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番外短編 不可思議な廃城
10.戦闘開始
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どこか生暖かい空気が漂う中、俺たちは一つの開けた空間に辿り着いた。
すると、丸い灯りがふわりと浮かんでいき暗闇だった通路を照らしていく。
まるで俺たちを待ち構えているような演出に、テオも鼻を鳴らして反応する。
丸い灯りに照らされた通路を進んでいくと、奥の高台の上に黒い花が不自然に何かを囲むように飾られているのが分かる。
中心部には、黒い棺が飾られていた。
用心しながら近づいていくと、待ち構えていたらしい人影がふわりと浮かんで姿を現す。
「折角愉しませてやろうとしたのに、残念だな」
「悪くはねぇが、頭の中でいちいち煩ぇんだよなの思い通りに蹂躙しろだの、これは素晴らしい力だとか。俺は集中してレイちゃんを可愛がりたいってのによ。お喋りな男は嫌われるぜ?」
テオが軽口で応戦している間に、俺と聖女様は警戒して身構える。
怪しい男は燕尾服のようなカッチリとした服装に黒いマントを羽織っており、目の前でふわふわと浮かんで怪しげな笑みを浮かべていた。
いわゆる美形の部類に入る男だ。美しいシルバーの長髪が暗闇で光っているように見える。
この城に住んでいる吸血鬼で間違いないのだろう。
「テオドール、時間を稼いで。動きを止めてくれたら私がなんとかするわ」
「コイツが蘇らねぇようにするには、聖女サマの聖なる力じゃねぇと無理だからな。それまで仕方ねぇから遊んでやるよ」
「俺も微力ながら協力します。これ以上好き勝手される訳にはいきませんから」
俺たち三人と異形の一人の間で睨み合いが始まる。
聖女様は俺たちで守るような体形で一歩下がってもらうと、すぐさま杖を握りしめてこの場で祈りを捧げ始めた。
聖女様の存在を理解した吸血鬼の方が先に動きだす。
「させるかよ。――炎の弾丸」
「――風よ」
テオが指で銃の形を作り引き金を弾くように炎の弾丸を何発も打ち出すのと同時の発動で、俺が自分たちの足元に風を敷き詰めて酸欠にならないように空間を確保する。
地下には窓らしきものも見当たらないし、念の為だ。
吸血鬼は面倒そうに炎の弾丸を避けながら、自身の手首に傷をつけ腕を振るう。
「――血の雨よ」
黒く濁る雨が俺たちへ襲いかかってくる。
俺が言葉を紡ぎ出す前に、テオが弾丸を打ち出しながら左手で雨を払うように魔法を行使する。
「――光の盾」
何枚もの光る盾が一斉に現れて、降り注ぐ血の雨を防いでいく。
両手で魔法を紡いでいくテオに吸血鬼も焦ったのか、一旦俺たちから距離を取ってマントを翻す。
テオは魔法の二重詠唱も得意なので、大抵は右手と左手で別々の魔法を行使する。
この人はしょうもない変態だけど、魔法の腕だけは魔塔主をやっているだけある実力者だ。
「お前たち、あの煩い魔法使いを黙らせてしまえ!」
吸血鬼が腕を広げると、暗い空間から何匹ものコウモリが現れてキィキィと耳障りな声で鳴く。
音波攻撃に顔をしかめて耐えながら、集中して祈りを捧げている聖女様を守るようにもう一度息を吐き出して相手を見据える。
「レイヴン、こういう時はどうする?」
「師匠は吸血鬼のお相手を。俺がコウモリを引き受けます」
「頼んだぜ? 俺も手助けはしてやるからよ」
目線で合図し合うと、俺も次の魔法の詠唱に入る。テオは引き続き炎の弾丸で牽制しながら、左手で吸血鬼の攻撃を防ぐ。
「――雷の渦」
俺が魔法を放つと、雷がコウモリへと伸びて渦状に膨れ上がり何匹ものコウモリを巻き込んでいく。
巻き込まれたコウモリは飛ぶことができなくなり、バタバタと地に落ちていく。
飛び回るコウモリ相手は少しやりづらいけど、魔法を制御すればいっぺんに多くの個体を巻き込むことができる魔法だ。
「この密室で! 正確に魔法を制御するなどと……」
「ウチのレイちゃんの正確さを舐めるなよ? 無駄なことはしないんだよ。残念だったなァ?」
ニヤリと笑んだテオが油断していた吸血鬼に駆け寄り、思い切り拳で殴りかかる。
吸血鬼はまさか物理で来ると思っていなかったらしく、テオの攻撃を避け損ねて顔を殴られ地面へ叩き落とされた。
「グッ……私の顔を殴るなどと……なんて、野蛮な……」
「ったくよ、いくら俺のやる気がなかったからってやられっぱなしなのは癪なんだよなぁ? まぁ、吸血鬼の能力自体は悪いもんじゃねぇが」
ドヤ顔をしているテオに無茶しないでくださいと声をかけるけど、ニヤニヤだけが返ってきた。
魔法使いなのに前線に出るのが好きな人だから困っちゃうんだよな。
でもテオの策が刺さって見事に吸血鬼の動きを止めたことが分かり、ちらと聖女様へ目配せする。
聖女様も瞳を開けて、今までの祈りで授かった聖なる力をこの場で開放する。
すると、丸い灯りがふわりと浮かんでいき暗闇だった通路を照らしていく。
まるで俺たちを待ち構えているような演出に、テオも鼻を鳴らして反応する。
丸い灯りに照らされた通路を進んでいくと、奥の高台の上に黒い花が不自然に何かを囲むように飾られているのが分かる。
中心部には、黒い棺が飾られていた。
用心しながら近づいていくと、待ち構えていたらしい人影がふわりと浮かんで姿を現す。
「折角愉しませてやろうとしたのに、残念だな」
「悪くはねぇが、頭の中でいちいち煩ぇんだよなの思い通りに蹂躙しろだの、これは素晴らしい力だとか。俺は集中してレイちゃんを可愛がりたいってのによ。お喋りな男は嫌われるぜ?」
テオが軽口で応戦している間に、俺と聖女様は警戒して身構える。
怪しい男は燕尾服のようなカッチリとした服装に黒いマントを羽織っており、目の前でふわふわと浮かんで怪しげな笑みを浮かべていた。
いわゆる美形の部類に入る男だ。美しいシルバーの長髪が暗闇で光っているように見える。
この城に住んでいる吸血鬼で間違いないのだろう。
「テオドール、時間を稼いで。動きを止めてくれたら私がなんとかするわ」
「コイツが蘇らねぇようにするには、聖女サマの聖なる力じゃねぇと無理だからな。それまで仕方ねぇから遊んでやるよ」
「俺も微力ながら協力します。これ以上好き勝手される訳にはいきませんから」
俺たち三人と異形の一人の間で睨み合いが始まる。
聖女様は俺たちで守るような体形で一歩下がってもらうと、すぐさま杖を握りしめてこの場で祈りを捧げ始めた。
聖女様の存在を理解した吸血鬼の方が先に動きだす。
「させるかよ。――炎の弾丸」
「――風よ」
テオが指で銃の形を作り引き金を弾くように炎の弾丸を何発も打ち出すのと同時の発動で、俺が自分たちの足元に風を敷き詰めて酸欠にならないように空間を確保する。
地下には窓らしきものも見当たらないし、念の為だ。
吸血鬼は面倒そうに炎の弾丸を避けながら、自身の手首に傷をつけ腕を振るう。
「――血の雨よ」
黒く濁る雨が俺たちへ襲いかかってくる。
俺が言葉を紡ぎ出す前に、テオが弾丸を打ち出しながら左手で雨を払うように魔法を行使する。
「――光の盾」
何枚もの光る盾が一斉に現れて、降り注ぐ血の雨を防いでいく。
両手で魔法を紡いでいくテオに吸血鬼も焦ったのか、一旦俺たちから距離を取ってマントを翻す。
テオは魔法の二重詠唱も得意なので、大抵は右手と左手で別々の魔法を行使する。
この人はしょうもない変態だけど、魔法の腕だけは魔塔主をやっているだけある実力者だ。
「お前たち、あの煩い魔法使いを黙らせてしまえ!」
吸血鬼が腕を広げると、暗い空間から何匹ものコウモリが現れてキィキィと耳障りな声で鳴く。
音波攻撃に顔をしかめて耐えながら、集中して祈りを捧げている聖女様を守るようにもう一度息を吐き出して相手を見据える。
「レイヴン、こういう時はどうする?」
「師匠は吸血鬼のお相手を。俺がコウモリを引き受けます」
「頼んだぜ? 俺も手助けはしてやるからよ」
目線で合図し合うと、俺も次の魔法の詠唱に入る。テオは引き続き炎の弾丸で牽制しながら、左手で吸血鬼の攻撃を防ぐ。
「――雷の渦」
俺が魔法を放つと、雷がコウモリへと伸びて渦状に膨れ上がり何匹ものコウモリを巻き込んでいく。
巻き込まれたコウモリは飛ぶことができなくなり、バタバタと地に落ちていく。
飛び回るコウモリ相手は少しやりづらいけど、魔法を制御すればいっぺんに多くの個体を巻き込むことができる魔法だ。
「この密室で! 正確に魔法を制御するなどと……」
「ウチのレイちゃんの正確さを舐めるなよ? 無駄なことはしないんだよ。残念だったなァ?」
ニヤリと笑んだテオが油断していた吸血鬼に駆け寄り、思い切り拳で殴りかかる。
吸血鬼はまさか物理で来ると思っていなかったらしく、テオの攻撃を避け損ねて顔を殴られ地面へ叩き落とされた。
「グッ……私の顔を殴るなどと……なんて、野蛮な……」
「ったくよ、いくら俺のやる気がなかったからってやられっぱなしなのは癪なんだよなぁ? まぁ、吸血鬼の能力自体は悪いもんじゃねぇが」
ドヤ顔をしているテオに無茶しないでくださいと声をかけるけど、ニヤニヤだけが返ってきた。
魔法使いなのに前線に出るのが好きな人だから困っちゃうんだよな。
でもテオの策が刺さって見事に吸血鬼の動きを止めたことが分かり、ちらと聖女様へ目配せする。
聖女様も瞳を開けて、今までの祈りで授かった聖なる力をこの場で開放する。
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