35 / 74
第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
34.客室で
エディの視線が怖い。確実に俺の行動が引き起こした結果だと訴えかけている。
それを承知でいつもついて来てくれているのも分かっているけれど……どうしてもサフィシュ殿下を放っておけなかったのだから仕方がない。
俺たちは公王陛下とサフィシュ殿下に連れられて、ルーブロア公国の城内へと通された。
客人として迎えられたため、俺たち一人一人に世話役のメイドがあてがわれてしまった。
「リサイル様はこちらのお部屋で。エディ様はお隣のお部屋でお休みください」
「私はリサイル様と同室で構いません」
エディが言いきると、茶の髪のメイドが驚いた表情をしたあとに困った顔をして俺へ視線を投げかけてくる。
エディは俺の従者だけれど、今は従者ではなく旅の仲間として扱われている。
だから、同室というのは少し不自然だ。
「エディ、俺のことなら気にしないで。今日はゆっくり休んでほしい」
「リサイル様がそうおっしゃるのならば、不本意ですが仕方ありません。本日は念のためこちらをお持ちください」
エディは腰につけていた魔法の袋を俺へ手渡してくれた。
俺が袋を受け取ると、エディとは別々の部屋へ通される。
室内は客室と言っていたが、サモナードの家よりも家具や装飾が豪華に見える。
さすが公国と言ったところだろうか?
「お召し物をおあずかりいたします」
「ありがとうございます」
俺はフード付き外套を脱がせてもらう。すると、メイドがなぜか息を飲んでこちらを見つめていた。
振り返って首を傾げると、申し訳ございません! という焦った声が聞こえてきた。
「銀色の髪はめずらしいので、つい見入ってしまいました」
「そうなのですか。わたしは特に気にしていませんので。ありがとうございます。後は一人で大丈夫です」
俺は怖がらせないようになるべく優しく微笑んでみると、メイドは何度か瞬きをしたあとに服を彫刻の施された外套掛けへかけてから、逃げるように部屋を出て行ってしまった。
「俺、何かおびえさせるようなことをしてしまったか?」
思い当たることは分からなかったけれど、怖がっている雰囲気とは少し違ったような気もする。
考えすぎても仕方がないので、室内を見回してみた。
白で統一された家具に、一人用の清潔に整えられたベッド。
一つある扉を開けてみると、湯あみができそうな浴場が備え付けられている。
「さすがに宿より豪華だな。室内の広さも一人では広すぎるくらいだ」
白の壁にはブルードラゴンが描かれた絵画が飾ってある。ブルードラゴンといえば、青き知性の守り。
絵本通りならば、防御に特化している頭の良いドラゴンということになる。
「思えば、レッドドラゴンのイーラは赤き猛る力という表現が当てはまるドラゴンだったな」
イーラとサフィシュ殿下は同じドラゴンでも、雰囲気が全く違っている。
ブルードラゴンのことをもっとゆっくり知りたい気持ちもあるが、明日はきっと公王陛下にお目通りをすることになるのだろう。
失礼のないよう、湯あみをして身だしなみを整えた方がよさそうだ。
「夜更けまで勉強しすぎないように気をつけて、ゆっくり寝ておこう」
いつも注意をしてくれるエディがそばにいないのだから、自身で気をつけなければならない。
まずは湯あみをしようと、浴場へ向かった。
+++
ベッドのそばにある白の机の上には寝衣も用意されていた。
羽織ってから紐で結ぶものだが、生地も上等なもののようで肌触りもいい。
「今夜は特にゆっくりと眠れそうだ」
ベッドの上へあがり、魔法の袋を自分のそばへ引き寄せる。
髪の水分を布に吸わせたあとは、髪が渇くまでの間に読書をする。
日々の勉強の積み重ねが大切だ。俺はまだまだ未熟で力が足りていない。
自分で決めた場所まで読み終えたら、瞑想も忘れずに行う。
体内の魔力の核が分かるようになってきたおかげで、少しずつ魔力の流れも分かってきた。
この流れを更に把握できれば、ユーアンだけでなくイーラを同時に召喚することも可能になるはずだ。
「エディの力を借りずに、自分だけでも感じられるように……」
エディの手のぬくもりがないと、どこか寂しさを感じてしまう。
けれど、闇の中でも常にエディが俺を導いてくれる気がする。
もしかしたら、隣の部屋で俺のことを気にかけてくれているのかもしれない。
「エディ……」
名前を呟くだけで、俺の心は不安な闇の中から明るい光の方へ引き上げられていく。
エディに頼りすぎてはいけないという気持ちと共に、エディにはいつも俺のそばにいてほしい気持ちも強くあるのだと分かる。
「これからもずっと、俺のそばで見守っていてほしい」
自然と願いが口に出てしまい、少し気恥ずかしい気持ちになってしまう。
このままではいけないと、俺は暫く瞑想を続けていく。
瞑想に没頭していくうちに、俺の身体を巡る魔力を更に強く感じられるようになってきた。
「よし。あとは召喚しながら自分も更に強い魔法を使えるようにならないとな」
理論上はできるはずなのだが、負荷の方がまだ少し上回っているため強力な魔法を使えていない。
次の課題は召喚と強力な魔法の両立だ。
それを承知でいつもついて来てくれているのも分かっているけれど……どうしてもサフィシュ殿下を放っておけなかったのだから仕方がない。
俺たちは公王陛下とサフィシュ殿下に連れられて、ルーブロア公国の城内へと通された。
客人として迎えられたため、俺たち一人一人に世話役のメイドがあてがわれてしまった。
「リサイル様はこちらのお部屋で。エディ様はお隣のお部屋でお休みください」
「私はリサイル様と同室で構いません」
エディが言いきると、茶の髪のメイドが驚いた表情をしたあとに困った顔をして俺へ視線を投げかけてくる。
エディは俺の従者だけれど、今は従者ではなく旅の仲間として扱われている。
だから、同室というのは少し不自然だ。
「エディ、俺のことなら気にしないで。今日はゆっくり休んでほしい」
「リサイル様がそうおっしゃるのならば、不本意ですが仕方ありません。本日は念のためこちらをお持ちください」
エディは腰につけていた魔法の袋を俺へ手渡してくれた。
俺が袋を受け取ると、エディとは別々の部屋へ通される。
室内は客室と言っていたが、サモナードの家よりも家具や装飾が豪華に見える。
さすが公国と言ったところだろうか?
「お召し物をおあずかりいたします」
「ありがとうございます」
俺はフード付き外套を脱がせてもらう。すると、メイドがなぜか息を飲んでこちらを見つめていた。
振り返って首を傾げると、申し訳ございません! という焦った声が聞こえてきた。
「銀色の髪はめずらしいので、つい見入ってしまいました」
「そうなのですか。わたしは特に気にしていませんので。ありがとうございます。後は一人で大丈夫です」
俺は怖がらせないようになるべく優しく微笑んでみると、メイドは何度か瞬きをしたあとに服を彫刻の施された外套掛けへかけてから、逃げるように部屋を出て行ってしまった。
「俺、何かおびえさせるようなことをしてしまったか?」
思い当たることは分からなかったけれど、怖がっている雰囲気とは少し違ったような気もする。
考えすぎても仕方がないので、室内を見回してみた。
白で統一された家具に、一人用の清潔に整えられたベッド。
一つある扉を開けてみると、湯あみができそうな浴場が備え付けられている。
「さすがに宿より豪華だな。室内の広さも一人では広すぎるくらいだ」
白の壁にはブルードラゴンが描かれた絵画が飾ってある。ブルードラゴンといえば、青き知性の守り。
絵本通りならば、防御に特化している頭の良いドラゴンということになる。
「思えば、レッドドラゴンのイーラは赤き猛る力という表現が当てはまるドラゴンだったな」
イーラとサフィシュ殿下は同じドラゴンでも、雰囲気が全く違っている。
ブルードラゴンのことをもっとゆっくり知りたい気持ちもあるが、明日はきっと公王陛下にお目通りをすることになるのだろう。
失礼のないよう、湯あみをして身だしなみを整えた方がよさそうだ。
「夜更けまで勉強しすぎないように気をつけて、ゆっくり寝ておこう」
いつも注意をしてくれるエディがそばにいないのだから、自身で気をつけなければならない。
まずは湯あみをしようと、浴場へ向かった。
+++
ベッドのそばにある白の机の上には寝衣も用意されていた。
羽織ってから紐で結ぶものだが、生地も上等なもののようで肌触りもいい。
「今夜は特にゆっくりと眠れそうだ」
ベッドの上へあがり、魔法の袋を自分のそばへ引き寄せる。
髪の水分を布に吸わせたあとは、髪が渇くまでの間に読書をする。
日々の勉強の積み重ねが大切だ。俺はまだまだ未熟で力が足りていない。
自分で決めた場所まで読み終えたら、瞑想も忘れずに行う。
体内の魔力の核が分かるようになってきたおかげで、少しずつ魔力の流れも分かってきた。
この流れを更に把握できれば、ユーアンだけでなくイーラを同時に召喚することも可能になるはずだ。
「エディの力を借りずに、自分だけでも感じられるように……」
エディの手のぬくもりがないと、どこか寂しさを感じてしまう。
けれど、闇の中でも常にエディが俺を導いてくれる気がする。
もしかしたら、隣の部屋で俺のことを気にかけてくれているのかもしれない。
「エディ……」
名前を呟くだけで、俺の心は不安な闇の中から明るい光の方へ引き上げられていく。
エディに頼りすぎてはいけないという気持ちと共に、エディにはいつも俺のそばにいてほしい気持ちも強くあるのだと分かる。
「これからもずっと、俺のそばで見守っていてほしい」
自然と願いが口に出てしまい、少し気恥ずかしい気持ちになってしまう。
このままではいけないと、俺は暫く瞑想を続けていく。
瞑想に没頭していくうちに、俺の身体を巡る魔力を更に強く感じられるようになってきた。
「よし。あとは召喚しながら自分も更に強い魔法を使えるようにならないとな」
理論上はできるはずなのだが、負荷の方がまだ少し上回っているため強力な魔法を使えていない。
次の課題は召喚と強力な魔法の両立だ。
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
※未完
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。