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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
31.無自覚
すっかり冷えてしまったバーンバ牛の串焼きをかじりながら、エディが買いに行ってくれた数種のしぼられた果物が混ざった飲み物を飲む。
喉がカラカラに乾いていたのと、お腹も空いていたので冷めていてもとても美味しい。
ユーアンも嬉しそうに肉を頬張っている。
「んー……うまい。外で串焼きの肉を食べるなんて、屋敷だったら、行儀が悪いと怒られるところだな」
「確かに。そのように口元を汚されて……いけませんね」
肉にかぶりつきながら何も気にせず楽しんで食べていたので、口元の汚れに気づかなかった。
慌てて拭くものを出そうとする前に、エディが指を伸ばして俺の口元を拭ってくれる。
そして、その指を自らの口元へ持っていき、ごく自然な動作で……チュッと舐めとる。
一連の動作を俺に見せつけるように、ゆっくりと。
俺はどこか艶っぽくもあるエディの仕草に目を奪われてしまい、急に恥ずかしくなってきた。
「拭くもの! いいから、出して!」
「もう口元には何もついていませんよ。私はおいしそうに食べてらっしゃるリサイル様ごとおいしくいただいたので満足です」
「俺ごと食べるって……変な例えで意味不明だし。そんなことを言われても困るだけだ。もういい。エディも肉を食べればいい」
俺がグイっと串を突き付けると、エディはほんの少しだけ目元を柔らげながら肉をかじってくれた。
時々、俺をからかってくるのは何か意味があるのだろうか?
エディが本気を出すと、俺だけじゃなく見る人みんなが目のやり場に困ることを自覚してほしい。
正直、色気を出して俺をからかうのはやめてほしい。
+++
串焼きの他にも気になっているものをいくつか食べて、城下町を一回りする。
噂のお触れも読んでみたけど、確かに公王陛下の名前でお触れが出されていた。
「皇子に相応しい伴侶は誰彼問わず王城までって……そんなざっくり決めていいものなのか?」
「自由な国だと言っていましたし、実際は公王が優秀な子を産めそうな者を身分問わず見定めるつもりなのかもしれません」
「サフィシュ殿下も自分の足で歩いて見て回ってたってことなのか。噂の夜会も伴侶探しのために?」
「私としては夜会へ行かないことをお勧めいたしますが、リサイル様はブルードラゴンにご興味がありそうですね」
また不機嫌そうなエディが気になるが、エディの言う通りだ。
召喚士としてはブルードラゴンのことが気になるし、できれば契約を結べたらという気持ちもある。
「興味がないと言ったら嘘になる。だけど、伴侶にはなりたくない。俺はもう何かに縛られるのは嫌なんだ。まだ目標も決まってないけれど……どうせならもっと色々な場所へ行って、色々なものに触れて……自分が知らないことを知っていきたい」
「それがリサイル様の旅の目的になるのならば、私はどこまでもお供いたします」
「ユー!」
「ありがとう。帰るところもない旅だけれど、その代わりなんでもできるって思えばいいか」
ユーアンも賛成してくれるらしい。ユーアンのもふもふの毛をなでながら、エディに笑顔を向けた。
過保護だけれど、俺の絶対的な味方でいてくれるエディが一緒にいてくれるからこその旅だ。
召喚士としてはまだまだ未熟だし、己の力を高めながら旅を続けていきたい。
「夜会は青の夜会という名で定期的に開かれているようですね。最近はお触れのこともあって、公王や皇子のところへ直接会いに行く者も増えているようですが」
「伝説の召喚士について王城なら何か伝承が残っている可能性もあるし、伴侶以外の話だったら殿下ともしてみたいと思ってる」
「そこまでおっしゃるのならば、私も同行いたします。まだ夜会までは時間もございますので、一旦宿を取って少し休みましょう」
「そうだな。夜会っていうともっと正装の方がいい気もするけど、かしこまらなくてもいいって言っていたから気軽な気持ちで参加してみようか」
身分問わずという話だし、貴族や平民といった身分を意識しすぎない雰囲気なんだろう。
俺が服装の話をした瞬間、エディの雰囲気がまた変化してムッとした様子になる。
「参加するまでは許容いたします。ですが、あの皇子の前だけではなく不特定多数の人間の前でリサイル様のお姿を見せつける必要はございません」
「いや、そんな大げさに考えなくても。サフィシュ殿下がたまたま変わっていただけで……」
俺が苦笑いを返すと、エディは不機嫌さを隠さずに俺へ顔を近づけてくる。
エディにじっと覗き込まれると、妙に緊張してしまう。
怖いわけでもない、焦りにも似たこの感情は……一体いつからだろう?
「本当にあなたは無自覚すぎる。サモナード家の者たちの価値観で染められているせいか、ご自身の魅力に気づいていないのです。このタヌキですら気づいているというのに……」
「ユッ」
ユーアンも、もふもふの毛を俺の頬にすり寄せてくる。
良く分からないけれど、思い返せばイーラも最初から俺のことを気に入ってくれていた感じだった。
もしかして……召喚士は人には好かれないけれど、魔物やドラゴンには好かれる体質なのか?
「でも、エディは俺のことを嫌いってわけじゃなさそうだし……だとするとこの仮定は成り立たないか」
「急に何の話をされているのですか?」
「え、いや……こっちの話。エディは俺のそばにいつもいてくれて優しいなって」
あははと笑ってごまかそうとしたのに、エディはなかなか俺から離れてくれない。
今日はいつにも増して不機嫌な気がする。
喉がカラカラに乾いていたのと、お腹も空いていたので冷めていてもとても美味しい。
ユーアンも嬉しそうに肉を頬張っている。
「んー……うまい。外で串焼きの肉を食べるなんて、屋敷だったら、行儀が悪いと怒られるところだな」
「確かに。そのように口元を汚されて……いけませんね」
肉にかぶりつきながら何も気にせず楽しんで食べていたので、口元の汚れに気づかなかった。
慌てて拭くものを出そうとする前に、エディが指を伸ばして俺の口元を拭ってくれる。
そして、その指を自らの口元へ持っていき、ごく自然な動作で……チュッと舐めとる。
一連の動作を俺に見せつけるように、ゆっくりと。
俺はどこか艶っぽくもあるエディの仕草に目を奪われてしまい、急に恥ずかしくなってきた。
「拭くもの! いいから、出して!」
「もう口元には何もついていませんよ。私はおいしそうに食べてらっしゃるリサイル様ごとおいしくいただいたので満足です」
「俺ごと食べるって……変な例えで意味不明だし。そんなことを言われても困るだけだ。もういい。エディも肉を食べればいい」
俺がグイっと串を突き付けると、エディはほんの少しだけ目元を柔らげながら肉をかじってくれた。
時々、俺をからかってくるのは何か意味があるのだろうか?
エディが本気を出すと、俺だけじゃなく見る人みんなが目のやり場に困ることを自覚してほしい。
正直、色気を出して俺をからかうのはやめてほしい。
+++
串焼きの他にも気になっているものをいくつか食べて、城下町を一回りする。
噂のお触れも読んでみたけど、確かに公王陛下の名前でお触れが出されていた。
「皇子に相応しい伴侶は誰彼問わず王城までって……そんなざっくり決めていいものなのか?」
「自由な国だと言っていましたし、実際は公王が優秀な子を産めそうな者を身分問わず見定めるつもりなのかもしれません」
「サフィシュ殿下も自分の足で歩いて見て回ってたってことなのか。噂の夜会も伴侶探しのために?」
「私としては夜会へ行かないことをお勧めいたしますが、リサイル様はブルードラゴンにご興味がありそうですね」
また不機嫌そうなエディが気になるが、エディの言う通りだ。
召喚士としてはブルードラゴンのことが気になるし、できれば契約を結べたらという気持ちもある。
「興味がないと言ったら嘘になる。だけど、伴侶にはなりたくない。俺はもう何かに縛られるのは嫌なんだ。まだ目標も決まってないけれど……どうせならもっと色々な場所へ行って、色々なものに触れて……自分が知らないことを知っていきたい」
「それがリサイル様の旅の目的になるのならば、私はどこまでもお供いたします」
「ユー!」
「ありがとう。帰るところもない旅だけれど、その代わりなんでもできるって思えばいいか」
ユーアンも賛成してくれるらしい。ユーアンのもふもふの毛をなでながら、エディに笑顔を向けた。
過保護だけれど、俺の絶対的な味方でいてくれるエディが一緒にいてくれるからこその旅だ。
召喚士としてはまだまだ未熟だし、己の力を高めながら旅を続けていきたい。
「夜会は青の夜会という名で定期的に開かれているようですね。最近はお触れのこともあって、公王や皇子のところへ直接会いに行く者も増えているようですが」
「伝説の召喚士について王城なら何か伝承が残っている可能性もあるし、伴侶以外の話だったら殿下ともしてみたいと思ってる」
「そこまでおっしゃるのならば、私も同行いたします。まだ夜会までは時間もございますので、一旦宿を取って少し休みましょう」
「そうだな。夜会っていうともっと正装の方がいい気もするけど、かしこまらなくてもいいって言っていたから気軽な気持ちで参加してみようか」
身分問わずという話だし、貴族や平民といった身分を意識しすぎない雰囲気なんだろう。
俺が服装の話をした瞬間、エディの雰囲気がまた変化してムッとした様子になる。
「参加するまでは許容いたします。ですが、あの皇子の前だけではなく不特定多数の人間の前でリサイル様のお姿を見せつける必要はございません」
「いや、そんな大げさに考えなくても。サフィシュ殿下がたまたま変わっていただけで……」
俺が苦笑いを返すと、エディは不機嫌さを隠さずに俺へ顔を近づけてくる。
エディにじっと覗き込まれると、妙に緊張してしまう。
怖いわけでもない、焦りにも似たこの感情は……一体いつからだろう?
「本当にあなたは無自覚すぎる。サモナード家の者たちの価値観で染められているせいか、ご自身の魅力に気づいていないのです。このタヌキですら気づいているというのに……」
「ユッ」
ユーアンも、もふもふの毛を俺の頬にすり寄せてくる。
良く分からないけれど、思い返せばイーラも最初から俺のことを気に入ってくれていた感じだった。
もしかして……召喚士は人には好かれないけれど、魔物やドラゴンには好かれる体質なのか?
「でも、エディは俺のことを嫌いってわけじゃなさそうだし……だとするとこの仮定は成り立たないか」
「急に何の話をされているのですか?」
「え、いや……こっちの話。エディは俺のそばにいつもいてくれて優しいなって」
あははと笑ってごまかそうとしたのに、エディはなかなか俺から離れてくれない。
今日はいつにも増して不機嫌な気がする。
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