【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

文字の大きさ
91 / 119
第八章 真のハッピーエンディングを目指して

88.白の世界で

しおりを挟む
 俺が宣言すると辺りの人々も一緒にどよめいていたけど、そのうちにパチパチと拍手が沸き起こる。
 精霊使いが精霊と心を通わせるのは当然のことではあるけど、絆を結ぶというのは人間にとって偉大なことという設定だからだ。

「そっか。ハルはエーテルヴェールに残るんだ。じゃあ……お別れだね」
「カティ……」

 選ばれなかった精霊使いの卵は、精霊との記憶を消されて元の生活へ戻るか、アビスヘイヴンの地に残って精霊使いの補佐としてアビスヘイヴンの地を守っていくかの二択だ。
 
 元の生活へ戻る場合は今まで精霊界で過ごした記憶を消される上に、精霊使いとしての力もなくなってしまう。
 アビスヘイヴンへ残る場合は、記憶は消されないけど精霊とは大鏡の間で状況報告のためだけに会うことを許されるのみだ。
 カティの場合、ヴォルカングと会話はできても共に並んで過ごすことはできなくなる。
 だったら、忘れてしまって元の生活へ戻る方がいいという選択肢もある。

「王様、ボクはアビスヘイヴンに残ります。最後まで精霊使いの卵として、ハルを支えていきたいです」

 ライバルが残ると言ってくれる場合、ライバルの内部好感度も高いことを示している。
 つまり、カティの俺への好感度が高いということだ。
 カティには一番冷たく接してきたはずなのに、いつの間に好感度があがっていたんだろう?
 
「ボクはルカンや精霊様たちと過ごした時間を忘れたくないから……ハルを手伝わせて!」
「カティ……ありがとう」

 俺がカティにお礼を言うと、急に辺りが輝いて何も見えなくなっていく。
 
「恵みの樹が? え、ハル!」

 俺の身体が光に包まれていくのが分かる。驚いたカティと王様が何か声をかけ続けてくれているけど、その声もだんだん遠のいていった。

 +++

 眩しさに負けて目を瞑っていたけど、収まってきたのを感じてそっと目を開けた。
 すると、目の前には静かな空間が広がっていた。
 空気は澄んでいるけど、少しひんやりとしているような気もする。
 すぐ側には川が流れていて、何故か俺の育てていた恵みの樹もある。
 全体的に白っぽい感じはするけど、地に足を付けている感じというか……現実感を感じない。

 ここは一体どこなのだろう?

「突然呼び出してしまってごめんなさい。異世界のハル」
「来てくれてありがとう! 私たちの世界へようこそー」
「わたくしたちは……運命の三女神。あなたをこの世界へ導いた者です」

 急に声をかけられてハッとすると、俺の目の前に三人の美しい女性がふわりと浮いていた。
 一人は優しい声色で、金髪の長い髪をなびかせている穏やかな女性。
 一人は可愛らしい声色で、黒の可愛いショートカットの明るい女性。
 一人は落ち着いた声色で、薄茶の緩いウェーブがかかった肩までの髪の真面目そうな女性。

 運命の三女神……確かに、服装は緩やかな桃色のローブのような……絵画で見る女神と呼ばれるような美しい見た目の女性たちだ。
 俺がぼうっとしていると、黒の女性が俺の近くに飛んできてじーっと俺の顔を眺めてきた。

「君がハルかぁ。わたしはユアンヌ。天運の女神だよー」
「ユアンヌ、ハルが驚いているわ。私はマキーヌ。創造の女神です」
「わたくしはモモリーヌ。定めの女神です。ハル、貴方に話があってこちらに来てもらいました」

 三人とも性格が異なる女神みたいだ。女神にしては不思議な名前だけど……これもゲームと何か関係があるのか?
 俺が静かに頷くと、三人は微笑んでくれた。

「私から説明しましょう。ハル、貴方をこの世界へ呼んだのはこの世界に生じた不和を正してもらうためでした。その不和については……」
「わたしから説明するね。わたしは生きとし生ける者にちょっとした道を授ける女神。だけど……その具合を間違えちゃったというか……」

 ユアンヌと名乗った女神が、テヘペロとでもいうような可愛らしい表情を向けてきた。
 ……可愛いから許しちゃいそうになるけど、女神様もしかしてやらかした?
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...