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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
39.ゆっくりと眠ってほしい
どれくらい気を失っていたのだろう?
ゆっくりと目を開いた時にはベッドの上だった。
視線をさまよわせると、俺の傍らにはエディがいてくれた。
ずっと俺の様子を見守ってくれていたみたいだ。
「リサイル様、ご気分はいかがですか?」
「ん……うん。俺、どのくらい寝てた?」
「丸一日眠っておられました。私が宿へお連れしてから着替えをさせていただいたあと、お身体を清めている間も意識は全くありませんでした。息をされていたのが唯一の救いです」
「そうか。ごめん、心配かけて」
俺がエディの方へ手を伸ばすと、エディは俺の手を両手でそっと握ってくれた。
そしてその手を自分の頬へ引き寄せて、優しくすり寄せる。
エディの表情はいつもより少し曇っているような、そんな雰囲気に見える。
「あなたが無茶をしても、全て受け止めるつもりでいましたが……一日でも目を覚まさないと分かると、不安になりました。この手のぬくもりが失われたら、私は……」
「エディ……」
エディは俺のために泣いてくれるのだろうか? ふとそんなことを思ってしまう。
従者だけれど、ずっと俺のそばにいてくれる。大切な……家族のような存在。
けれど、エディの呟きはそこで途切れてしまう。
一瞬見えた気がした表情は引っ込められ、またいつもの従者の表情へ戻ってしまった。
同時に握られていた手も、離れていってしまう。
「サフィシュ殿下の使いの方がいらっしゃいました。ご本人もこちらへ来たかったようですが、アジュラン様が止められたそうです。必ずお礼がしたいので、もう一度会ってほしいとのことです」
「そうか。お礼なんていらないけれど、公王陛下ともお話の途中だったな。身体が動くようになったら、城へ出向こうか」
「はい。ですが、しっかりと魔力が戻ってからです。まずは何かを口にされたほうがよろしいかと」
「そうだな。エディ、頼んでばかりだけれど……何か食べ物を用意してくれる?」
エディはいつものように、はいと答えて一旦部屋を出て行った。
俺は自分の手を見ながら、離れてしまった温もりを寂しいと感じていた。
+++
よく眠り食事をとったせいか、魔力はだいぶ戻ってきたのが分かる。
本調子ではないけれど、城へ出向いてお話をするくらいならば大丈夫そうだ。
今日は陽が落ちている時間帯のようだから、明日改めて行けばいいだろう。
「エディ、構わないよな?」
「リサイル様が決めたことならば、私はお止めできません。ですが、まだお一人で動けないと私が判断したら日取りは延ばしていただきます」
「分かった。エディも俺の面倒を見ていたせいで眠っていないんだろう?」
「私は多少眠らずとも問題はありません」
エディの身体はどうなっているのかよく分からないけれど、いつも問題ないと言われてしまう。
エディだってあんなに激しく戦っていたはずなのに、一体どれだけの体力の持ち主なのだろうか?
「どうしたらエディは休んでくれる? 今日は俺のそばにいるつもりだろう?」
「はい。本調子ではないリサイル様から離れることはありえません」
予想通りの答えが返ってくる。だったら、そばにいてもらって寝てもらうためには一つしか方法がない。
「一緒に寝よう。それなら構わないだろう?」
「寝るというのは、添い寝の意味でしょうか? それとも……」
「へ、変な意味じゃなくて、その……添い寝……?」
前に夜の営みと言われたことを思い出して、顔がかあっと熱くなる。
今回も他意はない。ただ、エディにもゆっくりと眠ってほしいだけだ。
「かしこまりました。では、失礼いたします」
エディは俺に断ってから、ベッドへ身体を乗り上げる。
そして、優しく寝具をめくり俺の隣に寝転んできた。俺の背中側に、エディがいる。
エディと俺が密着していたことはあるけれど、ベッドの上で二人で寝転ぶのは初めてだ。
エディは寝具を直し、俺の身体が冷えないように整えてくれた。
「エディ?」
「はい」
「今、俺の後ろにいるんだよな?」
「リサイル様の背中側にいますが、このままお隣に寝転んでいればよろしいでしょうか?」
エディの声が背中越しに聞こえてくるけれど、逆に変な距離感があって落ち着かない。
存在はあるのに身体には触れられていない。背中側に妙な空間があるからだ。
「あー……その。もう少し俺に近づいてほしい。妙な距離感があるのも、落ち着かないし……」
「近づくとは? リサイル様はどのような形がお望みなのか、具体的におっしゃってください」
この従者はわざと言っているのだろうか? それともただの確認なのか。
俺は……開き直って分かりやすく伝えるしかないらしい。
「だから、俺を背中側から抱きしめるような距離感で……」
「はい。これでよろしいでしょうか」
エディは俺の思った通りの形で、俺の背中側からしっかり抱きしめてくれた。
エディの両腕は俺の身体の前へ回されて、俺はエディの身体の中に埋もれている。
俺よりもエディの身体の方が一回り大きいから、俺の身体はすっぽりと収まってしまうらしい。
「これでリサイル様はゆっくりと眠れるのですか?」
「……俺より、エディは?」
「私ですか? ええ。リサイル様の体温は私より高いので、ゆっくりと眠れるかもしれませんね」
クスっという笑い声が聞こえた気がする。これは顔を見なくても分かる。
エディは確実に上機嫌なのだろう。
ゆっくりと目を開いた時にはベッドの上だった。
視線をさまよわせると、俺の傍らにはエディがいてくれた。
ずっと俺の様子を見守ってくれていたみたいだ。
「リサイル様、ご気分はいかがですか?」
「ん……うん。俺、どのくらい寝てた?」
「丸一日眠っておられました。私が宿へお連れしてから着替えをさせていただいたあと、お身体を清めている間も意識は全くありませんでした。息をされていたのが唯一の救いです」
「そうか。ごめん、心配かけて」
俺がエディの方へ手を伸ばすと、エディは俺の手を両手でそっと握ってくれた。
そしてその手を自分の頬へ引き寄せて、優しくすり寄せる。
エディの表情はいつもより少し曇っているような、そんな雰囲気に見える。
「あなたが無茶をしても、全て受け止めるつもりでいましたが……一日でも目を覚まさないと分かると、不安になりました。この手のぬくもりが失われたら、私は……」
「エディ……」
エディは俺のために泣いてくれるのだろうか? ふとそんなことを思ってしまう。
従者だけれど、ずっと俺のそばにいてくれる。大切な……家族のような存在。
けれど、エディの呟きはそこで途切れてしまう。
一瞬見えた気がした表情は引っ込められ、またいつもの従者の表情へ戻ってしまった。
同時に握られていた手も、離れていってしまう。
「サフィシュ殿下の使いの方がいらっしゃいました。ご本人もこちらへ来たかったようですが、アジュラン様が止められたそうです。必ずお礼がしたいので、もう一度会ってほしいとのことです」
「そうか。お礼なんていらないけれど、公王陛下ともお話の途中だったな。身体が動くようになったら、城へ出向こうか」
「はい。ですが、しっかりと魔力が戻ってからです。まずは何かを口にされたほうがよろしいかと」
「そうだな。エディ、頼んでばかりだけれど……何か食べ物を用意してくれる?」
エディはいつものように、はいと答えて一旦部屋を出て行った。
俺は自分の手を見ながら、離れてしまった温もりを寂しいと感じていた。
+++
よく眠り食事をとったせいか、魔力はだいぶ戻ってきたのが分かる。
本調子ではないけれど、城へ出向いてお話をするくらいならば大丈夫そうだ。
今日は陽が落ちている時間帯のようだから、明日改めて行けばいいだろう。
「エディ、構わないよな?」
「リサイル様が決めたことならば、私はお止めできません。ですが、まだお一人で動けないと私が判断したら日取りは延ばしていただきます」
「分かった。エディも俺の面倒を見ていたせいで眠っていないんだろう?」
「私は多少眠らずとも問題はありません」
エディの身体はどうなっているのかよく分からないけれど、いつも問題ないと言われてしまう。
エディだってあんなに激しく戦っていたはずなのに、一体どれだけの体力の持ち主なのだろうか?
「どうしたらエディは休んでくれる? 今日は俺のそばにいるつもりだろう?」
「はい。本調子ではないリサイル様から離れることはありえません」
予想通りの答えが返ってくる。だったら、そばにいてもらって寝てもらうためには一つしか方法がない。
「一緒に寝よう。それなら構わないだろう?」
「寝るというのは、添い寝の意味でしょうか? それとも……」
「へ、変な意味じゃなくて、その……添い寝……?」
前に夜の営みと言われたことを思い出して、顔がかあっと熱くなる。
今回も他意はない。ただ、エディにもゆっくりと眠ってほしいだけだ。
「かしこまりました。では、失礼いたします」
エディは俺に断ってから、ベッドへ身体を乗り上げる。
そして、優しく寝具をめくり俺の隣に寝転んできた。俺の背中側に、エディがいる。
エディと俺が密着していたことはあるけれど、ベッドの上で二人で寝転ぶのは初めてだ。
エディは寝具を直し、俺の身体が冷えないように整えてくれた。
「エディ?」
「はい」
「今、俺の後ろにいるんだよな?」
「リサイル様の背中側にいますが、このままお隣に寝転んでいればよろしいでしょうか?」
エディの声が背中越しに聞こえてくるけれど、逆に変な距離感があって落ち着かない。
存在はあるのに身体には触れられていない。背中側に妙な空間があるからだ。
「あー……その。もう少し俺に近づいてほしい。妙な距離感があるのも、落ち着かないし……」
「近づくとは? リサイル様はどのような形がお望みなのか、具体的におっしゃってください」
この従者はわざと言っているのだろうか? それともただの確認なのか。
俺は……開き直って分かりやすく伝えるしかないらしい。
「だから、俺を背中側から抱きしめるような距離感で……」
「はい。これでよろしいでしょうか」
エディは俺の思った通りの形で、俺の背中側からしっかり抱きしめてくれた。
エディの両腕は俺の身体の前へ回されて、俺はエディの身体の中に埋もれている。
俺よりもエディの身体の方が一回り大きいから、俺の身体はすっぽりと収まってしまうらしい。
「これでリサイル様はゆっくりと眠れるのですか?」
「……俺より、エディは?」
「私ですか? ええ。リサイル様の体温は私より高いので、ゆっくりと眠れるかもしれませんね」
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エディは確実に上機嫌なのだろう。
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