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第四章 赤き猛る力、青き知性の守り、白き光の慈しみ
54.無気力
エディがいなくなってから気づくなんて遅すぎる。
今気づいたって、もうエディはいないのだから……。
「それに、あの声だってきっと俺の願望がそう聞こえたと勘違いしただけで……」
俺の気持ちはどこまでも沈んでいく。
もう、何もしたくない。何も……見たくない。
このまま俺も……消えてしまいたかった。
+++
「リサイルさん、少しでも食べないと……」
俺は寝具の中にもぐったまま、返事もしなかった。
どれくらいの時間が過ぎたのかも分からないけれど……今は話す気力もなくなってしまって、誰とも関わりたくない。
召喚獣のみんなも心配してくれていたけれど、今は放っておいてほしかった。
「……邪魔するぞ」
「サフィシュ殿下、こちらに滞在していて大丈夫なのですか?」
「ああ。父上もリサイルのことを心配しているからな。あの愚か者はリサイルの義弟だと聞いている。サモナード領へ勅問状を送ったのだが、今慌てて対処しているみたいだな」
「そうですか……」
殿下たちの会話が聞こえてくるが、今の俺にとってはどうでもいいことだ。
オニキルへの怒りも中途半端に消えてしまい、今は無気力だ。
「あの者のことはこちらでも厳しく対処いたしますが、問題はエディさんのことです」
「ああ。エディについては、オレたちの感じたことが正しければ……」
「ええ。わたしも感じた気がしたのですが……サフィシュ殿下とイーラッツォさんも感じたのならば、間違いないかと」
二人がエディのことを話しだすと、途端に気になり始める。
思い出せば、サフィシュとイーラ、そしてファルリオラ殿下。
三人と初対面の時、みんなエディを不思議そうに見ていた気がする。
そのたびにエディが黙れと言わんばかりの態度をとったので、俺も深く追求することはしなかった。
「リサイル、聞いているのだろう? いつまで無気力に過ごすつもりだ」
「サフィシュ殿下、リサイル様は深く傷ついておられます。今はまだそっとしておいた方が……」
「お優しいのは結構だが、時には厳しく対処することも必要だ。ファルリオラ殿下はまだ若く優しいお方だから、それも大事なことではあるが……」
サフィシュの言葉は胸に突き刺さるが、俺はそれでも……。
返事をしないでいると、また誰かやってきた気配がした。
「お前ら、またリサイルが心配で見に来たのか?」
「イーラ……お前が城内をうろつくとややこしくなるから、おとなしくしろと言っているだろう?」
「ったく、他の国だってのにブルードラゴン様はいちいちうるさいドラゴンだな。こっちのファルリオラ殿下はかわいらしいもんだけどな」
「イーラッツォさん、今は静かにしないとリサイルさんが……」
ファルリオラ殿下だけは俺をそっとしてくれようとしているみたいだけれど、契約している二人は俺のことを放っておいてくれない。
イーラは力づくで俺がもぐっていた寝具をはぎ取ってしまった。
「ほら、丸まってないで起きろ。俺様の言うことが聞けないのか?」
「……」
俺は答えない。すると、頭上からサフィシュのため息がふってきた。
「いつまでめそめそしている。いいか、エディはキラキラと身体が輝いて消えてしまったと言ったな? それを見てリサイルは何も感じなかったのか?」
「普通の人間だったら、消えたりしないよなぁ? つまり……」
イーラがたっぷりと含みをもたせる。すると慌てたような声が次に聞こえてきた。
「つまり、エディさんは人間ではない。という結論になります」
ファルリオラ殿下が人間ではないというと、正しいように聞こえてくる。
エディが人間ではないとは……どういうことだろうか?
確かに人間離れしているところはあったけれど、エディは従者でいつも俺のそばにいてくれて……。
「オレが初めてエディと会った時を覚えているか? あの時、わずかだが感じたんだ」
「俺様の時もなかなかひどかったよなあ。余計なことを言ったら分かってるな? みたいな顔してたぞ、黒髪は。まあ、本当のことを言いたくなかったってのは……俺も少し理解できるがな」
サフィシュ殿下とイーラが言葉を続ける。感じたとは……一体何を?
俺はぼんやりと思考を巡らせる。エディは何を嫌がっていたのだろう?
そして、明らかにおかしかった時があったような気がする。
エディは俺がドラゴンに関わることを嫌がっていた。それは間違いない。
そして、一瞬変だなと思ったときがあった。それは……。
「俺が……最初のドラゴンがレッドドラゴンなんてすごいと思わない? と言ったとき。エディは……悲しそうで寂しそうに見えた気がする」
俺が呟くと、全員が俺の顔をじっと覗き込んできた。
三人に見られているのも落ち着かなくて身体を丸めると、イーラが大きな声で笑い始めた。
「ハハハっ! なるほどなぁー? 黒いのは俺様にヤキモチを焼いていたのか。かわいいところ、あるじゃねぇか」
「それはそうだろう。おそらくだが……最初に契約したドラゴンはお前じゃないのだからな」
サフィシュ殿下の一言に、心臓がとくんと音を立てた。
最初に契約したドラゴンは……レッドドラゴンのイーラじゃない?
「そういうことですか……仮契約。そうですね?」
ファルリオラ殿下が言うと、そうだろうな、とサフィシュが答えた。
仮契約……契約ではない、仮契約とは一体?
今気づいたって、もうエディはいないのだから……。
「それに、あの声だってきっと俺の願望がそう聞こえたと勘違いしただけで……」
俺の気持ちはどこまでも沈んでいく。
もう、何もしたくない。何も……見たくない。
このまま俺も……消えてしまいたかった。
+++
「リサイルさん、少しでも食べないと……」
俺は寝具の中にもぐったまま、返事もしなかった。
どれくらいの時間が過ぎたのかも分からないけれど……今は話す気力もなくなってしまって、誰とも関わりたくない。
召喚獣のみんなも心配してくれていたけれど、今は放っておいてほしかった。
「……邪魔するぞ」
「サフィシュ殿下、こちらに滞在していて大丈夫なのですか?」
「ああ。父上もリサイルのことを心配しているからな。あの愚か者はリサイルの義弟だと聞いている。サモナード領へ勅問状を送ったのだが、今慌てて対処しているみたいだな」
「そうですか……」
殿下たちの会話が聞こえてくるが、今の俺にとってはどうでもいいことだ。
オニキルへの怒りも中途半端に消えてしまい、今は無気力だ。
「あの者のことはこちらでも厳しく対処いたしますが、問題はエディさんのことです」
「ああ。エディについては、オレたちの感じたことが正しければ……」
「ええ。わたしも感じた気がしたのですが……サフィシュ殿下とイーラッツォさんも感じたのならば、間違いないかと」
二人がエディのことを話しだすと、途端に気になり始める。
思い出せば、サフィシュとイーラ、そしてファルリオラ殿下。
三人と初対面の時、みんなエディを不思議そうに見ていた気がする。
そのたびにエディが黙れと言わんばかりの態度をとったので、俺も深く追求することはしなかった。
「リサイル、聞いているのだろう? いつまで無気力に過ごすつもりだ」
「サフィシュ殿下、リサイル様は深く傷ついておられます。今はまだそっとしておいた方が……」
「お優しいのは結構だが、時には厳しく対処することも必要だ。ファルリオラ殿下はまだ若く優しいお方だから、それも大事なことではあるが……」
サフィシュの言葉は胸に突き刺さるが、俺はそれでも……。
返事をしないでいると、また誰かやってきた気配がした。
「お前ら、またリサイルが心配で見に来たのか?」
「イーラ……お前が城内をうろつくとややこしくなるから、おとなしくしろと言っているだろう?」
「ったく、他の国だってのにブルードラゴン様はいちいちうるさいドラゴンだな。こっちのファルリオラ殿下はかわいらしいもんだけどな」
「イーラッツォさん、今は静かにしないとリサイルさんが……」
ファルリオラ殿下だけは俺をそっとしてくれようとしているみたいだけれど、契約している二人は俺のことを放っておいてくれない。
イーラは力づくで俺がもぐっていた寝具をはぎ取ってしまった。
「ほら、丸まってないで起きろ。俺様の言うことが聞けないのか?」
「……」
俺は答えない。すると、頭上からサフィシュのため息がふってきた。
「いつまでめそめそしている。いいか、エディはキラキラと身体が輝いて消えてしまったと言ったな? それを見てリサイルは何も感じなかったのか?」
「普通の人間だったら、消えたりしないよなぁ? つまり……」
イーラがたっぷりと含みをもたせる。すると慌てたような声が次に聞こえてきた。
「つまり、エディさんは人間ではない。という結論になります」
ファルリオラ殿下が人間ではないというと、正しいように聞こえてくる。
エディが人間ではないとは……どういうことだろうか?
確かに人間離れしているところはあったけれど、エディは従者でいつも俺のそばにいてくれて……。
「オレが初めてエディと会った時を覚えているか? あの時、わずかだが感じたんだ」
「俺様の時もなかなかひどかったよなあ。余計なことを言ったら分かってるな? みたいな顔してたぞ、黒髪は。まあ、本当のことを言いたくなかったってのは……俺も少し理解できるがな」
サフィシュ殿下とイーラが言葉を続ける。感じたとは……一体何を?
俺はぼんやりと思考を巡らせる。エディは何を嫌がっていたのだろう?
そして、明らかにおかしかった時があったような気がする。
エディは俺がドラゴンに関わることを嫌がっていた。それは間違いない。
そして、一瞬変だなと思ったときがあった。それは……。
「俺が……最初のドラゴンがレッドドラゴンなんてすごいと思わない? と言ったとき。エディは……悲しそうで寂しそうに見えた気がする」
俺が呟くと、全員が俺の顔をじっと覗き込んできた。
三人に見られているのも落ち着かなくて身体を丸めると、イーラが大きな声で笑い始めた。
「ハハハっ! なるほどなぁー? 黒いのは俺様にヤキモチを焼いていたのか。かわいいところ、あるじゃねぇか」
「それはそうだろう。おそらくだが……最初に契約したドラゴンはお前じゃないのだからな」
サフィシュ殿下の一言に、心臓がとくんと音を立てた。
最初に契約したドラゴンは……レッドドラゴンのイーラじゃない?
「そういうことですか……仮契約。そうですね?」
ファルリオラ殿下が言うと、そうだろうな、とサフィシュが答えた。
仮契約……契約ではない、仮契約とは一体?
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