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第五章 レトロ喫茶の運命は如何に
53.謎の紳士の正体は
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幼なじみ二人にがっつりガードされたまま、暫くの間沈黙が続く。
北條さんも夕食が来てから話そうと言ってから、何も話してくれない。
微妙な空気の中、ルームサービスで夕食が運ばれてきた。
本来は順番に出してくれるものみたいだけど、話をすることがメインだからとコース全てがずらりとテーブルの上へ並んだ。
彩りもキレイなグリーンサラダ、見た目も優しい枝豆のポタージュ、料理名は分からないけどエビと飾りのチップス?
メインは肉料理みたいだけど、ソースもおしゃれに飾られている。
他にも食べるのに緊張しそうなものが、いくつか並んでいる。
フルーツの盛り合わせも飾り切りされているから、見た目が華やかだ。
フレンチっぽいけど、俺には中華や和食でもなさそうってことしか分からない。
特別な日の記念に食べそうな雰囲気の料理って感じだ。
元々二人分だったものを急遽四人分にできるのも凄いけど、変更ってすぐにできるものなのかな?
ホテルなんて旅行でたまに泊まるくらいだけど、ホテルに常駐している人でスイートのお客さんだとサービスも別格ということもあるのかもしれない。
「さて、折角だしワインもいただこう。お酒が苦手だったらすまない。ノンアルコールを注文するからすぐに言ってくれ」
「お気遣いありがとうございます。全員飲めますから大丈夫です」
代表して俺が答えると、両脇の二人も小さく頷いた。
赤ワインみたいだけど、これも高級なワインなんだろうな。
全員お酒は飲めるけど、三人で飲むとしたら居酒屋でサワーかビールがほとんどだ。
飲む気分ではなさそうな両脇の二人も、仕方なくグラスを手に取って軽く掲げた。
「では、食べながら話をするとしよう。まずは誤解を解かないといけないな。私自身のことを何も話していないからね。怪しい者ではないのだが、名乗ってしまうと普通の客として扱ってもらえないのではないかと不安だったんだ」
「そんなことはないですよ。洗練された雰囲気に圧倒されてましたけど、お客様はお客様です」
俺が笑顔で気持ちを伝えると、隣のとっきーがグラスを片手にため息交じりで口を開いた。
「別にあんたの正体がどうこうって訳じゃないですよ。蒼樹だけ部屋に呼び出したのがおかしな話だと言っているだけです。蒼樹が男だからって何をしてもいいって訳じゃありませんから」
「それはそうだな。俺たちも招待してくれたということは、やましい話をするつもりではなかったと思ってはいるが」
とっきーは相変わらずケンカ腰だけど、げんちゃんは少し分かってくれたみたいだ。
その言葉に北條さんもホッとしたみたいで、ありがとうと言って笑ってくれた。
「確かに永瀬君は魅力的だが、静かな時間を二人で過ごしてみたいと思っただけだ。常に人の目に晒されていると癒しを求めてしまってね。少々軽率な行為だったのは認めるよ。すまなかった」
「いえ、そんな。気になさらないでください。疲れてらっしゃるときは休息が大切ですよ」
俺には分からない苦労を抱えているんだろうな。
それが少しでも緩和されるんだったら、夕食くらい構わないんだけど……とっきーとげんちゃんは妙な感じだし。
俺が誰かと食事するだけで、こんなに不機嫌にならなくてもいいのにな。
北條さんはフォークを置いてナフキンで口を拭うと、懐を探って名刺ケースを取り出す。
「改めて名乗るのも恥ずかしいのだが、私はこういう者だ」
言いながら、北條さんは一枚の名刺を俺たちの前へと差し出してくれた。
そこには代表取締役会長の文字と共に、最近駅前で見たばかりの会社名が記されていた。
北條さんも夕食が来てから話そうと言ってから、何も話してくれない。
微妙な空気の中、ルームサービスで夕食が運ばれてきた。
本来は順番に出してくれるものみたいだけど、話をすることがメインだからとコース全てがずらりとテーブルの上へ並んだ。
彩りもキレイなグリーンサラダ、見た目も優しい枝豆のポタージュ、料理名は分からないけどエビと飾りのチップス?
メインは肉料理みたいだけど、ソースもおしゃれに飾られている。
他にも食べるのに緊張しそうなものが、いくつか並んでいる。
フルーツの盛り合わせも飾り切りされているから、見た目が華やかだ。
フレンチっぽいけど、俺には中華や和食でもなさそうってことしか分からない。
特別な日の記念に食べそうな雰囲気の料理って感じだ。
元々二人分だったものを急遽四人分にできるのも凄いけど、変更ってすぐにできるものなのかな?
ホテルなんて旅行でたまに泊まるくらいだけど、ホテルに常駐している人でスイートのお客さんだとサービスも別格ということもあるのかもしれない。
「さて、折角だしワインもいただこう。お酒が苦手だったらすまない。ノンアルコールを注文するからすぐに言ってくれ」
「お気遣いありがとうございます。全員飲めますから大丈夫です」
代表して俺が答えると、両脇の二人も小さく頷いた。
赤ワインみたいだけど、これも高級なワインなんだろうな。
全員お酒は飲めるけど、三人で飲むとしたら居酒屋でサワーかビールがほとんどだ。
飲む気分ではなさそうな両脇の二人も、仕方なくグラスを手に取って軽く掲げた。
「では、食べながら話をするとしよう。まずは誤解を解かないといけないな。私自身のことを何も話していないからね。怪しい者ではないのだが、名乗ってしまうと普通の客として扱ってもらえないのではないかと不安だったんだ」
「そんなことはないですよ。洗練された雰囲気に圧倒されてましたけど、お客様はお客様です」
俺が笑顔で気持ちを伝えると、隣のとっきーがグラスを片手にため息交じりで口を開いた。
「別にあんたの正体がどうこうって訳じゃないですよ。蒼樹だけ部屋に呼び出したのがおかしな話だと言っているだけです。蒼樹が男だからって何をしてもいいって訳じゃありませんから」
「それはそうだな。俺たちも招待してくれたということは、やましい話をするつもりではなかったと思ってはいるが」
とっきーは相変わらずケンカ腰だけど、げんちゃんは少し分かってくれたみたいだ。
その言葉に北條さんもホッとしたみたいで、ありがとうと言って笑ってくれた。
「確かに永瀬君は魅力的だが、静かな時間を二人で過ごしてみたいと思っただけだ。常に人の目に晒されていると癒しを求めてしまってね。少々軽率な行為だったのは認めるよ。すまなかった」
「いえ、そんな。気になさらないでください。疲れてらっしゃるときは休息が大切ですよ」
俺には分からない苦労を抱えているんだろうな。
それが少しでも緩和されるんだったら、夕食くらい構わないんだけど……とっきーとげんちゃんは妙な感じだし。
俺が誰かと食事するだけで、こんなに不機嫌にならなくてもいいのにな。
北條さんはフォークを置いてナフキンで口を拭うと、懐を探って名刺ケースを取り出す。
「改めて名乗るのも恥ずかしいのだが、私はこういう者だ」
言いながら、北條さんは一枚の名刺を俺たちの前へと差し出してくれた。
そこには代表取締役会長の文字と共に、最近駅前で見たばかりの会社名が記されていた。
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