【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

文字の大きさ
374 / 488
第十五章 自信満々な魔塔主と更に強くなった弟子

372.予兆

しおりを挟む
 次の日、俺とレイヴンは身支度を整えて王宮へ足を運んだ。
 この急な呼び出しは、空気を読みすぎる魔族さんからのお呼び出しが遂にかかったんだろうな。
 俺のところへ使い魔が顔を出してから多少の時間の猶予はあったが、ヤツらも我慢の限界ってところか。
 国王に面会させろと、早朝からご丁寧に使い魔が来たらしい。
 正面から正当な手続きを踏んだってんだから、愉しみのためには魔族も紳士ってことか。
 どうせなら時間帯も空気を読んで欲しかったところなんだがなぁ。
 陛下の側にいたヤツが余計なことをせずに、陛下を守ることに徹して一番空気を読んでたってのがまた皮肉だな。
 
 そのせいで俺とレイヴンは朝っぱらから王宮へ出向くわけになったわけだ。
 ったく、甘い朝の余韻くらい楽しませろってんだよな。

「テオ……俺は不機嫌だって顔を少しは隠してください。遅かれ早かれこの日はやってくるって分かっていたでしょう?」
「ああ。だが、俺はもう少しレイちゃんを可愛がりたか……」
「こ、ここをどこだと思ってるんですか! 殴りますよ?」

 レイヴンが俺の言葉をさえぎってまでムキになって恥ずかしがってる姿が、唯一の心の慰めってもんだ。
 レイヴンの頭をポンポン撫でながら歩いていると、角を曲がったところで騎士連中に出くわす。
 見たくもねぇ顔を見て、チッという舌打ちが自然と漏れ出ちまった。

「おい、人の顔を見て舌打ちをするとはどういうことだ?」
「こっちは可愛いレイちゃんだけが慰めだってのに、なんで朝っぱらから見たくもねぇ顔を拝む羽目になるんだか」
「うわぁ……テオドール様、相変わらずですね。レイヴンが戻ったから機嫌も戻ったかと……っと、俺はお先に失礼します」

 バカでかいディーと小賢しいウルガーの二人と出会った訳だが、何故かウルガーは一足先に飛び出そうとする。
 コイツ、逃げようったってそうはいかねぇぞ。

「ほう? ウルガーにまで気遣ってもらえるとは光栄だな。ということは、可愛そうな俺のために陛下の相手はウルガーが全て引き受けてくれるってことかァ?」
「不機嫌の矛先をこちらへ向けないでくださいよ! そりゃあ団長は説明下手なので、補佐はしますけど……主役はテオドール様ですよね」
「おい、ウルガー。お前何気なく俺のことを馬鹿にしただろう?」

 全く、ディーも細かいことを気にしやがって。
 バカにしたんじゃなくて、バカなんだろ脳筋なんだからな。
 騎士たちのどうでもいい会話は無視してレイヴンを見遣ると、俺をじっと見上げていた。
 
「師匠……あなたが魔族と誓いを立てたんですよ? 約束を破ったら……」

 レイヴンに不安そうな顔をされちゃ、何も言えなくなっちまう。
 まあ、誓いを破ったら俺の命がなくなるって言ってたから当然なんだが。
 仕方ねぇ。ディーに八つ当たりもしたし、そろそろ顔出さねぇとな。

「分かってるって。そのために準備を頑張ったの見てただろ? この俺が、一生懸命頑張った。これでいいだろ」
「テオ……お前は子どもか。言いたいことは山ほどあるが、今は陛下の元へ急がなくては」
「ディートリッヒ様、申し訳ありません。後で言い聞かせておきますので」
「ということで、行きますよ。四人集まるといつもこうなるんだよなー」

 ぼやいたウルガーは軽く小突いておいて、レイヴンを宥めながら謁見室へ続く扉を潜った。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

処理中です...