101 / 119
第九章 真ハピエン後の追加エピソード
98.薄暗い部屋の中で
しおりを挟む
気づいた時はベッドの上だった。
俺はぼんやりと目を開けて、状況確認をするためにゆっくりと身体を起こす。
ここは……前にいた神殿の治療室のベッドだ。
俺は、また倒れてしまったらしい。
「はあ……俺の倒れる癖、何とかならないかな? 毎回ご都合主義的に倒れるのどうかと思うんだけど……」
俺が呟いたちょうどそのタイミングで、俺の様子を見に来たラウディに勢いよくすぽりと捕らわれてしまった。
俺は今、羽交い絞め……じゃなく、力強く抱きしめられていて動けない。
逃げられないのは俺の方なのに、捕まえている方が小刻みに震えている。
大丈夫だろうかと気になって、そっと顔だけ動かして見上げる。
薄暗い室内ではランプの光だけがぼんやりと辺りを照らしているというのに、ぼうっと照らされたラウディの顔は悲しいほどに綺麗だ。
「……離さない」
「いや、だから苦しい……ぐっ」
文句を言ってやろうと、必死に目線で訴える。
……ラウディと目が合うとどうしても放っておけなくて、悲しませたくないと思ってしまう。
いつの間にそんな風になったのだろうか?
憂いを帯びた暗緑色の瞳に、意識が全て吸い込まれてしまいそうだ。
「はあ……分かったから。無理やり捕まえるなって。俺は逃げも隠れもしない」
諦めて瞳を閉じると、掴まれていた腕から力が抜けてすぐに唇が塞がれる。
キスを許したつもりはないのに、ある時ふいにキスをされてから相手の感情が高ぶる度にされるようになってしまった。
最初は抵抗していたけどキスを拒否するとあまりにも悲しい顔をするから……外国の挨拶だと自分に言い聞かせて受け入れるしかない。
気持ちは抵抗していたはず……だった。
本当に最初は挨拶だと思っていたのにな。どうしてこうなったんだか。
普段のラウディはどちらかと言えば一歩引いている感じなのに、スイッチが入ると急に積極的になる気がする。
ラウディの全てを知ってしまった今、この執着も分からなくはないが。
俺にとっては少し……いや、かなり重い。
この重さも含めて、ラウディなんだろうけども。
「んーっ!」
息継ぎできず苦しくなってバシバシと背中を叩くと、漸く唇を開放してくれる。
だが瞬きもせずにじっと俺を見つめてくる瞳は、まだまだ不安げに揺れている。
「……悪かったよ。心配かけてごめんな。でも、俺はもう大丈夫だから」
「……本当に?」
「うん。だからその……もう少し力を抜いてくれると助かるんだけど」
ラウディの力が強すぎて、俺は身じろぎ一つできない。
俺の意識が戻らないせいで心配はかけたけど、ここまで取り乱すとは思わなかった。
「……」
「そんなにぺたぺた触って確かめるなって。くすぐったい」
「良かった……」
俺の無事を確認するように、今度は顔をなぞるように触れられる。
その手はゆっくりと身体のラインをなぞっていき、丹念に触れてくる。
「なあ……この確認、いる?」
「大事」
「はぁ……怪我した訳じゃないんだし、そんなに触られても……っ」
くすぐったさと同時に、じわじわと違う感覚が生まれてくるのが恥ずかしい。
本当に、どうしてこうなったんだろう?
このゲームって全年齢のはずじゃ……。
俺のツッコミを聞いてくれる人は、この世界にはいない。
ラウディに絆されてしまったせいで、強く拒絶することもできない。
「嫌?」
「嫌って訳じゃないけど……」
一応恋愛経験ゼロって訳じゃないが、相手は女の子だけだ。
しかも、付き合っていてもつまらないという理由であっさり振られてしまった。
それ以来、恋人もいなかったっていうのに。
目の前のラウディはキレイな顔をしているが、女の子ではない。イケメンだ。
つまり、男だ。
これは、どういう状態なんだろうか?
俺は一体何をされている? 誰か正解を教えて欲しい。
顔中触れられながら、まぶたや鼻先に落とされるキス。
そしてまた唇へ。これの繰り返しだ。
俺の身体に触れている手も腰をくすぐったりするもんだから、次第にぞわぞわしてきて身体がぶるりと震えた。
俺はぼんやりと目を開けて、状況確認をするためにゆっくりと身体を起こす。
ここは……前にいた神殿の治療室のベッドだ。
俺は、また倒れてしまったらしい。
「はあ……俺の倒れる癖、何とかならないかな? 毎回ご都合主義的に倒れるのどうかと思うんだけど……」
俺が呟いたちょうどそのタイミングで、俺の様子を見に来たラウディに勢いよくすぽりと捕らわれてしまった。
俺は今、羽交い絞め……じゃなく、力強く抱きしめられていて動けない。
逃げられないのは俺の方なのに、捕まえている方が小刻みに震えている。
大丈夫だろうかと気になって、そっと顔だけ動かして見上げる。
薄暗い室内ではランプの光だけがぼんやりと辺りを照らしているというのに、ぼうっと照らされたラウディの顔は悲しいほどに綺麗だ。
「……離さない」
「いや、だから苦しい……ぐっ」
文句を言ってやろうと、必死に目線で訴える。
……ラウディと目が合うとどうしても放っておけなくて、悲しませたくないと思ってしまう。
いつの間にそんな風になったのだろうか?
憂いを帯びた暗緑色の瞳に、意識が全て吸い込まれてしまいそうだ。
「はあ……分かったから。無理やり捕まえるなって。俺は逃げも隠れもしない」
諦めて瞳を閉じると、掴まれていた腕から力が抜けてすぐに唇が塞がれる。
キスを許したつもりはないのに、ある時ふいにキスをされてから相手の感情が高ぶる度にされるようになってしまった。
最初は抵抗していたけどキスを拒否するとあまりにも悲しい顔をするから……外国の挨拶だと自分に言い聞かせて受け入れるしかない。
気持ちは抵抗していたはず……だった。
本当に最初は挨拶だと思っていたのにな。どうしてこうなったんだか。
普段のラウディはどちらかと言えば一歩引いている感じなのに、スイッチが入ると急に積極的になる気がする。
ラウディの全てを知ってしまった今、この執着も分からなくはないが。
俺にとっては少し……いや、かなり重い。
この重さも含めて、ラウディなんだろうけども。
「んーっ!」
息継ぎできず苦しくなってバシバシと背中を叩くと、漸く唇を開放してくれる。
だが瞬きもせずにじっと俺を見つめてくる瞳は、まだまだ不安げに揺れている。
「……悪かったよ。心配かけてごめんな。でも、俺はもう大丈夫だから」
「……本当に?」
「うん。だからその……もう少し力を抜いてくれると助かるんだけど」
ラウディの力が強すぎて、俺は身じろぎ一つできない。
俺の意識が戻らないせいで心配はかけたけど、ここまで取り乱すとは思わなかった。
「……」
「そんなにぺたぺた触って確かめるなって。くすぐったい」
「良かった……」
俺の無事を確認するように、今度は顔をなぞるように触れられる。
その手はゆっくりと身体のラインをなぞっていき、丹念に触れてくる。
「なあ……この確認、いる?」
「大事」
「はぁ……怪我した訳じゃないんだし、そんなに触られても……っ」
くすぐったさと同時に、じわじわと違う感覚が生まれてくるのが恥ずかしい。
本当に、どうしてこうなったんだろう?
このゲームって全年齢のはずじゃ……。
俺のツッコミを聞いてくれる人は、この世界にはいない。
ラウディに絆されてしまったせいで、強く拒絶することもできない。
「嫌?」
「嫌って訳じゃないけど……」
一応恋愛経験ゼロって訳じゃないが、相手は女の子だけだ。
しかも、付き合っていてもつまらないという理由であっさり振られてしまった。
それ以来、恋人もいなかったっていうのに。
目の前のラウディはキレイな顔をしているが、女の子ではない。イケメンだ。
つまり、男だ。
これは、どういう状態なんだろうか?
俺は一体何をされている? 誰か正解を教えて欲しい。
顔中触れられながら、まぶたや鼻先に落とされるキス。
そしてまた唇へ。これの繰り返しだ。
俺の身体に触れている手も腰をくすぐったりするもんだから、次第にぞわぞわしてきて身体がぶるりと震えた。
318
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる