【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

文字の大きさ
20 / 119
第三章 地道なお手伝いで金貨を稼ごう

18.伝わってくるもの

しおりを挟む
 美味しい食事をいただいたし、片付けくらいはと思ってモグを少し手伝う。
 食器を運んだくらいだったけど、モグは喜んでくれた。
 モグとは自然と仲良くなってる気がする。実際に会ってみたモグは妙なしゃべり方だけどいちいち動きがぬいぐるみみたいで可愛いんだよな。
 犬や猫みたいな感じだけど、話ができるっていうのが大きな違いだ。コミュニケーションが取れるのはありがたい。
 土の精霊のグラウディは声を発してくれないため、モグがいないとシーンとしたままの状態が続くだけだ。
 なので、自分の行動や言動がグラウディに対していいのか悪いのか判断がつかない。
 グラウディと接するときは特に、モグの存在が俺にとってもありがたい。
 
 一緒に片付け終えると、モグは客室を整えてくると言って別の部屋へ行ってしまった。
 グラウディもまたハンモックに寄りかかって読書を始めたし、俺もぼんやりと考え事をするくらいしか暇つぶしはできない。
 モグを手伝いに行ければ良かったんだけど、お客様だから座って待っててくださいって言われちゃったしな。
 今も木のカップに入れてくれた甘酸っぱい果物のジュースを飲みながら、ぼーっとしているだけだ。

「あ……飲み終わった」

 思った声が自然と出てしまい、グラウディの読書の邪魔をしてしまったかと焦ったがセーフだったみたいだ。
 カップを置いてしばらくは今までのことを考えたりしていたけど、程よい温度と柔らかな木の香りに包まれているとどうしても眠気に襲われてしまう。

「ん……」

 目を擦ってみても、眠気の方が強い。結局モグの帰りを待つ前にゆっくりと意識が遠のいていった。

 +++

 優しい香りとさらりとした肌触りを遠くに感じる。
 無意識で身じろぎすると、少しずつ意識が覚醒してきた。
 ゆっくりと目を開けると、暗い室内にいるらしく身体はベッドに横たわっている。
 でも、どうしてこの状況になっているのか分からない。

「あれ、俺……ベッドで眠ってたか?」

 ぼんやりした意識で思い出してみるものの、グラウディの家で夕飯の後のお茶を飲んだあとの記憶がない。
 モグが準備をしてくれるのを待っていたら、眠くなってきて……。
 また、寝落ちした? ラブスピの世界に来てから寝てばっかりだな。

「ということは……わざわざ客室に運んでくれたってことか」

 起こしてくれれば自分で客室へ行ったのに……どうやら気を遣わせてしまったみたいだ。
 今何時なのかは分からないが、身体を起こして静かに部屋を出る。
 家の中は薄暗かったけど、灯りが漏れている部屋が見えてきたのでそっと扉へ近づいた。

 扉が開いたままだったところを覗き見するのは申し訳ないとは思いつつ様子をうかがうと、中に見えたのはグラウディだった。
 モグには俺を運ぶことはできないだろうし、ベッドまで俺を運んでくれたのはグラウディしかいない。
 お礼を言おうと扉をノックする。
 
「夜遅くにすみません。お礼だけ言おうと思いまして」

 グラウディはこちらを振り返る。
 モグは寝ているのか、灰緑の髪が俺の方を向いても無言のままだ。
 でも、俺の方を向いてくれたってことは話を聞いてくれそうだ。

「眠っていた俺をベッドまで運んでくださったのはグラウディ様ですよね? ありがとうございました。それだけ言いに来ました。じゃあ、おやすみなさい」

 頭だけ下げると、グラウディが椅子から立ち上がる。
 俺が首を傾げると、グラウディは木のカップを持って俺の方へ近寄ってくる。

「え? カップ……」

 渡されたカップは暖かく、ふわりと立ち上る湯気は甘い香りで鼻腔をくすぐる。
 リラックスできそうな香りだ。
 俺にカップを手渡すと、グラウディはまた部屋の中へ戻っていく。
 何を考えているのかやっぱり分からないけど、どうやら嫌われてはいないらしい。

 暖かいカップを手にゆっくりと客室へ戻り、ベッドの上へ腰かけてカップに口づける。
 
「甘い……」

 花の蜜が入っているのかな? 紅茶みたいだけど、一口飲むと優しい味がした。
 グラウディは何を考えているのか分からないと思っていたけど……行動や雰囲気だけで人柄って伝わるものなんだな。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...