召喚士一族の落ちこぼれ長男なのに、過保護な従者が離してくれません!

楓乃めーぷる

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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ

34.客室で

 エディの視線が怖い。確実に俺の行動が引き起こした結果だと訴えかけている。
 それを承知でいつもついて来てくれているのも分かっているけれど……どうしてもサフィシュ殿下を放っておけなかったのだから仕方がない。

 俺たちは公王陛下とサフィシュ殿下に連れられて、ルーブロア公国の城内へと通された。
 客人として迎えられたため、俺たち一人一人に世話役のメイドがあてがわれてしまった。

「リサイル様はこちらのお部屋で。エディ様はお隣のお部屋でお休みください」
「私はリサイル様と同室で構いません」

 エディが言いきると、茶の髪のメイドが驚いた表情をしたあとに困った顔をして俺へ視線を投げかけてくる。
 エディは俺の従者だけれど、今は従者ではなく旅の仲間として扱われている。
 だから、同室というのは少し不自然だ。
 
「エディ、俺のことなら気にしないで。今日はゆっくり休んでほしい」
「リサイル様がそうおっしゃるのならば、不本意ですが仕方ありません。本日は念のためこちらをお持ちください」

 エディは腰につけていた魔法の袋を俺へ手渡してくれた。
 俺が袋を受け取ると、エディとは別々の部屋へ通される。
 室内は客室と言っていたが、サモナードの家よりも家具や装飾が豪華に見える。
 さすが公国と言ったところだろうか?

「お召し物をおあずかりいたします」
「ありがとうございます」

 俺はフード付き外套がいとうを脱がせてもらう。すると、メイドがなぜか息を飲んでこちらを見つめていた。
 振り返って首を傾げると、申し訳ございません! という焦った声が聞こえてきた。

「銀色の髪はめずらしいので、つい見入ってしまいました」
「そうなのですか。わたしは特に気にしていませんので。ありがとうございます。後は一人で大丈夫です」

 俺は怖がらせないようになるべく優しく微笑んでみると、メイドは何度か瞬きをしたあとに服を彫刻の施された外套掛けへかけてから、逃げるように部屋を出て行ってしまった。

「俺、何かおびえさせるようなことをしてしまったか?」

 思い当たることは分からなかったけれど、怖がっている雰囲気とは少し違ったような気もする。
 考えすぎても仕方がないので、室内を見回してみた。
 白で統一された家具に、一人用の清潔に整えられたベッド。
 一つある扉を開けてみると、湯あみができそうな浴場が備え付けられている。

「さすがに宿より豪華だな。室内の広さも一人では広すぎるくらいだ」

 白の壁にはブルードラゴンが描かれた絵画が飾ってある。ブルードラゴンといえば、青き知性の守り。
 絵本通りならば、防御に特化している頭の良いドラゴンということになる。
 
「思えば、レッドドラゴンのイーラは赤き猛る力という表現が当てはまるドラゴンだったな」

 イーラとサフィシュ殿下は同じドラゴンでも、雰囲気が全く違っている。
 ブルードラゴンのことをもっとゆっくり知りたい気持ちもあるが、明日はきっと公王陛下にお目通りをすることになるのだろう。
 失礼のないよう、湯あみをして身だしなみを整えた方がよさそうだ。

「夜更けまで勉強しすぎないように気をつけて、ゆっくり寝ておこう」

 いつも注意をしてくれるエディがそばにいないのだから、自身で気をつけなければならない。
 まずは湯あみをしようと、浴場へ向かった。

 +++

 ベッドのそばにある白の机の上には寝衣しんいも用意されていた。
 羽織ってから紐で結ぶものだが、生地も上等なもののようで肌触りもいい。

「今夜は特にゆっくりと眠れそうだ」

 ベッドの上へあがり、魔法の袋を自分のそばへ引き寄せる。
 髪の水分を布に吸わせたあとは、髪が渇くまでの間に読書をする。
 日々の勉強の積み重ねが大切だ。俺はまだまだ未熟で力が足りていない。

 自分で決めた場所まで読み終えたら、瞑想も忘れずに行う。
 体内の魔力の核が分かるようになってきたおかげで、少しずつ魔力の流れも分かってきた。
 この流れを更に把握できれば、ユーアンだけでなくイーラを同時に召喚することも可能になるはずだ。

「エディの力を借りずに、自分だけでも感じられるように……」

 エディの手のぬくもりがないと、どこか寂しさを感じてしまう。
 けれど、闇の中でも常にエディが俺を導いてくれる気がする。
 もしかしたら、隣の部屋で俺のことを気にかけてくれているのかもしれない。

「エディ……」

 名前を呟くだけで、俺の心は不安な闇の中から明るい光の方へ引き上げられていく。
 エディに頼りすぎてはいけないという気持ちと共に、エディにはいつも俺のそばにいてほしい気持ちも強くあるのだと分かる。
 
 「これからもずっと、俺のそばで見守っていてほしい」

 自然と願いが口に出てしまい、少し気恥ずかしい気持ちになってしまう。
 このままではいけないと、俺は暫く瞑想を続けていく。
 瞑想に没頭していくうちに、俺の身体を巡る魔力を更に強く感じられるようになってきた。

「よし。あとは召喚しながら自分も更に強い魔法を使えるようにならないとな」

 理論上はできるはずなのだが、負荷の方がまだ少し上回っているため強力な魔法を使えていない。
 次の課題は召喚と強力な魔法の両立だ。
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