【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

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第九章 真ハピエン後の追加エピソード

98.薄暗い部屋の中で

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 気づいた時はベッドの上だった。
 俺はぼんやりと目を開けて、状況確認をするためにゆっくりと身体を起こす。
 ここは……前にいた神殿の治療室のベッドだ。
 俺は、また倒れてしまったらしい。

「はあ……俺の倒れる癖、何とかならないかな? 毎回ご都合主義的に倒れるのどうかと思うんだけど……」

 俺が呟いたちょうどそのタイミングで、俺の様子を見に来たラウディに勢いよくすぽりと捕らわれてしまった。

 俺は今、羽交い絞め……じゃなく、力強く抱きしめられていて動けない。
 逃げられないのは俺の方なのに、捕まえている方が小刻みに震えている。
 大丈夫だろうかと気になって、そっと顔だけ動かして見上げる。
 
 薄暗い室内ではランプの光だけがぼんやりと辺りを照らしているというのに、ぼうっと照らされたラウディの顔は悲しいほどに綺麗だ。

「……離さない」
「いや、だから苦しい……ぐっ」

 文句を言ってやろうと、必死に目線で訴える。
 ……ラウディと目が合うとどうしても放っておけなくて、悲しませたくないと思ってしまう。
 いつの間にそんな風になったのだろうか?
 憂いを帯びた暗緑色の瞳に、意識が全て吸い込まれてしまいそうだ。

「はあ……分かったから。無理やり捕まえるなって。俺は逃げも隠れもしない」

 諦めて瞳を閉じると、掴まれていた腕から力が抜けてすぐに唇が塞がれる。
 キスを許したつもりはないのに、ある時ふいにキスをされてから相手の感情が高ぶる度にされるようになってしまった。
 最初は抵抗していたけどキスを拒否するとあまりにも悲しい顔をするから……外国の挨拶だと自分に言い聞かせて受け入れるしかない。
 
 気持ちは抵抗していたはず……だった。
 本当に最初は挨拶だと思っていたのにな。どうしてこうなったんだか。
 
 普段のラウディはどちらかと言えば一歩引いている感じなのに、スイッチが入ると急に積極的になる気がする。
 ラウディの全てを知ってしまった今、この執着も分からなくはないが。
 俺にとっては少し……いや、かなり重い。
 この重さも含めて、ラウディなんだろうけども。

「んーっ!」

 息継ぎできず苦しくなってバシバシと背中を叩くと、ようやく唇を開放してくれる。
 だが瞬きもせずにじっと俺を見つめてくる瞳は、まだまだ不安げに揺れている。

「……悪かったよ。心配かけてごめんな。でも、俺はもう大丈夫だから」
「……本当に?」
「うん。だからその……もう少し力を抜いてくれると助かるんだけど」

 ラウディの力が強すぎて、俺は身じろぎ一つできない。
 俺の意識が戻らないせいで心配はかけたけど、ここまで取り乱すとは思わなかった。
 
「……」
「そんなにぺたぺた触って確かめるなって。くすぐったい」
「良かった……」

 俺の無事を確認するように、今度は顔をなぞるように触れられる。
 その手はゆっくりと身体のラインをなぞっていき、丹念に触れてくる。

「なあ……この確認、いる?」
「大事」
「はぁ……怪我した訳じゃないんだし、そんなに触られても……っ」

 くすぐったさと同時に、じわじわと違う感覚が生まれてくるのが恥ずかしい。
 本当に、どうしてこうなったんだろう?
 このゲームって全年齢のはずじゃ……。
 俺のツッコミを聞いてくれる人は、この世界にはいない。

 ラウディにほだされてしまったせいで、強く拒絶することもできない。
 
「嫌?」
「嫌って訳じゃないけど……」

 一応恋愛経験ゼロって訳じゃないが、相手は女の子だけだ。
 しかも、付き合っていてもつまらないという理由であっさり振られてしまった。
 それ以来、恋人もいなかったっていうのに。
 目の前のラウディはキレイな顔をしているが、女の子ではない。イケメンだ。
 つまり、男だ。

 これは、どういう状態なんだろうか?
 俺は一体何をされている? 誰か正解を教えて欲しい。
 
 顔中触れられながら、まぶたや鼻先に落とされるキス。
 そしてまた唇へ。これの繰り返しだ。
 俺の身体に触れている手も腰をくすぐったりするもんだから、次第にぞわぞわしてきて身体がぶるりと震えた。
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