召喚士一族の落ちこぼれ長男なのに、過保護な従者が離してくれません!

楓乃めーぷる

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第二章 旅立ち

16.従者との約束

 エディが食べているところは初めて見る。
 従者と主人は原則的に共に食べることはないからだ。
 俺は気にしないと言っていたのに、エディは屋敷では決して一緒に食べてくれなかった。
 だから、エディとの距離感も縮まった気がして嬉しくなる。

「エディって食事するところまで完璧って……一体どんな教育を受けたら所作が美しくなるんだろうな?」
「普通に食事をしているだけです。リサイル様もあまり変わらないと思いますが」
「そう? それは……家族に文句を言われたくなかったっていうのもあるかもしれないな」

 俺が苦く笑うと、エディは一度食べる手を止めてじっと俺を見てくる。
 また、まずいことを言っただろうか?

「リサイル様、何度でも言いますがあなたは力を持っている方です。ご自分を卑下せず前を向いてください」
「ごめん、俺、そんなに後ろ向きだった?」
「無自覚ですか? でしたら今すぐおやめください」
「……ごめん」

 癖で謝ると、エディはじっと俺をにらむように見つめてくる。
 これは……遺憾の気持ちを表しているに違いない。
 かなり分かりやすい表情だ。

「まずはその常に謝る癖を直しましょう。あの家の者たちはあなたの価値を何も分かっていないのです。リサイル様は今まで耐えて来られました。ですが、もう耐えるだけではなく、前へ進むことをお考えください」
「前へ……か。俺はエディみたいに割り切って考えるのが苦手というか、つい色々考えてしまうんだ。でも、これからは自分の思う通りにしてもいいんだよな」
「そうです。でないと私は今からでもセレニクリスへ舞い戻り、あの者たちを含めたあなたに無礼を働いた者たちを始末しなくてはなりません」

 エディが言うと本当にやりそうな気がしてくるから怖い。
 時々、俺に対しての過保護を通り越している気がするんだよな。
 ずっと落ちこぼれと言われ続けてきたからすぐに自信満々にはなれないけれど、自信を持つということは大事だ。
 じゃないと、エディを止められない。
 
「エディの気持ちは十分すぎるほど伝わったから! エディが始末とか物騒なことを言わないように、義母かあさんやオニキルを含めた街のみんなを見返せるほど強くなる」
「その意気です」

 今度はエディの表情が少しだけ柔らかくなったのが分かる。どうやら合格点をもらえたみたいだ。
 俺とエディは食事を終えると宿を出ようと旅の身支度を整えていく。
 二人で階段を下りて宿の入り口を出たところで、街に住んでいる男性が走ってきたのが見えた。

「何だろう?」
「慌てた様子を見るに、何か異変でもあったのでしょう。少々お待ちください」

 エディは俺に止まるようにと合図してから、男性のそばへ行く。
 すると、男性は慌てながら街の出入り口の方を指さして、エディに何かを必死に伝えていた。
 エディは男性に何かを指示し、また俺のそばへ戻ってきた。

「あまりいいことではなさそうだけど……」
「はい。メソリアを抜けた街道で商人の馬車が魔物に襲われたそうです。護衛のものが対処しているとのことですが、魔物の数が多くこのままだとメソリアの中まで侵入する可能性があるようです」
「そんな……街の自警団は?」
「今の男性に知らせるように指示いたしました。このまま速やかに街を抜けたかったのですが、街道を迂回するとなると少々時間がかかります。いかがいたしましょう?」

 エディは俺に選択権を与えてくれている。
 つまり、自警団の到着を待つ間に俺たちも魔物討伐の手伝いをして街道を抜けるか。
 もしくは彼らを見捨てて遠回りして目的地へ向かうか。

 もちろん、答えは決まっている。

「追放された身とはいえ、ここはサモナードの領地内だ。俺にも民を守る義務がある。俺に力がないとしても、困っているみんなを助けたい」
「……あなたはそうおっしゃると思っていました。私が共にいることをお忘れなきよう。では、参りましょう」

 俺は頷き、エディと共に走って街の門をくぐりぬける。
 そのまま街道を真っすぐ進んでいくと、倒れた馬車が見えてきた。
 そこには魔物たちの死体らしきものが転がり、馬車に興味を持って近づこうとしているものがいる。

 俺は自然と緊張し、杖をにぎる手のひらにじんわりと汗がにじむのが分かる。
 辺りには独特の腐臭が漂い、この場所で戦闘が行われていたのだという事実が嫌でも目に飛びこんできた。

「護衛の者たちが大分退治したようですが、積み荷に群がろうとしていますね」
「何を運んでいたのかは分からないけれど……商人の姿も見えない」
「魔物が好みそうなもの……魔法の力が込められた魔道具系でしょうか? 魔力には魔物も敏感ですので。より強い力を本能的に欲したのかもしれません」
「じゃあ……初戦闘か。俺に魔力があるかどうかは分からないけれど、いざとなったら杖でなぐるくらいはできるはず」

 俺たちが馬車の近くへ寄ろうとすると、気づいた魔物たちがこちらへ振り返る。
 どうやら、ゴブリンと呼ばれる種のようだ。
 力はそこまで強くないけれど、群れで現れることが多いので厄介だ。

 護衛と商人たちはこの場にはいない。
 大事なものだけを持って、一旦避難しているのかもしれない。
 それならば、安心だ。俺は緊張しながら手に持っていた杖を構えた。
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