天上下427

里之子 葱子

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4.かっぱさんは、河童のオンナにしか興味がない!

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「皿が……皿が……!」
そこには校庭をうろうろしている1人の緑色の男がいた。
「どうするか……。どうやって取り戻せばいい!?」
彼はバトルロワイアル参加者の1人であり、つい最近人質を捕られたため、目に見えて狼狽しているのだった。
「私の大切な、河童の皿!!!」
男の名は小泉河太郎こいずみかわたろう
オシャレなスーツに身を包み、黒いハットを被った河童だ。
「今、大切な、と聞こえましたが。貴方もバトルロワイアルの参加者ですか?」
「ん? 誰だ?」
突然声を掛けられ、河童の小泉は怪訝そうに顔を顰める。
現れた狐面の少女に、見覚えはない。
「初めまして。赤蜘蛛百合と申します」
「私は小泉……小泉だ! しかし今は自己紹介をしてる場合ではない。一刻を争う事態なのだ。私の大切な河童の皿が、外道院に奪われてしまったのだ!」
「ええ、まぁ。参加者ならそうでしょうね。私も捕られてますしねぇ……」
「……随分お前は冷静だが、人質が大切ではないのか?」
「ええ、大切ですよ? ですから戦えばいいだけではありませんか」
呼吸をするのと同じように。自然に、構えをとる。
手袋に描かれた彼岸花をすっと撫でると、その手からぼぅっと炎が現れた。
それを見て、河童の小泉は目を細める。
「お前はなかなか好戦的なのだな。まぁ私も自分の人質が何よりも大切だから、来ると言うのなら、迎えてやろうじゃないか」
河童の小泉もまた、水かきのある自身の手をすっと胸の前で構える。
わらわらと野次馬も集まってきた。
バトルロワイアルの初戦闘を、皆固唾を飲んで見守っている。
赤蜘蛛は、複数の火の玉を周囲に展開した。
『燃えろ狐花きつねばな
それが赤蜘蛛百合の能力である。
炎、そして熱量を自在に操ることができる。ライターほどの小さな炎から、一瞬で辺り一面を燃やし尽くす業火まで出現させることができる。複数の炎を出現させることができるが、その際熱量をバラバラにすることはできない。そして調整に失敗すると自分を焦がすというデメリットもある。
複数の火の玉は、一直線に河童の小泉へと向かって行く。
「!?」
しかし、その火の玉の先に、小泉はいなかった。
(早い……!)
背後に気配。
咄嗟に振り返る。
その時だった。
臀部に、何かが触れるような感覚。
「!!」
訳も分からず、咄嗟に赤蜘蛛は自身の周囲に熱源を生み出す。
「熱ッ」
いつの間にか背後にいて、そして赤蜘蛛の尻に手を当てていた小泉は、後ずさった。
「ちっ、掠ったか」
「へ、変態!」
赤蜘蛛は顔を真っ赤にして叫ぶ。
(お尻を、お尻を触られた!)
「何を言ってるんだ! かっぱさんは、河童のオンナにしか興味がない!」
「じゃあ何で触ったんですか!」
「これが私の戦い方だからだ!」
「……っ~~~~! 覚えてなさい!!!」
思わず古典的な捨て台詞を吐いて、赤蜘蛛は逃走した。
訳も分からず逃走した。だって訳が分からなかったから。

「ちっ、逃げ足の早い奴め。……おい、お前達、なんでそんな顔をしてるんだ。違う。変態じゃない! これが私の能力であって……。通報はよせ! お前の尻も触るぞ!」
赤蜘蛛が去った後、先の戦いを観ていた野次馬達と河童の小泉との尊厳を巡る通報レースが勃発したが、それは割愛する。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

みかさ
2021.08.24 みかさ

とうとうバトロア初戦闘ですね!!
戦闘カッコいい!!
かっこ…かっこ…
変態ーーーーーーー!!!!!!!!

2021.08.24 里之子 葱子

ご感想ありがとうございます!
そう、かっこいい戦闘……かっこいい異能バトルーー変態だーーーーーーーーッッッ!!!

解除

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