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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
52.慟哭★
(※少々残酷な描写、表現を含みます。苦手な方はご注意ください)
+++
俺はエディに助けてもらえてうれしいのに、心の中でどんどん不安が増していく。
エディが来てくれたのに、どうしてこんなに不安なんだろう?
「貴様ら……人間の分際で、よくも……」
「て、てめえ……一体何をいって……ぎゃあぁぁぁっ!」
エディは無表情で、地面に転がる男へ剣を振り下ろした。
エディの影で全ては見えないけれど、男の何かが切断されたらしい。
俺は見るのも辛かったけれど、エディの全てを見届けなくてはいけないと目をそらさずに見守る。
一人の男が痛みで転げまわると、エディがもう一人の男の元へ静かに歩み寄った。
「ひぃっ! やめ、やめ……ぐぎゃぁぁぁぁああああっ!」
断末魔の叫びが室内に響き渡るけれど、エディは容赦なく剣を振り下ろし続けた。
男たちの四肢を切断し、血が溢れようともその手を留めず……男たちの声が聞こえなくなるまで、その身体を貫き続けていた。
男たちの声はどこか遠くで響いているような気がしていたけれど……やがて訪れた静寂が、夢ではないことなのだと伝えていた。
+++
辺りが静まり返り、血の香りが充満したところで、カランと剣が落ちる音が聞こえた。
俺は慌ててエディの元へ必死に駆け寄る。
エディは身体をふらつかせてから、その場に片膝をついてうずくまってしまった。
「エディ……? 力を使いすぎたのか? 少し休もう。この血だまりの中じゃなくて、こっちに……」
俺が手かせのついた両手で必死にエディの腕を引っ張ると、エディはよろけながら俺に身体をあずけてくる。
俺の膝の上にエディの頭を乗せて抱き寄せると、エディは返り血を浴びた顔のまま柔らかく微笑んだ。
「やはり、力と感情を制御できませんでした。どうしても、この人間どもが存在することが許せなかったのです。怖がらせてしまいましたか?」
俺は必死に否定するように首を振る。
徹底的なやり方に恐怖感がないわけじゃないけれど、エディの怒りが肌を通じて伝わってきていた。
普段冷静なエディが、感情に飲まれて剣を振るうほどに俺のためを思ってしてくれたことだ。
恐ろしい光景だとしても、俺は心の中で嬉しさを感じていた。
俺も本当は……男に髪を触れられただけで嫌だったし、心の底から気持ち悪かった。
俺が触れられたいと思うのは……一人だけだ。
「少しやりすぎだとは思うけれど……でも、俺のためにここまでしてくれたんだったら……嬉しい」
「リサイル様は本当に強くなりましたね。私がいなくても、考えて動くことができる強さを身に付けられました」
「まだまだ未熟だ。俺は……エディがいないと……」
自然と涙が溢れてくる。エディの手が伸びて俺の涙を拭ったはずなのに……なぜかその手の感触を感じない。
視線を落とすと、エディの指先がキラキラと光りはじめていた。
これは一体……?
「やはり、姿を保つことが難しそうですね。申し訳ありません。本当は最後までおそばにいたかったのですが……それは叶わないようです」
「え……? エディ、どうして……?」
「私からは伝えることができない決まりなのです。伝えればこの場にいることすら許されない。私は最後の瞬間まであなたの声を聞いていたいので……どうか、お許しください」
「最後? 最後ってどういうこと? 待って、休めば大丈夫なんだろう?」
俺が必死に声をかけても、エディは微笑むだけだ。
その間にもエディの身体が少しずつ光に包まれていく。まるで、このまま消えてしまうかのように……。
「最初は興味本位でしたが、リサイル様の成長を見守っているうちに、どのように成長するのだろうと楽しみになっていきました。それが次第に……」
エディの存在が薄れていく。エディのぬくもりが、俺の身体から奪われていくのが分かる。
光の粒がエディからあふれていくたびに、俺は泣きながら必死になってエディの身体を抱きしめる。
「それなら、このまま俺のそばに……っ! お願いだから、どこにも行かないで……エディ!」
「今のリサイル様なら、私がいなくても大丈夫です。最後までお供できないのは心残りですが……」
「そんなことないっ! そんなことないから……俺は、俺は……っ!」
信じたくない。信じたくないのに……俺の中からエディが消えていく。
もうほとんど見えなくなっているけれど、俺はずっとエディにすがりついていた。
エディの声もほとんど聞こえなくなった時に、微かに聞こえた気がした。
――愛しています。
その声は俺の願望だったのか、エディの最後のひとことだったのか。
確かめることもできないまま……光の粒はさらさらと流れて……全て消えてしまった。
「嫌だ……こんなの、うそだ……エディーっ!」
俺はただ、泣き叫ぶことしかできなかった。
嫌だと心の底から叫びたいのに――もう、声にも言葉にもならなかった。
+++
どれくらい泣いていたのか分からない。
座り込んだまま動けずにいると、すっかり暗くなった室内に誰か足を踏み入れてきたことに気づく。
「なっ……これは、一体……そろそろ拷問が終わると聞いていたのに……うっ……」
べちゃりと何かを吐き出したようだ。だが、そんなことはどうでもいい。
今更現れてなんのつもりだろうか?
俺はゆっくりと立ち上がり、入り口でまごまごしている人影に近づいていく。
「……お前のせいで……俺が弱いせいで……エディが、エディが……」
「は……? な、なんだ? リサイル……」
「うわあぁぁぁぁぁあああっ!」
怒りなのか悲しみなのか分からない感情が身体中を巡り、ほどばしる。
ビキビキと音を立てて、魔力を封印していた魔道具が崩れ落ちた。
魔力の本流は止まることなく、そのまま大きく膨らんで爆発を引き起こした。
小屋らしきものが吹き飛ぼうが、俺には関係ない。
「わ、わ……やめ、やめろぉーっ!」
もう、どうなろうと知ったことじゃない。
俺は、目の前にいるオニキルを倒すことしか考えていなかった。
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俺はエディに助けてもらえてうれしいのに、心の中でどんどん不安が増していく。
エディが来てくれたのに、どうしてこんなに不安なんだろう?
「貴様ら……人間の分際で、よくも……」
「て、てめえ……一体何をいって……ぎゃあぁぁぁっ!」
エディは無表情で、地面に転がる男へ剣を振り下ろした。
エディの影で全ては見えないけれど、男の何かが切断されたらしい。
俺は見るのも辛かったけれど、エディの全てを見届けなくてはいけないと目をそらさずに見守る。
一人の男が痛みで転げまわると、エディがもう一人の男の元へ静かに歩み寄った。
「ひぃっ! やめ、やめ……ぐぎゃぁぁぁぁああああっ!」
断末魔の叫びが室内に響き渡るけれど、エディは容赦なく剣を振り下ろし続けた。
男たちの四肢を切断し、血が溢れようともその手を留めず……男たちの声が聞こえなくなるまで、その身体を貫き続けていた。
男たちの声はどこか遠くで響いているような気がしていたけれど……やがて訪れた静寂が、夢ではないことなのだと伝えていた。
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辺りが静まり返り、血の香りが充満したところで、カランと剣が落ちる音が聞こえた。
俺は慌ててエディの元へ必死に駆け寄る。
エディは身体をふらつかせてから、その場に片膝をついてうずくまってしまった。
「エディ……? 力を使いすぎたのか? 少し休もう。この血だまりの中じゃなくて、こっちに……」
俺が手かせのついた両手で必死にエディの腕を引っ張ると、エディはよろけながら俺に身体をあずけてくる。
俺の膝の上にエディの頭を乗せて抱き寄せると、エディは返り血を浴びた顔のまま柔らかく微笑んだ。
「やはり、力と感情を制御できませんでした。どうしても、この人間どもが存在することが許せなかったのです。怖がらせてしまいましたか?」
俺は必死に否定するように首を振る。
徹底的なやり方に恐怖感がないわけじゃないけれど、エディの怒りが肌を通じて伝わってきていた。
普段冷静なエディが、感情に飲まれて剣を振るうほどに俺のためを思ってしてくれたことだ。
恐ろしい光景だとしても、俺は心の中で嬉しさを感じていた。
俺も本当は……男に髪を触れられただけで嫌だったし、心の底から気持ち悪かった。
俺が触れられたいと思うのは……一人だけだ。
「少しやりすぎだとは思うけれど……でも、俺のためにここまでしてくれたんだったら……嬉しい」
「リサイル様は本当に強くなりましたね。私がいなくても、考えて動くことができる強さを身に付けられました」
「まだまだ未熟だ。俺は……エディがいないと……」
自然と涙が溢れてくる。エディの手が伸びて俺の涙を拭ったはずなのに……なぜかその手の感触を感じない。
視線を落とすと、エディの指先がキラキラと光りはじめていた。
これは一体……?
「やはり、姿を保つことが難しそうですね。申し訳ありません。本当は最後までおそばにいたかったのですが……それは叶わないようです」
「え……? エディ、どうして……?」
「私からは伝えることができない決まりなのです。伝えればこの場にいることすら許されない。私は最後の瞬間まであなたの声を聞いていたいので……どうか、お許しください」
「最後? 最後ってどういうこと? 待って、休めば大丈夫なんだろう?」
俺が必死に声をかけても、エディは微笑むだけだ。
その間にもエディの身体が少しずつ光に包まれていく。まるで、このまま消えてしまうかのように……。
「最初は興味本位でしたが、リサイル様の成長を見守っているうちに、どのように成長するのだろうと楽しみになっていきました。それが次第に……」
エディの存在が薄れていく。エディのぬくもりが、俺の身体から奪われていくのが分かる。
光の粒がエディからあふれていくたびに、俺は泣きながら必死になってエディの身体を抱きしめる。
「それなら、このまま俺のそばに……っ! お願いだから、どこにも行かないで……エディ!」
「今のリサイル様なら、私がいなくても大丈夫です。最後までお供できないのは心残りですが……」
「そんなことないっ! そんなことないから……俺は、俺は……っ!」
信じたくない。信じたくないのに……俺の中からエディが消えていく。
もうほとんど見えなくなっているけれど、俺はずっとエディにすがりついていた。
エディの声もほとんど聞こえなくなった時に、微かに聞こえた気がした。
――愛しています。
その声は俺の願望だったのか、エディの最後のひとことだったのか。
確かめることもできないまま……光の粒はさらさらと流れて……全て消えてしまった。
「嫌だ……こんなの、うそだ……エディーっ!」
俺はただ、泣き叫ぶことしかできなかった。
嫌だと心の底から叫びたいのに――もう、声にも言葉にもならなかった。
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どれくらい泣いていたのか分からない。
座り込んだまま動けずにいると、すっかり暗くなった室内に誰か足を踏み入れてきたことに気づく。
「なっ……これは、一体……そろそろ拷問が終わると聞いていたのに……うっ……」
べちゃりと何かを吐き出したようだ。だが、そんなことはどうでもいい。
今更現れてなんのつもりだろうか?
俺はゆっくりと立ち上がり、入り口でまごまごしている人影に近づいていく。
「……お前のせいで……俺が弱いせいで……エディが、エディが……」
「は……? な、なんだ? リサイル……」
「うわあぁぁぁぁぁあああっ!」
怒りなのか悲しみなのか分からない感情が身体中を巡り、ほどばしる。
ビキビキと音を立てて、魔力を封印していた魔道具が崩れ落ちた。
魔力の本流は止まることなく、そのまま大きく膨らんで爆発を引き起こした。
小屋らしきものが吹き飛ぼうが、俺には関係ない。
「わ、わ……やめ、やめろぉーっ!」
もう、どうなろうと知ったことじゃない。
俺は、目の前にいるオニキルを倒すことしか考えていなかった。
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