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番外短編 不可思議な廃城
4.散り散りになって
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テオの声に驚きながら、慌てて側へ駆け寄る。
「っつ! 何だぁ?」
「大丈夫ですか、師匠?」
「あぁ……何か刺されたみてぇだが……」
「もう、しょうがないわね……解毒!」
聖女様が持参していた神殿で清められた聖なる杖をテオの首元へ向ける。
淡い光がポウと灯り、優しくその場を照らす。
「おー。何かスッキリした気がすんなぁー」
「聖女様の解毒ならば効果は抜群ですからね。良かったですね」
「よしよし、じゃあさっさと済ませようぜ」
「真面目に取り組んでくださいよ、もう。では、まずはこの部屋から……」
ため息交じりに呟いてから扉へ手をかけると、扉が怪しく明滅する。
嫌な予感がしたけど、手を放そうとしても手が離せない。
「チィ! 手を離せレイヴン!」
「手が離せないんですっ! このっ……」
テオが慌てて声をかけてくれたけど、その瞬間に目の前の景色が歪む。
慌てて左手をテオへ伸ばしたけど、反応が遅れたせいでテオと聖女様の姿が消えていく。
移動とよく似た酩酊感を感じながら、自分の目の前の景色が歪んで黒一色になった。
+++
「う……ここは……」
若干の気持ち悪さと共に、目の前の景色が切り替わってきたらしいことが分かる。
はぐれてしまった俺は、どうやら一人部屋の個室のようなところに立っていた。
飛ばされた影響で少し頭がくらくらとしていたけど、もう一度灯火を唱えて辺りを照らして部屋を見渡してみる。
「何だか酔ったみたいな感覚……たぶん扉を開けようとすると、どこかへ移動する罠だったんだろうけど。とりあえずテオと聖女様のところへ一刻も早く合流しないと……」
辺りを見回すと、どうやら寝室であることが分かる。
備え付きの家具は古めかしいけど蔦飾りの彫刻が彫られているし、部屋の中心には立派な天蓋付きのベッドが置いてあった。
「さすが城の中。ベッドも大きい。でも、埃っぽ……あれ?」
俺はもう一度用心深く観察してみるが、ベッドはよく見ると整っているように見えるし埃を被っていない。
試しに触ってみても、まるでいつも誰かが使用しているようにサラリとした感触だ。
「どうして……埃を被ってないんだ?」
俺がベッドに腰掛けて布団を触って調べていると、急に部屋の扉がバン! と大きな音を立てて開かれる。
いきなりのことで驚いてしまったけれど、なんとか声をあげずにゆっくりと立ち上がると扉の方へと首を向けた。
「ココにいたか」
「その声は……テオ? あの、聖女様は……」
一緒にいるはずの聖女様を探している間に、あっと言う間にテオが距離を詰めてくる。
俺が声を発する前に、何も言わず俺のことを強く抱きしめてきた。
テオしかいないことを疑問に思ったけど、改めて同じことを問う。
「いなくなったのは申し訳なかったですが、俺は大丈夫です。テオ、聖女様は一緒じゃないんですか?」
俺の問いに対して、すぐに答えは返ってこない。
それどころかスンスンと匂いをかがれているみたいだ。
ふざけるのもいい加減にしろと身体を引きはがそうとするけれど、相変わらず力が強くてビクともしない。
「何考えてるんですか! 今はこんなことをしている場合じゃ……」
「レイヴン……やっと捕まえたぜ」
テオは俺の言うことを一切無視して熱い吐息を俺の耳に吹き込んでくる。
その囁きは愉悦に満ちていて、背中がぞわりとした。
いつもふざけたことを言っているけど、どこか違う雰囲気に無意識で警戒してしまう。
テオなはずなのに、テオじゃないこの奇妙な感覚は一体……?
「っつ! 何だぁ?」
「大丈夫ですか、師匠?」
「あぁ……何か刺されたみてぇだが……」
「もう、しょうがないわね……解毒!」
聖女様が持参していた神殿で清められた聖なる杖をテオの首元へ向ける。
淡い光がポウと灯り、優しくその場を照らす。
「おー。何かスッキリした気がすんなぁー」
「聖女様の解毒ならば効果は抜群ですからね。良かったですね」
「よしよし、じゃあさっさと済ませようぜ」
「真面目に取り組んでくださいよ、もう。では、まずはこの部屋から……」
ため息交じりに呟いてから扉へ手をかけると、扉が怪しく明滅する。
嫌な予感がしたけど、手を放そうとしても手が離せない。
「チィ! 手を離せレイヴン!」
「手が離せないんですっ! このっ……」
テオが慌てて声をかけてくれたけど、その瞬間に目の前の景色が歪む。
慌てて左手をテオへ伸ばしたけど、反応が遅れたせいでテオと聖女様の姿が消えていく。
移動とよく似た酩酊感を感じながら、自分の目の前の景色が歪んで黒一色になった。
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「う……ここは……」
若干の気持ち悪さと共に、目の前の景色が切り替わってきたらしいことが分かる。
はぐれてしまった俺は、どうやら一人部屋の個室のようなところに立っていた。
飛ばされた影響で少し頭がくらくらとしていたけど、もう一度灯火を唱えて辺りを照らして部屋を見渡してみる。
「何だか酔ったみたいな感覚……たぶん扉を開けようとすると、どこかへ移動する罠だったんだろうけど。とりあえずテオと聖女様のところへ一刻も早く合流しないと……」
辺りを見回すと、どうやら寝室であることが分かる。
備え付きの家具は古めかしいけど蔦飾りの彫刻が彫られているし、部屋の中心には立派な天蓋付きのベッドが置いてあった。
「さすが城の中。ベッドも大きい。でも、埃っぽ……あれ?」
俺はもう一度用心深く観察してみるが、ベッドはよく見ると整っているように見えるし埃を被っていない。
試しに触ってみても、まるでいつも誰かが使用しているようにサラリとした感触だ。
「どうして……埃を被ってないんだ?」
俺がベッドに腰掛けて布団を触って調べていると、急に部屋の扉がバン! と大きな音を立てて開かれる。
いきなりのことで驚いてしまったけれど、なんとか声をあげずにゆっくりと立ち上がると扉の方へと首を向けた。
「ココにいたか」
「その声は……テオ? あの、聖女様は……」
一緒にいるはずの聖女様を探している間に、あっと言う間にテオが距離を詰めてくる。
俺が声を発する前に、何も言わず俺のことを強く抱きしめてきた。
テオしかいないことを疑問に思ったけど、改めて同じことを問う。
「いなくなったのは申し訳なかったですが、俺は大丈夫です。テオ、聖女様は一緒じゃないんですか?」
俺の問いに対して、すぐに答えは返ってこない。
それどころかスンスンと匂いをかがれているみたいだ。
ふざけるのもいい加減にしろと身体を引きはがそうとするけれど、相変わらず力が強くてビクともしない。
「何考えてるんですか! 今はこんなことをしている場合じゃ……」
「レイヴン……やっと捕まえたぜ」
テオは俺の言うことを一切無視して熱い吐息を俺の耳に吹き込んでくる。
その囁きは愉悦に満ちていて、背中がぞわりとした。
いつもふざけたことを言っているけど、どこか違う雰囲気に無意識で警戒してしまう。
テオなはずなのに、テオじゃないこの奇妙な感覚は一体……?
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