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第三章 新たな出会いと力の片鱗
17.初めての戦闘
敵はゴブリンが数匹。ゴブリンは相手が弱いと分かると味方を呼んで増えていくので、追い払うには力を見せつけるのが一番早いらしい。
これは子どもの頃に少しだけ習っていた戦闘術の記憶だから自信はないけれど、エディも腰の剣を引き抜いて俺より早く動きゴブリンを一体切り伏せた。
「リサイル様、無理に戦おうとはせずに私が安全を確保するまでその場でお待ちください」
「と言っても、俺だけ見てるという訳には……っ」
エディと話をしている間にも、ゴブリンは俺に向かって武器を振り回して襲い掛かってくる。
エディは何の表情も変えず、飛び掛かってきたゴブリンを剣で横薙ぎに切り払う。
その勢いで何匹かのゴブリンが、グエッと叫んで吹き飛んでいく。
「雑魚ほど群れると言いますが、数匹倒すくらいでは引き下がらないようですね」
「もっと圧倒的な力……エディ、魔法は?」
「魔法ならばひるませることは可能でしょう。リサイル様、魔法は基礎を学び直したところなのではないですか?」
「エディは魔法より剣技の方が得意なようだし。今、この場で魔法を使って補助できるのは俺しかいない。今まで全く使えなかったけれど……もう立ち止まらないと決めたから」
俺は構えていた杖を群れて向かってくるゴブリンたちへ向ける。
エディも俺の行動を止めることはせず、呼吸も乱さず俺を守るように剣を振り続けてくれている。
「知識は必ずあなたの助けになるはず。今は小さな力でも、一歩前へ進めるはずです。リサイル様、お好きな絵を描く感覚でやってみてはいかがでしょう?」
「絵を描く? どこに?」
「空中に描くのです。召喚魔法の基礎もご覧になったのですよね?」
「読んだけど、何を描けばいいのか分からない」
基礎魔法でいいのだろうか? 基礎魔法も陣から生まれて飛んでいくもの。
本来は身体の中に巡る魔力を感じて、炎を出すと心で念じて言葉を紡ぎ出せばいいはずだ。
その感覚自体が、俺には分からない。
召喚魔法の場合はどうしたらいいのだろう?
好きに描く……つまり、この状況を打破できるようなものを思い浮かべるということか?
「そこから先はあなた自身が考えて実行してみてください。私はその間、リサイル様をお守りします」
エディは俺に告げると、少し前へ出て襲い掛かるゴブリンを右へ左へと何度も切り払っていく。
その動きは滑らかで、舞っているようにも見える。
ただ、エディが何度切り伏せてもゴブリンの数はなかなか減ってこない。
生き残ったゴブリンが仲間を呼び続けているためだ。
「召喚陣は、召喚したい対象を思い浮かべる。今、必要なのは……ゴブリンをひるませるような分かりやすい力。例えば……炎を操るような召喚獣……」
俺は炎を操り俺の言うことを聞いてくれそうな小型な召喚獣を思い浮かべ、杖で空中に炎の紋様を描き出す。
すると、描きかけの召喚陣らしきものが光を帯びていく。
杖からわずかな熱のようなものを感じる。初めて感じる力だ。これが魔力?
赤の魔力を帯びた召喚陣は輝きを増しながら、何かを呼び出そうとしているのだろうか?
召喚陣の赤い光は強さを増し、強く光を放ち始める。
「何か……来る?」
その光はゴブリンたちに向けて放たれ、驚いたゴブリンたちが一斉に統率を失っていく。
エディは一瞬だけこちらに振りむいたあと、一気にゴブリンの群れへ踏み込んで剣を構え直す。
一瞬動きを止めて構えたあと、流れるような美しい動作でヒュッという鋭い音と共に剣を振る。
エディは、おろおろしたゴブリンたちを一刀で横に薙ぎ払ったのだ。
「グギャァァァッ」
耳に不快な声を残し、生き残ったゴブリンたちも森の奥の方へ逃げて行ってしまった。
後に残ったのは、ゴブリンたちの成れの果てだけだ。
同時に俺が描こうとしていた召喚陣も急速にスーっと光を失い、跡形もなく消えてしまう。
俺の魔力が不完全だったために、その形を保てなかったのだろう。
「あ……消えた……」
召喚陣が消えてしまった瞬間、身体がぐらつく。
剣を納め俺のそばに戻ってきたエディが、腕を伸ばして俺を支えてくれた。
俺の初めての召喚陣はうまく作動しなかったけれど、これも大きな一歩だ。
今度こそ成功するような、そんな気がする。
「ありがとう、エディ」
「いえ。リサイル様のおかげでゴブリンたちに隙が生まれたので一掃できました。しばらくはこちらに戻って来ないでしょう。お身体は大丈夫ですか?」
「平気。慣れないことをしたから力が抜けたみたいだ。エディこそ、お疲れ様」
「当然のことをしたまでです。この騒ぎで人が集まってきてしまう前に行きましょう」
俺はあまり目立つわけにはいかない。ここはまだサモナードの領土内だ。
エディが俺のわがままを聞いてくれただけで十分だし、俺も少しは役に立てたはずだ。
エディの言う通り、後のことは街の自警団や街の人たちに任せた方がいいだろう。
ゴブリンの群れは少し厄介だったが、人の被害が出ていないことが幸いだった。
この場にゴブリンたちのように人が地に伏せていたら、俺は大きな衝撃と悲しみで心がいっぱいになってしまっただろう。
これは子どもの頃に少しだけ習っていた戦闘術の記憶だから自信はないけれど、エディも腰の剣を引き抜いて俺より早く動きゴブリンを一体切り伏せた。
「リサイル様、無理に戦おうとはせずに私が安全を確保するまでその場でお待ちください」
「と言っても、俺だけ見てるという訳には……っ」
エディと話をしている間にも、ゴブリンは俺に向かって武器を振り回して襲い掛かってくる。
エディは何の表情も変えず、飛び掛かってきたゴブリンを剣で横薙ぎに切り払う。
その勢いで何匹かのゴブリンが、グエッと叫んで吹き飛んでいく。
「雑魚ほど群れると言いますが、数匹倒すくらいでは引き下がらないようですね」
「もっと圧倒的な力……エディ、魔法は?」
「魔法ならばひるませることは可能でしょう。リサイル様、魔法は基礎を学び直したところなのではないですか?」
「エディは魔法より剣技の方が得意なようだし。今、この場で魔法を使って補助できるのは俺しかいない。今まで全く使えなかったけれど……もう立ち止まらないと決めたから」
俺は構えていた杖を群れて向かってくるゴブリンたちへ向ける。
エディも俺の行動を止めることはせず、呼吸も乱さず俺を守るように剣を振り続けてくれている。
「知識は必ずあなたの助けになるはず。今は小さな力でも、一歩前へ進めるはずです。リサイル様、お好きな絵を描く感覚でやってみてはいかがでしょう?」
「絵を描く? どこに?」
「空中に描くのです。召喚魔法の基礎もご覧になったのですよね?」
「読んだけど、何を描けばいいのか分からない」
基礎魔法でいいのだろうか? 基礎魔法も陣から生まれて飛んでいくもの。
本来は身体の中に巡る魔力を感じて、炎を出すと心で念じて言葉を紡ぎ出せばいいはずだ。
その感覚自体が、俺には分からない。
召喚魔法の場合はどうしたらいいのだろう?
好きに描く……つまり、この状況を打破できるようなものを思い浮かべるということか?
「そこから先はあなた自身が考えて実行してみてください。私はその間、リサイル様をお守りします」
エディは俺に告げると、少し前へ出て襲い掛かるゴブリンを右へ左へと何度も切り払っていく。
その動きは滑らかで、舞っているようにも見える。
ただ、エディが何度切り伏せてもゴブリンの数はなかなか減ってこない。
生き残ったゴブリンが仲間を呼び続けているためだ。
「召喚陣は、召喚したい対象を思い浮かべる。今、必要なのは……ゴブリンをひるませるような分かりやすい力。例えば……炎を操るような召喚獣……」
俺は炎を操り俺の言うことを聞いてくれそうな小型な召喚獣を思い浮かべ、杖で空中に炎の紋様を描き出す。
すると、描きかけの召喚陣らしきものが光を帯びていく。
杖からわずかな熱のようなものを感じる。初めて感じる力だ。これが魔力?
赤の魔力を帯びた召喚陣は輝きを増しながら、何かを呼び出そうとしているのだろうか?
召喚陣の赤い光は強さを増し、強く光を放ち始める。
「何か……来る?」
その光はゴブリンたちに向けて放たれ、驚いたゴブリンたちが一斉に統率を失っていく。
エディは一瞬だけこちらに振りむいたあと、一気にゴブリンの群れへ踏み込んで剣を構え直す。
一瞬動きを止めて構えたあと、流れるような美しい動作でヒュッという鋭い音と共に剣を振る。
エディは、おろおろしたゴブリンたちを一刀で横に薙ぎ払ったのだ。
「グギャァァァッ」
耳に不快な声を残し、生き残ったゴブリンたちも森の奥の方へ逃げて行ってしまった。
後に残ったのは、ゴブリンたちの成れの果てだけだ。
同時に俺が描こうとしていた召喚陣も急速にスーっと光を失い、跡形もなく消えてしまう。
俺の魔力が不完全だったために、その形を保てなかったのだろう。
「あ……消えた……」
召喚陣が消えてしまった瞬間、身体がぐらつく。
剣を納め俺のそばに戻ってきたエディが、腕を伸ばして俺を支えてくれた。
俺の初めての召喚陣はうまく作動しなかったけれど、これも大きな一歩だ。
今度こそ成功するような、そんな気がする。
「ありがとう、エディ」
「いえ。リサイル様のおかげでゴブリンたちに隙が生まれたので一掃できました。しばらくはこちらに戻って来ないでしょう。お身体は大丈夫ですか?」
「平気。慣れないことをしたから力が抜けたみたいだ。エディこそ、お疲れ様」
「当然のことをしたまでです。この騒ぎで人が集まってきてしまう前に行きましょう」
俺はあまり目立つわけにはいかない。ここはまだサモナードの領土内だ。
エディが俺のわがままを聞いてくれただけで十分だし、俺も少しは役に立てたはずだ。
エディの言う通り、後のことは街の自警団や街の人たちに任せた方がいいだろう。
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