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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
28.四領を越えて
不機嫌を隠さないエディがすぐに俺の手を引き寄せて、手の状態を確認し始めた。
俺の手のひらは赤く光り、炎のような形とドラゴンが重なり合うような召喚陣の紋章が浮かび上がっていた。
「手のひらに汚らわしいものが……すぐに洗い落とさねば……」
「聞こえてるぞー。黒いの。これで、契約成立っと。俺の紋章がリーサちゃんの手のひらに刻まれたからな。助けが必要な時はいつでも呼んでくれ。かわい子ちゃんなら大歓迎だ」
「うわぁ……お頭。おっさんくさい」
「誰がおっさんだ! お兄さんだろうが。それに、お前らがお頭って呼ぶせいで盗賊と間違えられるんだ。盗賊じゃねえ。義賊って言ってるだろうが」
盗賊と間違えられるのは見た目のせいだと言いかけたが、話していると旅立ちがまた遅くなりそうなのでさっさと旅立つことにする。
というのも、エディがそろそろ苛立ちの限界を迎えそうだからだ。
「一刻も早く離れましょう」
「分かったから。落ち着いて、エディ。それじゃあ、また」
「おうよ。じゃあな、サモナードの坊ちゃん」
イーラの前で名乗ったこともあって、俺の正体に気づいたらしい。
見た目とは違い、ドラゴンだけあって物知りなのかもしれない。
「坊ちゃんって……リサイルって何者? 偉い人か? なんか難しくてよく分かんないや」
トカゲは四領のことも召喚士のこともよく分からないだろうから、あとでイーラが教えてあげるのだろう。
こうして俺たちは、ようやくヴァレクリンの渓谷を通り抜けることができた。
+++
「エディ、いたいいたい! そんなに擦らなくても、もう光ってないし」
「下品な者がリサイル様の肌に触れるなど……本当に汚らわしい。契約に必要なこととはいえ、あんな粗雑なものまで受け入れねばならないとは。リサイル様が不憫で仕方ありません」
「そうは言っても、伝説の召喚士といえばドラゴンがつきもの。最初のドラゴンがレッドドラゴンなんてすごいと思わない?」
俺が笑いかけると、エディの動きが一瞬止まる。
俺の手を拭いているから俯いているのもあって影になっているけれど、少し悲しげで寂しそうな表情が見えた気がした。
「はい。おめでとうございます。リサイル様だからこそです」
普段通りのエディの声だ。俺の見間違い……?
俺はエディの様子が気になってしまって顔を覗き込もうとしたのに、エディはまるで何もなかったような表情でまた俺の手を拭き始めた。
「ユーッ」
「ありがとうエディ。ユーアンも、一緒にいてくれて心強いよ」
俺たちは未知の土地へ踏み出し、長く続く道を歩く。
四領を抜けた先には、交易が盛んな公国があったはずだ。
「このまま道なりに進んでいくと、ルーブロア公国に入りますね」
「ルーブロア公国って、確かドラゴンの末裔が国を治めているよな」
「はい。ルーブロア公国はブルードラゴンですね。あのレッドとは違い、王が国を治めているはずです」
「ブルードラゴンも伝説の召喚士と旅をしていたよな。少しでも話をする機会があるといいな」
俺の表情がお気に召さなかったのか、エディはまた不機嫌な雰囲気を表情にも少し滲ませてくる。
エディが無表情の場合でも、空気感や口調だけで気持ちはだいぶ伝わってくるんだよな。
「リサイル様はずいぶんとドラゴンがお好きなようですね」
「俺が好きな絵本に出てくるドラゴンたちだしな。旅を続けたら色々なドラゴンに会えるかもしれないし。ドラゴンと契約するなんて、伝説の召喚士って感じがする」
「そうでしたね。ならば、今回も機会が巡ってきたら契約するおつもりですか?」
「そんなにうまいこといくかは分からないけど、それもありかもな」
レッドドラゴンのイーラはお礼代わりに契約してくれたけれど、ブルードラゴンは今のところ接点がまるでない。
そんなに簡単に契約なんてできるわけがないと、この時の俺はただ笑っていた。
+++
ルーブロア公国は旅人を広く受け入れているとのことで、特に止められることもなく公国内へ入ることができた。
お頭を元に戻してから休まずに魔力を消費した状態で歩き続けていたので、何か食べ物を探して座ろうかという話になった。
城下町は通りも活気があり、俺たちは市場を見ながら美味しそうな食べ物を探していた。
エディによると、ルーブロア公国は海沿いに発展した国で港もあり、交易が盛んな国らしい。
俺が知らない潮の香りというのも新鮮で、往来する人たちも様々な色の個性的な服を着ているから見ているだけでも楽しい。
「いらっしゃい! バーンバ牛の串焼きだよ! 今なら焼きたてだ」
「串に刺さった肉なんて初めて見た」
「食べてみますか? では、串を二つ」
「あいよ! そっちのもふっこいのも食べられるかい?」
ユーアンは、ユーッと嬉しそうに尻尾を振ってお店のおじさんに答えた。
エディによると、ユーアンは肉も食べられるらしい。
「後で一緒に食べよう。他にも美味しそうなものがたくさんありそうだ」
「四領も抜けましたし、食べて少し休んだ後に宿を探して早めに休みましょう。今後のことも何も決めていませんので」
「そうだな。でも、食欲をそそる香りで今は何も考えられそうにないな」
「最近きちんとした食事をとっていませんでしたし、時にはしっかりと栄養をとることも大切です。もう少し市場を見て回りましょう」
エディのお許しも出たし、お腹を満たすためにも市場を見て回ることにした。
俺の手のひらは赤く光り、炎のような形とドラゴンが重なり合うような召喚陣の紋章が浮かび上がっていた。
「手のひらに汚らわしいものが……すぐに洗い落とさねば……」
「聞こえてるぞー。黒いの。これで、契約成立っと。俺の紋章がリーサちゃんの手のひらに刻まれたからな。助けが必要な時はいつでも呼んでくれ。かわい子ちゃんなら大歓迎だ」
「うわぁ……お頭。おっさんくさい」
「誰がおっさんだ! お兄さんだろうが。それに、お前らがお頭って呼ぶせいで盗賊と間違えられるんだ。盗賊じゃねえ。義賊って言ってるだろうが」
盗賊と間違えられるのは見た目のせいだと言いかけたが、話していると旅立ちがまた遅くなりそうなのでさっさと旅立つことにする。
というのも、エディがそろそろ苛立ちの限界を迎えそうだからだ。
「一刻も早く離れましょう」
「分かったから。落ち着いて、エディ。それじゃあ、また」
「おうよ。じゃあな、サモナードの坊ちゃん」
イーラの前で名乗ったこともあって、俺の正体に気づいたらしい。
見た目とは違い、ドラゴンだけあって物知りなのかもしれない。
「坊ちゃんって……リサイルって何者? 偉い人か? なんか難しくてよく分かんないや」
トカゲは四領のことも召喚士のこともよく分からないだろうから、あとでイーラが教えてあげるのだろう。
こうして俺たちは、ようやくヴァレクリンの渓谷を通り抜けることができた。
+++
「エディ、いたいいたい! そんなに擦らなくても、もう光ってないし」
「下品な者がリサイル様の肌に触れるなど……本当に汚らわしい。契約に必要なこととはいえ、あんな粗雑なものまで受け入れねばならないとは。リサイル様が不憫で仕方ありません」
「そうは言っても、伝説の召喚士といえばドラゴンがつきもの。最初のドラゴンがレッドドラゴンなんてすごいと思わない?」
俺が笑いかけると、エディの動きが一瞬止まる。
俺の手を拭いているから俯いているのもあって影になっているけれど、少し悲しげで寂しそうな表情が見えた気がした。
「はい。おめでとうございます。リサイル様だからこそです」
普段通りのエディの声だ。俺の見間違い……?
俺はエディの様子が気になってしまって顔を覗き込もうとしたのに、エディはまるで何もなかったような表情でまた俺の手を拭き始めた。
「ユーッ」
「ありがとうエディ。ユーアンも、一緒にいてくれて心強いよ」
俺たちは未知の土地へ踏み出し、長く続く道を歩く。
四領を抜けた先には、交易が盛んな公国があったはずだ。
「このまま道なりに進んでいくと、ルーブロア公国に入りますね」
「ルーブロア公国って、確かドラゴンの末裔が国を治めているよな」
「はい。ルーブロア公国はブルードラゴンですね。あのレッドとは違い、王が国を治めているはずです」
「ブルードラゴンも伝説の召喚士と旅をしていたよな。少しでも話をする機会があるといいな」
俺の表情がお気に召さなかったのか、エディはまた不機嫌な雰囲気を表情にも少し滲ませてくる。
エディが無表情の場合でも、空気感や口調だけで気持ちはだいぶ伝わってくるんだよな。
「リサイル様はずいぶんとドラゴンがお好きなようですね」
「俺が好きな絵本に出てくるドラゴンたちだしな。旅を続けたら色々なドラゴンに会えるかもしれないし。ドラゴンと契約するなんて、伝説の召喚士って感じがする」
「そうでしたね。ならば、今回も機会が巡ってきたら契約するおつもりですか?」
「そんなにうまいこといくかは分からないけど、それもありかもな」
レッドドラゴンのイーラはお礼代わりに契約してくれたけれど、ブルードラゴンは今のところ接点がまるでない。
そんなに簡単に契約なんてできるわけがないと、この時の俺はただ笑っていた。
+++
ルーブロア公国は旅人を広く受け入れているとのことで、特に止められることもなく公国内へ入ることができた。
お頭を元に戻してから休まずに魔力を消費した状態で歩き続けていたので、何か食べ物を探して座ろうかという話になった。
城下町は通りも活気があり、俺たちは市場を見ながら美味しそうな食べ物を探していた。
エディによると、ルーブロア公国は海沿いに発展した国で港もあり、交易が盛んな国らしい。
俺が知らない潮の香りというのも新鮮で、往来する人たちも様々な色の個性的な服を着ているから見ているだけでも楽しい。
「いらっしゃい! バーンバ牛の串焼きだよ! 今なら焼きたてだ」
「串に刺さった肉なんて初めて見た」
「食べてみますか? では、串を二つ」
「あいよ! そっちのもふっこいのも食べられるかい?」
ユーアンは、ユーッと嬉しそうに尻尾を振ってお店のおじさんに答えた。
エディによると、ユーアンは肉も食べられるらしい。
「後で一緒に食べよう。他にも美味しそうなものがたくさんありそうだ」
「四領も抜けましたし、食べて少し休んだ後に宿を探して早めに休みましょう。今後のことも何も決めていませんので」
「そうだな。でも、食欲をそそる香りで今は何も考えられそうにないな」
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