200 / 488
第七章 エルフにも動じない魔塔主とたじろぐ弟子(と騎士二人)
197.日常への願いとエルフたちの焦燥
しおりを挟む
「テオ、ブレスレット、当たってるから……」
「ん? あぁ。そうか、手繋いだからか」
「もう、大丈夫ですから。離しても」
このくらいのことで照れるレイヴンに笑いながら素直に手を離そうとしたが、レイヴンの方が最後にキュッと握り込んでから名残惜しげに離す。
「別に誰も何とも思わねぇよ、これくらいで」
「思いますって。でも……今回はテオと一緒だから。安心してます」
照れながら嬉しそうに微笑したレイヴンを見ていると、その場で色々したくなる。
緊迫してようが関係ねぇ。
レイヴンに触れて、溶け合って、腕の中に閉じ込めて。
後は一日怠惰に過ごす。
それだけで構わねぇんだがな。
いつものように頭にポンと手を置いて何とか自分を押し留める。
+++
暫く歩みを進めているとレクシェルの言葉通り、何か違和感を感じる場所に辿り着く。
見た目では分かりづらいが、肌に感じる違和感は空間魔法を展開した時と同じようなものを感じる。
それは魔法使いではなくても、気持ち悪いという感覚で共有できるものだった。
エルフさんはこういう魔法は得意そうだからな。
器用さで言えば人間より上かもしれねぇし。
「一つ目の歪みを抜けます。皆さん、気をつけて」
数歩先を進んでいるハーリオンの背中を見ながら、景色は森の中のままの空間を抜けていく。
ディーとウルガーは、なんとも言えない感覚にやはり気持ち悪さを覚えているせいか案の定、眉間に皺を寄せている。
俺とレイヴンは魔法の感覚には慣れてるし、違和感だとは思うががそこまで気持ち悪さは感じずに普通に抜けてしまう。
この辺りは慣れもあるから仕方ねぇな。
違和感にすら気づかないのがそもそも普通だしな。
気づけるっていうヤツは魔法の才能があるか、感覚が鋭敏なヤツか、そんなところだろ。
「……おかしい。もうこの辺りでも奴らがいていいはずだ。なぜ、なぜ何もいない?」
ハーリオンが歪みを抜けきったところで森を見回す。
この辺りでは生き物の気配が感じられない。
乱暴に草木を掻き分けようと、何者も現れる気配がないな。
焦ったエルフがさらに奥へと小走りで進んでいく。
「もう、二つ目まで攻められているのかもしれない。急ぎましょう」
同じく焦っていそうなレクシェルが、何とか冷静な声色で皆を次の地点へと案内しようと早足で歩き始めた。
さらに奥深く、似たような森を抜けていくとエルフたちの言うに二つ目の歪みの付近にやってくる。
すると――何か焦げたような、腐ったような臭いが鼻をツンと刺激する。
「何だ、この臭い……あんまり良い予感はしないけど、団長どう思います?」
「争った後の臭い。これは……血の臭いも混ざっているようだ」
一層厳しい表情になったディーが、伸びる枝を掻き分け道を作っていく。
その後でウルガーが後方及び前方に注意を向けて気配を探り、身体を回して左右から飛び出してくるかもしれない敵襲に備える。
俺も身構えると、レイヴンも同じく戦闘態勢に切り替わる。
「ん? あぁ。そうか、手繋いだからか」
「もう、大丈夫ですから。離しても」
このくらいのことで照れるレイヴンに笑いながら素直に手を離そうとしたが、レイヴンの方が最後にキュッと握り込んでから名残惜しげに離す。
「別に誰も何とも思わねぇよ、これくらいで」
「思いますって。でも……今回はテオと一緒だから。安心してます」
照れながら嬉しそうに微笑したレイヴンを見ていると、その場で色々したくなる。
緊迫してようが関係ねぇ。
レイヴンに触れて、溶け合って、腕の中に閉じ込めて。
後は一日怠惰に過ごす。
それだけで構わねぇんだがな。
いつものように頭にポンと手を置いて何とか自分を押し留める。
+++
暫く歩みを進めているとレクシェルの言葉通り、何か違和感を感じる場所に辿り着く。
見た目では分かりづらいが、肌に感じる違和感は空間魔法を展開した時と同じようなものを感じる。
それは魔法使いではなくても、気持ち悪いという感覚で共有できるものだった。
エルフさんはこういう魔法は得意そうだからな。
器用さで言えば人間より上かもしれねぇし。
「一つ目の歪みを抜けます。皆さん、気をつけて」
数歩先を進んでいるハーリオンの背中を見ながら、景色は森の中のままの空間を抜けていく。
ディーとウルガーは、なんとも言えない感覚にやはり気持ち悪さを覚えているせいか案の定、眉間に皺を寄せている。
俺とレイヴンは魔法の感覚には慣れてるし、違和感だとは思うががそこまで気持ち悪さは感じずに普通に抜けてしまう。
この辺りは慣れもあるから仕方ねぇな。
違和感にすら気づかないのがそもそも普通だしな。
気づけるっていうヤツは魔法の才能があるか、感覚が鋭敏なヤツか、そんなところだろ。
「……おかしい。もうこの辺りでも奴らがいていいはずだ。なぜ、なぜ何もいない?」
ハーリオンが歪みを抜けきったところで森を見回す。
この辺りでは生き物の気配が感じられない。
乱暴に草木を掻き分けようと、何者も現れる気配がないな。
焦ったエルフがさらに奥へと小走りで進んでいく。
「もう、二つ目まで攻められているのかもしれない。急ぎましょう」
同じく焦っていそうなレクシェルが、何とか冷静な声色で皆を次の地点へと案内しようと早足で歩き始めた。
さらに奥深く、似たような森を抜けていくとエルフたちの言うに二つ目の歪みの付近にやってくる。
すると――何か焦げたような、腐ったような臭いが鼻をツンと刺激する。
「何だ、この臭い……あんまり良い予感はしないけど、団長どう思います?」
「争った後の臭い。これは……血の臭いも混ざっているようだ」
一層厳しい表情になったディーが、伸びる枝を掻き分け道を作っていく。
その後でウルガーが後方及び前方に注意を向けて気配を探り、身体を回して左右から飛び出してくるかもしれない敵襲に備える。
俺も身構えると、レイヴンも同じく戦闘態勢に切り替わる。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる