とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第125話 始まりの場所

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セルジオ達一行は、馬一頭分の道幅の土道を縦列で進んでいた。

先頭はマデュラ騎士団第一隊長コーエンに仕える騎士でその後を馬三頭分の間隔をあけ、コーエンが続く。

コーエンの後ろにセルジオを乗せたバルド、その後ろにエリオスを乗せたオスカー、最後尾はもう一人の騎士が辺りを警戒する様に進んだ。

バルドは後ろを振り向きオスカーと目を合わせる。

この縦列は要人を守護する際に騎士団が用いる手法だ。

道幅が広ければセルジオの乗る馬の両脇に騎士を配置されただろう。

バルドとオスカーは頷き合った。

バルドとオスカーの意図するところをコーエンが汲取った結果だと避けられた戦闘にお互い安堵の表情を浮かべる。

カコッカコッカコッ・・・・
カコッカコッカコッ・・・・

五頭の馬は土道をゆっくりと進んだ。

ポルデュラの結界に覆われているからか、先ほど通ってきた薄暗い土道がやけに明るく感じる。

バルドはそっとセルジオの様子を窺った。

これから向かう先は初代セルジオが命を落とした場所であり、初代セルジオが愛した光と炎の魔導士オーロラが火刑に処せられた場所だ。

今はマデュラ騎士団訓練場になっているとはいえ、初代セルジオが最も強く悔恨を残した場所でもある。

悔恨の浄化を施し、セルジオの中で鎮ずかに眠りについた初代セルジオを刺激するにはこの場所を置いて他にはないだろう。

セルジオ自身も訓練場の横を駆け抜けた際に後ろを振り返っていた。

バルドはセルジオの小さな背中に目をやりながら結界が発動した時に空に浮かんだポルデュラが発した言葉を思い返した。

『ブレン殿を信じよ。ブレン殿が率いるマデュラ騎士団を信じてみよ。今、この時より青と赤の因縁を我らの手で終わらせるのじゃ。黒魔女マルギットの思惑通りになってはならぬ。黒魔女はそなたとオスカーに疑念を抱かせ、ブレン殿との衝突を引き起こそうと目論んでおる。マデュラの地で青と赤の因縁は続いていると王国内外に知らしめたいのじゃ』

『策に乗ってはならぬ。そなたの魔眼を活かすのじゃ。深淵を覗き、真実を見抜け。謀略ではないぞ、進むべき道を見誤らぬまことを見抜くのじゃ。初代セルジオ様が身罷みまかれた地で青と赤の因縁の終わりの始まりを告げるのじゃ。バルド、青き血が流れるコマンドールの守護の騎士として役目を果たせ』

バルドは深い紫色の瞳に力を入れた。

セルジオの背中から胸の奥へと意識を集中させた。

辺り一面は純白でまるで雲の中に入り込んだ様だった。

次第に雲間から濃紺の空が見え隠れする。濃紺の空が薄紫色に移ろうと湖の湖面に漂っていた霧がゆっくりと森へと降りていく。

『これは・・・・セルジオ騎士団西の屋敷の城壁塔・・・・出立の際に我ら4人で眺めた情景だ』

バルドは胸がつまった。

恐らく、ここが初代セルジオが最も愛した場所で、愛した者達と共に過ごした心安らぐ場所なのだ。

眠りにつく際に初代セルジオ自身が選んだ場所と出立時に4人で眺めた場所が一致していた事にバルドは今更ながら宿命を感じた。

『初代様の封印が解ける事は、最早この先あるまい。私は・・・・何を恐れていたのだ』

バルドはセルジオの腹にそっと手を回し、頭に口づけをした。

「バルド?いかがした?」

セルジオがバルドの行動に訝し気な顔を向ける。

バルドはセルジオへ微笑みを向けた。

「いえ、セルジオ様が愛おしく・・・・つい・・・・」

そう言うとバルドは今一度セルジオの頭に愛おしそうに口づけをした。

耳元で小声で囁く様に確認をする。

「セルジオ様、胸に痛みなどはありませんか?なにかご様子が変わる様でしたら直ぐにバルドに申して下さい」

セルジオはバルドが何を案じているのか察していた。

コクンと頷くと訓練場の横を通った時に目にした事を正直に告げる。

「先ほど、訓練場の横を駆け抜けた際に初代様が見せられた木枠が崩れ落ちる情景がうっすらと見えた」

セルジオはクルリと首を回しバルドと瞳を合わせる。

不安など微塵も感じさせない力強い視線でバルドを見つめた。

「胸の痛みもない。ざわざわと胸が騒ぐことも感じない。バルド、私は大事ないぞっ!」

バルドを安心させるように手綱を握るバルドの手の甲に小さな手を乗せると真っすぐ前を見据えた。

「バルド、私は大事ないっ!」

バルドはセルジオの言動に胸が熱くなる。

「はっ!」

バルドはセルジオに呼応すると姿勢を正した。


突然に先頭の騎士が駆け出した。

バルドが騎士を目で追うとコーエンが馬の鼻先を斜めにし、こちらへ顔を向けた。

「そろそろ、我らマデュラ騎士団訓練場に到着致します。先頭の者が団長ブレンに知らせに向かいました。戻りますまでこちらでお待ち下さい」

コーエンはセルジオの深く青い瞳を見つけて言葉を発していた。

セルジオは左手を胸に当てる。

「承知致しました。団長への知らせのこと感謝もうします」

コーエンはセルジオの呼応に微笑みを向けるとチラリとバルドへ目を向けた。

バルドから先ほどの様な重圧感が全く感じられないことに安堵の息を一つ吐いた。

マデュラ領に入ってからセルジオ達一行に与えてしまった誤解は少しは解けたとコーエンは胸をなでおろした。

パカラッパカラッパカラッ!!!
パカラッパカラッパカラッ!!!

暫くすると知らせに向かった騎士が戻ってきた。

コーエンの傍に馬を寄せ、耳打ちをする。

コーエンは大きく頷き、セルジオへ顔を向けた。

「セルジオ騎士団団長名代セルジオ様、守護の騎士エリオス様、バルド殿、オスカー殿、我がマデュラ騎士団団長ブレン、全団員総勢150、お出迎えの準備が整いました。ご同道願いますっ!」

大声で口上を述べる。

「承知したっ!」

セルジオが臆することなく呼応するとコーエンは駆け出した。

縦列を崩すことなくバルドとオスカーはコーエンの後に続く。

青と赤の因縁の始まりの地、マデュラ騎士団訓練場の囲い壁が目前に迫っていた。




【春華のひとり言】

今日もお読み頂きありがとうございます。

いよいよ、青と赤の因縁の地に到着しました。

初代セルジオの封印が解ける事はないと確信したバルドとセルジオ。

事ある毎にセルジオとエリオスの成長が垣間見え、それに対するバルドとオスカーの言動が感情豊かになってきています。

人間は良くも悪くも感情の生き物だなぁ~と感じた次第です。

次回はマデュラ騎士団の組織体がシュタイン王国の定めを逸脱している理由が明かされます。

法令、規則や規律が運用と合致していない時に取るトップの行動やいかに・・・・

団長ブレンの手腕をお楽しみください。

次回もよろしくお願い致します。
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