召喚士一族の落ちこぼれ長男なのに、過保護な従者が離してくれません!

楓乃めーぷる

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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ

26.協力体制

 俺はトカゲの方を向いて話しかける。まずはトカゲにやってもらわなくてはならないからだ。

「トカゲ、少し危険かもしれないけどお頭に声をかけ続けてみてくれ。君の声ならきっと届くはずだ」
「分かった。やってみる。お頭ぁーっ! オレだよ、トカゲだ! オレの声が聞こえたら、止まってくれ! 今、助けるからっ」
「グオォォォッ!」

 レッドドラゴンは雄叫びを上げながら、顔をこちらへ向けてきた。
 ギロっと光る金の瞳は、見る者へ恐怖感を与えてくる。
 ユーアンも怖そうにしているが、はげますように身体をなでてやる。

「こっちを向いたということは、声は聞こえてる! 続けて!」
「お頭っ! オレが悪かった! だから、少しだけ耐えてくれーっ!」

 エディが剣を構え、手のひらを刃に当てる。すると、刀身から冷気が漂いはじめた。
 エディは無言で振り返る。準備ができたということだ。
 次は俺の番だ。俺は緊張を飲み込むように息を吸い込む。

「ユーアン、ドラゴンの首にある首飾りに炎をぶつけてくれ!」
「ユー!」

 ユーアンは俺の言葉を聞いて尻尾を何度か振ると、俺たちの周りに炎の塊をたくさん生み出す。
 俺の中の魔力が吸い取られるような感覚がするけれど、倒れるわけにはいかない。
 必死に耐えながら、杖の先をキラリと光るドラゴンの首元へ向けた。

 炎が勢いよく飛んでいくのと同時に、エディがドラゴンへ向けて駆け出していく。
 ドラゴンは吠え続けているが、その間もトカゲが声をかけ続けているせいかこちらに炎を吐いてくることはない。

「炎よ、当たれーっ!」
「ユーッ!」

 俺とユーアンで、無数の炎を光る首飾りに当てるとドラゴンが少し体勢を崩す。
 首がのけぞったところで、エディが地を蹴ってドラゴンの足へ飛び移る。

「くぅっ……力が抜けそうだ……。ユーアン、エディに当たらないように細かい炎に切り替えろ!」
「ユッ!」

 ユーアンはまた尻尾を振ると炎を分けて細かくし、より多く当てていく。
 ここからでははっきりとは見えないけれど、うまく命中しているみたいだ。

「お頭っ! もうちょっとだっ! 頑張れーっ」
「ギャオォォォッ!」

 ドラゴンが吠えたのと同時に、エディはドラゴンの身体を蹴り上げて空中高く飛び上がった。
 そして、そのまま剣を振り下ろしたのだろう。
 ギィィンという金属が擦れ合わさるような音がした後、パリーンッという割れた音が聞こえてきた。

「わ、割れた?」
「さすがはエディ。俺の……」

 一気に疲労感に襲われるが、何とか杖を地面について耐える。
 じゃないと、エディとの約束を果たしたことにならない。
 
 エディが地面へ着地するのと同時に、ドラゴンもその身体を地面へ横たえた。
 トカゲは慌てたようにドラゴンの方へ走っていく。
 俺も何とか身体を動かして、トカゲの後を追った。

「エディ、怪我は?」
「ありません。リサイル様、魔力を制御されたのですね?」
「一応ね。でも、正直立っているのがやっとだ。ドラゴンは……」

 トカゲがお頭と呼び続けながらドラゴンの身体に触れていると、身体が光に包まれていく。

「お頭ぁ……」

 トカゲが泣きながら光に縋っていると、光は収束してある形を取っていく。
 それはしばらくすると人の形になり、燃えるような赤の長い髪の男性になった。

「あー……泣くなよ。お前のせいじゃない。悪いのはこの呪われた……ぐぅぅ、頭いって」
「お、お頭だぁ! お頭が帰ってきたぁ!」

 赤い髪の男性が間違いなくお頭らしい。
 話している内容からすると、ドラゴンになって暴れている間も記憶があったようだ。
 頭を押さえながら、男性はゆっくりと身体を起こして地面に座り込む。
 トカゲはわんわんと泣きながら、男性にしがみついた。

「あなたがレッドドラゴンのお頭さんですか」
「全く、人騒がせなドラゴンです。呪いの首飾りに振り回されるドラゴンなど、ドラゴンの風上にも置けません」
「なんだぁ? お前たち。トカゲ、泣いてないで説明しろ。俺はコイツに剣をぶちかまされたことと、こっちのかわい子ちゃんに魔法をぶちこまれたことしか分からねぇ」
「うぅぅ……分かった。説明する」

 トカゲは涙を拭くと、今までのことをお頭に説明し始めた。
 お頭は頭を押さえながら、うーとかあーとか言っていたけれど……事情を完全に理解したのかガハハと楽し気に笑い始めた。

「なるほど。お前らはここを通りたかったのに俺様が邪魔だったと。そいつは悪かったな、世話かけちまって」
「お頭が道をふさいでたから、オレに協力してくれたんだ。オレじゃお頭をどうにもできなかったから……」
「そういうことなので、俺たちはこれで……」

 俺とエディは用も済んだので去ろうとしたのだけれど、お頭は待てといって俺たちを引き留める。
 エディがにらみつけるように振り返っても、お頭は気にした様子もなくスッと目を細めて俺たちを観察し始めた。
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