召喚士一族の落ちこぼれ長男なのに、過保護な従者が離してくれません!

楓乃めーぷる

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第五章 夢と記憶

66.ささやかなお願い※

 神殿の不思議な場所も今は夜が訪れているようで、室内は薄暗くなっている。
 俺は少し気になったことがあって、眠くなるまでレイディスに話に付き合ってもらっていた。

「その……レイディスはずっと従者でいてくれた。でも今は少し違うというか。普段通りに呼んでもらうのも嫌ってわけじゃないけれど……二人きりの時は俺もレイディスって呼びたいから、レイディスも……」

 俺がじっと見つめると、レイディスは優しく微笑み返してくれる。
 そして、顔を近づけてきた。
 吐息がかかる距離だけれど、キスをされるわけではなさそうだ。

「それはお願いですか?」
「だってもう……俺はレイディスに主導権を握られているし……だから、これはお願い。レイディスが主人になるなら、俺のこともリサイルと呼んでほしい」

 俺が言いきると、レイディスはちゅっと軽く唇を合わせてくる。
 そして、俺を優しくなでてくれた。

「お願いがかわいらしいですね。本当にあなたらしい。私の名も大切に思ってくださって嬉しいです」
「他のみんなも、レイディスがドラゴンだって気づいただけで知らないドラゴンだって言っていたから。だったら……俺とレイディスの間だけの秘密でもいいかなって」
「二人だけの秘密、ですか。それも素敵ですね」

 レイディスはまたキスを落として、俺だけを見つめてくれる。
 俺も赤紫の瞳を見つめ返すと、きれいな唇が動いた。

「リサイル……私のかわいいご主人様。私のお願いも聞いてくれるのですか?」
「レイディス……ありがとう。俺が聞ける範囲だったら、だけど。もちろん聞く」
「でしたら、もうしばらくこの神殿の中で二人きりで過ごしましょう。あなたのご先祖様も、おそらく愛しい者と時の流れが緩やかなこの場所で過ごされたのでしょう」
「そうか……みんながいるいつもの場所とは違うって言っていたよな。心配させてしまうかもしれないけれど……俺もレイディスと……二人きりで過ごしたい」
 
 レイディスは俺が不安定に呼び出してしまったせいで、色々なことを我慢してくれていた。
 だったら、今は少しでも願いをかなえたい。
 心配してくれているみんなを待たせるのは心苦しいけれど……もう少しだけ、二人きりにさせてほしい。

 +++

 俺とレイディスは、サモナードの屋敷で過ごしていたように静かな時間を過ごした。
 ただ前と違うのは……レイディスが甘く俺に接するようになったこと。
 何をしていても、キスをされたりそれだけでとどまらなかったり……。
 一目を気にせず、俺たちは愛しあっていた。

「レイディス……っ、もう、また胸ばかり……っ」
「初々しい反応も好みですが、私の手で育てあげるのもいいと思いまして。普段は純粋でかわいらしいリサイルなのに、私が触れると……」
「んぅっ!」

 レイディスが後ろから俺の胸の飾りをきゅっと摘まみ上げる。
 俺は初めの頃より敏感に反応するようになってしまった。
 声も止められないし、恥ずかしい。

「耳まで赤くされて……リサイル、その反応は私を喜ばせるだけですよ?」
「俺は読書をしていたいだけなのに……」

 今日は気分転換もしたかったから読書をすると主張したはずなのに、読書をするなら一緒にと後ろから抱きこまれてしまった。
 ベッドの上でレイディスに抱きこまれながら読書なんて……気になって本が読めない。

「んっ……もう、また跡を残して。鏡を見るたびに恥ずかしいのに」
「私のリサイルなのですから、印は大切です。私のことはお気になさらず、どうぞ読み進めてください」
「そんなこと言って、読ませる気ないだろう? あっ……ぁんっ!」

 何をするにもレイディスがついてくるし、食事をしようとしても毎回食べさせてくれる。
 そして……全てお世話をしてくれたあとに、いつも最後までする流れになってしまう。
 寝具の上だけ着せられた状態だったので、すぐにレイディスを受け入れてしまう。
 
「んぁっ、レイディス……っ」
「私の形になじんでいただけて……みだらなリサイルもかわいらしいですよ?」
「だ、だれが……ふぁっ、ぁ……っ……」

 レイディスに求められるままに、俺もレイディスを受け入れる。
 このままずっと二人で過ごしていたい気持ちも強いけれど……いくら時間の流れが緩やかとはいえ、いつまでもいるわけにもいかない。
 そのことが頭をかすめるけれど、今はレイディスの与えてくれる熱に浮かされてしまう。
 俺が感じてしまうところも、レイディスは完璧に覚えていた。

「あ、あ……そんなにゆさぶったら、あたっちゃ……ひぅんっ!」
「本当にその場所がお好きですね? 今は素直に感じていてください。もう少しだけ、あなたを私だけのものに――」

 レイディスも分かっているんだ。この時間はもう少しだけだって。
 でもきっと。また帰って来られる。
 ここに居られるのは、俺と心と魂を通じ合わせた者だけだから――

 レイディスの熱いものがまた、中へ注がれていく。
 俺もその熱さと気持ちを受け止めて、レイディスの唇に口づけた。

 +++

 二人で身支度を整え、短い間だったけれど共に過ごした部屋を眺める。
 静かに俺たちを見守ってくれていた一室には、またいつでも帰ってきていいのだというように柔らかな風が吹き抜けた。
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