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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
50.油断<途中視点切り替わり有>
俺たちはしばらくにらみあっていたけれど、ここでは宿の人に迷惑がかかってしまう。
事情を知らない人を巻き込むわけにはいかない。
「……っ。今日は、聞きたいことがあるだけだ。少し話がしたい。一緒に来てくれ」
「俺に話? 何の用かは知らないけれど……分かった。俺もこの場で事を荒立てたくはない」
オニキルが珍しく提案をしてきたので、俺も頷いて外へ出た。
お供を連れていないのは珍しいけれど、何か用事で来たのかもしれない。
気まずい空気の中、俺たちはゆっくりと城下町を歩き始める。
「オニキルはどうしてこの国に?」
「それは……僕が使いを頼まれたからだ。サモナードへ正式に書簡が来て、視察に行くことになった。それに……噂を聞いた。銀の髪の伝説の召喚士が現れたのだと」
「そう。オニキルはサモナードから視察に……。それは義母さんの指示?」
「お前……っ! これは……父様の指示だ。母様も何か意見はしたと聞いている」
オニキルは珍しく感情を押さえているみたいだ。少しは当主として成長したのだろうか?
今の俺にはもう、関係のない話なのだけれど。
「リーサ、お前は……本当に召喚に成功したのか? 俺でも召喚はまだできていないのに」
「ああ。証拠を見せようか?」
「なっ……! い、今はいい」
俺も少しずつ対処できるようになってきた気がする。
話しながら歩いていたけれど、オニキルはどこへ向かおうとしているのだろう?
気づけば、町はずれの裏路地に足を踏み入れていた。
「話をするにしても、一体どこへ行くつもりだ?」
「……力を付けたからといって、お前は何も変わってない! おろかなヤツのままだ! 僕が来て良かった。僕なら、武力でリーサを圧倒できる!」
「武力って、町中で一体……っ」
路地の影から数人の騎士たちが現れる。マントに描かれている紋章は……サモナードの紋章だ。
俺がマキーニャと共に魔法を展開しようとした瞬間、オニキルが取り出した魔道具らしきものが激しく発光する。
まぶしさに目がくらんだ瞬間――頭に強い衝撃を感じた。
どうやら剣の柄で思い切り殴られたようだ。
「うっ……」
「ご主人様っ! このー! よくもご主人様を……」
薄れそうになる意識の中、魔法を展開しようとしたのに無理やりはめられた首輪のせいか力が入らない。
あっという間に手かせまではめられてしまう。
「魔力封じ……?」
「あははははっ! 無様だなぁ? 召喚術で王子をたぶらかして誘拐しようなどと考えるからこうなる。僕が偶然訪れていて良かった。これで大臣様もお喜びになるだろうな」
マキーニャの召喚も、俺の魔力が封じられたせいで解除されてしまう。
これは、完全に油断していた俺のせいだ。俺がもっと気をつけていれば……。
後悔したくても、気が遠くなっていく――
大臣ということは、あの大臣だろうか?
これは俺への仕返しということか……。
身に覚えのない罪を擦りつけられるだけでなく、まさかオニキルを利用するなんて……。
「ごめん、エディ……」
俺の言葉は誰に拾われることもなく、俺の身体はそのまま地面へ倒れ込んだ。
+++
一方その頃――
従者のエディはファルリオラ殿下の話を聞くために工房へ足を運んでいた。
「そうですか。では、大臣のことも含めて王族の皆様全員で話し合いを?」
「ええ。この度はわたしたちの争いに巻き込んでしまって本当になんてお詫びすればいいのか……リサイルさんは?」
「念のため、宿から出ないようにと伝えておきましたが……」
エディの動きが急に止まり、殿下は首を傾げる。
エディが顔をしかめ、急に自身の胸の辺りをつかんで苦しそうにし始めたからだ。
エディにとって、リサイルは大切な存在でもありエディの命――そのものだ。
その繋がりが、途切れようとしている。
「これは……リサイル様の身になにか……っ」
「エディさん? 顔色が真っ青です。とにかく少し座った方が……」
ファルリオラ殿下の言葉が聞こえているのかいないのか、エディは殿下の手を振り払って何も言わずに工房を出ていく。
殿下は何かを叫んでいたが、その声はもうエディには届いていない。
「リサイル様との繋がりが切れた。私がいない時に……でも決して無理はしないと約束してくださったはずなのになぜ?」
エディは珍しく焦っていた。今まではそばにいることで感じていた繋がりをほとんど感じなくなっていたからだ。
リサイルは自分と並び立ちたいと望んでいたが、決して自ら無謀なことはしないはずだとエディは信じていた。
だからこそ、召喚獣がいるならばとリサイル一人を宿へ残してきたのだ。
「私こそ、分かっていなかった。人間は地位や名誉などというくだらないことにしがみつく。リサイル様が純粋な心の持ち主なだけだと理解していたはずなのに――」
エディもリサイルの影響を受けていたのだろう。
何もかもどうでもいいと思っていたはずなのに、リサイルを見ているうちに希望を持ってしまった。
リサイルがいなければ、まともに力を発揮することもできない。それでも今は……。
エディは急いで宿へ戻り、宿の主人を捕まえる。
「すみません、リサイル様は?」
「あ、ああ……あなたでしたか。お連れ様はここに来られた方と一緒に外へ行かれましたよ。うちの宿で騒いでいたので気を遣ってくださって……」
「騒いでいた? 一体何者です?」
「さあ……ここでは見かけない身なりでした。フードがついたマントのようなものと、鎧を着込んでいました。どこかのお国の騎士でしょうかねえ。年の頃は成人もしていなさそうに見えましたけど」
エディは乱れる息の中、必死に頭の中で考えを巡らせる。
この辺りでは見かけない騎士。そして、一目を気にすることもできない愚か者。
「まさか、そんな偶然が……しかし今は後を追わないと」
エディは誰の声も受けつけないまま、ひたすらに町中を走り回る。
リサイルとの繋がりが薄まれば薄まるほど、苦しさは増して力は入らなくなってくるが……それどころではない。
事情を知らない人を巻き込むわけにはいかない。
「……っ。今日は、聞きたいことがあるだけだ。少し話がしたい。一緒に来てくれ」
「俺に話? 何の用かは知らないけれど……分かった。俺もこの場で事を荒立てたくはない」
オニキルが珍しく提案をしてきたので、俺も頷いて外へ出た。
お供を連れていないのは珍しいけれど、何か用事で来たのかもしれない。
気まずい空気の中、俺たちはゆっくりと城下町を歩き始める。
「オニキルはどうしてこの国に?」
「それは……僕が使いを頼まれたからだ。サモナードへ正式に書簡が来て、視察に行くことになった。それに……噂を聞いた。銀の髪の伝説の召喚士が現れたのだと」
「そう。オニキルはサモナードから視察に……。それは義母さんの指示?」
「お前……っ! これは……父様の指示だ。母様も何か意見はしたと聞いている」
オニキルは珍しく感情を押さえているみたいだ。少しは当主として成長したのだろうか?
今の俺にはもう、関係のない話なのだけれど。
「リーサ、お前は……本当に召喚に成功したのか? 俺でも召喚はまだできていないのに」
「ああ。証拠を見せようか?」
「なっ……! い、今はいい」
俺も少しずつ対処できるようになってきた気がする。
話しながら歩いていたけれど、オニキルはどこへ向かおうとしているのだろう?
気づけば、町はずれの裏路地に足を踏み入れていた。
「話をするにしても、一体どこへ行くつもりだ?」
「……力を付けたからといって、お前は何も変わってない! おろかなヤツのままだ! 僕が来て良かった。僕なら、武力でリーサを圧倒できる!」
「武力って、町中で一体……っ」
路地の影から数人の騎士たちが現れる。マントに描かれている紋章は……サモナードの紋章だ。
俺がマキーニャと共に魔法を展開しようとした瞬間、オニキルが取り出した魔道具らしきものが激しく発光する。
まぶしさに目がくらんだ瞬間――頭に強い衝撃を感じた。
どうやら剣の柄で思い切り殴られたようだ。
「うっ……」
「ご主人様っ! このー! よくもご主人様を……」
薄れそうになる意識の中、魔法を展開しようとしたのに無理やりはめられた首輪のせいか力が入らない。
あっという間に手かせまではめられてしまう。
「魔力封じ……?」
「あははははっ! 無様だなぁ? 召喚術で王子をたぶらかして誘拐しようなどと考えるからこうなる。僕が偶然訪れていて良かった。これで大臣様もお喜びになるだろうな」
マキーニャの召喚も、俺の魔力が封じられたせいで解除されてしまう。
これは、完全に油断していた俺のせいだ。俺がもっと気をつけていれば……。
後悔したくても、気が遠くなっていく――
大臣ということは、あの大臣だろうか?
これは俺への仕返しということか……。
身に覚えのない罪を擦りつけられるだけでなく、まさかオニキルを利用するなんて……。
「ごめん、エディ……」
俺の言葉は誰に拾われることもなく、俺の身体はそのまま地面へ倒れ込んだ。
+++
一方その頃――
従者のエディはファルリオラ殿下の話を聞くために工房へ足を運んでいた。
「そうですか。では、大臣のことも含めて王族の皆様全員で話し合いを?」
「ええ。この度はわたしたちの争いに巻き込んでしまって本当になんてお詫びすればいいのか……リサイルさんは?」
「念のため、宿から出ないようにと伝えておきましたが……」
エディの動きが急に止まり、殿下は首を傾げる。
エディが顔をしかめ、急に自身の胸の辺りをつかんで苦しそうにし始めたからだ。
エディにとって、リサイルは大切な存在でもありエディの命――そのものだ。
その繋がりが、途切れようとしている。
「これは……リサイル様の身になにか……っ」
「エディさん? 顔色が真っ青です。とにかく少し座った方が……」
ファルリオラ殿下の言葉が聞こえているのかいないのか、エディは殿下の手を振り払って何も言わずに工房を出ていく。
殿下は何かを叫んでいたが、その声はもうエディには届いていない。
「リサイル様との繋がりが切れた。私がいない時に……でも決して無理はしないと約束してくださったはずなのになぜ?」
エディは珍しく焦っていた。今まではそばにいることで感じていた繋がりをほとんど感じなくなっていたからだ。
リサイルは自分と並び立ちたいと望んでいたが、決して自ら無謀なことはしないはずだとエディは信じていた。
だからこそ、召喚獣がいるならばとリサイル一人を宿へ残してきたのだ。
「私こそ、分かっていなかった。人間は地位や名誉などというくだらないことにしがみつく。リサイル様が純粋な心の持ち主なだけだと理解していたはずなのに――」
エディもリサイルの影響を受けていたのだろう。
何もかもどうでもいいと思っていたはずなのに、リサイルを見ているうちに希望を持ってしまった。
リサイルがいなければ、まともに力を発揮することもできない。それでも今は……。
エディは急いで宿へ戻り、宿の主人を捕まえる。
「すみません、リサイル様は?」
「あ、ああ……あなたでしたか。お連れ様はここに来られた方と一緒に外へ行かれましたよ。うちの宿で騒いでいたので気を遣ってくださって……」
「騒いでいた? 一体何者です?」
「さあ……ここでは見かけない身なりでした。フードがついたマントのようなものと、鎧を着込んでいました。どこかのお国の騎士でしょうかねえ。年の頃は成人もしていなさそうに見えましたけど」
エディは乱れる息の中、必死に頭の中で考えを巡らせる。
この辺りでは見かけない騎士。そして、一目を気にすることもできない愚か者。
「まさか、そんな偶然が……しかし今は後を追わないと」
エディは誰の声も受けつけないまま、ひたすらに町中を走り回る。
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