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第五章 夢と記憶
60.記憶の中で見たもの
意識がゆっくりと浮かび上がってくる。
周りには俺が今まで生きてきた記憶が、いくつかに分かれて見えるようになっていた。
ここは夢の中なのだろうか? 俺は記憶が見える場所に一人で佇んでいた。
「これが夢渡り……? 俺が生まれたばかりの記憶まであるのか」
父さんと母さんが笑いあっている姿も見えて、少し嬉しい気持ちになる。
故郷を追放された事実を考えると二人には申し訳ない気持ちもあるけれど……今、俺が求めているのはもう少し先の記憶だ。
俺が求めるのは十二歳の時に受けていた試練の記憶。順番に目を通していくと、求めていた記憶が見えてきた。
「これだ。触れたらいいのか?」
導かれるように見えた記憶に触れると、光につつまれる。
次に目を開くと、俺は森の中に立っていた。
「あれは……俺だ」
十二歳の俺が森の中で迷ってしまい、地面に座り込んでいる。
そして、きょろきょろと辺りを見回すと手ごろな枝を手に取った。
「そう、確かに絵を描いた。俺は一体何を描いたんだろう?」
今の俺はそっと昔の俺を見守る。
見守っていくうちに、忘れていた記憶が少しずつ思い出されてきた。
「俺は願っていたんだ。朝から夜まで一日中、ずっと俺のそばにいて俺のことを大切に思って守ってくれる強い存在が欲しかったんだ」
常にオニキルと比べられ、必死に笑っていたけれど俺は深く傷ついていた。
年齢を重ねていくごとに自分を守れるようになってきたけれど、本当はずっと寂しかった。
だから……寂しさを埋めてほしい願いを込めて絵を描こうとしたんだ。
俺は強い思いをぶつけるように、自分の願う全てを地面に描いていた。
陽と月、そして大好きだった伝説の召喚士の言い伝えの書かれた絵本を思い浮かべたドラゴン。
描き終わると地面は淡く光り、俺が驚いているうちに光は黒に包まれた。
俺は光と闇に飲み込まれると同時に、地面に倒れ込んでしまった。
「俺の強い願いが、無意識で強いドラゴンを求めて召喚した……?」
そこにはドラゴンがいた。
横たわった美しいドラゴンは、黒く輝く身体を持つドラゴン。
そして、ドラゴンはゆっくりと瞳を開く。その瞳は赤と紫が交じり合う赤紫の――
「この美しいドラゴンが……エディ……?」
目を開けたドラゴンは、倒れている俺に尾を触れさせた。
しばらくそのままだったけれど、そのドラゴンは急に身体を淡く発光させる。
そして……人間の姿へ変化した。
「……エディだ」
俺の目から自然と涙が溢れ出した。目の前にいたのは、間違いなくエディだった。
エディは無表情で俺へ手を伸ばすと、そのまま俺を両腕で抱き上げて歩き出した。
どうして俺を助けてくれたのかは、分からないままだ。
でも、これが俺の記憶というならば……エディは何かを思って俺を助けてくれたのだろう。
「眠っていたエディを俺が呼んでしまったから……?」
俺は涙を拭いて、自分が描いたつたない絵を目に焼き付ける。
森の外へと歩いていくエディの後ろ姿を見送り、決して忘れないように心の中にも記憶させるように胸へ手を当てた。
+++
次に目を開けると、一斉に顔を覗き込まれた。
どうやらベッドに寝かされていたようだ。
「良かった、目が覚めたのですね?」
「お、おかえり。どうやら……分かったらしいな」
「ああ、リサイルの表情を見れば分かる」
ドラゴンのみんなが順番に声をかけてくれる。
そして、召喚獣たちも俺の周りに寄ってきて身体を擦りつけてくれた。
「どうやら役立てたようだな」
「アムリラ、おかげで分かりました。ありがとうございます」
俺が身体を起こすと、アムリラも深く頷いた。
「神殿へ行くがいい。神殿こそ、ルーナがドラゴンを召喚した始まりの場所。召喚士であるそなたにふさわしい場所だ」
「はい! みんな……行ってくる!」
ユーアンから杖を受け取り、全員に送り出されて……走り出す。
俺の心があの召喚陣を覚えているうちに――今すぐにエディに会いたい一心で走る。
初めて来た場所だけれど、本能的にどこへ行くべきか分かる。
導かれるように……俺は始まりの場所へたどり着いた。
そこは広い空間だった。中庭と言えば分かりやすいのだろうか?
緑があふれる自然の中に、白い石で囲まれた丸い白い石の台があった。
「魔力が満ちてくる……ルナリオル様、ありがとうございます」
俺は見守られているような感覚になりながら、大きく息を吸い込んだ。
祭壇のような台の上へあがり、俺は杖を地面に立てた。
杖の先へ魔力を集め、十二歳の時の思いをこめて召喚陣を描いていく。
「陽と月。陽が昇るときも月が輝くときも、常に俺のそばにいてほしい。俺のことを守ってくれる、強くて優しい……大切な存在」
杖で描いた部分が光り輝き、召喚陣を形作っていく。
俺の思いは光の柱となって、辺りに広がっていく――
最後にトンと杖を叩くと、柱はひと際大きく立ちのぼって輝きを増していく。
光が辺りにあふれたあと、今度は優しい闇が生まれて光を包み込んで……光と闇は一つになる。
「エディ……!」
俺は全ての魔力と願いを込めて、愛しい名を紡ぐ。
光と溶け合った闇は……だんだんとその姿を浮かび上がらせる。
「……またその名で呼ばれる時がくるとは思いませんでした」
響く声は、俺が聞きたかった優しい声。
俺の心と身体。その全てが求めていた愛しい存在――
黒く美しいドラゴンは、赤紫の瞳で俺の姿をとらえていた。
俺もその姿を……瞳に焼きつける。
「エディ……っ!」
俺は杖から手を離し、静かに横たわるドラゴンの身体に飛び込んで……力強く抱きついていた。
周りには俺が今まで生きてきた記憶が、いくつかに分かれて見えるようになっていた。
ここは夢の中なのだろうか? 俺は記憶が見える場所に一人で佇んでいた。
「これが夢渡り……? 俺が生まれたばかりの記憶まであるのか」
父さんと母さんが笑いあっている姿も見えて、少し嬉しい気持ちになる。
故郷を追放された事実を考えると二人には申し訳ない気持ちもあるけれど……今、俺が求めているのはもう少し先の記憶だ。
俺が求めるのは十二歳の時に受けていた試練の記憶。順番に目を通していくと、求めていた記憶が見えてきた。
「これだ。触れたらいいのか?」
導かれるように見えた記憶に触れると、光につつまれる。
次に目を開くと、俺は森の中に立っていた。
「あれは……俺だ」
十二歳の俺が森の中で迷ってしまい、地面に座り込んでいる。
そして、きょろきょろと辺りを見回すと手ごろな枝を手に取った。
「そう、確かに絵を描いた。俺は一体何を描いたんだろう?」
今の俺はそっと昔の俺を見守る。
見守っていくうちに、忘れていた記憶が少しずつ思い出されてきた。
「俺は願っていたんだ。朝から夜まで一日中、ずっと俺のそばにいて俺のことを大切に思って守ってくれる強い存在が欲しかったんだ」
常にオニキルと比べられ、必死に笑っていたけれど俺は深く傷ついていた。
年齢を重ねていくごとに自分を守れるようになってきたけれど、本当はずっと寂しかった。
だから……寂しさを埋めてほしい願いを込めて絵を描こうとしたんだ。
俺は強い思いをぶつけるように、自分の願う全てを地面に描いていた。
陽と月、そして大好きだった伝説の召喚士の言い伝えの書かれた絵本を思い浮かべたドラゴン。
描き終わると地面は淡く光り、俺が驚いているうちに光は黒に包まれた。
俺は光と闇に飲み込まれると同時に、地面に倒れ込んでしまった。
「俺の強い願いが、無意識で強いドラゴンを求めて召喚した……?」
そこにはドラゴンがいた。
横たわった美しいドラゴンは、黒く輝く身体を持つドラゴン。
そして、ドラゴンはゆっくりと瞳を開く。その瞳は赤と紫が交じり合う赤紫の――
「この美しいドラゴンが……エディ……?」
目を開けたドラゴンは、倒れている俺に尾を触れさせた。
しばらくそのままだったけれど、そのドラゴンは急に身体を淡く発光させる。
そして……人間の姿へ変化した。
「……エディだ」
俺の目から自然と涙が溢れ出した。目の前にいたのは、間違いなくエディだった。
エディは無表情で俺へ手を伸ばすと、そのまま俺を両腕で抱き上げて歩き出した。
どうして俺を助けてくれたのかは、分からないままだ。
でも、これが俺の記憶というならば……エディは何かを思って俺を助けてくれたのだろう。
「眠っていたエディを俺が呼んでしまったから……?」
俺は涙を拭いて、自分が描いたつたない絵を目に焼き付ける。
森の外へと歩いていくエディの後ろ姿を見送り、決して忘れないように心の中にも記憶させるように胸へ手を当てた。
+++
次に目を開けると、一斉に顔を覗き込まれた。
どうやらベッドに寝かされていたようだ。
「良かった、目が覚めたのですね?」
「お、おかえり。どうやら……分かったらしいな」
「ああ、リサイルの表情を見れば分かる」
ドラゴンのみんなが順番に声をかけてくれる。
そして、召喚獣たちも俺の周りに寄ってきて身体を擦りつけてくれた。
「どうやら役立てたようだな」
「アムリラ、おかげで分かりました。ありがとうございます」
俺が身体を起こすと、アムリラも深く頷いた。
「神殿へ行くがいい。神殿こそ、ルーナがドラゴンを召喚した始まりの場所。召喚士であるそなたにふさわしい場所だ」
「はい! みんな……行ってくる!」
ユーアンから杖を受け取り、全員に送り出されて……走り出す。
俺の心があの召喚陣を覚えているうちに――今すぐにエディに会いたい一心で走る。
初めて来た場所だけれど、本能的にどこへ行くべきか分かる。
導かれるように……俺は始まりの場所へたどり着いた。
そこは広い空間だった。中庭と言えば分かりやすいのだろうか?
緑があふれる自然の中に、白い石で囲まれた丸い白い石の台があった。
「魔力が満ちてくる……ルナリオル様、ありがとうございます」
俺は見守られているような感覚になりながら、大きく息を吸い込んだ。
祭壇のような台の上へあがり、俺は杖を地面に立てた。
杖の先へ魔力を集め、十二歳の時の思いをこめて召喚陣を描いていく。
「陽と月。陽が昇るときも月が輝くときも、常に俺のそばにいてほしい。俺のことを守ってくれる、強くて優しい……大切な存在」
杖で描いた部分が光り輝き、召喚陣を形作っていく。
俺の思いは光の柱となって、辺りに広がっていく――
最後にトンと杖を叩くと、柱はひと際大きく立ちのぼって輝きを増していく。
光が辺りにあふれたあと、今度は優しい闇が生まれて光を包み込んで……光と闇は一つになる。
「エディ……!」
俺は全ての魔力と願いを込めて、愛しい名を紡ぐ。
光と溶け合った闇は……だんだんとその姿を浮かび上がらせる。
「……またその名で呼ばれる時がくるとは思いませんでした」
響く声は、俺が聞きたかった優しい声。
俺の心と身体。その全てが求めていた愛しい存在――
黒く美しいドラゴンは、赤紫の瞳で俺の姿をとらえていた。
俺もその姿を……瞳に焼きつける。
「エディ……っ!」
俺は杖から手を離し、静かに横たわるドラゴンの身体に飛び込んで……力強く抱きついていた。
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