召喚士一族の落ちこぼれ長男なのに、過保護な従者が離してくれません!

楓乃めーぷる

文字の大きさ
51 / 74
第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ

50.油断<途中視点切り替わり有>

 俺たちはしばらくにらみあっていたけれど、ここでは宿の人に迷惑がかかってしまう。
 事情を知らない人を巻き込むわけにはいかない。

「……っ。今日は、聞きたいことがあるだけだ。少し話がしたい。一緒に来てくれ」
「俺に話? 何の用かは知らないけれど……分かった。俺もこの場で事を荒立てたくはない」

 オニキルが珍しく提案をしてきたので、俺も頷いて外へ出た。
 お供を連れていないのは珍しいけれど、何か用事で来たのかもしれない。
 気まずい空気の中、俺たちはゆっくりと城下町を歩き始める。

「オニキルはどうしてこの国に?」
「それは……僕が使いを頼まれたからだ。サモナードへ正式に書簡が来て、視察に行くことになった。それに……噂を聞いた。銀の髪の伝説の召喚士が現れたのだと」
「そう。オニキルはサモナードから視察に……。それは義母かあさんの指示?」
「お前……っ! これは……父様とうさまの指示だ。母様かあさまも何か意見はしたと聞いている」

 オニキルは珍しく感情を押さえているみたいだ。少しは当主として成長したのだろうか?
 今の俺にはもう、関係のない話なのだけれど。

「リーサ、お前は……本当に召喚に成功したのか? 俺でも召喚はまだできていないのに」
「ああ。証拠を見せようか?」
「なっ……! い、今はいい」

 俺も少しずつ対処できるようになってきた気がする。
 話しながら歩いていたけれど、オニキルはどこへ向かおうとしているのだろう?
 気づけば、町はずれの裏路地に足を踏み入れていた。

「話をするにしても、一体どこへ行くつもりだ?」
「……力を付けたからといって、お前は何も変わってない! おろかなヤツのままだ! 僕が来て良かった。僕なら、武力でリーサを圧倒できる!」
「武力って、町中で一体……っ」

 路地の影から数人の騎士たちが現れる。マントに描かれている紋章は……サモナードの紋章だ。
 俺がマキーニャと共に魔法を展開しようとした瞬間、オニキルが取り出した魔道具らしきものが激しく発光する。
 まぶしさに目がくらんだ瞬間――頭に強い衝撃を感じた。
 どうやら剣の柄で思い切り殴られたようだ。

「うっ……」
「ご主人様っ! このー! よくもご主人様を……」

 薄れそうになる意識の中、魔法を展開しようとしたのに無理やりはめられた首輪のせいか力が入らない。
 あっという間に手かせまではめられてしまう。

「魔力封じ……?」
「あははははっ! 無様だなぁ? 召喚術で王子をたぶらかして誘拐しようなどと考えるからこうなる。僕が偶然訪れていて良かった。これで大臣様もお喜びになるだろうな」

 マキーニャの召喚も、俺の魔力が封じられたせいで解除されてしまう。
 これは、完全に油断していた俺のせいだ。俺がもっと気をつけていれば……。
 後悔したくても、気が遠くなっていく――

 大臣ということは、あの大臣だろうか?
 これは俺への仕返しということか……。
 身に覚えのない罪を擦りつけられるだけでなく、まさかオニキルを利用するなんて……。

「ごめん、エディ……」

 俺の言葉は誰に拾われることもなく、俺の身体はそのまま地面へ倒れ込んだ。

 +++

 一方その頃――
 従者のエディはファルリオラ殿下の話を聞くために工房へ足を運んでいた。

「そうですか。では、大臣のことも含めて王族の皆様全員で話し合いを?」
「ええ。この度はわたしたちの争いに巻き込んでしまって本当になんてお詫びすればいいのか……リサイルさんは?」
「念のため、宿から出ないようにと伝えておきましたが……」

 エディの動きが急に止まり、殿下は首を傾げる。
 エディが顔をしかめ、急に自身の胸の辺りをつかんで苦しそうにし始めたからだ。
 
 エディにとって、リサイルは大切な存在でもありエディの命――そのものだ。
 その繋がりが、途切れようとしている。
 
「これは……リサイル様の身になにか……っ」
「エディさん? 顔色が真っ青です。とにかく少し座った方が……」

 ファルリオラ殿下の言葉が聞こえているのかいないのか、エディは殿下の手を振り払って何も言わずに工房を出ていく。
 殿下は何かを叫んでいたが、その声はもうエディには届いていない。

「リサイル様との繋がりが切れた。私がいない時に……でも決して無理はしないと約束してくださったはずなのになぜ?」

 エディは珍しく焦っていた。今まではそばにいることで感じていた繋がりをほとんど感じなくなっていたからだ。
 リサイルは自分と並び立ちたいと望んでいたが、決して自ら無謀なことはしないはずだとエディは信じていた。
 だからこそ、召喚獣がいるならばとリサイル一人を宿へ残してきたのだ。

「私こそ、分かっていなかった。人間は地位や名誉などというくだらないことにしがみつく。リサイル様が純粋な心の持ち主なだけだと理解していたはずなのに――」

 エディもリサイルの影響を受けていたのだろう。
 何もかもどうでもいいと思っていたはずなのに、リサイルを見ているうちに希望を持ってしまった。
 リサイルがいなければ、まともに力を発揮することもできない。それでも今は……。
 エディは急いで宿へ戻り、宿の主人を捕まえる。

「すみません、リサイル様は?」
「あ、ああ……あなたでしたか。お連れ様はここに来られた方と一緒に外へ行かれましたよ。うちの宿で騒いでいたので気を遣ってくださって……」
「騒いでいた? 一体何者です?」
「さあ……ここでは見かけない身なりでした。フードがついたマントのようなものと、鎧を着込んでいました。どこかのお国の騎士でしょうかねえ。年の頃は成人もしていなさそうに見えましたけど」

 エディは乱れる息の中、必死に頭の中で考えを巡らせる。
 この辺りでは見かけない騎士。そして、一目を気にすることもできない愚か者。

「まさか、そんな偶然が……しかし今は後を追わないと」

 エディは誰の声も受けつけないまま、ひたすらに町中を走り回る。
 リサイルとの繋がりが薄まれば薄まるほど、苦しさは増して力は入らなくなってくるが……それどころではない。
感想 71

あなたにおすすめの小説

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
※未完 4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。