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第六章 世界の綻び
68.戦場
転移された先は、ちょうどアトラズール大空洞の手前だった。
そこは……人間と魔物が争う戦場だった。
魔物はゴブリンやオークも多いが、空からも怪鳥やワイバーンの群れが襲い掛かってきており隊列が崩れていた。
「事態が悪化しているみたいだな。騎士たちも戦っているようだが……」
「予想以上に魔物の数が多いです。これでは手数で押されてしまいます」
サフィシュが真剣に状況を判断し、ファーは怪我をしてうずくまっている騎士の元へ駆け寄って白く淡い光で傷を癒していく。
イーラは話す前にオーガの群れに突撃し、拳に炎をまとわせて勢いよく殴りつけた。
「戦い方まで野蛮ですね、あのレッドは」
「でも、イーラのおかげで群れが少し散った。騎士たちの負担が減っているはずだ」
俺とレイディスは目と目で合図を出し合う。
レイディスが腰の剣を引き抜いて雷をまとわせたのを見て、俺はユーアンとモモモに指示を出した。
そして、レイディスが上へ飛べるように召喚陣を描き、怪鳥たちがいる空へ続く氷の足場を用意する。
レイディスは以前戦ったシードラゴン戦のように華麗に踏み台の上に乗って飛んでいき、空中の怪鳥たちに剣を突き出して雷を食らわせながら次々と感電させて落下させていく。
「ユーアン! 上だ!」
「ユーッ!」
ユーアンは尻尾を振ってたくさんの炎のかたまりを生み出し、空中で騒ぐワイバーンへ飛ばす。
モモモはすみやかにゴブリンの群れの方へ進み、身体を大きくして口を大きく開けて逃げ惑うゴブリンたちを吸い込むように食べていく。
マキーニャは俺のそばで魔物からの攻撃が当たらないように、結界を張ってくれる。
「殿下!」
「アジュラン、我が国の騎士たちは無事か?」
「はい。少々押されていましたが、殿下たちの到着で一気に形勢逆転しました。リサイルさん、エディさん。お元気そうでよかったです」
アジュランさんは俺たちの身に起こったことを知っているのだろうか?
サフィシュがまめに状況を自国へ知らせていたのかもしれない。
アジュランさんが寄ってくるゴブリンたちを話しながら剣で切り伏せ、サフィシュも剣をななめに流してゴブリンを切り裂いた。
「ご心配をおかけしてすみません。俺が暴走したせいでサフィシュも召喚してしまって……」
「お気になさらずに。殿下は毎日さびしそうにされていたので……」
「余計なことを言わずに手を動かしながら状況を説明しろ」
サフィシュがアジュランさんに説明を求めると、戦況を教えてくれた。
まず、外の群れを何とかしないことには大空洞の中へ入れないということになり、最前線にいるのがランシュノー王国のセルディオス殿下率いる騎士団。この辺りはアジュランさんとルーブロア公国の騎士たちで対処しているらしい。
「ドラゴンでやっちまってもいいけどよ、炎は辺りも一緒に燃やしちまうからな。こう人が多いとやりづらいんだよ」
「イーラは素手で暴れているみたいだけれど、暴れ足りない?」
戻ってきたイーラが文句を言っているけれど、敵味方が入り混じる戦場だとイーラの言う通り、広範囲に広がる炎を出すのは悪手だろう。
イーラにとってはやりづらいのかもしれない。
「アジュランは俺の護衛騎士をしているが、うちの騎士団の中でも副団長だからな。これでも実力はある方だ。それでも押されていることを考えると……」
「状況が落ち着いたら、俺たちはアトラズール大空洞の中へ入ろう」
俺が伝えると、みんな頷いてくれる。
俺も空の敵に向けて召喚陣を描き、怪鳥に向けて雷の雨を降らせた。
「怪我をした方たちの治療はほぼ済んだと思います」
「さすがファー。後はサフィシュが……」
サフィシュもゴブリンの数を減らしたあと、剣の柄を両手で握りしめ魔力を込める。
そして青い光が剣を包んだところで、その剣を高くあげた。
青い光が辺りに広がって、戦っている人たちを包み込んでいく。
「全体補助魔法だ。これで少し楽になるはずだ」
「ありがとうございます、殿下。我々はここで敵の進行を食い止めます。みなさまは更に奥へお進みください。殿下、申し訳ありませんが今しばらくおそばを離れることをお許しください」
「元々小言役みたいなものだ。この場は任せたぞ」
「――御意」
アジュランさんは頷くと、またゴブリンとオーガの群れへの方へ走っていく。
サフィシュは背中を見送ったあとに俺に目線で促してきたので、俺もみんなに先へ行こうと告げる。
進みながら倒せる魔物は倒し、大空洞の入り口へ向かう。
+++
最前線のアトラズール大空洞入り口付近には、ゴーレムが数体いてその周りで騎士たちが身体を斬りつけていた。
「兄上! ご無事ですか?」
「……ファー! それに、召喚士殿たちも。こちらに?」
「セルディオス殿下、ご無事ですか?」
俺たちがそばに寄ると、ゴーレムもゆっくりと動きを変える。
攻撃の一撃が重いので動きはにぶいけれど、剣の攻撃がほとんど通らない。
ゴーレムが時々見せるコアと言われる心臓部を狙うしか、勝ち目はないと言われている。
「同じことの繰り返しで、騎士たちが疲弊している。入り口は広いのだが、入ろうとすると必ず邪魔をしてくるのだ。まるで、何者かに操られているようにな」
「確かに……ゴーレムは本来守る役目を持つ者。おそらくは悪しき影響を受けて、近づく者を敵とみなしているのでしょう」
レイディスがセルディオス殿下へ返答すると、セルディオス殿下の眉が寄る。
殿下が戦っているゴーレムは片腕が取れているところを見ると、隙を狙ってコアを攻撃できていたみたいだ。
しかし、他の騎士たちは苦戦しているようだ。
「面倒だな。アレで行くか? 俺の首についてた首飾りを壊した時にもやってただろ。アレならゴーレムも炎と氷でバーンと壊せるんじゃねえか?」
「イーラ……適当なことを言うな。そんな簡単に……」
イーラの提案にサフィシュがため息交じりで答えたが、レイディスが少し考えてから顔をあげる。
「いえ、一理あります。ゴーレムは特殊な魔法金属の外殻なので、同じ原理で壊せるかもしれません。一旦騎士団に下がってもらい、イーラが炎を浴びせる。その後、氷魔法で固めてしまいましょう。できますか? リサイル様」
「分かった。やってみる」
レイディスと共にあるのならば――そう信じて俺は強く頷いた。
そこは……人間と魔物が争う戦場だった。
魔物はゴブリンやオークも多いが、空からも怪鳥やワイバーンの群れが襲い掛かってきており隊列が崩れていた。
「事態が悪化しているみたいだな。騎士たちも戦っているようだが……」
「予想以上に魔物の数が多いです。これでは手数で押されてしまいます」
サフィシュが真剣に状況を判断し、ファーは怪我をしてうずくまっている騎士の元へ駆け寄って白く淡い光で傷を癒していく。
イーラは話す前にオーガの群れに突撃し、拳に炎をまとわせて勢いよく殴りつけた。
「戦い方まで野蛮ですね、あのレッドは」
「でも、イーラのおかげで群れが少し散った。騎士たちの負担が減っているはずだ」
俺とレイディスは目と目で合図を出し合う。
レイディスが腰の剣を引き抜いて雷をまとわせたのを見て、俺はユーアンとモモモに指示を出した。
そして、レイディスが上へ飛べるように召喚陣を描き、怪鳥たちがいる空へ続く氷の足場を用意する。
レイディスは以前戦ったシードラゴン戦のように華麗に踏み台の上に乗って飛んでいき、空中の怪鳥たちに剣を突き出して雷を食らわせながら次々と感電させて落下させていく。
「ユーアン! 上だ!」
「ユーッ!」
ユーアンは尻尾を振ってたくさんの炎のかたまりを生み出し、空中で騒ぐワイバーンへ飛ばす。
モモモはすみやかにゴブリンの群れの方へ進み、身体を大きくして口を大きく開けて逃げ惑うゴブリンたちを吸い込むように食べていく。
マキーニャは俺のそばで魔物からの攻撃が当たらないように、結界を張ってくれる。
「殿下!」
「アジュラン、我が国の騎士たちは無事か?」
「はい。少々押されていましたが、殿下たちの到着で一気に形勢逆転しました。リサイルさん、エディさん。お元気そうでよかったです」
アジュランさんは俺たちの身に起こったことを知っているのだろうか?
サフィシュがまめに状況を自国へ知らせていたのかもしれない。
アジュランさんが寄ってくるゴブリンたちを話しながら剣で切り伏せ、サフィシュも剣をななめに流してゴブリンを切り裂いた。
「ご心配をおかけしてすみません。俺が暴走したせいでサフィシュも召喚してしまって……」
「お気になさらずに。殿下は毎日さびしそうにされていたので……」
「余計なことを言わずに手を動かしながら状況を説明しろ」
サフィシュがアジュランさんに説明を求めると、戦況を教えてくれた。
まず、外の群れを何とかしないことには大空洞の中へ入れないということになり、最前線にいるのがランシュノー王国のセルディオス殿下率いる騎士団。この辺りはアジュランさんとルーブロア公国の騎士たちで対処しているらしい。
「ドラゴンでやっちまってもいいけどよ、炎は辺りも一緒に燃やしちまうからな。こう人が多いとやりづらいんだよ」
「イーラは素手で暴れているみたいだけれど、暴れ足りない?」
戻ってきたイーラが文句を言っているけれど、敵味方が入り混じる戦場だとイーラの言う通り、広範囲に広がる炎を出すのは悪手だろう。
イーラにとってはやりづらいのかもしれない。
「アジュランは俺の護衛騎士をしているが、うちの騎士団の中でも副団長だからな。これでも実力はある方だ。それでも押されていることを考えると……」
「状況が落ち着いたら、俺たちはアトラズール大空洞の中へ入ろう」
俺が伝えると、みんな頷いてくれる。
俺も空の敵に向けて召喚陣を描き、怪鳥に向けて雷の雨を降らせた。
「怪我をした方たちの治療はほぼ済んだと思います」
「さすがファー。後はサフィシュが……」
サフィシュもゴブリンの数を減らしたあと、剣の柄を両手で握りしめ魔力を込める。
そして青い光が剣を包んだところで、その剣を高くあげた。
青い光が辺りに広がって、戦っている人たちを包み込んでいく。
「全体補助魔法だ。これで少し楽になるはずだ」
「ありがとうございます、殿下。我々はここで敵の進行を食い止めます。みなさまは更に奥へお進みください。殿下、申し訳ありませんが今しばらくおそばを離れることをお許しください」
「元々小言役みたいなものだ。この場は任せたぞ」
「――御意」
アジュランさんは頷くと、またゴブリンとオーガの群れへの方へ走っていく。
サフィシュは背中を見送ったあとに俺に目線で促してきたので、俺もみんなに先へ行こうと告げる。
進みながら倒せる魔物は倒し、大空洞の入り口へ向かう。
+++
最前線のアトラズール大空洞入り口付近には、ゴーレムが数体いてその周りで騎士たちが身体を斬りつけていた。
「兄上! ご無事ですか?」
「……ファー! それに、召喚士殿たちも。こちらに?」
「セルディオス殿下、ご無事ですか?」
俺たちがそばに寄ると、ゴーレムもゆっくりと動きを変える。
攻撃の一撃が重いので動きはにぶいけれど、剣の攻撃がほとんど通らない。
ゴーレムが時々見せるコアと言われる心臓部を狙うしか、勝ち目はないと言われている。
「同じことの繰り返しで、騎士たちが疲弊している。入り口は広いのだが、入ろうとすると必ず邪魔をしてくるのだ。まるで、何者かに操られているようにな」
「確かに……ゴーレムは本来守る役目を持つ者。おそらくは悪しき影響を受けて、近づく者を敵とみなしているのでしょう」
レイディスがセルディオス殿下へ返答すると、セルディオス殿下の眉が寄る。
殿下が戦っているゴーレムは片腕が取れているところを見ると、隙を狙ってコアを攻撃できていたみたいだ。
しかし、他の騎士たちは苦戦しているようだ。
「面倒だな。アレで行くか? 俺の首についてた首飾りを壊した時にもやってただろ。アレならゴーレムも炎と氷でバーンと壊せるんじゃねえか?」
「イーラ……適当なことを言うな。そんな簡単に……」
イーラの提案にサフィシュがため息交じりで答えたが、レイディスが少し考えてから顔をあげる。
「いえ、一理あります。ゴーレムは特殊な魔法金属の外殻なので、同じ原理で壊せるかもしれません。一旦騎士団に下がってもらい、イーラが炎を浴びせる。その後、氷魔法で固めてしまいましょう。できますか? リサイル様」
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