召喚士一族の落ちこぼれ長男なのに、過保護な従者が離してくれません!

楓乃めーぷる

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第五章 夢と記憶

58.記憶を求めて

 ファルリオラ殿下の思いを俺も受け止めたい。
 伝説の召喚士のようになりたいからではなく、俺自身のためにも。

「ファルリオラ殿下……ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」
「わたしの本当の名は、ファルリオラ・ル・ランシュノー。この名であなたと契約いたします」

 俺は頷いてから、息を大きく吸い込んだ。
 そして、契約の言葉を紡ぐ。

「我、リサイル・サモナードは、汝、ファルリオラ・ル・ランシュノーと契約関係を結ぶ。異存はないか?」
「異存はありません。我、ファルリオラ・ル・ランシュノーは、汝、リサイル・サモナードと契約し、汝が求める時に力を貸すことに同意いたします」

 契約の言葉を交わすと、ファルリオラ殿下は俺の髪を一束すくって優しく口づけた。
 白色の光がふわりと優しく髪を包み込み、ゆっくりと消えていった。

「これでわたしもみなさんのお仲間になれました。わたしのことは気軽にファーとお呼びください。お仲間に身分も何も関係ありません」
「……分かった。これからもよろしく、ファー」

 俺が笑って手を差し出すと、ファーも微笑んで手を握り返してくれる。
 
「そうと決まれば、あとはリーサちゃんに体力と魔力を取り戻してもらって、さっさと行こうぜ」
「まだ、陛下からお許しを得ていないだろうが馬鹿者め。だが、静養には賛成だ。オレたちが無理やりリサイルを起こしてしまったからな。数日は静養していれば話も進むだろう」

 イーラとサフィシュは意外と気が合うのかもしれない。二人のやり取りを見ながら思わず笑ってしまった。

「良かった。リサイルさん、少し元気になられて。無理はなさらずに、辛いときはいつでも頼ってくださいね」
「ありがとう、ファー。またいつか……必ず合作の絵を完成させよう」
「……! はいっ」

 今は前に進むしかない。俺の大切な人を取り戻すために、悲しさと寂しさを力に変えよう。

 +++

 数日後、体力と魔力もほぼ取り戻したところでファーから陛下からお許しを得たと知らせがきた。
 俺たちは陛下と謁見えっけんし、事の次第を改めて説明すると同時に大臣とオニキルの処分を聞くことになった。
 陛下は俺に対して心を痛めてくれていたし、王妃殿下も共に悲しんでくれた。
 今の俺には、それだけで十分だ。

「大臣は王権を冒涜し、国が尊敬すべき存在である召喚士殿に許されざる行為をおこなった大罪人である。よって、地位はく奪と一族の爵位二段階引き下げ。及び、永劫幽閉の刑を下した。生きている間に陽の光を浴びることを断じて許さぬ」

 陛下は重々しい声で大臣の罪状を俺たちに告げた。
 公式の場でもすでに罪状は言い渡されており、大臣は幽閉という罪状だけれど地下深くにあるという大罪人専用の牢から一生出られないそうだ。
 本来は俺も当事者なのだけれど、俺は国外の者ということもあり深く傷ついているからと裁きの場にはあえて呼ばないようにとのご配慮だった。
 
「陛下、オニキルはどうなりましたか?」
「義弟殿は大臣に利用されていたとはいえ、国民の前で召喚士殿を拉致するという行為は我が国としても看過できないのでな。引き続き牢で反省させておる。そなたの父君からの返事をまって引き渡しを行い、サモナード領で改めて裁かれることになるだろう」
「そうですか……」

 色々な思いはこみあげてくるけれど、追放されている身なので俺には領内の裁きに関わることはできない。
 俺にとってもオニキルは決して許すことのできない罪を犯した。ただ、それだけが一つの事実だ。

 このあとファーと契約した話になると、陛下と王妃殿下も喜んでくれた。
 ファーも堂々と陛下と話すことができていたし、その姿を見守っていた王妃殿下の涙が印象的だった。
 ファーが逃げることなく陛下と話せるようになったきっかけになれたのなら、俺も嬉しい。

 続く話で俺たちは陛下から聖地へ赴くことを許されたので、旅の支度を整えて王城から聖地へ向けて旅立った。
 
 +++

 聖地アウルレーンはランシュノー王国の王城から馬車で向かうことになった。
 歩きでも行けなくはないらしいけれど、陛下を始めランシュノー王国の気持ちだからと言われてしまったのでお言葉に甘えることにする。
 外には騎士団長であるセルディオス殿下まで来てくれているけれど、いいのだろうか?
 聖地まで送ってくれるという話で、王家の豪華な馬車に全員で乗せてもらっていた。

「なんだか申し訳ない気もするけれど……」
「気にしないでください。わたしたちのせめてもの気持ちです」

 ファーは微笑んでいるけれど、俺は申し訳ない気持ちが強い。
 すると、俺の気持ちを察したイーラが俺の横に無理やり座ってきて肩を抱きながらバシバシと叩き始めた。

「リーサちゃんはもっと偉そうにしてりゃあいいんだって。なぁ?」

 それを見たサフィシュが俺のひざの上にいたユーアンに視線を送ると、ユーアンがユッと声をあげてイーラへ飛びかかり、べちべちと尻尾でイーラの顔を叩き始めた。

「いてて! おい、毛むくじゃら! なんのつもりだ?」
「リサイルは馬車でも一人でゆっくりとくつろいでもらうと決めただろうが。そばにいて許されるのは召喚獣だけだ。いい加減学べ」
「そうですよ? あたしたちはエディに許しを得ていますからね。これ以上の接触はあたしも黙っていません」

 俺のそばにいてくれたマキーニャがイーラに対して鋭い爪をニャっと見せつけると、イーラは両手をあげて大人しく俺の隣から離れていった。
 俺の近くに浮きながら沈黙していたモモモも無言で身体を大きくしてくれたので、俺はありがたくモモモに寄りかかって到着まで寛がせてもらうことにした。
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