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第六章 世界の綻び
67.帰還
俺たちは神殿の一室を後にして、湖のほとりの小屋へ向かう。
レイディスは前と変わらぬ姿で、俺の隣にいてくれている。
それだけで嬉しい。
小屋の前までやってくると、小屋の扉が開いて待っていたみんなが次々と外へ出てきた。
俺が帰ってくるのが分かっていたらしい。
「ユーッ!」
「ご主人様っ!」
「……モッ」
先に俺へ飛び込んできたのは、召喚獣のみんなだ。
ユーアンは……俺に飛びつこうとしたのにまたレイディスに身体をつままれていた。
「懲りないタヌキですね。リサイル様に飛びつくなと言っているでしょう?」
「ユッ! ユー!」
ユーアンが不満げにじたばたしていると、マキーニャが足にすり寄ってくれる。
モモモは周りをふわりと一周して、俺のそばでふわふわと浮いていた。
「ユーアンったら、エディの許可を取らないとダメだって言ったのに……あたしは事前に許可をいただいているので」
「ユーッ! ユー!」
「エディ、離してあげて。ユーアン、待っててくれてありがとうな」
レイディスの真名は俺だけに教えてくれた大切なものだ。
みんなの前では以前と同じようにエディと呼ぶと決めていたので、心の中以外はエディと呼びかける。
エディ……レイディスが渋々手を離してくれたので、俺はユーアンを手で受け止める。
ユーアンは嬉しそうに俺の身体をのぼって、肩の上に乗ると顔をもふっとすり寄せてきた。
「帰ってきたか、黒いの! って……なんで俺様に対してだけ怒ってるんだよ」
「聞きましたよ、イーラ。私がいない間にリサイル様に近づいていたと。サフィシュ殿下のように距離感をわきまえないとは。お前は後で……」
イーラがこわっと言いながらサフィシュに隠れようとすると、サフィシュはさっと横へ退く。
「だから言っただろう。人の忠告を聞かないからだ。エディ、無事に戻ってきて何よりだ。色々と聞きたい気持ちもあるが……先ほど不穏なことを聞いたばかりでな。二人の帰りを待っていたところだ」
「エディさん、帰って来られたばかりで恐縮なのですが……見識あるエディさんのご意見も伺いたいとお待ちしていたのです」
サフィシュとファーの神妙な様子が気にかかる。
俺たちはまた小屋の中の一室をお借りして、少し話し合うことにした。
+++
「……というわけだ。どうやら付近に魔物も集まり、活発化しているらしい」
「ランシュノー王国とルーブロア公国の間くらいの位置。そこにある地下大空洞で何か良からぬことが起きていると。両国で先発隊を組み、原因を探ることになったのですが……」
俺がレイディスを召喚しに行ってから、三日ほど経ったらしい。
あちらで過ごした時間は普通に暮らしていた感覚でもっと長い時を過ごしていたはずなので、本当に時間の流れが違うようだ。
「ふむ……我も詳しくは知らぬが、そなたなら知っているのだろう?」
静かに聞いてくれていたアムリラが、急にレイディスへ話を振った。
どういうことだろう? アムリラはレイディスが何者なのか知っているのだろうか……?
レイディスはアムリラに対して視線だけ向けてから、みんなに説明を始める。
「地下大空洞……昔、アトラズール大空洞と呼ばれていた場所でしょう。そこには、世界の綻びがあると言われています」
レイディスがよどみなく答えると、イーラがもの言いたげな顔をして口を開く。
「黒いのは物知りドラゴンなのか? 俺らが知らないことを全て知っているな。そこらへん詳しく聞きたいのによ」
「今はそれどころじゃないだろう? ランシュノー王国からはセルディオス殿下率いる騎士団、うちからはアジュランと騎士たち。どちらも信頼のおける者たちだが……」
イーラの話にかぶせるように、サフィシュが話を続ける。
どちらの国も精鋭を出すほどの事態ということなのだろう。だとすれば……俺は決意を込めてみんなを見る。
「俺たちも行こう。何が起こっているのかは分からないけれど、放っておけない」
「リサイル様……本来は行くなと言いたいところですが、残念ながら私も無視はできなさそうです。世界の綻びは昔に封印されたはずなのですが、その封印が解けかけている可能性があります」
レイディスは悠久を生きているドラゴンだ。何か事情を知っているのかもしれない。
俺の決意に、全員同意してくれた。
問題はアトラズール大空洞へどうやって行くかだけれど……アムリラが俺たちの話に入ってくる。
「では、転移魔法で送ろう。我はこの土地を離れることはできないが、お前たちの活躍をこの地で祈るとしよう」
「ありがとうございます、アムリラ。お願いします」
俺はアムリラにお礼を言うと、ほんの少しだけ……笑ってくれた気がした。
俺たちが小屋の外まで出ると、アムリラが呪文を紡ぎ始める。
身体が揺らぐ感覚がして転移しそうになると、頭の中で声が直接響いてくる。
『黎明竜に会えるとは、長生きもしてみるものだな。お前たちは悠久に共にいられるとよいな』
俺が驚いた顔をすると、レイディスにそっと手を握られた。
どうやら同じ声がレイディスにも届いたらしい。
アムリラはレイディスのことが分かったけれど、黙ってくれていたということか。
アムリラも本当は……ルナリオル様と悠久の時を過ごしたかったのかもしれない。
レイディスは前と変わらぬ姿で、俺の隣にいてくれている。
それだけで嬉しい。
小屋の前までやってくると、小屋の扉が開いて待っていたみんなが次々と外へ出てきた。
俺が帰ってくるのが分かっていたらしい。
「ユーッ!」
「ご主人様っ!」
「……モッ」
先に俺へ飛び込んできたのは、召喚獣のみんなだ。
ユーアンは……俺に飛びつこうとしたのにまたレイディスに身体をつままれていた。
「懲りないタヌキですね。リサイル様に飛びつくなと言っているでしょう?」
「ユッ! ユー!」
ユーアンが不満げにじたばたしていると、マキーニャが足にすり寄ってくれる。
モモモは周りをふわりと一周して、俺のそばでふわふわと浮いていた。
「ユーアンったら、エディの許可を取らないとダメだって言ったのに……あたしは事前に許可をいただいているので」
「ユーッ! ユー!」
「エディ、離してあげて。ユーアン、待っててくれてありがとうな」
レイディスの真名は俺だけに教えてくれた大切なものだ。
みんなの前では以前と同じようにエディと呼ぶと決めていたので、心の中以外はエディと呼びかける。
エディ……レイディスが渋々手を離してくれたので、俺はユーアンを手で受け止める。
ユーアンは嬉しそうに俺の身体をのぼって、肩の上に乗ると顔をもふっとすり寄せてきた。
「帰ってきたか、黒いの! って……なんで俺様に対してだけ怒ってるんだよ」
「聞きましたよ、イーラ。私がいない間にリサイル様に近づいていたと。サフィシュ殿下のように距離感をわきまえないとは。お前は後で……」
イーラがこわっと言いながらサフィシュに隠れようとすると、サフィシュはさっと横へ退く。
「だから言っただろう。人の忠告を聞かないからだ。エディ、無事に戻ってきて何よりだ。色々と聞きたい気持ちもあるが……先ほど不穏なことを聞いたばかりでな。二人の帰りを待っていたところだ」
「エディさん、帰って来られたばかりで恐縮なのですが……見識あるエディさんのご意見も伺いたいとお待ちしていたのです」
サフィシュとファーの神妙な様子が気にかかる。
俺たちはまた小屋の中の一室をお借りして、少し話し合うことにした。
+++
「……というわけだ。どうやら付近に魔物も集まり、活発化しているらしい」
「ランシュノー王国とルーブロア公国の間くらいの位置。そこにある地下大空洞で何か良からぬことが起きていると。両国で先発隊を組み、原因を探ることになったのですが……」
俺がレイディスを召喚しに行ってから、三日ほど経ったらしい。
あちらで過ごした時間は普通に暮らしていた感覚でもっと長い時を過ごしていたはずなので、本当に時間の流れが違うようだ。
「ふむ……我も詳しくは知らぬが、そなたなら知っているのだろう?」
静かに聞いてくれていたアムリラが、急にレイディスへ話を振った。
どういうことだろう? アムリラはレイディスが何者なのか知っているのだろうか……?
レイディスはアムリラに対して視線だけ向けてから、みんなに説明を始める。
「地下大空洞……昔、アトラズール大空洞と呼ばれていた場所でしょう。そこには、世界の綻びがあると言われています」
レイディスがよどみなく答えると、イーラがもの言いたげな顔をして口を開く。
「黒いのは物知りドラゴンなのか? 俺らが知らないことを全て知っているな。そこらへん詳しく聞きたいのによ」
「今はそれどころじゃないだろう? ランシュノー王国からはセルディオス殿下率いる騎士団、うちからはアジュランと騎士たち。どちらも信頼のおける者たちだが……」
イーラの話にかぶせるように、サフィシュが話を続ける。
どちらの国も精鋭を出すほどの事態ということなのだろう。だとすれば……俺は決意を込めてみんなを見る。
「俺たちも行こう。何が起こっているのかは分からないけれど、放っておけない」
「リサイル様……本来は行くなと言いたいところですが、残念ながら私も無視はできなさそうです。世界の綻びは昔に封印されたはずなのですが、その封印が解けかけている可能性があります」
レイディスは悠久を生きているドラゴンだ。何か事情を知っているのかもしれない。
俺の決意に、全員同意してくれた。
問題はアトラズール大空洞へどうやって行くかだけれど……アムリラが俺たちの話に入ってくる。
「では、転移魔法で送ろう。我はこの土地を離れることはできないが、お前たちの活躍をこの地で祈るとしよう」
「ありがとうございます、アムリラ。お願いします」
俺はアムリラにお礼を言うと、ほんの少しだけ……笑ってくれた気がした。
俺たちが小屋の外まで出ると、アムリラが呪文を紡ぎ始める。
身体が揺らぐ感覚がして転移しそうになると、頭の中で声が直接響いてくる。
『黎明竜に会えるとは、長生きもしてみるものだな。お前たちは悠久に共にいられるとよいな』
俺が驚いた顔をすると、レイディスにそっと手を握られた。
どうやら同じ声がレイディスにも届いたらしい。
アムリラはレイディスのことが分かったけれど、黙ってくれていたということか。
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