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煌の昔話
騙されたと解った時の、そのショックは未だ持って言いようのないものだ。
膝の力が抜け、一体今まで何があったのか、それとも全てが夢だったのか。
まさに言葉を失うかしかなかった。
だけど何よりも、こんなに簡単に騙されてしまった事が兄貴に申し訳ない気がして、俺は居たたまれなくなったんだ。
誰よりも俺を気にかけてくれていた、そして、認めてくれていた兄貴をがっかりさせてしまう。それが何より辛かった。
兄貴は俺と違って出来がいい。昔はかなりやんちゃもやっていたけど、気がつけばいつの間にかエリート街道を進んでいた。しっかり足下を固めた兄貴と違って、俺はいつまでもふらふらして、周囲に心配されていた。兄貴と比較される事もしばしばだったけど、俺はちっとも気にならなかった。兄貴と同じようには生きられない。
そしてなにより、兄貴が俺の一番の味方だった。
俺が店を持ちたいと言ったときも、誰よりも話を真剣に聞いてくれた。なんでも力になると言ってくれた其の言葉には、俺に対する期待も込められていたはずだ。失望はさせたくない。だから兄貴に事が知れる前になんとか事態を収めようとしたけれど、金を持ち逃げした奴らは一向に見つからなかった。巧妙に姿を眩ました奴らの足取りを掴むことはできないまま、一度ケチがつき始めると全てが悪い方へ転がってゆくもんだ。何をやってもそれが裏目に出る。すっかり運に見放され自暴自棄になった俺は、それからどんどん落ちていった。
変わってしまった俺の人生。
そんな状況でも、身を立て直そうと思えばきっと出来たのかもしれない。だけど、あの頃の俺にはそんな事を考える余裕や冷静さはなかった。
今頃兄貴は、姿を眩ませた俺を心配してくれてるかもしれない。
こんな俺の状態を知ったら、兄貴は何を思うだろう? それとも、騙されて何もかも失った俺に流石に愛想をつかしただろうか。こんな馬鹿な弟がいたことなど忘れて暮らしているのなら、寧ろその方がいい。
さっきから、朝陽がごそごそと部屋の片付けをしている。とはいえ、片付けるほど広くもなければ物もないんだけれど。たぶん、これはもうコイツの習性みたいなもんなんだろう。こんなにキレイ好きな奴がこんな処に住んでるんだから、よっぽどの事情があるんだろう。あれだけ寸暇を惜しむように働いていたら、いくらなんでももう少しマシな処に住めるはずだ。
朝陽は何も言わない。何も言わず、殆ど休みなく毎日働いている。まるでムキになっているように見えるときすらある。
一体なにを其処までムキになっているのか。ただ何となく判ることは、それは希望に向かっているものではないということ。
「煌、いい加減洗濯もの溜めるの止めろよな」
再び溜まり始めた袋の中身に顔しかめて、朝陽が言った。
この間まとめて洗濯して大分整理した。だけど、どこか生活に無気力な俺は、積極的に身の回りをどうこうしよいうという気がなかなか起きない。
気がつくと、また朝陽に小言を言われるような状況になっている。
以前の俺もこんなにもだらしなかっただっただろうか?
もう少し、まともに生活していた気もするが。
「あ~、わかったよ……」
なにか反論したい気持ちもあったけど、ここは素直に返事をしておくのが得策と判断した。
家賃だって折半してるし、これでも自分の面倒は自分で見てるから立場は一応対等だけれど、やっぱり朝陽には頭が上がらない。拾ってもらった義理ってのもあるけれど、再起不能なほどやられた俺を朝陽はなんの見返りも求めずに世話してくれた。殆ど一日中働きに出て、深夜に帰ってくれば俺のメシだの傷の手当だの。迷惑そうな顔一つせず良くやってくれて、そのうえ、宿無しの俺を此処においてくれた。すっかり世話になっておきながらなんだけど、ほんとお人好しだ。其の後も今に至るまで、恩着せがましい態度を見せる事も一切無い。そんな朝陽に感謝こそすれ、文句を言う立場でもない。
それとも、時々見せる偉そうな態度は、あの時の仕返しなんだろうか?
だけど、頭が上がらない理由はほかにある。
こんな暮らしをしていながら、朝陽は悲壮感を漂わせている訳でもないし、愚痴をこぼす訳でもない。いつもよく喋るし、よく笑って明るい朝陽。
けれど、そんな明るい朝陽が時折酷く傷ついた顔で、塞ぎ込んでいるのを知っている。俺の前じゃ、絶対そんな顔は見せないけれど。
例えば俺が寝ているとき。
たまたま夜中に目が覚めたときの事だ。ぼんやりとした視界に入ってきたのは、豆電球の心許ない明かり中で、膝を抱えてぼんやりしている朝陽だった。遠い目で畳を眺めている朝陽は、泣いているようにも見えて。やけに小さく、頼りなく見えた。そこにいつも笑っている陽気な朝陽は微塵もなかった。
その姿はまるで世界中の孤独を一人で背負っているようで、思わず声をかけてやりたくなったけれど、俺は見なかった事にして再び目を閉じた。
それから幾度か、俺はそんな朝陽の姿を見てしまった。俺の知らないところで、朝陽はああやって膝を抱えて諸々の事に耐えている。
きっと朝陽はそれを誰にも見られたくはないはずだ。朝陽は精一杯、明るい自分を演じている。
だったらそれに気がつかない振りをするのが、礼儀ってもんだ。一体朝陽の身の上に何があったのか。知る由もないけれど。
俺はできる限り朝陽の側に居ようと思っている。何かできる訳じゃないけれど。
少なくとも、孤独からは遠ざけてやる事はできる。膝を抱えて涙を耐える夜があったとしても、振り向いた時に俺が居れば、独りじゃないと思えるはずだ。
恩返しだなんて、そんなつまらない事を言うつもりは無い。今となっては、朝陽と俺は、いわば同じ釜の飯を食ってる仲間。実際、釜もなけりゃ炊く米なんかはありゃしないが。
「よっし!」
その辺をすっかり整理した朝陽は、満足そうに息をついた。
「おつかれさまッス」
間髪入れず、缶コーヒー差し出した。何か、小言じみたことを言われる前に先手を打つ。
「ご苦労!」
偉そうな態度でコーヒーを受け取った朝陽は愉快そうに笑った。
こんな冗談じみた遣り取りだって、独りじゃ出来ない。
痩せっぽちだけど、綺麗で明るい朝日。こんな掃き溜めみたいな街で、その名前の通り朝日のようだ。少なくとも、俺にとっては。
こんな俺は独りじゃきっと笑う事もできなかった。ただただ、自分の不運を呪いながら、足下ばっか見て、クズみたいな日々を送ってどっかで野垂れ死んでいただろう。
もし、朝陽が抱えているものを全て降ろして、腹から笑えるようになったとき、俺にも新たな目標が見つけられるだろうか。
また、兄貴の側に戻れる日が来るんだろうか?
いつになく地味な仕事だ。ただ看板持って、ホテル街の入り口につったっているだけ。暇だな、なんて思いながら、キャップを目深にかぶる。
ただ立ってるだけだから楽かと思えば、この立ってるだけってのが結構キツイ。夏場ならまだしも、まだ真冬だっていっても過言じゃないこの時期。じっとしてるから、殊更に寒さが身に堪える。身体を揺らしたり、足踏みしたりして足下から這い上がってくる冷えに耐えてるけど、この暇さ加減は堪え難い。
だけど、こうしてホテル街なんてところに立ってると、悲喜交々な人間模様が垣間見える気がする。
どう見てもまだ高校生だろって奴らや、不倫っぽい雰囲気の奴。あとは明らかに金がからんでそうな奴ら。
どいつもこいつも……なんてやっかんで見たところで、看板持って立ってるだけの今の俺には、こんなホテルにはまるで縁が無い。
暫くはぼんやりとそんな奴らを眺めて時間をやり過ごしていたけど、さすがに飽きてきた。結局は皆同じような奴らばっかり。此処に来る奴らなんて、目的が同じなんだから当然だけど。
ベンチウォーマーのポケットから煙草を出して、パッケージから一本引き抜く。寒さでがちがちに固まった指で、なんとかライターを操って火をつけた。
「まったく、さみぃなぁ……」
煙を吐き出しながら、手の中のパッケージに何となく視線を落とす。
特に愛飲してる訳じゃないこの銘柄は朝陽から貰った。なんというか。朝陽は結構律儀で、貰って帰ってきたモノのは何でも分けてくれる。この煙草も朝陽がバイト先の奴から貰ってきたもの。朝日は煙草を吸わないから、わざわざ俺の為にもらってきたんだろう。
食うもの食わなくても、煙草は吸いたい俺にとってはありがたい。だけど、そんな俺はと言えば、還すものが何もないから、せめて真面目にバイトして家賃や光熱費を滞りなく支払うようにしてる。
そんな訳で、深夜工事が始まるまでの数時間、寸暇を惜しんでの看板持ちのバイト。しかし、俺も腰を落ち着けてバイトが出来ればもう少しマシな稼ぎができるだろうが、如何せん住所不定ではこんな日雇いのバイトぐらいしか出来ない。現場の仕事も運任せで、出かけていっても仕事にあぶれる事だってある。仕事があるだけマシなので、寒くても退屈でも、この看板持ちは暫く続ける事決定だ。
そんな事を考えながら、ふと顔をあげるとよく見知った奴が歩いて行くのが目に入った。
あのひょろりとして、薄べったい姿はもしや……
「……朝陽……?」
遠目なのではっきりとは確認出来なかったが。朝陽似のソイツは、結構歳の離れたオヤジと並んで、ホテルに姿を消した。やけに馴れ馴れしいオヤジの雰囲気に対して、朝陽っぽい方は酷く冷めた気配を漂わせていた。アレはどうみても、恋人同士って雰囲気じゃない。
……つーことは売色ってことか?
だけど、こんな処に朝陽が居るはずもない。今日は深夜のコンビニのバイトに出かけた。たまたま朝陽の事を考えていたから、似た奴を見間違えたか。
「見間違いか……」
大体、潔癖症の朝陽がそんなことできる訳がない。
俺は其の夜見た事を、すぐに忘れてしまった。
膝の力が抜け、一体今まで何があったのか、それとも全てが夢だったのか。
まさに言葉を失うかしかなかった。
だけど何よりも、こんなに簡単に騙されてしまった事が兄貴に申し訳ない気がして、俺は居たたまれなくなったんだ。
誰よりも俺を気にかけてくれていた、そして、認めてくれていた兄貴をがっかりさせてしまう。それが何より辛かった。
兄貴は俺と違って出来がいい。昔はかなりやんちゃもやっていたけど、気がつけばいつの間にかエリート街道を進んでいた。しっかり足下を固めた兄貴と違って、俺はいつまでもふらふらして、周囲に心配されていた。兄貴と比較される事もしばしばだったけど、俺はちっとも気にならなかった。兄貴と同じようには生きられない。
そしてなにより、兄貴が俺の一番の味方だった。
俺が店を持ちたいと言ったときも、誰よりも話を真剣に聞いてくれた。なんでも力になると言ってくれた其の言葉には、俺に対する期待も込められていたはずだ。失望はさせたくない。だから兄貴に事が知れる前になんとか事態を収めようとしたけれど、金を持ち逃げした奴らは一向に見つからなかった。巧妙に姿を眩ました奴らの足取りを掴むことはできないまま、一度ケチがつき始めると全てが悪い方へ転がってゆくもんだ。何をやってもそれが裏目に出る。すっかり運に見放され自暴自棄になった俺は、それからどんどん落ちていった。
変わってしまった俺の人生。
そんな状況でも、身を立て直そうと思えばきっと出来たのかもしれない。だけど、あの頃の俺にはそんな事を考える余裕や冷静さはなかった。
今頃兄貴は、姿を眩ませた俺を心配してくれてるかもしれない。
こんな俺の状態を知ったら、兄貴は何を思うだろう? それとも、騙されて何もかも失った俺に流石に愛想をつかしただろうか。こんな馬鹿な弟がいたことなど忘れて暮らしているのなら、寧ろその方がいい。
さっきから、朝陽がごそごそと部屋の片付けをしている。とはいえ、片付けるほど広くもなければ物もないんだけれど。たぶん、これはもうコイツの習性みたいなもんなんだろう。こんなにキレイ好きな奴がこんな処に住んでるんだから、よっぽどの事情があるんだろう。あれだけ寸暇を惜しむように働いていたら、いくらなんでももう少しマシな処に住めるはずだ。
朝陽は何も言わない。何も言わず、殆ど休みなく毎日働いている。まるでムキになっているように見えるときすらある。
一体なにを其処までムキになっているのか。ただ何となく判ることは、それは希望に向かっているものではないということ。
「煌、いい加減洗濯もの溜めるの止めろよな」
再び溜まり始めた袋の中身に顔しかめて、朝陽が言った。
この間まとめて洗濯して大分整理した。だけど、どこか生活に無気力な俺は、積極的に身の回りをどうこうしよいうという気がなかなか起きない。
気がつくと、また朝陽に小言を言われるような状況になっている。
以前の俺もこんなにもだらしなかっただっただろうか?
もう少し、まともに生活していた気もするが。
「あ~、わかったよ……」
なにか反論したい気持ちもあったけど、ここは素直に返事をしておくのが得策と判断した。
家賃だって折半してるし、これでも自分の面倒は自分で見てるから立場は一応対等だけれど、やっぱり朝陽には頭が上がらない。拾ってもらった義理ってのもあるけれど、再起不能なほどやられた俺を朝陽はなんの見返りも求めずに世話してくれた。殆ど一日中働きに出て、深夜に帰ってくれば俺のメシだの傷の手当だの。迷惑そうな顔一つせず良くやってくれて、そのうえ、宿無しの俺を此処においてくれた。すっかり世話になっておきながらなんだけど、ほんとお人好しだ。其の後も今に至るまで、恩着せがましい態度を見せる事も一切無い。そんな朝陽に感謝こそすれ、文句を言う立場でもない。
それとも、時々見せる偉そうな態度は、あの時の仕返しなんだろうか?
だけど、頭が上がらない理由はほかにある。
こんな暮らしをしていながら、朝陽は悲壮感を漂わせている訳でもないし、愚痴をこぼす訳でもない。いつもよく喋るし、よく笑って明るい朝陽。
けれど、そんな明るい朝陽が時折酷く傷ついた顔で、塞ぎ込んでいるのを知っている。俺の前じゃ、絶対そんな顔は見せないけれど。
例えば俺が寝ているとき。
たまたま夜中に目が覚めたときの事だ。ぼんやりとした視界に入ってきたのは、豆電球の心許ない明かり中で、膝を抱えてぼんやりしている朝陽だった。遠い目で畳を眺めている朝陽は、泣いているようにも見えて。やけに小さく、頼りなく見えた。そこにいつも笑っている陽気な朝陽は微塵もなかった。
その姿はまるで世界中の孤独を一人で背負っているようで、思わず声をかけてやりたくなったけれど、俺は見なかった事にして再び目を閉じた。
それから幾度か、俺はそんな朝陽の姿を見てしまった。俺の知らないところで、朝陽はああやって膝を抱えて諸々の事に耐えている。
きっと朝陽はそれを誰にも見られたくはないはずだ。朝陽は精一杯、明るい自分を演じている。
だったらそれに気がつかない振りをするのが、礼儀ってもんだ。一体朝陽の身の上に何があったのか。知る由もないけれど。
俺はできる限り朝陽の側に居ようと思っている。何かできる訳じゃないけれど。
少なくとも、孤独からは遠ざけてやる事はできる。膝を抱えて涙を耐える夜があったとしても、振り向いた時に俺が居れば、独りじゃないと思えるはずだ。
恩返しだなんて、そんなつまらない事を言うつもりは無い。今となっては、朝陽と俺は、いわば同じ釜の飯を食ってる仲間。実際、釜もなけりゃ炊く米なんかはありゃしないが。
「よっし!」
その辺をすっかり整理した朝陽は、満足そうに息をついた。
「おつかれさまッス」
間髪入れず、缶コーヒー差し出した。何か、小言じみたことを言われる前に先手を打つ。
「ご苦労!」
偉そうな態度でコーヒーを受け取った朝陽は愉快そうに笑った。
こんな冗談じみた遣り取りだって、独りじゃ出来ない。
痩せっぽちだけど、綺麗で明るい朝日。こんな掃き溜めみたいな街で、その名前の通り朝日のようだ。少なくとも、俺にとっては。
こんな俺は独りじゃきっと笑う事もできなかった。ただただ、自分の不運を呪いながら、足下ばっか見て、クズみたいな日々を送ってどっかで野垂れ死んでいただろう。
もし、朝陽が抱えているものを全て降ろして、腹から笑えるようになったとき、俺にも新たな目標が見つけられるだろうか。
また、兄貴の側に戻れる日が来るんだろうか?
いつになく地味な仕事だ。ただ看板持って、ホテル街の入り口につったっているだけ。暇だな、なんて思いながら、キャップを目深にかぶる。
ただ立ってるだけだから楽かと思えば、この立ってるだけってのが結構キツイ。夏場ならまだしも、まだ真冬だっていっても過言じゃないこの時期。じっとしてるから、殊更に寒さが身に堪える。身体を揺らしたり、足踏みしたりして足下から這い上がってくる冷えに耐えてるけど、この暇さ加減は堪え難い。
だけど、こうしてホテル街なんてところに立ってると、悲喜交々な人間模様が垣間見える気がする。
どう見てもまだ高校生だろって奴らや、不倫っぽい雰囲気の奴。あとは明らかに金がからんでそうな奴ら。
どいつもこいつも……なんてやっかんで見たところで、看板持って立ってるだけの今の俺には、こんなホテルにはまるで縁が無い。
暫くはぼんやりとそんな奴らを眺めて時間をやり過ごしていたけど、さすがに飽きてきた。結局は皆同じような奴らばっかり。此処に来る奴らなんて、目的が同じなんだから当然だけど。
ベンチウォーマーのポケットから煙草を出して、パッケージから一本引き抜く。寒さでがちがちに固まった指で、なんとかライターを操って火をつけた。
「まったく、さみぃなぁ……」
煙を吐き出しながら、手の中のパッケージに何となく視線を落とす。
特に愛飲してる訳じゃないこの銘柄は朝陽から貰った。なんというか。朝陽は結構律儀で、貰って帰ってきたモノのは何でも分けてくれる。この煙草も朝陽がバイト先の奴から貰ってきたもの。朝日は煙草を吸わないから、わざわざ俺の為にもらってきたんだろう。
食うもの食わなくても、煙草は吸いたい俺にとってはありがたい。だけど、そんな俺はと言えば、還すものが何もないから、せめて真面目にバイトして家賃や光熱費を滞りなく支払うようにしてる。
そんな訳で、深夜工事が始まるまでの数時間、寸暇を惜しんでの看板持ちのバイト。しかし、俺も腰を落ち着けてバイトが出来ればもう少しマシな稼ぎができるだろうが、如何せん住所不定ではこんな日雇いのバイトぐらいしか出来ない。現場の仕事も運任せで、出かけていっても仕事にあぶれる事だってある。仕事があるだけマシなので、寒くても退屈でも、この看板持ちは暫く続ける事決定だ。
そんな事を考えながら、ふと顔をあげるとよく見知った奴が歩いて行くのが目に入った。
あのひょろりとして、薄べったい姿はもしや……
「……朝陽……?」
遠目なのではっきりとは確認出来なかったが。朝陽似のソイツは、結構歳の離れたオヤジと並んで、ホテルに姿を消した。やけに馴れ馴れしいオヤジの雰囲気に対して、朝陽っぽい方は酷く冷めた気配を漂わせていた。アレはどうみても、恋人同士って雰囲気じゃない。
……つーことは売色ってことか?
だけど、こんな処に朝陽が居るはずもない。今日は深夜のコンビニのバイトに出かけた。たまたま朝陽の事を考えていたから、似た奴を見間違えたか。
「見間違いか……」
大体、潔癖症の朝陽がそんなことできる訳がない。
俺は其の夜見た事を、すぐに忘れてしまった。
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