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第六章 我が道を行く魔塔主と献身的に支える弟子(と騎士二人)
187.まとめ役の副団長<ウルガー・テオドール視点>
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あぁ、この人たちはもう!
いっつも事態をややこしくするんだからなぁ。
仕方ない大人たちの合間に挟まれるレイヴンが限界だし、動くしかないよな。
俺は二人の長の重圧に耐えながら、凛として堂々と声を上げる。
「団長、テオドール様も。落ち着いてください。ほら、あちらを見てください。二人がギャンギャンやりあっているせいで、レイヴンが泣き止まないじゃないですか。あんなにワンワン泣いてるレイヴンを見たことがありますか?」
手を指し示すと、服も着ずにペタンと座ったままボロボロと涙を流して様子を見ることしかできないレイヴンが視界に入る。
「……ぅ、……っ……」
叱られた子どもが許しを乞うような視線を向けられた大人二人は、バツが悪くなり言い争う言葉を止める。
「ね? だから、もう少し休んでから改めて出発しましょう。レイヴン、まだ時間はあるから。大丈夫だから。団長は怒ってないぞ? レイヴンのことが心配なだけだから。テオドール様とも仲良しだから。な?」
「……本当、に? 俺……」
「そうそう。だからレイヴンも泣くなって。俺も何も見てない。見てないから、服着たらちょっと温まろう。ほら、アレだ。身体乾かす魔法かなんかあるんだろう?」
レイヴンの身体は直視しないように優しく言い聞かせると、レイヴンは落ち着きを取り戻したのか静かに頷いて自身の身体を風で簡単に乾かしていく。
+++
二人の様子を離れたところで見ていた俺とディーは、何とも居たたまれない感じになってきた。
手持ち無沙汰で頭を掻いたり溜め息を吐いたりするくらいしかない。
「……レイヴンがあんなに動揺するとは思わなかった。やはり、自分が嫌われるのが怖いのだろうか。レイヴンのことを嫌いになるなど、あり得ないのに」
「まぁ……なんだ。レイヴンも甘えてきたから俺もちょっとアレだったわ。この展開まではさすがに予想してなかったが……ディー、俺へのお小言は俺の前だけにしといてくれ」
「そうだな。レイヴンは俺たちが言い争うのも好んでいないようだし。説教は見えないところでたっぷりとしてやるから、覚悟しろよ?」
「別に無理にしなくてもいいんだけどなァ? まぁ、どうしてもしたいって言うなら一度くらいは付き合ってやるよ」
今度こそ背中を向けると、泉の中に入り服を取ってまた戻る。
レイヴンは服を着直してふらふらと立ち上がると、ウルガーが肩を貸してやり何とか歩き出す。
その間に俺もさっと魔法で体裁を整えると、ゆっくりとウルガーの元へと近づく。
「お前にまとめられるのは癪だが、仕方ねぇ。レイヴンが落ち着くまではお前が面倒見てやれ。俺はさっきたっぷり堪能したから少しくらいは我慢してやるよ」
「元々テオドール様が襲いかからなければ、ここまで事態はややこしくならなかったはずなんですけどね。まぁ……気持ちは分からなくもないですけど」
ウルガーに耳打ちすると、ウルガーも小声で返す。
その後に隣のレイヴンの頭をポンと撫でた。
「先に戻る」
一言だけ言い残し、ディーと連れ立って行く。
+++
「……師匠、俺が動揺して叫んだりしたから怒ってるとか?」
「いやいや、あの人はそれくらいで怒ったりしないでしょ。レイヴンが泣いたから驚いてはいたみたいだけど」
「……ごめん。色々あって混乱してた。ふわふわしたまま師匠といたから、ディートリッヒ様になんて言ったらいいのか分からなくなって……ディートリッヒ様も、呆れたよな」
「それこそ、ないね。団長も驚いてたけど、団長のことだから何があってもレイヴンのことを心配してるはず。例え、レイヴンがテオドール様と何かをしていたとしても、レイヴンを咎めることは絶対にないって、副団長の俺が保証する」
胸を張って言い切る俺を見て、レイヴンも漸く笑って、ありがとう。と素直にお礼を言ってくれた。
その笑顔はあまり見慣れなくて、どこか気恥ずかしくなる。
レイヴンとは仲良くしているつもりだけど、元々自分を見せたがらないというか、妙に肩肘を張るところがあるからな。
こんな風に自然な笑顔を向けられると擽ったい。
テオドール様がいなくて良かった、と。心の中でホッとした。
後で何されるか分かったもんじゃないからな。
いっつも事態をややこしくするんだからなぁ。
仕方ない大人たちの合間に挟まれるレイヴンが限界だし、動くしかないよな。
俺は二人の長の重圧に耐えながら、凛として堂々と声を上げる。
「団長、テオドール様も。落ち着いてください。ほら、あちらを見てください。二人がギャンギャンやりあっているせいで、レイヴンが泣き止まないじゃないですか。あんなにワンワン泣いてるレイヴンを見たことがありますか?」
手を指し示すと、服も着ずにペタンと座ったままボロボロと涙を流して様子を見ることしかできないレイヴンが視界に入る。
「……ぅ、……っ……」
叱られた子どもが許しを乞うような視線を向けられた大人二人は、バツが悪くなり言い争う言葉を止める。
「ね? だから、もう少し休んでから改めて出発しましょう。レイヴン、まだ時間はあるから。大丈夫だから。団長は怒ってないぞ? レイヴンのことが心配なだけだから。テオドール様とも仲良しだから。な?」
「……本当、に? 俺……」
「そうそう。だからレイヴンも泣くなって。俺も何も見てない。見てないから、服着たらちょっと温まろう。ほら、アレだ。身体乾かす魔法かなんかあるんだろう?」
レイヴンの身体は直視しないように優しく言い聞かせると、レイヴンは落ち着きを取り戻したのか静かに頷いて自身の身体を風で簡単に乾かしていく。
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二人の様子を離れたところで見ていた俺とディーは、何とも居たたまれない感じになってきた。
手持ち無沙汰で頭を掻いたり溜め息を吐いたりするくらいしかない。
「……レイヴンがあんなに動揺するとは思わなかった。やはり、自分が嫌われるのが怖いのだろうか。レイヴンのことを嫌いになるなど、あり得ないのに」
「まぁ……なんだ。レイヴンも甘えてきたから俺もちょっとアレだったわ。この展開まではさすがに予想してなかったが……ディー、俺へのお小言は俺の前だけにしといてくれ」
「そうだな。レイヴンは俺たちが言い争うのも好んでいないようだし。説教は見えないところでたっぷりとしてやるから、覚悟しろよ?」
「別に無理にしなくてもいいんだけどなァ? まぁ、どうしてもしたいって言うなら一度くらいは付き合ってやるよ」
今度こそ背中を向けると、泉の中に入り服を取ってまた戻る。
レイヴンは服を着直してふらふらと立ち上がると、ウルガーが肩を貸してやり何とか歩き出す。
その間に俺もさっと魔法で体裁を整えると、ゆっくりとウルガーの元へと近づく。
「お前にまとめられるのは癪だが、仕方ねぇ。レイヴンが落ち着くまではお前が面倒見てやれ。俺はさっきたっぷり堪能したから少しくらいは我慢してやるよ」
「元々テオドール様が襲いかからなければ、ここまで事態はややこしくならなかったはずなんですけどね。まぁ……気持ちは分からなくもないですけど」
ウルガーに耳打ちすると、ウルガーも小声で返す。
その後に隣のレイヴンの頭をポンと撫でた。
「先に戻る」
一言だけ言い残し、ディーと連れ立って行く。
+++
「……師匠、俺が動揺して叫んだりしたから怒ってるとか?」
「いやいや、あの人はそれくらいで怒ったりしないでしょ。レイヴンが泣いたから驚いてはいたみたいだけど」
「……ごめん。色々あって混乱してた。ふわふわしたまま師匠といたから、ディートリッヒ様になんて言ったらいいのか分からなくなって……ディートリッヒ様も、呆れたよな」
「それこそ、ないね。団長も驚いてたけど、団長のことだから何があってもレイヴンのことを心配してるはず。例え、レイヴンがテオドール様と何かをしていたとしても、レイヴンを咎めることは絶対にないって、副団長の俺が保証する」
胸を張って言い切る俺を見て、レイヴンも漸く笑って、ありがとう。と素直にお礼を言ってくれた。
その笑顔はあまり見慣れなくて、どこか気恥ずかしくなる。
レイヴンとは仲良くしているつもりだけど、元々自分を見せたがらないというか、妙に肩肘を張るところがあるからな。
こんな風に自然な笑顔を向けられると擽ったい。
テオドール様がいなくて良かった、と。心の中でホッとした。
後で何されるか分かったもんじゃないからな。
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