376 / 488
第十五章 自信満々な魔塔主と更に強くなった弟子
374.追いかけてきたのは
しおりを挟む
謁見室を後にすると、ウルガーが分かりやすく気を抜いてわざとらしくはぁーっと息を吐いてくる。
「前に言ってたヤツ、やっぱり本気だったんですね。しかもお相手さんまでやる気満々じゃないですか。俺なんて一捻りでやられそうなんですけど、どうしろと?」
「ウルガー、お前何気なく忘れたフリして逃げようとしてただろ。思い出せて良かったなァ?」
「相変わらず性格悪……いえ、何でもありませんよ。何でも。で、改めて。ついでに俺も行く訳ですが。団長も筋肉量が増えた以外、何か対策は?」
ウルガーがディーに話を振ると、ディーは自信満々な顔をしながら俺とレイヴンに視線を流してくる。
こういう時のディーは、どうせ何も考えてねぇんだよな。
聞くだけ無駄なんだが、レイヴンはしっかり聞く体制をとっちまってる。
「心身ともに問題ない。相手が魔族だろうと、自分の持てる力をぶつけて戦うのみだ」
「さすがディートリッヒ様です。鍛錬もかかさず行っていらっしゃるし、やはり騎士団長は騎士の鑑です」
で、大体レイヴンが褒めちまうもんだから勘違いすんだよな。
まただと危惧してんのは、俺とウルガーだけなんだよ。
まあ……馬鹿力だけでも戦力だからな。コイツなら魔族も武力でぶっとばせるだろ。
「ウルガー、無駄なこと聞いてないで脳筋と一緒に準備してこい。俺たちも準備しに行かねぇとな」
「はい。師匠、出発はすぐにですよね」
「ああ。招待状で呼び出すお遊びをしたかっただけでどうせそこら辺に迎えがいるんじゃねぇの? 別に馬でも構わねぇがヤツらも時間はかけたくないだろうしな」
ウルガーも口だけで、どうせこうなることを想定して準備してきてるだろうしな。
ディーとレイヴンを引き離してから魔塔へ戻ろうとした帰り道、また聞きたくもない声が背中側から聞こえてきた。
「待って二人とも!」
「レイヴン振り返らなくていいぞ。嫌な予感がする」
「そういう訳には……この声は、聖女様?」
仕方なく振り返ると、予想通りヤツがいた。
普段は神殿に引きこもってるから会わないが、聖女クローディアンヌ様が息を切らせて俺らを追っかけてきたらしい。
清楚な白のドレスの乱れを直しながら、こっちに微笑みかけてきやがった。
金糸のような美しいブロンドの長い髪と、紫の優しい瞳が正に聖女に相応しく美しいとか言われてたな。
見目だけなら認めざるを得ないが、中身は男で本来の名前はクロード。年齢は俺より上だ。
女神から授かるっていう聖女の力のせいで肉体年齢が止まっちまってるから、見た目は二十代にしか見えねぇせいで騙されちまうヤツも多い。
コイツは俺に対して暴言も平気で吐くし、持ってる杖で普通に頭を殴ってくるからな。
「さっき陛下に許可をいただいてきたの。私も貴方たちに同行する」
「はあ? お前まで来たら誰がこの国を守るってんだよ」
「いざというときは同士が協力してくれるから大丈夫だと仰っていたわ」
「同士って……もしかして?」
協力関係で陛下も知ってる俺らに協力しそうなヤツらと言えば……エルフたちか。
アイツら、自分たちの森はいいのか?
まあ、結界があるからある程度の攻撃なら耐えられるのかもしれねぇが。
「あなたたちの活躍のおかげで、エルフたちもちょっかいをかけられることなかったから若い子たちも修行できたそうよ」
「そう、ですか……」
この様子だとレイヴンは何も聞かされてなかったみてぇだな。
俺らが知らないうちにクレイン父さんと陛下の間で約束事が交わされたってことだろうしな。
クレイン的には息子を心配して、せめてもの援助ってことなんだろう。
聖女サマにはレイヴンの生い立ちのことは話してねぇが、一緒に来るってんならレイヴンが力を存分に発揮するためにも話しておいた方がいいかもしれねぇな。
最終決定はレイヴン次第だが……レイヴンは俺に目線で合図を送ってきた。
「前に言ってたヤツ、やっぱり本気だったんですね。しかもお相手さんまでやる気満々じゃないですか。俺なんて一捻りでやられそうなんですけど、どうしろと?」
「ウルガー、お前何気なく忘れたフリして逃げようとしてただろ。思い出せて良かったなァ?」
「相変わらず性格悪……いえ、何でもありませんよ。何でも。で、改めて。ついでに俺も行く訳ですが。団長も筋肉量が増えた以外、何か対策は?」
ウルガーがディーに話を振ると、ディーは自信満々な顔をしながら俺とレイヴンに視線を流してくる。
こういう時のディーは、どうせ何も考えてねぇんだよな。
聞くだけ無駄なんだが、レイヴンはしっかり聞く体制をとっちまってる。
「心身ともに問題ない。相手が魔族だろうと、自分の持てる力をぶつけて戦うのみだ」
「さすがディートリッヒ様です。鍛錬もかかさず行っていらっしゃるし、やはり騎士団長は騎士の鑑です」
で、大体レイヴンが褒めちまうもんだから勘違いすんだよな。
まただと危惧してんのは、俺とウルガーだけなんだよ。
まあ……馬鹿力だけでも戦力だからな。コイツなら魔族も武力でぶっとばせるだろ。
「ウルガー、無駄なこと聞いてないで脳筋と一緒に準備してこい。俺たちも準備しに行かねぇとな」
「はい。師匠、出発はすぐにですよね」
「ああ。招待状で呼び出すお遊びをしたかっただけでどうせそこら辺に迎えがいるんじゃねぇの? 別に馬でも構わねぇがヤツらも時間はかけたくないだろうしな」
ウルガーも口だけで、どうせこうなることを想定して準備してきてるだろうしな。
ディーとレイヴンを引き離してから魔塔へ戻ろうとした帰り道、また聞きたくもない声が背中側から聞こえてきた。
「待って二人とも!」
「レイヴン振り返らなくていいぞ。嫌な予感がする」
「そういう訳には……この声は、聖女様?」
仕方なく振り返ると、予想通りヤツがいた。
普段は神殿に引きこもってるから会わないが、聖女クローディアンヌ様が息を切らせて俺らを追っかけてきたらしい。
清楚な白のドレスの乱れを直しながら、こっちに微笑みかけてきやがった。
金糸のような美しいブロンドの長い髪と、紫の優しい瞳が正に聖女に相応しく美しいとか言われてたな。
見目だけなら認めざるを得ないが、中身は男で本来の名前はクロード。年齢は俺より上だ。
女神から授かるっていう聖女の力のせいで肉体年齢が止まっちまってるから、見た目は二十代にしか見えねぇせいで騙されちまうヤツも多い。
コイツは俺に対して暴言も平気で吐くし、持ってる杖で普通に頭を殴ってくるからな。
「さっき陛下に許可をいただいてきたの。私も貴方たちに同行する」
「はあ? お前まで来たら誰がこの国を守るってんだよ」
「いざというときは同士が協力してくれるから大丈夫だと仰っていたわ」
「同士って……もしかして?」
協力関係で陛下も知ってる俺らに協力しそうなヤツらと言えば……エルフたちか。
アイツら、自分たちの森はいいのか?
まあ、結界があるからある程度の攻撃なら耐えられるのかもしれねぇが。
「あなたたちの活躍のおかげで、エルフたちもちょっかいをかけられることなかったから若い子たちも修行できたそうよ」
「そう、ですか……」
この様子だとレイヴンは何も聞かされてなかったみてぇだな。
俺らが知らないうちにクレイン父さんと陛下の間で約束事が交わされたってことだろうしな。
クレイン的には息子を心配して、せめてもの援助ってことなんだろう。
聖女サマにはレイヴンの生い立ちのことは話してねぇが、一緒に来るってんならレイヴンが力を存分に発揮するためにも話しておいた方がいいかもしれねぇな。
最終決定はレイヴン次第だが……レイヴンは俺に目線で合図を送ってきた。
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる