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第二章 旅立ち
14.意地悪な従者
エディは上半身だけ裸の状態で訝し気な視線を投げかけてくる。
相変わらず表情だけでは感情が読みづらい。
動揺しているせいか、エディが何を考えているのかが分からなくなっているみたいだ。
「従者の背中を眺めて楽しいですか?」
「え、いやその……」
エディがゆっくりと近づいてくる。
まさか俺は怒られるのかと思って目を逸らそうとしたのに――指先であごを捕らえられた。
顔を上向きにされると、エディに見下ろされる。
エディの赤紫の瞳の中には、動揺している俺が写り込んでいるのだろうか?
俺は今、エディ以外のものが視界に入らない。
俺を見つめるエディの表情は未だ変わらず、感情を表にだしていないはずなのに。
俺にはエディがどこか嬉しそうにしているかのように見えてしまう。
「いけないご主人様にはおしおきが必要ですね」
「待って、おしおきって……」
呟いた瞬間、エディの手で視界を塞がれる。
逃げたい気持ちもあるのに、身体が固まってしまって動けない。
今日のエディは、かなり意地悪だ。
「服もお召しにならないまま、ここで立ち尽くしますか? それとも……」
エディの声が近くで聞こえてくる。今どこにいるのか分からないけれど、更に距離が縮まったように感じる。
俺は何をされるのかと緊張していると、いきなり耳を優しく撫でられた。
「ひゃっ!」
「リサイル様は、まだ欲求不満でいらっしゃると?」
「別にそんなに溜まってない! ただ……俺と違ってエディは大人だよなって見ていただけで……」
言い訳のように言ってしまった俺に対して、一瞬の沈黙が流れる。
俺が緊張していると、微かな笑い声が聞こえた気がした。
「なるほど。リサイル様は大人のような扱いをされたいと思ったのですね? 私は命じられればいつでもお付き合いいたします。それが、夜の営みでも」
耳に息を吹き込まれながら、とんでもないことを言われた気がする。
従者だからって、やっていいことと悪いことはあるはずだ。
「俺たちは屋敷を出たんだから、エディだって従者として振る舞わなくてもいいと思っている。それに……夜の営みなんて、頼む気はないからな? もうエディの身体を盗み見たりなんてしない。だから、エディも身体を冷やす前に着替えてくれ」
「そこまでおっしゃるのでしたら、おしおきはおしまいにいたしましょう」
エディはそう言ってようやく俺を自由にしてくれた。
俺は小さく息を吐いて、身体の向きを変えてエディから視線を外した。
布で身体を拭きながらエディの着替えを待っていると、お待たせしましたと言う声と共にもう一度俺の身体を丁寧に拭いてから寝衣を羽織らせてきた。
「これは、いつも屋敷で着ていた……」
「裸のまま眠ることもお止めしませんが、魔法の袋に普段使われていたものを詰めましたのでご安心ください」
「俺はいつも裸で眠ったりしないし、体調を崩すわけにもいかないからありがたく着るよ」
「それならば良かったです」
エディも濡れた服ではなく、先ほど着ていたものと似ている別の服を着ていた。
俺が眠ったら、エディも今着た服を脱いで湯あみするのだろう。
わざわざ別に入るっていうのも面倒な気がするし、今度は一緒に入ろうと提案してみよう。
……身体は自分で洗わせてもらうという条件付きで。
「何かお飲み物をご用意しましょうか?」
「そこに備え付けの水差しがあるから、水で構わない」
「紅茶をお淹れしたいところですがお疲れのご様子ですし、お水で失礼いたします」
エディは俺をベッドの上に座らせて移動すると、木製の水差しから水を木の器へ注ぎ俺に手渡してくれた。
屋敷では水晶製が多かったが、この辺りは木製が主流なのかもしれない。
「木も温かみがあっていいな」
「傷みやすくもありますが、この宿では清潔に保たれているようですね」
一杯ゆっくりと水を飲んでから、エディに器を手渡してベッドへ寝転んだ。
エディが気遣ってくれた部屋のせいか、ベッドが硬くて眠れないということはなさそうだ。
「リサイル様、眠れそうですか?」
「心配しなくても、すぐに眠れそうだ。先に休ませてもらう」
「はい。おやすみなさいませ」
エディの声が、俺を優しく包み込んでいく。
辺りの静けさも、俺の心を癒してくれるみたいだ。
エディが寝具をかけてくれると、まぶたがゆるりと下りてくる。
エディの言う通り、身体は疲れていたらしい。
あっという間に眠りの世界へ誘われて、意識が吸い込まれていった。
相変わらず表情だけでは感情が読みづらい。
動揺しているせいか、エディが何を考えているのかが分からなくなっているみたいだ。
「従者の背中を眺めて楽しいですか?」
「え、いやその……」
エディがゆっくりと近づいてくる。
まさか俺は怒られるのかと思って目を逸らそうとしたのに――指先であごを捕らえられた。
顔を上向きにされると、エディに見下ろされる。
エディの赤紫の瞳の中には、動揺している俺が写り込んでいるのだろうか?
俺は今、エディ以外のものが視界に入らない。
俺を見つめるエディの表情は未だ変わらず、感情を表にだしていないはずなのに。
俺にはエディがどこか嬉しそうにしているかのように見えてしまう。
「いけないご主人様にはおしおきが必要ですね」
「待って、おしおきって……」
呟いた瞬間、エディの手で視界を塞がれる。
逃げたい気持ちもあるのに、身体が固まってしまって動けない。
今日のエディは、かなり意地悪だ。
「服もお召しにならないまま、ここで立ち尽くしますか? それとも……」
エディの声が近くで聞こえてくる。今どこにいるのか分からないけれど、更に距離が縮まったように感じる。
俺は何をされるのかと緊張していると、いきなり耳を優しく撫でられた。
「ひゃっ!」
「リサイル様は、まだ欲求不満でいらっしゃると?」
「別にそんなに溜まってない! ただ……俺と違ってエディは大人だよなって見ていただけで……」
言い訳のように言ってしまった俺に対して、一瞬の沈黙が流れる。
俺が緊張していると、微かな笑い声が聞こえた気がした。
「なるほど。リサイル様は大人のような扱いをされたいと思ったのですね? 私は命じられればいつでもお付き合いいたします。それが、夜の営みでも」
耳に息を吹き込まれながら、とんでもないことを言われた気がする。
従者だからって、やっていいことと悪いことはあるはずだ。
「俺たちは屋敷を出たんだから、エディだって従者として振る舞わなくてもいいと思っている。それに……夜の営みなんて、頼む気はないからな? もうエディの身体を盗み見たりなんてしない。だから、エディも身体を冷やす前に着替えてくれ」
「そこまでおっしゃるのでしたら、おしおきはおしまいにいたしましょう」
エディはそう言ってようやく俺を自由にしてくれた。
俺は小さく息を吐いて、身体の向きを変えてエディから視線を外した。
布で身体を拭きながらエディの着替えを待っていると、お待たせしましたと言う声と共にもう一度俺の身体を丁寧に拭いてから寝衣を羽織らせてきた。
「これは、いつも屋敷で着ていた……」
「裸のまま眠ることもお止めしませんが、魔法の袋に普段使われていたものを詰めましたのでご安心ください」
「俺はいつも裸で眠ったりしないし、体調を崩すわけにもいかないからありがたく着るよ」
「それならば良かったです」
エディも濡れた服ではなく、先ほど着ていたものと似ている別の服を着ていた。
俺が眠ったら、エディも今着た服を脱いで湯あみするのだろう。
わざわざ別に入るっていうのも面倒な気がするし、今度は一緒に入ろうと提案してみよう。
……身体は自分で洗わせてもらうという条件付きで。
「何かお飲み物をご用意しましょうか?」
「そこに備え付けの水差しがあるから、水で構わない」
「紅茶をお淹れしたいところですがお疲れのご様子ですし、お水で失礼いたします」
エディは俺をベッドの上に座らせて移動すると、木製の水差しから水を木の器へ注ぎ俺に手渡してくれた。
屋敷では水晶製が多かったが、この辺りは木製が主流なのかもしれない。
「木も温かみがあっていいな」
「傷みやすくもありますが、この宿では清潔に保たれているようですね」
一杯ゆっくりと水を飲んでから、エディに器を手渡してベッドへ寝転んだ。
エディが気遣ってくれた部屋のせいか、ベッドが硬くて眠れないということはなさそうだ。
「リサイル様、眠れそうですか?」
「心配しなくても、すぐに眠れそうだ。先に休ませてもらう」
「はい。おやすみなさいませ」
エディの声が、俺を優しく包み込んでいく。
辺りの静けさも、俺の心を癒してくれるみたいだ。
エディが寝具をかけてくれると、まぶたがゆるりと下りてくる。
エディの言う通り、身体は疲れていたらしい。
あっという間に眠りの世界へ誘われて、意識が吸い込まれていった。
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