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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
35.玉座の間
次の日の朝、メイドに起こされる前に何とか目覚めることができた。
顔を洗って着替えを済ませたところで、扉が叩かれる。
「失礼いたします。もう着替えまでされていたのですか?」
「おはようございます。ちょうど髪を整えようとしていたところです」
「昨日はリサイル様の髪とお顔の美しさに見惚れていたのです。大変失礼いたしました。では、お櫛を通してもよろしいでしょうか?」
「美しいと言われるほどではありませんが……お褒めいただきありがとうございます。 では、お願いします」
俺は鏡台の前へ座らされ、髪を整えられていく。
昨日していた髪型を覚えていてくれたのか、メイドはいつもしている髪型と同じように濃紺の飾り紐で髪を結ってくれた。
久しぶりに髪へつけられた香油がほのかな花の香りで、上品な香りだ。
「公王陛下がお待ちです。廊下でお連れ様もお待ちになっているかと思われます。一緒に参りましょう」
「はい、分かりました」
予想通り、公王陛下との対面が待っているらしい。
扉をくぐるとメイドの言った通り、エディも部屋の外で俺を待っていてくれたようだ。
「リサイル様、おはようございます。よく眠れましたか?」
「ああ。上等な客室に通していただいたおかげで熟睡できた気がする」
エディに忘れないうちにと魔法の袋を手渡してから、メイドの案内で廊下を歩いていく。
突き当たったところにある大扉の前で、メイドたちは一礼をして去っていった。
大扉の前にいた兵士がゆっくりと大扉を開いてくれる。
中は玉座の間になっており、青色の品の良いじゅうたんが玉座まで敷いてある。
玉座には公王陛下と公妃殿下の二人が座っていて、陛下の隣にサフィシュ殿下が立っていた。
俺とエディは陛下たちの前まで歩いていき、まずは俺から胸に手を当てながら最敬礼の姿勢をとる。
「ルーブロア公王陛下、ルーブロア公妃殿下。並びにサフィシュ殿下にご挨拶申し上げます」
エディもならって美しい所作で俺と同じ姿勢をとると、陛下が昨日と同じように顔をあげるようにと手を前に出す。
公王陛下と公妃殿下は俺とエディを順に見てから、柔らかに微笑んでくれる。
「ルーブロア公国へよくぞまいった。私はグレオルン・ディ・ルーブロア。この国を治めている王である」
「わたくしは、ナディアーヌ・ディ・ルーブロア。公妃でもあり、サフィシュの母でもあります。旅人よ、ルーブロア公国へようこそ」
「わたしはリサイルと申します。こちらはエディです」
改めてあいさつをしてから、二人へ向き直る。
サフィシュ殿下も自信の満ち溢れた笑みで俺たちを迎えてくれていた。
「さて、聡明な旅人に礼をしたいのだが……」
「陛下、わたしはお礼をいただくようなことはしておりません。本日お招きいただいたことがわたしたちにとって大変名誉なことでございます。どうかお気になさいませんよう」
申し訳ないので丁重にお断りしようとしたのだけれど、エディがちらりと視線で訴えかけてくる。
受け取らないというのも失礼にあたるかもしれないし、どうしたらよいものかと悩んでいると一人の騎士が玉座の間へかけ込んできた。
陛下が声を発する前に、殿下が騎士の方へ駆け寄って声をあげる。
「何事だ! 今、客人と話をしている最中なのだぞ!」
「サフィシュ殿下、申し訳ありません。陛下、お取込み中に失礼いたします。港近くの海上に水竜が現れました!」
騎士の一言にさすがの陛下も立ち上がり、確認するように騎士へ話しかける。
「水竜……シードラゴンだと? この前、追いやったばかりだというのに」
シードラゴンと言えば、海の王者とも言われるドラゴンだ。ブルードラゴンとは仲が悪いと聞いたことがある。
今までも海と国を荒らそうとシードラゴンが迫ってくるたびに、ブルードラゴンたちが街から遠ざけていたのだろうか?
「父上、ここはオレが!」
「サフィシュ! まだ、良いと言っておらん! ……全く、話しを聞かない馬鹿者めが」
サフィシュ殿下は普段の口調に戻ってしまうくらいの勢いで陛下へ宣言し、玉座の間を飛び出していってしまった。
シードラゴンたちがどれくらいの規模でやってきているのかは分からないけれど、今はゆっくりと話をしている場合ではなさそうだ。
「陛下、今はシードラゴンへのご対処を。わたしたちにもできることがあればお手伝いいたします」
「なんと、旅人のそなたが?」
エディはもう慣れたという空気を出しているので、俺は身分を隠すのをやめて本当の名を名乗ることに決めた。
エディに確認の意味で軽く目配せをしてから、少しだけ息を吸い込んで改めて陛下へ向き直る。
「はい。わたしの本当の名は、リサイル・サモナード。召喚士一族の末裔です。まだまだ未熟ではありますが、今は国の一大事。どうか、わたしにもお手伝いをさせてください」
「なんと! サモナードといえば、確かに召喚士一族が治めている四領のうちの一つ。近頃は召喚士が現れたという話は出ていなかったが……そなたが召喚士であると?」
公王陛下も静かに事の次第を聞いていた公妃殿下も驚いた様子だったけれど、エディが俺の隣で一礼する。
「間違いございません。私たちは訳あって旅をしておりますが、リサイル様はサモナード家のご長男。リサイル様、まずはユーアンを。ユーアンには杖を持って待機しておくように言ってあります」
「分かった。ユーアン!」
俺が願いを込めてユーアンの名を呼ぶと、右の人さし指の爪が赤く光ってユーアンが姿を現した。
エディの言う通り、ユーアンは宿に置いてきた俺の杖を小さな両手でしっかりと持っていてくれた。
顔を洗って着替えを済ませたところで、扉が叩かれる。
「失礼いたします。もう着替えまでされていたのですか?」
「おはようございます。ちょうど髪を整えようとしていたところです」
「昨日はリサイル様の髪とお顔の美しさに見惚れていたのです。大変失礼いたしました。では、お櫛を通してもよろしいでしょうか?」
「美しいと言われるほどではありませんが……お褒めいただきありがとうございます。 では、お願いします」
俺は鏡台の前へ座らされ、髪を整えられていく。
昨日していた髪型を覚えていてくれたのか、メイドはいつもしている髪型と同じように濃紺の飾り紐で髪を結ってくれた。
久しぶりに髪へつけられた香油がほのかな花の香りで、上品な香りだ。
「公王陛下がお待ちです。廊下でお連れ様もお待ちになっているかと思われます。一緒に参りましょう」
「はい、分かりました」
予想通り、公王陛下との対面が待っているらしい。
扉をくぐるとメイドの言った通り、エディも部屋の外で俺を待っていてくれたようだ。
「リサイル様、おはようございます。よく眠れましたか?」
「ああ。上等な客室に通していただいたおかげで熟睡できた気がする」
エディに忘れないうちにと魔法の袋を手渡してから、メイドの案内で廊下を歩いていく。
突き当たったところにある大扉の前で、メイドたちは一礼をして去っていった。
大扉の前にいた兵士がゆっくりと大扉を開いてくれる。
中は玉座の間になっており、青色の品の良いじゅうたんが玉座まで敷いてある。
玉座には公王陛下と公妃殿下の二人が座っていて、陛下の隣にサフィシュ殿下が立っていた。
俺とエディは陛下たちの前まで歩いていき、まずは俺から胸に手を当てながら最敬礼の姿勢をとる。
「ルーブロア公王陛下、ルーブロア公妃殿下。並びにサフィシュ殿下にご挨拶申し上げます」
エディもならって美しい所作で俺と同じ姿勢をとると、陛下が昨日と同じように顔をあげるようにと手を前に出す。
公王陛下と公妃殿下は俺とエディを順に見てから、柔らかに微笑んでくれる。
「ルーブロア公国へよくぞまいった。私はグレオルン・ディ・ルーブロア。この国を治めている王である」
「わたくしは、ナディアーヌ・ディ・ルーブロア。公妃でもあり、サフィシュの母でもあります。旅人よ、ルーブロア公国へようこそ」
「わたしはリサイルと申します。こちらはエディです」
改めてあいさつをしてから、二人へ向き直る。
サフィシュ殿下も自信の満ち溢れた笑みで俺たちを迎えてくれていた。
「さて、聡明な旅人に礼をしたいのだが……」
「陛下、わたしはお礼をいただくようなことはしておりません。本日お招きいただいたことがわたしたちにとって大変名誉なことでございます。どうかお気になさいませんよう」
申し訳ないので丁重にお断りしようとしたのだけれど、エディがちらりと視線で訴えかけてくる。
受け取らないというのも失礼にあたるかもしれないし、どうしたらよいものかと悩んでいると一人の騎士が玉座の間へかけ込んできた。
陛下が声を発する前に、殿下が騎士の方へ駆け寄って声をあげる。
「何事だ! 今、客人と話をしている最中なのだぞ!」
「サフィシュ殿下、申し訳ありません。陛下、お取込み中に失礼いたします。港近くの海上に水竜が現れました!」
騎士の一言にさすがの陛下も立ち上がり、確認するように騎士へ話しかける。
「水竜……シードラゴンだと? この前、追いやったばかりだというのに」
シードラゴンと言えば、海の王者とも言われるドラゴンだ。ブルードラゴンとは仲が悪いと聞いたことがある。
今までも海と国を荒らそうとシードラゴンが迫ってくるたびに、ブルードラゴンたちが街から遠ざけていたのだろうか?
「父上、ここはオレが!」
「サフィシュ! まだ、良いと言っておらん! ……全く、話しを聞かない馬鹿者めが」
サフィシュ殿下は普段の口調に戻ってしまうくらいの勢いで陛下へ宣言し、玉座の間を飛び出していってしまった。
シードラゴンたちがどれくらいの規模でやってきているのかは分からないけれど、今はゆっくりと話をしている場合ではなさそうだ。
「陛下、今はシードラゴンへのご対処を。わたしたちにもできることがあればお手伝いいたします」
「なんと、旅人のそなたが?」
エディはもう慣れたという空気を出しているので、俺は身分を隠すのをやめて本当の名を名乗ることに決めた。
エディに確認の意味で軽く目配せをしてから、少しだけ息を吸い込んで改めて陛下へ向き直る。
「はい。わたしの本当の名は、リサイル・サモナード。召喚士一族の末裔です。まだまだ未熟ではありますが、今は国の一大事。どうか、わたしにもお手伝いをさせてください」
「なんと! サモナードといえば、確かに召喚士一族が治めている四領のうちの一つ。近頃は召喚士が現れたという話は出ていなかったが……そなたが召喚士であると?」
公王陛下も静かに事の次第を聞いていた公妃殿下も驚いた様子だったけれど、エディが俺の隣で一礼する。
「間違いございません。私たちは訳あって旅をしておりますが、リサイル様はサモナード家のご長男。リサイル様、まずはユーアンを。ユーアンには杖を持って待機しておくように言ってあります」
「分かった。ユーアン!」
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