【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

303.洞窟のさらに奥へ

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「微量だな。しかし、まだこちらの方が役に立つ。一番は魔法使いに取り付いて吸えれば回収もできるが……もう少し改良が必要なのだろう。お前たち、この場は任せたぞ」

 影の野郎、よく分からねぇことだけ言ってさっさと踵を返して逃げる算段か?
 後を追おうとしたディーの動きを読むように、一斉にコウモリが進路を塞いで妨害してやがる。
 
 ディーの筋肉脳でも、大振りに剣を振り回せば洞窟を崩しかねないってことは分かってるみたいだな。
 そのせいでヤツも思い切った攻撃はできねぇから、突破力に欠けちまう訳だが。

 舌打ちしても仕方ねぇが、俺とレイヴンが役割を入れ替えちまうとどうしても防御は薄くなる。
 本当は影のヤツを捕まえたいところだが、優先順位は子どもだからな。
 レイヴンに攻撃を任せるしかねぇ。
 
 後ろの頼もしい弟子を見ると、俺がこの場から動けず一斉攻撃できないことやディーたちでは決定打にならないこと。
 全てを理解して、考えを巡らせてるみたいだ。
 
 だったら、俺は優秀な弟子を信じて時間稼ぎをするだけだ。

「また召喚陣があるのだとしたら、一気に動きを止める必要がある。それならば……」

 レイヴンが手のひらを翳し、目を閉じたのを見守る。
 俺も檻にコウモリが近づかないように、魔法で牽制を続ける。
 背後の魔力マナの収束を感じると同時に、檻の隙間から魔法が放たれる。

「――風の波ウィンドウェイブ

 目には見えない微細な風の波が洞窟内を駆け巡る。
 するとコウモリたちの動きがバラバラになり、身体を互いにぶつけ合いながら地へと落下していく。

 成程なぁ。飛んでるヤツを風の波で巻き込むってのはいい考えだ。
 決定打にならずとも、同士討ちを狙えるから一気に数が減らせる。
 翼に当てちまえば、生きてようと大したこともできねぇはずだしな。

「師匠! 今のうちに召喚陣を!」
「やるじゃねぇか。コッチは任せとけ。よし、今のうちに子どもを。さっきのヤツはまだ遠くに行ってないかもしれねぇ。待機させてた騎士の誰かで後をつけられるか?」

 うざったいコウモリの群れが沈黙すれば、俺が動いても問題ねぇ。
 さすが、俺の弟子。
 安全を確認し、全員分の防御魔法を解く。
 
「分かった。ウルガー、追跡は?」
「外の騎士に先程連絡を入れておきました。黒いローブの男らしき不審人物を見たと言うので追跡するよう伝えてあります。後は賊の処理とこのコウモリの処理ですね」

 素早い連携でディーとウルガーが動き出す。
 この場は任せて問題なさそうだ。
 
 戦う四人分だけ防御魔法を掛けなおす。
 俺が離れるとコウモリに全部魔力マナを吸われちまったら魔法の効果は切れるが、その前に全て片づけるし何とかなるだろ。
 
 それよりも、またコウモリがわんさか沸く前にカタをつけねぇとな。
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