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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
29.青の出会い
市場には他にも東の国の調味料で味付けした焼きルームル貝、数種類の果物をしぼって作ったしぼりたての果物の飲み物。
朝とれたばかりだというアアユの香草焼きなど、海にまつわるものや手作りのパンやお菓子なども売られていた。
「さすがに全部は買えないし食べきれないな。串焼きを買ったし、一旦どこかで座って食べようか」
「そうですね。おっしゃっていただければ追加分は私が買ってきますので、リサイル様はあちらの腰掛けでお休みください」
エディが指さしたところは広場へ続いていて、広場の周りに石の腰掛けがいくつか置いてあるのが見える。
広場の真ん中にはドラゴンを模した石の彫像があり、優美な姿と共に力強さを表現しているようだ。
「エディは食べないのか?」
「私も後ほどいただきます。場所を確保できそうなので、飲み物を買ってまいります。先に食べていてください」
「分かった。ユーアンと一緒に待ってるよ」
「ユ!」
ユーアンは尻尾を振りながらエディを見送る。
エディも視線で何やらユーアンに訴えてから、また市場の方へ戻っていった。
「俺たちは先に座って待っていようか。あの腰掛けにしよう」
俺はドラゴンの彫像の正面にある腰掛けへ座る。
市場と違って人もまばらで、ゆっくりと食べることができそうだ。
「ユッ! ユユッ」
「ユーアンもお腹空いたよな? そんなに慌てなくても俺一人で食べないし……あ、こらっ」
ユーアンは串焼きの肉を目を輝かせながら狙っているみたいだ。
俺の肩の周りをうろうろ落ち着きなく動き回っている。
右へ左へと飛び跳ねるので、頭にかぶっていたフードがずり落ちてしまった。
「肉は逃げないぞ? 今食べさせてあげるって」
「ン!」
ユーアンがシュっと手を伸ばしたのと同時に、俺の髪を結んでいた濃紺の飾り紐に手が引っかかってしまったらしい。
ユーアンが飾り紐から逃れようと何度か腕を振ったせいで、飾り紐が緩んできてしまう。
「いてて、こら暴れないで大人しく……」
俺の願いも虚しく、飾り紐はユーアンの爪に引っかかり、髪の毛を緩めながらするりと解けてしまった。
柔らかな潮風が俺の手をすり抜けて、飾り紐を飛ばしてしまう。
その飾り紐は偶然にも通りがかった人の手にスッと落ちていった。
「あ……」
上等な服に身を包んだ青年だ。
俺の声が聞こえたのか、こちらに顔を向けてなぜか無言のまま俺の方へ歩いてくる。
俺はどうしていいか分からず、近づいてきた彼を見上げた。
精悍な顔立ちの自信が満ちた表情で、金の瞳は角度によって金青にも見える瞳。
風になびく髪は絵に描くとしたら、花紺青という色で表現したくなる高貴さがある、紫みを帯びた濃い青だ。
そばにはお供の人もいるし、もしかして……貴族とか偉い人なのだろうか?
「これは、お前の飾り紐か?」
「はい、そうです」
「美しい銀の髪と愛らしく柔らかな瑠璃色の瞳を持つ者か……。ふむ……よし、決めたぞ。城へ連れて帰ろう」
「……は?」
この人は今、城と言ったのか?
しかも連れ帰るって……あまりの発言に俺の思考が止まって変な声が出てしまった。
「殿下、この者の身なりからして旅の者でしょう。お触れを見て国を訪れた者ではないのでは?」
「オレが気に入ったのだから問題ないだろう?」
「え? 殿下って……あの……?」
「ユーッ!」
ユーアンのおかげで我に返った。急にそんなことを言われても困る。
何のことだか全く分からないが、殿下ってことはルーブロア公国の皇子様か?
隣にいる明るく爽やかな青の長髪の人が間に入ってくれなかったら、有無を言わさず連れて行かれるところだった。
確かに皇子様の高貴な雰囲気は納得できる。じゃなくて、俺はどうすればいいんだ?
「なんだ、このもふもふは。オレの邪魔をする気なのか? 受けてたとう」
「ユッ! ンーッ!」
俺が困っているのを察してくれたのか、ユーアンは俺を守ろうとしてくれているらしい。
毛を逆立てて、来るなと言わんばかりに声をあげている。
「すみません、話が全く見えてこないのですが……それにわたしはこの街に偶然立ち寄っただけなので、お触れについては何も知らないんです」
「ほう? この国には来たばかりか。しかし……見た目だけでなく声も良いとは。オレ好みだ」
やたらとグイグイとくるので笑ってごまかそうとしていると、俺の前にヒュッと腕が伸びてきた。
この感じ……前もあった気がする。
オニキルから俺をかばってくれた時にそっくりだ。
いつの間にか買い物を終えて戻ってきたエディが、俺の前に立って殿下を阻んでいる。
「どなたかは存じ上げませんが、何か御用でしょうか? 私たちはあなたの目的に全く関係のない旅の者です。お引き取りを」
「お前こそなんだ。旅の者ならば、オレのことが分からなくても仕方ないが……にしても、ずいぶんと無礼だな」
「殿下、まずは名乗られてはいかがでしょうか? 我が国では身分関係なく接するのが常。殿下から名乗られた方がよろしいかと」
お付きの方は騎士だろうか? 鎧を着込んでいないけれど、騎士剣らしき剣を腰の辺りからぶらさげているのが分かる。
殿下の扱いには、慣れているみたいだ。
雰囲気的に殿下は俺ともそこまで年は離れていなさそうだし、騎士さんは逆にエディと年が近そうな雰囲気がする。
朝とれたばかりだというアアユの香草焼きなど、海にまつわるものや手作りのパンやお菓子なども売られていた。
「さすがに全部は買えないし食べきれないな。串焼きを買ったし、一旦どこかで座って食べようか」
「そうですね。おっしゃっていただければ追加分は私が買ってきますので、リサイル様はあちらの腰掛けでお休みください」
エディが指さしたところは広場へ続いていて、広場の周りに石の腰掛けがいくつか置いてあるのが見える。
広場の真ん中にはドラゴンを模した石の彫像があり、優美な姿と共に力強さを表現しているようだ。
「エディは食べないのか?」
「私も後ほどいただきます。場所を確保できそうなので、飲み物を買ってまいります。先に食べていてください」
「分かった。ユーアンと一緒に待ってるよ」
「ユ!」
ユーアンは尻尾を振りながらエディを見送る。
エディも視線で何やらユーアンに訴えてから、また市場の方へ戻っていった。
「俺たちは先に座って待っていようか。あの腰掛けにしよう」
俺はドラゴンの彫像の正面にある腰掛けへ座る。
市場と違って人もまばらで、ゆっくりと食べることができそうだ。
「ユッ! ユユッ」
「ユーアンもお腹空いたよな? そんなに慌てなくても俺一人で食べないし……あ、こらっ」
ユーアンは串焼きの肉を目を輝かせながら狙っているみたいだ。
俺の肩の周りをうろうろ落ち着きなく動き回っている。
右へ左へと飛び跳ねるので、頭にかぶっていたフードがずり落ちてしまった。
「肉は逃げないぞ? 今食べさせてあげるって」
「ン!」
ユーアンがシュっと手を伸ばしたのと同時に、俺の髪を結んでいた濃紺の飾り紐に手が引っかかってしまったらしい。
ユーアンが飾り紐から逃れようと何度か腕を振ったせいで、飾り紐が緩んできてしまう。
「いてて、こら暴れないで大人しく……」
俺の願いも虚しく、飾り紐はユーアンの爪に引っかかり、髪の毛を緩めながらするりと解けてしまった。
柔らかな潮風が俺の手をすり抜けて、飾り紐を飛ばしてしまう。
その飾り紐は偶然にも通りがかった人の手にスッと落ちていった。
「あ……」
上等な服に身を包んだ青年だ。
俺の声が聞こえたのか、こちらに顔を向けてなぜか無言のまま俺の方へ歩いてくる。
俺はどうしていいか分からず、近づいてきた彼を見上げた。
精悍な顔立ちの自信が満ちた表情で、金の瞳は角度によって金青にも見える瞳。
風になびく髪は絵に描くとしたら、花紺青という色で表現したくなる高貴さがある、紫みを帯びた濃い青だ。
そばにはお供の人もいるし、もしかして……貴族とか偉い人なのだろうか?
「これは、お前の飾り紐か?」
「はい、そうです」
「美しい銀の髪と愛らしく柔らかな瑠璃色の瞳を持つ者か……。ふむ……よし、決めたぞ。城へ連れて帰ろう」
「……は?」
この人は今、城と言ったのか?
しかも連れ帰るって……あまりの発言に俺の思考が止まって変な声が出てしまった。
「殿下、この者の身なりからして旅の者でしょう。お触れを見て国を訪れた者ではないのでは?」
「オレが気に入ったのだから問題ないだろう?」
「え? 殿下って……あの……?」
「ユーッ!」
ユーアンのおかげで我に返った。急にそんなことを言われても困る。
何のことだか全く分からないが、殿下ってことはルーブロア公国の皇子様か?
隣にいる明るく爽やかな青の長髪の人が間に入ってくれなかったら、有無を言わさず連れて行かれるところだった。
確かに皇子様の高貴な雰囲気は納得できる。じゃなくて、俺はどうすればいいんだ?
「なんだ、このもふもふは。オレの邪魔をする気なのか? 受けてたとう」
「ユッ! ンーッ!」
俺が困っているのを察してくれたのか、ユーアンは俺を守ろうとしてくれているらしい。
毛を逆立てて、来るなと言わんばかりに声をあげている。
「すみません、話が全く見えてこないのですが……それにわたしはこの街に偶然立ち寄っただけなので、お触れについては何も知らないんです」
「ほう? この国には来たばかりか。しかし……見た目だけでなく声も良いとは。オレ好みだ」
やたらとグイグイとくるので笑ってごまかそうとしていると、俺の前にヒュッと腕が伸びてきた。
この感じ……前もあった気がする。
オニキルから俺をかばってくれた時にそっくりだ。
いつの間にか買い物を終えて戻ってきたエディが、俺の前に立って殿下を阻んでいる。
「どなたかは存じ上げませんが、何か御用でしょうか? 私たちはあなたの目的に全く関係のない旅の者です。お引き取りを」
「お前こそなんだ。旅の者ならば、オレのことが分からなくても仕方ないが……にしても、ずいぶんと無礼だな」
「殿下、まずは名乗られてはいかがでしょうか? 我が国では身分関係なく接するのが常。殿下から名乗られた方がよろしいかと」
お付きの方は騎士だろうか? 鎧を着込んでいないけれど、騎士剣らしき剣を腰の辺りからぶらさげているのが分かる。
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