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第六章 世界の綻び
72.再封印
俺とレイディスの魔力は、光と闇が溶け合い輝きを増しながらドラゴンのもやへ向かって一直線に進んでいく。
「そのままいっちまえー!」
「すごい……きれいだ……」
煽るイーラと見惚れているファーの近くを通り過ぎ、一回り大きくなった魔力はドラゴンのもやに迫る。
「あいつ、邪魔をしようとしているのか……?」
集中力を乱さずに結界を張り続けてくれているサフィシュが、俺たちの魔力を嫌がるドラゴンが大量のもやを吹き出してきたことに気づき、結界を強化させた。
「お手伝いしますっ!」
「すまない、助かる」
マキーニャも結界を重ね、吹き出してきたもやを防ぐ。
結界にもやが触れる度にジュウっという結界が削れる音が聞こえてくるが、サフィシュとマキーニャは結界を緩めず最後まで張り続ける。
魔力はその間も輝きを失うことなく、ドラゴンの腹辺りに大穴を開ける。
「――ッ」
声のない声が、なぜか苦しみを訴えてきているような気がする。
俺が胸の辺りをぎゅっとつかむと、レイディスの手が優しく重ね合わせられた。
「どうして、悪意なんてものがあふれてしまったんだろう……」
「大丈夫です。悪意は元ある場所へ還るだけです。別の世界でまた、存在を許されるかもしれません」
もやは光と闇に飲み込まれ、霧散し……弾けてなくなってしまった。
吹き出していたもやは少しずつ収まり、魔力は亀裂へ流れ込んで光り輝きながら闇を封じ込めていく。
「世界の綻びは無事、再封印できました」
「うまくいってよかったじゃねえか。これが、愛の封印ってか?」
イーラがニヤニヤしながら、俺とレイディスを順番に見てくる。
安堵の気持ちと恥ずかしさでいたたまれなくなると、レイディスが両腕を伸ばしてきてぎゅっと抱きしめてくれた。
「リサイル様、さすがです。あのような汚いドラゴンとは会話をしなくていいのですよ?」
「誰が汚いドラゴンだって? 黒いの、お前なあ」
「全く、緊張感のない奴らだ。一歩間違えれば、悪意に飲まれていたかもしれないというのに」
「でも、全員で協力して悪意を封じ込められました。わたしもすごく嬉しいです」
四人の声が聞こえる。
ファーの言う通り、これは協力し合った結果だ。誰か一人欠けていても、成功しなかった。
「いつまで抱き合っているのかは知らないが、成功したなら外で戦う騎士たちの様子を見に行かないと……」
サフィシュが呆れながら言いかけると、急に地面がぐらりと揺れる。
揺れはそのまま断続的に続き、ついにパラパラと大空洞の壁が崩れ始めた。
「ユーッ!」
「ユーアン……?」
ユーアンの焦った声で、俺も改めて辺りを見回す。
揺れはどんどん大きくなり、立っていることが難しくなって身体が倒れそうになる。
レイディスは俺を受け止めて、しっかり抱き寄せてくれた。
「このままだと生き埋めになってしまいますね。脱出いたしましょう」
「でも、封印は……」
「問題ありません。これだけしっかりと封印されているのならば、この場所からは二度と悪意が出ることはありません。リサイル様、失礼いたします」
「それなら良かったけれど……わっ!」
レイディスが俺の身体を持ちあげたので、俺は慌ててレイディスにしがみついた。
成人の儀の時のような横抱きの形だったので、また恥ずかしさが増して顔が熱を帯びていく。
「逃げるときも一緒ってか? うおっ! このままだと本当に生き埋めになっちまう!」
イーラが崩れた破片を避けながら、近くのサフィシュへ訴える。
「しゃべっていないで、さっさと行くぞ! 問題なさそうか?」
すると、サフィシュが簡潔に事実だけを述べて逃げられるように俺たちへ確認の意味の視線を送って来た。
俺は頷き、レイディスは視線で答える。
「はいっ」
続くファーの素直な返事で和んだけれど、崩壊が待ってくれるわけじゃない。
レイディスは俺を抱えたまま走り出したので、はぐれないように召喚獣たちを一旦引っ込める。
「どうして急に崩れ始めたのだろう?」
「分かりません。けれど……再封印は成功しています。ここが埋まろうと、大きな問題はありません」
レイディスにも理由が分からないのならば、どうしようもないのだろう。
一緒に埋められてしまう前に、俺たちは急いで脱出を試みる。
「うおっ! こんなの当たったら危ないって!」
「イーラは少しくらいぶつかった方が、世界のためだ。品の悪さが治る可能性がある」
「イーラさんのその豪快さも、わたしは好きですよ」
辺りが崩れようと、ドラゴンたちは余裕そうだ。
やり取りもいつも通りで、危険な状態なのに俺も少し笑ってしまった。
でも、俺も……レイディスの体温を感じながら甘えてしまっているのだから、危険な場面でも安心しきっているのかもしれない。
「アトラズール大空洞……もう、誰も入れなくなるかもしれないな」
どこか寂しい気持ちもあるけれど……悪意がもう二度と吹き出さないことを願うばかりだ。
+++
俺たちが大空洞から脱出すると、出入口は完全に塞がってしまった。
世界の綻びごと埋もれてしまい、もう二度と誰も入ることは叶わないだろう。
「みんな無事?」
レイディスに抱かれたまま視線と共に確認すると、ドラゴンのみんなが順番に返してくれる。
「俺様が簡単にやられる訳ないだろう?」
「ああ、問題ない」
「大丈夫です。リサイルさんこそ、お怪我はありませんか?」
みんな無事であることに一安心だ。ファーの優しさには、大丈夫と答える。
騎士のみなさんはどうなっただろう?
戦いが続いていたら助けに行こうと思ってレイディスに地面へ下ろしてもらうように伝える。
けれど……レイディスは俺を下ろそうとしない。
一体どうしてという視線を向けると、レイディスは微笑する。
「そのままいっちまえー!」
「すごい……きれいだ……」
煽るイーラと見惚れているファーの近くを通り過ぎ、一回り大きくなった魔力はドラゴンのもやに迫る。
「あいつ、邪魔をしようとしているのか……?」
集中力を乱さずに結界を張り続けてくれているサフィシュが、俺たちの魔力を嫌がるドラゴンが大量のもやを吹き出してきたことに気づき、結界を強化させた。
「お手伝いしますっ!」
「すまない、助かる」
マキーニャも結界を重ね、吹き出してきたもやを防ぐ。
結界にもやが触れる度にジュウっという結界が削れる音が聞こえてくるが、サフィシュとマキーニャは結界を緩めず最後まで張り続ける。
魔力はその間も輝きを失うことなく、ドラゴンの腹辺りに大穴を開ける。
「――ッ」
声のない声が、なぜか苦しみを訴えてきているような気がする。
俺が胸の辺りをぎゅっとつかむと、レイディスの手が優しく重ね合わせられた。
「どうして、悪意なんてものがあふれてしまったんだろう……」
「大丈夫です。悪意は元ある場所へ還るだけです。別の世界でまた、存在を許されるかもしれません」
もやは光と闇に飲み込まれ、霧散し……弾けてなくなってしまった。
吹き出していたもやは少しずつ収まり、魔力は亀裂へ流れ込んで光り輝きながら闇を封じ込めていく。
「世界の綻びは無事、再封印できました」
「うまくいってよかったじゃねえか。これが、愛の封印ってか?」
イーラがニヤニヤしながら、俺とレイディスを順番に見てくる。
安堵の気持ちと恥ずかしさでいたたまれなくなると、レイディスが両腕を伸ばしてきてぎゅっと抱きしめてくれた。
「リサイル様、さすがです。あのような汚いドラゴンとは会話をしなくていいのですよ?」
「誰が汚いドラゴンだって? 黒いの、お前なあ」
「全く、緊張感のない奴らだ。一歩間違えれば、悪意に飲まれていたかもしれないというのに」
「でも、全員で協力して悪意を封じ込められました。わたしもすごく嬉しいです」
四人の声が聞こえる。
ファーの言う通り、これは協力し合った結果だ。誰か一人欠けていても、成功しなかった。
「いつまで抱き合っているのかは知らないが、成功したなら外で戦う騎士たちの様子を見に行かないと……」
サフィシュが呆れながら言いかけると、急に地面がぐらりと揺れる。
揺れはそのまま断続的に続き、ついにパラパラと大空洞の壁が崩れ始めた。
「ユーッ!」
「ユーアン……?」
ユーアンの焦った声で、俺も改めて辺りを見回す。
揺れはどんどん大きくなり、立っていることが難しくなって身体が倒れそうになる。
レイディスは俺を受け止めて、しっかり抱き寄せてくれた。
「このままだと生き埋めになってしまいますね。脱出いたしましょう」
「でも、封印は……」
「問題ありません。これだけしっかりと封印されているのならば、この場所からは二度と悪意が出ることはありません。リサイル様、失礼いたします」
「それなら良かったけれど……わっ!」
レイディスが俺の身体を持ちあげたので、俺は慌ててレイディスにしがみついた。
成人の儀の時のような横抱きの形だったので、また恥ずかしさが増して顔が熱を帯びていく。
「逃げるときも一緒ってか? うおっ! このままだと本当に生き埋めになっちまう!」
イーラが崩れた破片を避けながら、近くのサフィシュへ訴える。
「しゃべっていないで、さっさと行くぞ! 問題なさそうか?」
すると、サフィシュが簡潔に事実だけを述べて逃げられるように俺たちへ確認の意味の視線を送って来た。
俺は頷き、レイディスは視線で答える。
「はいっ」
続くファーの素直な返事で和んだけれど、崩壊が待ってくれるわけじゃない。
レイディスは俺を抱えたまま走り出したので、はぐれないように召喚獣たちを一旦引っ込める。
「どうして急に崩れ始めたのだろう?」
「分かりません。けれど……再封印は成功しています。ここが埋まろうと、大きな問題はありません」
レイディスにも理由が分からないのならば、どうしようもないのだろう。
一緒に埋められてしまう前に、俺たちは急いで脱出を試みる。
「うおっ! こんなの当たったら危ないって!」
「イーラは少しくらいぶつかった方が、世界のためだ。品の悪さが治る可能性がある」
「イーラさんのその豪快さも、わたしは好きですよ」
辺りが崩れようと、ドラゴンたちは余裕そうだ。
やり取りもいつも通りで、危険な状態なのに俺も少し笑ってしまった。
でも、俺も……レイディスの体温を感じながら甘えてしまっているのだから、危険な場面でも安心しきっているのかもしれない。
「アトラズール大空洞……もう、誰も入れなくなるかもしれないな」
どこか寂しい気持ちもあるけれど……悪意がもう二度と吹き出さないことを願うばかりだ。
+++
俺たちが大空洞から脱出すると、出入口は完全に塞がってしまった。
世界の綻びごと埋もれてしまい、もう二度と誰も入ることは叶わないだろう。
「みんな無事?」
レイディスに抱かれたまま視線と共に確認すると、ドラゴンのみんなが順番に返してくれる。
「俺様が簡単にやられる訳ないだろう?」
「ああ、問題ない」
「大丈夫です。リサイルさんこそ、お怪我はありませんか?」
みんな無事であることに一安心だ。ファーの優しさには、大丈夫と答える。
騎士のみなさんはどうなっただろう?
戦いが続いていたら助けに行こうと思ってレイディスに地面へ下ろしてもらうように伝える。
けれど……レイディスは俺を下ろそうとしない。
一体どうしてという視線を向けると、レイディスは微笑する。
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