次回もよろしくお願い致します。
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