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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
43.芸術の国
乗合馬車に揺られながら、丸一日。
途中、馬を休ませることはあったけれど、馬車に乗りっぱなしのせいか身体がガチガチに固まってしまった。
同じく乗っていた人たちも俺と同じように疲労していたようで、途中で休けいを挟むことになった。
街道の脇でひと休みしている間、俺は近くの森の中で召喚したいものを思い浮かべて召喚する練習をしようと試みた。
その結果は――
一人目はお腹が空いていたせいか、無意識に好物を描いたために召喚された元魔物のモモモ。
二人目はユーアンのように小さい子を意識しながら描いた、ネコのマキーニャの二人を召喚することに成功した。
モモモは見た目が果物のモモだからそのままの名前を付けて、マキーニャは白と茶の混じった巻き毛のかわいいネコだったのでマキーニャと名付けた。
マキーニャは賢く言語も操れる魔ネコのため、俺ともすぐ打ち解けてくれた。
モモモは無口なモモで、いつもは桃色の身体に白い翼を生やしてふわふわと近くを浮いているのに、敵が現れると巨大化して飲み込もうとするので、なんでも食べないようにと注意しておいた。
「ご主人様、モモモが右手の中指の爪で、あたしが右手の薬指の爪ですよ? 人差し指のユーアンと並んで三体ですね。間違えないようにしないとです」
「そうだね。二人とも、これからよろしくね」
「はいっ。困ったときはいつでも呼んでくださいね。モモモもそう言ってます」
俺たちが契約を結んでいる間、エディの表情は無表情だった。
また厄介者を増やしたとでも思ったのだろうか? それでも召喚陣が成功して二人を呼び出せた時は、おめでとうございますと声をかけてくれた。
「リサイル様、そろそろ馬車へ戻らないと怪しまれます。移動中は召喚士であることを明かさないようにするためにも、召喚獣を出さない方がよろしいかと」
「そうだな。じゃあ、二人とも。またね」
俺が声をかけると、モモモとマキーニャも鳴き声を上げて消えてしまった。
俺たちは何事もなかったように馬車の近くまで戻り、再度乗り込んだ。
+++
エディにぴったりとくっついていたせいか、誰の視線も気にすることもなく無事にランシュノー王国の正門前までたどり着くことができた。
「んー……馬車に乗っているだけというのも、なかなか大変だな。エディは大丈夫か?」
「問題ありません。ただ、リサイル様が劣悪な環境で移動を強いられることを心苦しく思っております」
「気にしてないから大丈夫だ。エディの示してくれる道はいつだって最善だろう?」
俺が笑って言いきると、エディは一度瞬きをして俺のことを見つめてきた。
どうしたのかと首を傾げると、エディは静かな声でありがとうございますと一言だけ返してくれる。
「リサイル様の素直さはすばらしいものですが、どうか私以外の者の言葉をすぐに信用なさらないでください」
「俺だってエディだから信じているんだ。エディこそ、俺のことを信用してないよな? これでも人を見る目はあるつもりだ。もっと俺のことも信用してほしい」
不満げにじっと見つめると、エディも分かりましたと引き下がってくれた。
俺は頼りないかもしれないけれど、この旅の中でも成長できているはずだ。
新しい召喚獣も増えたし、また少し力をつけることができたと思う。
馬車に乗っていた人たちも順番におりていき、俺たちもその後に続く。
正門前で兵士から危険なものがないかと荷物を見せるように言われたので素直に見せたあと、ランシュノー王国の城下町へ足を踏み入れた。
「ランシュノーは白の建物が多いな。形もどこか変わっていて芸術的なのか?」
「直線的な建物だけではなく、丸みを帯びた建物も多く存在していますね。それらがうまく融合されているところも芸術の国と言われているのかもしれません」
今までは町の様子も特に変わることもなかったのであまり意識もしてこなかったけれど、ランシュノー王国は独自の芸術性があるみたいだ。
町の中の露店も、食べ物屋もあるが画材や彫刻を売っていたり、自分で描いた絵を売っている人もいる。
「でも、気取りすぎていない雰囲気はいいと思う。芸術って言われると少しかしこまって聞こえるからな」
「私はこの町自体が芸術を主張している気もいたしますが、リサイル様がここにいて居心地が悪くないのなら良いのではないでしょうか」
「相変わらずエディは興味がなさそうだな。新天地に来たのに、いつもと変わらない反応だ」
俺が笑うと、エディはそうでしょうか、とまた表情も出さずに返答してくる。
エディらしいと言えばエディらしいのだけれど、俺としてはもっと気持ちを分かち合いたかったので、少しだけ寂しい気持ちになった。
「エディがつまらなくて、俺と一緒にいるのが嫌にならないのならいいけれど……」
エディに話しかけながら露店を覗いていると、一枚の絵が俺の目に飛び込んできた。
派手な色使いではないけれど、優しく描かれた白いドラゴンの絵だ。
白いドラゴンは銀色の髪の人らしき者と一緒に描かれていて、人がそっとドラゴンを撫でている絵だった。
「ホワイトドラゴン……」
俺が独り言で呟くと、絵を飾っている露店の人が顔を上げた。
途中、馬を休ませることはあったけれど、馬車に乗りっぱなしのせいか身体がガチガチに固まってしまった。
同じく乗っていた人たちも俺と同じように疲労していたようで、途中で休けいを挟むことになった。
街道の脇でひと休みしている間、俺は近くの森の中で召喚したいものを思い浮かべて召喚する練習をしようと試みた。
その結果は――
一人目はお腹が空いていたせいか、無意識に好物を描いたために召喚された元魔物のモモモ。
二人目はユーアンのように小さい子を意識しながら描いた、ネコのマキーニャの二人を召喚することに成功した。
モモモは見た目が果物のモモだからそのままの名前を付けて、マキーニャは白と茶の混じった巻き毛のかわいいネコだったのでマキーニャと名付けた。
マキーニャは賢く言語も操れる魔ネコのため、俺ともすぐ打ち解けてくれた。
モモモは無口なモモで、いつもは桃色の身体に白い翼を生やしてふわふわと近くを浮いているのに、敵が現れると巨大化して飲み込もうとするので、なんでも食べないようにと注意しておいた。
「ご主人様、モモモが右手の中指の爪で、あたしが右手の薬指の爪ですよ? 人差し指のユーアンと並んで三体ですね。間違えないようにしないとです」
「そうだね。二人とも、これからよろしくね」
「はいっ。困ったときはいつでも呼んでくださいね。モモモもそう言ってます」
俺たちが契約を結んでいる間、エディの表情は無表情だった。
また厄介者を増やしたとでも思ったのだろうか? それでも召喚陣が成功して二人を呼び出せた時は、おめでとうございますと声をかけてくれた。
「リサイル様、そろそろ馬車へ戻らないと怪しまれます。移動中は召喚士であることを明かさないようにするためにも、召喚獣を出さない方がよろしいかと」
「そうだな。じゃあ、二人とも。またね」
俺が声をかけると、モモモとマキーニャも鳴き声を上げて消えてしまった。
俺たちは何事もなかったように馬車の近くまで戻り、再度乗り込んだ。
+++
エディにぴったりとくっついていたせいか、誰の視線も気にすることもなく無事にランシュノー王国の正門前までたどり着くことができた。
「んー……馬車に乗っているだけというのも、なかなか大変だな。エディは大丈夫か?」
「問題ありません。ただ、リサイル様が劣悪な環境で移動を強いられることを心苦しく思っております」
「気にしてないから大丈夫だ。エディの示してくれる道はいつだって最善だろう?」
俺が笑って言いきると、エディは一度瞬きをして俺のことを見つめてきた。
どうしたのかと首を傾げると、エディは静かな声でありがとうございますと一言だけ返してくれる。
「リサイル様の素直さはすばらしいものですが、どうか私以外の者の言葉をすぐに信用なさらないでください」
「俺だってエディだから信じているんだ。エディこそ、俺のことを信用してないよな? これでも人を見る目はあるつもりだ。もっと俺のことも信用してほしい」
不満げにじっと見つめると、エディも分かりましたと引き下がってくれた。
俺は頼りないかもしれないけれど、この旅の中でも成長できているはずだ。
新しい召喚獣も増えたし、また少し力をつけることができたと思う。
馬車に乗っていた人たちも順番におりていき、俺たちもその後に続く。
正門前で兵士から危険なものがないかと荷物を見せるように言われたので素直に見せたあと、ランシュノー王国の城下町へ足を踏み入れた。
「ランシュノーは白の建物が多いな。形もどこか変わっていて芸術的なのか?」
「直線的な建物だけではなく、丸みを帯びた建物も多く存在していますね。それらがうまく融合されているところも芸術の国と言われているのかもしれません」
今までは町の様子も特に変わることもなかったのであまり意識もしてこなかったけれど、ランシュノー王国は独自の芸術性があるみたいだ。
町の中の露店も、食べ物屋もあるが画材や彫刻を売っていたり、自分で描いた絵を売っている人もいる。
「でも、気取りすぎていない雰囲気はいいと思う。芸術って言われると少しかしこまって聞こえるからな」
「私はこの町自体が芸術を主張している気もいたしますが、リサイル様がここにいて居心地が悪くないのなら良いのではないでしょうか」
「相変わらずエディは興味がなさそうだな。新天地に来たのに、いつもと変わらない反応だ」
俺が笑うと、エディはそうでしょうか、とまた表情も出さずに返答してくる。
エディらしいと言えばエディらしいのだけれど、俺としてはもっと気持ちを分かち合いたかったので、少しだけ寂しい気持ちになった。
「エディがつまらなくて、俺と一緒にいるのが嫌にならないのならいいけれど……」
エディに話しかけながら露店を覗いていると、一枚の絵が俺の目に飛び込んできた。
派手な色使いではないけれど、優しく描かれた白いドラゴンの絵だ。
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俺が独り言で呟くと、絵を飾っている露店の人が顔を上げた。
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